雑虫

 雑虫という言葉は、普段あまり聞かないですし国語辞典にも記載がありませんが、生き物の飼育者はけっこうよく使います。雑草から引用した造語でしょうか。植物を育てている人たちにとって雑草が邪魔者であるように、雑虫は虫や小動物の飼育者にとっての邪魔者のようです。栽培や飼育の対象には愛情を注ぐけれど、同じ生物でも勝手にわいて来るものは忌み嫌って撃退する。人の情なんてそんなもんです。筆者もヘビには飼育対象として情を注ぎますが、マウスはヘビの餌でしかありません。でも、生きたマウスはとても可愛くて餌用に入手したものの飼育動物にしてしまったこともあります。身勝手なものですね。だから、動物愛好家と言われると思いは複雑です。そもそも生き物の飼育自体が身勝手なものですから。本当に生き物を愛するなら、狭いところに閉じ込めたりせず、自然に置くべきだという意見も解ります。でも、飼育動物が健康を維持して野生の個体よりもずっと長生きして、飼育者と良好な関係を維持しているのを見ると、それもまた有りだよなって思います。人の家畜との共生もまた自然界の生態の1つですし。
 この問題は結論が出ないし出すべきでもないですが、議論の対象として面白いですね。で、雑虫のことなのですが、例えばカブトムシやクワガタムシを飼っていて、その餌にコバエがわいたりすると、飼育者はそのコバエを雑虫と呼び撃退します。雑虫の駆除もお世話の1つです。植物の栽培者が雑草をせっせと抜くのと同じです。あるいはクワガタムシの幼虫の飼育のために手に入れた朽木の中に、カミキリムシの幼虫が潜り込んでいた場合もやはり雑虫です。クワガタムシの幼虫に害をなしそうな気がするので(筆者の経験ではクワガタムシの幼虫が雑虫を食っちまいましたけど)やはり駆除の対象です。
 ところが、雑虫の中にも面白いやつ、可愛いやつはいっぱいいるわけで、筆者はじつに多くの雑虫を飼育対象あるいは観察対象にしてまいりました。餌として仕入れた外国産のゴキブリも飼育動物になっちまいましたし、熱帯魚の水槽にわいた巻き貝も、別の容器に移して何年も累代飼育しています。市販されないような虫は採ってきたり、オークションで手に入れたり。
 そういうわけで、筆者にとって雑虫とそうでない虫との線引きは曖昧です。そういう人はけっこう多いと思います。この項では、ペット業界では餌扱いの虫や、野生採集の虫なんかについて記述していこうと考えています。

