庭草
2013/09/12
2年前に、数十種類のハーブを通販でまとめて買いました。そのうち何種類かは育たずに絶えてしまいました。多年生で耐寒性のものを選んだのですが。筆者の認識ではハーブと言えば、葉の香りを楽しむための植物であったのですが、筆者が求めた通販先では、ハーブとしてバラやイチゴの仲間、花菜類や様々な顕花植物が含まれていました。これは思っていたよりずっと楽しいです。ネットで調べてみると、香りを楽しむほか、料理の薬味や香りづけ、お茶、ポプリ作りに利用できる植物といった記述がありました。ハーブの定義では、葉や花を愛でる鑑賞用植物とは別のもののようですが、植物学的分類よりも用途の違いによる区分ということになると、解釈の仕方で線引きがかなり曖昧になります。
植物は、人間の暮らしとたいへん密接で、人の使途によって、野菜や果物、薬草、鑑賞植物(お花や観葉植物、盆栽など)、雑草、建材(生け垣や防風林、街路樹や公園の日陰などを含む)といった感じに分けられます。その中でハーブは、食用になるけれど栄養価を期待するものではなく、香りづけや味付けに用いるもの、リラクゼーション効果を期待するものといった、暮らしに絶対必要ではないけれど、精神衛生上ひじょうに優れた効果を発揮するものという役割を果たしているようです。ハーブの癒し効果は、古くからそして混迷を極める現代社会でも高く評価されています。食用植物と薬草の中間的な位置づけになりましょうか。
ハーブには草本だけではなく、多くの木本も含まれます。また、バラは鑑賞植物ですが、その果実であるローズヒップはハーブとしての名称です。ヒマワリもハーブとしての利用があります。見れば鑑賞植物、食えばハーブというわけです。
そしてまことに残念なことには、筆者のところでは、ハーブとして入手したものがもっぱら鑑賞用に供されており、料理や香水として葉や花が収穫されることは今のところ皆無です。新緑や花もたいへん可愛いですが、ハチやチョウが飛来するのも楽しいです。鳥が実を突つくのも。虫が増えると肉食性の虫やヤモリやトカゲが居つくようになり、小さな生態系が構築されます。それを守るためにうちの庭は無農薬です。虫や鳥が食しても安心です。香りのきついハーブは虫がつかないという情報とは裏腹に、しっかり食われているのを見ると笑えます。
生育の良好な植物が大胆に日照権を主張し、弱い植物を虐げるのを見るとむかつきます。個々の植物の知識がなく、弱い植物を守れなかった自分にもむかつきます。嫁さんの母親が勝手に植えて行ったスイセンやクロッカスが、大繁殖したのは驚異的でした。ハーブの間にいつの間にか野生のアザミがでっかい花をつけたのにも驚きました。
筆者にとってハーブは、まさに萌えと癒しを提供するもの、美少女アニメやメイドさんやフィギュアや人形やヘビやトカゲや毒虫と同じですね。そもそも“萌え”という言葉は、植物の新緑の美しい様を現す“萌える”から派生したオタク用語ですから、植物を愛でる時にこそ「萌え〜」と唸るべきなのかもです。
本来、味や香りを嗜むものを、見て喜んでいるのは邪道なのでしょうが、世間一般でもガーデニングにハーブを用いたり、ハーブ園なんて施設があったりするので、そう特異な嗜み方ってことでもないのでしょう。
ただ、筆者の場合、雑草だって興味の対象なので、庭に珍しい雑草が芽吹いたりすると抜くのをためらいます。同居している家族の手前抜かなければならない場合には写真を撮ります。外来植物であるハーブ類と地元の雑草たちが1つの庭で競合しているさまは、感慨深いものがあります。一見して当たり前の風景なのですが、人の都合に合わせて外来種が日本の土壌に適応し在来の雑草と共存しているさまは興味深いものです。もっとも雑草の多くがもともと外来種だったりするのですが。そして、それらを虫たちが食べるのもまた面白いものです。地球はひとつだぜ、国境なんて自然にとっては無意味だぜ、なんてつくづく思います。