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毒虫

 世間には生きて行くために毒を持つ動物がたくさん存在します。そしてそれらの多くがたいへん魅力的だったりするんですよね、難儀なことに。子供の頃に、科学雑誌でサソリの写真とその生態の記事を目にしたとき、すっかりとりこになってしまいました。なんてカッコイイ生き物なんだろう。サソリすげー、サソリ飼いたい。そしてその思いは大人になってから実現するわけですが、実際に飼ってみるとますます大好きになりました。
 同じく子供の頃、山にハイキングにいってでっかいムカデと遭遇した時も感動しました。ゴム製のムカデのオモチャがいかにリアルな出来かを思い知りました。オモチャ職人すげぇ。ムカデも大好きになりました。高校生の時、山でスズメバチに遭遇してその美しさに魅了され、大型ピンセットでわしっとつかむとそのまま連れて帰りました。
 爬虫類を飼うようになってから、タランチュラを日本に入れた業者の人が幼虫を何匹か送ってくれ、それは10年以上経った今でもご健在で、最初はテントウムシほどだったのが今は手のひらサイズです。
 ネットで知り合った方が、毒ヘビをあれこれ送ってくれました。それはそれは魅力的でした。ある造形作家の方は、孵化したばかりのマムシを小さなタッパーに入れ、封筒に詰めて送ってくれました。残念ながら毒ヘビは特定動物に指定されており、飼育するには市区長の許可が要ります。それでなくても万一うちの温室が災害などで破損して脱走したら、ご近所で毒ヘビ被害が発生します。ひじょうに残念ですが、毒ヘビの飼育は断念せざるを得ませんでした。
 同様に、現在は多くのサソリの仲間が飼育に制限のある特定動物に指定されており、ショップにも入って来なくなりました。最近になってサソリに興味を持つようになった人たちは、毒性の強いサソリ及び近縁種として分類させる種の実物を見る機会が日本ではなくなってしまいました。多くの魅力的なサソリが飼育禁止になった背景には、家庭で繁殖した幼体がゾロゾロ逃げ出してご近所の方々を震撼させるといった事件があったそうですが、実際のところサソリはそれほど危険な生き物でもありません。
 それに比べるとムカデはかなり危険です。飛びかかってきます。噛まれると傷口がパンパンに腫れ上がります。体が弱かったりすると致命的な負傷になるかも知れません。ところが外国のムカデの輸入には今のところ規制はないようです。
 行政のルールの矛盾には首を傾げたくなることもたくさんありますが、それを批判しても仕方ありません。大切なことは、周囲の人に迷惑をかけないってことです。そして迷惑をかけないということは、他人を傷病の危険にさらさないということだけではありません。精神衛生上の被害ということにも配慮が必要です。小さな生まれたてのサソリがゾロゾロ這い回ったからといって、それに触れた人が負傷したり命の危険にさらされるわけではありません。蚊ほどの危険もありません。しかし毒を持った虫が野に放たれ、それが自然繁殖でもしようものなら、そう考えるだけで一般の人にとっては心理的なダメージです。そのことを、変な虫を飼う者はしっかりと自覚する必要があります。
 余談ですが、喫煙は筆者の若い頃は男性なら当たり前で、成人男性のくわえたばこは日常的な光景でした。ところが、たばこの健康被害について情報が充実してくると、多くの人たちが身近で喫煙されることを脅威に感じるようになりました。喫煙は心理的暴力なのです。ポイ捨てだって大したゴミではありません。でもそれが山火事の原因にもなるわけですし、他のゴミよりも危険で不潔なものと認識されるようになりました。物質的な公害よりも精神衛生上の被害の方がじつは問題なのです。子供たちは大人に失望しますし、身勝手を覚えるかもしれません。
 筆者にとっては、サソリもクモもムカデも、大好きな隣人であり飼育観察の対象です。そうした生き物が飼育動物として家にいるってだけで心が充足します。この魅力的で可愛い生き物たちが多くの人々から忌み嫌われていることを考えると悲しくなります。でもそれは筆者の勝手であって、この思いを主張したり他の人々に理解を求めたりするべきではないでしょう。それでも彼らは実在します。実在する以上、多くのナチュラリストが興味を持ちます。世間一般が忌み嫌う彼らの持つ毒性も、その特異な進化がもたらした独特の形態と生態となって、我々を魅了してやまないのです。