ヒゲコガネ

2013/09/28


 久々にヒゲコガネに出会いました。日本のコガネムシの仲間としてはかなり大きな方です。カブトムシを除けばこれより大きなコガネムシっているのかな。オオチャイロハナムグリの方が大きいかな? 本種は、体長40mm近くになる個体もいると思われます。ちなみにカブトムシは体長50mmを超えるものがざらで、オスではさらにでっかい角状突起が頭部からニョニョっと生えています。ああ、南の島にいるヤンバルテナガコガネは、もっとでっかいですよきっと。あれだって歴とした日本のコガネムシです。
 ということで、我らがヒゲコガネがだんだんこじんまりしてしまった次第ですが、平地でも日常的に見ることができるコガネムシやハナムグリの仲間に比べると、やっぱ大した貫祿ですよ。
 棲息地に行けば、かなりの個体数を目撃できますが、そうでないところで見つけるのは難しく、レア度はかなり高い虫と言えるでしょう。今もむかしも昆虫少年たちは実物よりも図鑑等で先にその雄姿を知るわけで、本物との出会いを渇望しているわけですが、この虫との出会いは意外なときに唐突にやって来たりします。近縁種にシロスジコガネというのがいて、棲息地も食性も共通していて海岸沿いの松林に棲んでいるのですが、本種の方は思いがけないところに飛来して、しばしば人を驚かせます。筆者が初めてこの虫と出会ったのも、淀川水系の平地で、近くにはまとまった松林なんてありませんでした。自転車で淀川を横断する橋を渡っていたら、歩道に本種がボーッとしていたわけですよ。虫好きの人間はたとえ自転車に乗っていたって、3センチ級の虫を見逃したりしません。これは別に自慢じゃなくて、虫好きなら当たり前のことです。
 初めてのヒゲコガネの実物。たとえ初めての出会いであっても種を見間違えたりしません。虫好きなら誰でもそうです。思わず「うわっ」とか叫んで捕獲しましたよ。立派なオスで、その名の由来となる大きな触覚を扇状に開いたり閉じたりしていました。そしてさらに驚いたことには、そこらじゅうにこの立派なコガネムシがゴロゴロしているのです。当時はせっせと標本を集めていた頃でしたから、出くわした虫を持ちかえる準備に抜かりはありません。比較的大きな個体を2ペアほど連れ帰りました。あまりにたくさんいたので数を数えるのもいやになったほどですが、じっくり調査すれば100頭を数えられたかも知れません。
 そして奇妙なことに、この大発生は数日続いたあとパタリと途絶え、その後2度と見ることはできませんでした。昆虫類が特定の夏だけ特定の場所に大発生するような現象はそれほど珍しくはありませんが、松林で生涯を送るヒゲコガネが、棲息地を遠く離れたところに大発生したのはどうしたことなのでしょう。
 棲息地を拡大するための冒険でしょうか。生物はいずれもそうした習性を有しています。それを積極的に行なわないかあるいは、それにことごとく失敗した種は、地域限定の希少種になります。とくに食性の拡大を行なわず、同じ種類の植物ばかり食べている種は、生息域の拡大が苦手です。本種も松限定の希少種のひとつと思っていましたから、とんでもないところに大発生したのは驚嘆すべき出来事でした。
 筆者の若いころのエピソードですが、その後の人生でも時おり本種とはバッタリ出くわし、近くに松林を探すも見当たらず、この出来事を思いだす次第です。どうやら本種は、棲息地からかなり離れた灯火(夜間照明)などに飛来する習性があるようです。
 今回は、1頭のオスとの出会いでしたが、浜辺からはほど遠い山がちなところです。ただ、淀川水系が数キロのところに拡がっていて、図鑑等で紹介されている浜辺ならずとも、淀川縁の松のあるところには本種が棲んでいるにちがいないとにらんでいます。筆者の乏しい知識が浜辺と決めつけているだけで、本種はシロスジコガネよりも浜辺から離れた川の上流まで生息域を拡げているのかもしれません。たぶんそうなのでしょう。



 本種は、でっかくて見応えがあって、飼育動物にしたらきっと人気がでると思われますが、樹液食のコガネムシのように昆虫ゼリーを与えていれば飼育できるような種でもないでしょうし、昆虫マットに産卵させて増やせるタイプでもないでしょう。ただ、この虫は連れ帰っても葉食いのコガネのわりには糞をしませんでしたので、昆虫ゼリーかキュウリなどでしばらくは飼えるかもしれません。スポンジ等に水を含ませておくだけでもそれを舐めて生きているかも。昆虫の成虫はあまり食事を摂らないものが少なくありません。でも、飛翔力は強そうなので、夜になるとケージの中でブンブン暴れて消耗してしまうかもです。
 本種が樹液食なら、きっと大勢の人が飼育をてがけていることでしょう。葉食いは幼虫は根食いなので、飼育には生きた植物を用意しなければなりません。本種の飼育のために庭に松の木を植えますか? どなたかチャレンジしてみてください。

オオシロカミキリ

2015/07/15


 これまでシロカミキリとしてまいりましたが、P.kawadai様よりオオシロカミキリであるとのご指摘を受けました。筆者の能力では正確な種の同定ができませんでしたから本当に助かりました。ありがとうございます。
 たいへん綺麗なカミキリムシなので、もう1度出会いたいです。

以下は訂正前の記述です。

2013/10/10


 うちの庭に、少々珍しいカミキリムシが飛来しました。思えば、カミキリムシはそんなにやって来ません。これまでの訪問者はゴマダラカミキリとシロスジカミキリと、あとは小さくて見逃しそうなのが何頭かていどですか。ベニカミキリの仲間も飛来したことあるなぁ。
 シロカミキリの仲間は、筆者にとって初めて実物を見るのでかなり嬉しかったです。種の同定をすべくさっそくネットで検索してみたのですが、けっきょくよく解りませんでした。外見ではムネホシシロカミキリが一番近かったですが、解説の体長12〜13mmに比べるともっと大きくて30mmはありました。これくらいのサイズともなると検索すればすぐに見つかると思ったのが甘かったです。もっといっぱい写真を撮って、正確なサイズを記録しておくべきでした。



 どなたか、写真だけ見て種が判れば教えてください。実物は、撮影のあとすぐに逃がしちまいました。

コカマキリ

2013/10/10


 去年辺りからうちの庭に、カマキリが2種類ほど居つくようになりました。近くの歩道の植え込みや公園の草むらには、ワラワラいますから、庭に飛んできてもべつにどうということもないのですが、庭にハーブをたくさん植えてからショウリョウバッタやオンブバッタが棲息するようになり、それを目当てにカマキリも居つくようになったようです。
 チョウセンカマキリ(単にカマキリとも)とコカマキリの2種です。両者ともポピュラー種ですが、筆者の経験ではコカマキリの方が産地寄りに棲息することが多いように思います。ちなみにうちの近所には、まれにオオカマキリやハラビロカマキリも見かけます。



 コカマキリは、枯れ草に擬態した茶色で細身の地味な虫ですが、まれに緑色の個体もいます。筆者は1度しか実物を見たことがありません。緑色のものでも本種と判るのは、前肢脛節(前足のカマの部分)の裏側にある独特の模様です。黒く縁取られた白と淡いピンクの模様は、七宝焼のような光沢があって大変よく目立ちます。とってもオシャレです。このような模様は他のカマキリにはありません。
 カマキリの仲間の多くが、ボクサーの用に前肢を構えて羽を拡げる威嚇ポーズを得意としますが、その差異に本種の場合、この模様がよく目立ち、それは偶然ではないように思います。黒光りする帯状の模様の中に白い紋が目玉のように見え、前胸部から上がそれ全体が顔のように見えるのです。これは鳥などの敵に対してかなりの威嚇効果があるのでしょう。人間にとっては可愛いポーズですけど。
 今年は庭でコカマキリの卵嚢も見つけることができましたから、来年もきっと小さな幼虫がピョコピョコ跳ねる姿を見せてくれるでしょう。


 ↑ 筆者の庭のカマキリの幼虫

ベニカミキリ

2013/10/13


 綺麗な赤いカミキリムシです。平地ではそれほど見かけませんが、少し山岳部になるとよく見かける虫です。その名の通り紅色をしてます。前胸部には5つの黒紋がありますが、この形状には個体差があるようです。紋同士がつながっているようなものも少なくありません。
 体長は15mmていどです。このサイズのカミキリムシは花に集まるものが多いですね。その例に漏れず本種も花の蜜を吸いに花から花へと飛び回ります。昼行性で活発な虫で、人家にも飛んできます。人家等で見つかる個体数は多くないですが、彼らが好む植物の棲息地ではそこそこの群れを観ることができるかもです。筆者は見たことないですが。



 このくらいのサイズの虫を、カミキリムシとすぐに認識できる人はかなりの昆虫マニアです。同サイズに多く体型もよく似ている虫に、カミキリモドキがいますが、これも花に集まる虫です。ツマグロカミキリモドキなんかは都会化が進んだところでもよく見られ、筆者も子供の頃はよくこいつと遊びました。
 大阪では、ツマグロカミキリモドキを戦争虫とか兵隊虫とか呼称し、発見すると肘のところに挟んで勝負しました。これのどこが勝負なのか判りませんが、あわれなカミキリモドキはたいていつぶされて死んでしまいます。中には生還するケースもあり、さらには子供たちの肘の部分に痛みとミミズ腫れを残すという戦果をあげます。こうなるとカミキリモドキの勝ちですね。
 なんだかくだらないうえに、カミキリモドキにとっては迷惑な遊びですが、多くのカミキリモドキは少々毒性のある体液を分泌します。それゆえにこの虫を駆除する場合もあるのですが、ベニカミキリていどのサイズの虫だと、大きさと形状からカミキリモドキの濡れ衣を着せられそうです。カミキリモドキは、カミキリムシよりもかなり体が柔らかく、触角も糸状で貧弱です。小さくても節くれだった立派な触角を持つ虫はカミキリムシなので、間違って駆除しないように。というかカミキリモドキも駆除してほしくないですけど。この虫の被害はまったくもって大したことないですから。

シンジュサン

2013/10/20


 蛾(ガ)はお嫌いですか? 蝶(チョウ)は綺麗で可愛いけれど、蛾は気持ち悪いとおっしゃる方は多いと思います。確かに多くの蛾が花から花へ飛んでいるよりも夜の電灯に集まったり、建物の壁に張りついていたりすることが多く、あまり爽やかなイメージはありません。
 その中でもヤママユガの仲間は、大型で派手なものが多く見応えがあります。オオミズアオは、みずみずしい水色の羽が鮮やかとしか言いようがありません。また沖縄地方に棲むヨナクニサンは、日本最大の蛾として知られ、開長(羽を開いた差し渡し)が120〜140mmくらいになります。
 そして今回ご登場のシンジュサン。開長でもヨナクニサンにほとんど負けていません。日本全土で見られるほか朝鮮半島や中国にも分布します。とても立派で美しい蛾ですが、筆者の経験ではヤママユガの仲間としては最も遭遇率が高い、すなわちひじょうに珍しい蛾ではないです。基本的に山地に棲んでいますが、むかしは都会化が進んだところでも見かけることがあり、筆者が子供の頃は大阪府下の神社や墓地でも目撃したことがあります。子供の目線で見たそれはじつにビッグでした。


 ↑ 久しぶりの目撃例は、残念ながら死骸でした。ボロっちぃ画像ですみません。

 ヤママユガの仲間は、基本いつも羽を拡げています。木に止まっているところは、木に標本を固定してあるみたいです。美しい蛾ですから綺麗なポーズを見せてくださって誠にありがとうなのですが。2条の白い帯と4つの横向き三日月模様が特徴です。そしてもう1つの特徴は、前翅の先端部分にあるヘビの目模様です。丸く突出した先端部分はヘビの頭そっくりです。シンジュサンがいきなり羽を拡げた際に、ヘビが飛び出してきたような威嚇効果があり、鳥などから身を守ることができる、なんていう図鑑の解説を読んだことがありますが、実際にはシンジュサンはいきなり羽を拡げるといった行動はあまりしません。静止している時はつねにこのヘビの頭が見えています。それよりも羽ばたいている状態から静止に移行した瞬間の方が、ヘビが出現したように見えます。


 ↑ 前翅の先端部のヘビの目模様。ほんとうにヘビの頭そっくりで立体感さえある。実際には起伏のない偏平な羽なのだが。

 幼虫は、クヌギやエノキといった山にひじょうにたくさん生えている樹の葉を食べます。他にもいくるか食草がありますが、食草の量や種類が多いことが棲息数を増やしている秘訣ですね。また、クスノキの葉も食草になり、神社にはでっかいクスノキが植わっていたりしますから、それで平地にも棲んでいるのでしょう。とは言うものの、そうそう簡単には出会える昆虫でもありませんが。


 ↑ 腹面(裏側)から観ても翅の模様は変わらない。


 ↑ 頭部のクローズアップ。


 ↑ 胴部腹面。フカフカの毛で覆われた体は小鳥のようだ。

ウスバカゲロウ

2013/10/23


 カゲロウの名を持つ昆虫には2つのグループがあります。一般に陽炎(かげろう)のようにはかない命と表現される方の虫は、昆虫綱カゲロウ目に属し、幼虫は水棲の肉食昆虫で、亜成虫という時期を経て成虫になります。
 昆虫を2つに大別した場合、シミおよびイシニミの仲間のように成虫幼虫を通じて変態しない無変態で翅(はね)を持たない無翅亜綱と幼虫から成虫に変態する有翅亜綱に分けられます。そして有翅亜綱の中でも幼虫と成虫がよく似た形態で、違いは翅の有無というグループが不完全変態の外翅類で、幼虫と成虫がまったく異なる形態をしており、蛹(さなぎ)のプロセスを経て完全変態する仲間が内翅類です。バッタやコオロギ、カマキリ、ゴキブリ、ハサミムシなどは不完全変態の外翅類、チョウやガ、ハエやカ、ハチやアリ、甲虫類などは蛹のプロセスを持つ完全変態する内翅類です。セミやカメムシの仲間、トンボの仲間は、外翅類ですが、セミ、トンボでは幼虫と成虫の形態がかなり異なり、外翅類としてはかなり進化的な虫です。そして亜成虫のプロセスを踏むカゲロウ目の昆虫は、さらに内翅類に近い仲間と言えるでしょう。
 カゲロウ目の幼虫は、水生生活を送りながら他の虫を捕食し、成虫になると食事をせず、川面をヒラヒラと群飛して交尾と産卵を済ませて一瞬の命を終えます。水生の幼虫から飛翔する成虫になるところはトンボに似ており、成虫の命のはかなさはセミに似ていますね。カゲロウは1日の命なのでセミよりはるかにはかないのですが。



 そして、今回の話題であるウスバカゲロウは、じつはカゲロウ目の昆虫とは異なる脈翅目に属します。カゲロウ目の昆虫と脈翅目の昆虫は、成虫の形態がよく似ています。幼虫はアリジゴクという名で有名で、砂地にすり鉢状のトラップを作り、アリや小さな地虫を陥れて捕食します。そして脈翅目の仲間は蛹のプロセスを持つ完全変態する内翅類に含まれます。
 内翅類のほとんどの昆虫では、幼虫が体に対して極小の脚を持つイモムシ状であるのに対し、ウスバカゲロウの幼虫であるアリジゴクは、けっこうしっかりした長い脚を持ちます。このことから、脈翅目の仲間が内翅類の仲間でも原始的で、外翅類に近い虫であることが解ります。


 ↑ 頭胸部クローズアップ

 ウスバカゲロウの成虫は何を食っているのでしょう。フラフラとした下手くそな飛び方を見ていると、他の虫を捕食できそうにもありませんし、草を食むような口器もなさそうです。食事は摂らず、繁殖活動のみに短命を捧げるものと思われます。カゲロウ目のように1日の命ってことはなさそうですが。
 ウスバカゲロウの飛び方は不安定で、高速で長距離を飛ぶとは思えません。近くで羽化したのでしょう。ということは、うちの近所にアリジゴクが棲んでるってことです。ご近所を下を向いて歩いていると、アリジゴクの巣を見つけることができるかもです。
 じつは数年前に飼ってたんですけどね、アリジゴク。その時に撮った写真がパソコン内で迷子になっちまい、ここに掲載することができないんですよ、残念なことに。小さな虫ですが大きな大腮を持ち太っちょのクワガタムシみたいで可愛いです。

ツヤアオクサカメムシ

2013/10/23


 10月下旬ともなれば、虫たちの季節もそろそろ終わりです。家の近所ではスズメバチの死骸がチラホラし、勤務先の駅のホームにはカメムシが今頃になって大発生です。昆虫類は年によって大発生します。中でもカメムシは毎年たくさん出現する方ですが、今年のアオクサ君はとくに大量です。夏場はそれほど感じなかったのですが、ここ数日は季節の終わりに電車見物でもしようとでも言うようにホームに集まっています。正しくはホームの照明に集まっているのですが。そして人に踏まれてたくさんの死骸をさらし、駅員さんである筆者がそれをせっせと掃くわけです。駅の掃除は昆虫とヤモリの観察の時間でもあります。



 カメムシは、そもそも大量発生する昆虫です。たくさんいても驚かないのですが、今年はとくに多いです。昭和末期には国内のあちこちでカメムシの大発生が話題になったこともありましたが、これはカメムシたちが都会化の波に強い証拠でしょう。洗濯物にでっかいクサギカメムシなんかがくっついてて、ゲッなんて思いをすることは、筆者が幼少の頃よりも増えました。むかしはマルカメムシやシラホシカメムシといった小型のカメムシとよく遊んだものですが、最近はけっこう大物が増えました。



 ところで、アオクサカメムシって、名前の由来はなんなのでしょう。緑色をした虫はしばしばアオと表現されるので、体色を表していることはまちがいないですが、クサが草を表しているのか臭を表しているのか。いじめると腹部から強烈な悪臭を放ちます。カメムシ独特の臭いですが、なんだか少し植物質の感じがするところが、青臭いとも言えます。青臭いの国語的な意味合いは大人げないですけど。青臭いカメムシってことでしょうか? 青くて臭いカメムシってことですか。それとも草色の青カメムシ?
 青くて臭いが正解な気がしますが、カメムシは多くの種類が臭いので、本種に限ってわざわざ臭いカメムシと呼称しなくてもよいでしょうに。となるとまた正解が判らなくなります。ま、どうでもいいですけど。
 今頃の時期の大発生の話しに戻ります。そろそろ秋が深まって来ようかという時期に、こうして灯火に集まってくるのは、夜の舞踏会で異性にめぐり合うためではなく、越冬場所を求めてくるのだと思われます。成虫で越冬しますよ、こいつ。よ
 テントウムシみたいに集団で越冬するのかどうだかは、筆者はご存じないのですが、これだけの数を目撃すると、その様子が想像できます。なんだかヤですね、青臭君の集団越冬の図って。緑色で綺麗なんですけどね。

 なお、本項は最初アオクサカメムシとして記述していましたが、2013/07/30 に、カメムシについて詳しい方からコメントを
いただき、アオクサカメムシではなくツヤアオクサカメムシであることが判明し、訂正させていただきました。

 よっくん様、貴重な情報ありがとうございました。

背に3つの白い点がない。
触覚の黒色部が2ヶ所しかない。
ツヤがある。
アオクサカメムシではなく、ツヤアオカメムシです。
アオクサカメムシ、ツヤアオカメムシ、ミナミアオカメムシはよく似ていて間違えやすいです。

テナガオオキバキマネ

2013/11/07



大阪府四條畷市の生駒山系にある“府民の森”で、すごい虫を見つけました。

 上から見た形状は、頭部、前背板、翅鞘に分かれることから、鞘翅目(甲虫類)に分類される昆虫であることは判るのですが、さらに下層の分類については不明です。前方に大きく伸長した大腮は、クワガタムシの♂を思わせますが、カミキリムシの仲間にも見えます。それよりも科の同定の決めてとなる触角が見当たりません。触角が退化して痕跡状になる昆虫など聞いたことがありません。代わりに前肢が異状に長く、これが触角の代行を担うと言えなくはないですが、それでは感覚器としてあまりに不適当です。また、尾端に一対の尾肢あるいは尾部付属器らしき器官がありますが、甲虫類ではわずかにハネカクシ類に見られるもので、それにしたところでこれほど顕著ではありません。


 何よりも驚かされるのは、その擬態の程度のすさまじさです。頭胸部はサクラの小枝そっくりで、菌類や虫コブの付着さえ伺えます。また翅鞘はサクラの若い樹皮にそっくりです。6肢も枝様になり、左前肢の腿節には大きな虫コブがあります。これは紅葉落葉樹に寄生するものです。

 前肢の脛節前縁にある突起は外方に著しく突出し、これも枝を思わせます。フ節は8節ありますが、各節の境界は不明瞭になりこれまた枝そっくりです。中後肢にはフ節がありません。おそらく羽化後まもなく脱落してしまうのでしょう。樹上生活者でフ節が脱落するのも変です。もっともそのおかげでいっそう枝に似た肢の形状を呈するのですが。

 大腮基部は頭部の頭頂付近に位置し、極めて小さな頭部を覆う感じになります。そしてあろうことか、この大腮も樹皮に擬態しています。大腮はその大きさとは裏腹に薄く弱々しく形骸的です。そして脆い大腮を支えるようにし、口髭が非常識なほど肥大し硬質化しています。これも見ようによっては、枝の折れた部分に見えなくはありません。

 動きは緩慢で、強い外部刺激がないかぎりじっとしています。全長は120mmていどでかなり大型です。こいつがいったい何者なのか、どなたか適切な回答をお願いします。



 自然観察眼の鋭いみなさんなら、一目でお判りですね。こんな虫もちろん存在しません。これは府民の森・森の工作室で僕が作った駄虫です。天然サクラ100%ですから擬態していて当然です。サクラの木は枯れ枝であっても柔軟性に富み、けっこう丈夫で加工しやすいです。

 反省点は、触角に試行錯誤してけっきょく作らなかったこと、6肢が寝すぎていて横からみると格好悪いことです。これ以上うまく作るには僕の技術が付いて行かないので反省してもしょうがないです。
作ったのは1年くらい前じゃなかったかなぁ。作っているうちに最初の思惑とはちがう虫になっていってけっこう笑えます。昆虫の形態の特徴さえ把握していればたいへんお手軽に作れますし、皆さんも挑戦してみて下さい。

1999年12月記



アリジゴク

2013/11/07


 別項で記述したウスバカゲロウの幼虫編です。この虫の幼虫は、アリジゴクの異名を持ちその方が有名ではないでしょうか。砂地にすり鉢状の巣というかトラップを作り、その底に隠れて小さな虫が落ちてくるのを待ち構える肉食昆虫です。



2004年の夏から飼育しましたが、この虫の飼育は難しくなく、観察しやすい容器にサラサラの乾いた砂を入れてやり、そこへ虫を置いておけば勝手に巣を作ります。砂の深さは体長10mm(大腮を除く)ていどの幼虫の場合で5cmていどはあった方がよいでしょう。


 ↑ アリジゴクの腹面。長い肢があるが歩行は緩慢で、歩き回るよりも砂を掘削するのに適しているようだ。

 砂の上に幼虫を置くと、しばらくすると砂に潜り始めます。この時お尻から潜って行くのが特徴ですね。巣作りよりもとりあえず身を隠す方が先決といった感じですね。身を隠したあとは下へ下へと掘り進み、砂を肢で蹴りだしながら器用にすり鉢状の巣を作って行きます。巣が完成すれば、その底の部分に身を隠し、獲物が落ちてくるのをひたすら待ちます。
 アリジゴクに巣を作らせるには、砂の質と湿度調整が難しく、これが適切でないと巣を作れずにうろうろするばかりだと、あるサイトで読んだことがありますが、筆者のところではとりあえずきめ細かい乾いた砂を用意してやれば巣を作っていました。


 ↑ 砂に潜ろうとしているところ。尾端から後ろ向きに潜って行く。

 アリジゴクを採集するのは難しくありません。巣を見つけたら、中央部に向かってストローで息を吹きかけ、その部分の砂を吹き飛ばすと、やがて幼虫が露出します。巣は雨の当たらない乾いたところに作られ、多数の巣が不規則に並んでいることが多いです。狙い目は山間にある神社やお寺ですかね。その軒下の雨の当たらない砂地を探すと見つかることが多いです。
 アリジゴクは3年ばかりを幼虫の姿で過ごします。小さな幼虫を採集した場合は、羽化まで長い歳月を付き合わされることになります。


 ↑ ミルワームを捕らえたところ。アリジゴク本人は砂中にいて姿は見えないが、ミルワームを挟み込んでいる大腮の先が見える。

 アリジゴクの食事はいささかユニークで、大腮で捕らえた獲物に消化液を注入して肉を溶かし、それをチルチルと吸うらしいです。吸いつくした脱け殻は巣の外に放り投げるとか。
 獲物の体液から水分を吸収するので、水を飲みません。かつては糞尿もしないと言われていましたが、微量の尿の排泄はあるようです。また、蛹化の際に貯まっていた糞を硬い固まりにして排泄すると何かで読んだことがあります。
 飢えや乾きにたいへん強く、長期間食べ物が得られないと、腹部がしぼんで小さくなりますが、死ぬこともなくひたすら獲物の到来を待っています。じつに気が長いです。もちろん絶食があまりに長期に渡ると餓死しますが。飼育下では逆に過剰なほど餌に恵まれることの方が多いのではないでしょうか。その場合はやはり成長も促され早期に大きくなります。それで加令が早まり幼虫の期間が短縮されるのかどうかは未確認ですが、短縮できる可能性はあると思います。


 ↑ アリジゴクの体表は細かな毛で覆われていて砂が付きやすい。いつも砂まみれだ。

 アリジゴクの餌は、アリンコとは限りません。小さな虫ならなんでも良いですが、運動能力の高い肉食の虫だとアリジゴクのがご馳走に転じてしまうでしょうし、ゾウムシのように硬質のものも持て余してしまいます。ダンゴムシがもっとも理想的ですね。あと小鳥用に市販されているミルワームは入手もストックも簡単で便利です。
 獲物が射程範囲に来ると、アリジゴクは狙いを定めて砂を飛ばします。獲物の虫は砂まみれになるわ、巣の斜面を流れ落ちる砂に足をとられるわで、ジタバタともがくわけですが、やがてコロコロと巣の底に落下し、アリジゴクの強靱な大腮ではさみ込まれてしまいます。
 この様子を動画に撮ってネットにアップされている方もありますが、筆者の場合はなかなかこれを観察することができませんでした。獲物を巣の縁に置いてやると、アリジゴクが気づく前に獲物の方が巣の底に勝手に転がり落ちてしまうことも多く、うまく巣の縁にとどまっていてもアリジゴクの方がそれに気づかないのかなにもしなかったり。不器用な飼育者と笑ってください。


 ↑ 飼育下での巣の様子。

 筆者の経験では、1つの浅いプラケースに10頭ばかりのアリジゴクを同居させていましたが、問題なく暮らしていました。巣は不規則に点在し、隣り合ったすがひじょうに近い場合でもとくに問題は起きませんでした。
 ところが、1つの容器に複数を同居させると共食いが発生すると聞いたこともあります。自然界では、多くの場合群生状態で1つのところに多数の巣が並んでいますから、飼育下で共食いが生じるというのは意外でしたが、飼育下と自然環境ではどうしてもかなり条件がちがいますから、何が起きるかは判りません。不安な方は個別に飼育する方が良いでしょう。
 小さな虫ですが、いろいろ面白い生態を見せてくれるので、ぜひ飼ってみてください。

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