デザートヘアリースコーピオン

2013/09/25


 奇虫や毒虫のマニアはたくさんいます。それらに詳しい人たちの中では、世界3大奇虫は、ウデムシ、ヒヨケムシ、サソリモドキなのだそうです。でもサソリだって充分に奇虫ですよ。尾を背中の方に曲げて、その先端が自分の顔の前に届き、そいつで敵や獲物に一撃を食らわせるなんて、神のデザインセンスには驚かされます。そしてそれがまたカッコイイ。サソリが奇虫と呼ばれないのは、世界中にひじょうに数多くの種類が棲息していてそれほど珍しくないからなのでしょう。
 サソリは筆者が幼少の頃からの憧れの動物でした。それが日本にも輸入されショップで入手できるようになったのは大変ありがたいことです。その背景にはオオクワガタブーム、そこから派生した外国産のクワガタムシやカブトムシのブームというものがあったわけで、これら輸入昆虫のブレイクに続いて珍虫奇虫がいろいろと紹介されるようになり、数多くのサソリたちも日本のショップにやってまいりました。
 筆者もこれまでに20種類ばかりのサソリを入手し、何種類かが繁殖して、現在もうちで生まれた幼虫を育てています。サソリの中には、人を死に至らしめるほどの毒性を持つものもいるのですが、ほとんどの種はそれほど危険な動物ではありません。かなり毒性の高い種でも、飼育にそれほど危険がつきまとうわけではありません。けっこうおっとりしていて、とくに昼間はボーッとしており、取り扱いも容易です。刺されて負傷しないように注意するのがそれほど難しいわけではないのです。これは毒グモと呼ばれるタランチュラなどもそうなのですが、実際に飼ってみると取り扱いに窮するようなことはありません。よほど刺激しない限り、ほんとにボーッとしています。
 でも、世間一般の風評はまるで悪魔のように言われておりますし、その危険性を誇大に表現する方が刺激的で興味深いわけで、サソリなんぞ飼っていますと、殺人生物兵器をストックしているように思われます。まぁ、種によっては高い殺傷能力があるので、安全性をアピールするのも虚しいのですけどね。毒虫が安全だと言って変わり者呼ばわりされるのも不本意ですし。筆者はいたって平凡な、没個性的な絵に描いたような一般人ですから、念のため。
 そして2005年の外来生物法の改正により、サソリの輸入が規制されると決まった時には悲しかったですね。飼育下で増えたサソリがゾロゾロ逃げ出してご近所を震撼させるなんて事件が、この改正の背景にあったと聞きます。飼育が禁止されれば、すでに飼育中のものも処分しなければ犯罪になります。でも実際に、特定外来生物の指定を受けたのはサソリの中でも、強い毒性の種を含むキョクトウサソリ科のみで、多くの種が除外され、筆者もすべてのサソリを失うことはまぬがれました。

 そして、無事に規制対象から除外され、今も輸入のあるサソリのうち、大型でプロポーションも美しく見た目にも危険そうなのが、本種デザートヘアリースコーピオンです。本当に綺麗でかっこいいサソリです。コガネサソリの仲間ほどの大きさはありませんが、飴色というかバター色というか、鮮やかな黄色のボディが神秘的です。コガネサソリの仲間が黒くてザリガニみたいな外観なのに対して、本種はじつに優美です。この黄色は砂漠の環境に適応した色あいなのでしょう。デザートとは砂漠の意味です。
 見た目はいかにも強毒そうですが、毒性はそれほどではありません。ただし刺されれば腫れと激痛を伴うらしいです。
 現在も流通しているサソリの中でも有名で、流通量も多く入手しやすいです。丈夫で長持ち、たいへん飼いやすいのですが、本種の飼育下での繁殖はあまり聞いたことがありません。上手く飼うと10年以上は生きるので、繁殖に挑戦するより長く親しむタイプの生き物ですね。
 広めのケージで小枝やシェルターといった地形効果を作ってやれば、ペアの飼育も可能です。筆者も長らくペアで飼ってました。共食い等の事故もありませんでした。雌雄が交配行動の際に見せるサソリダンスも観察できましたが、繁殖には到りませんでした。
 有名で、マニアにとってはありふれたサソリですが、筆者は大好きな種です。亜種や近縁種もいるようなので、同じ名前で入手してもじつはちがっていたってこともあるかもです。サソリは種類はたくさんいますが、見た目がひじょうに似ているものが多くて、種の同定が困難です。日本の専門店における種の同定は、多くの場合ひじょうに正確ですが、誤認が皆無というわけにはゆきません。
 サソリが一般に流通するようになってから、もうかなりの歳月になりますが、新種や流通していない種もまだかなりいると思われます。分類について詳しく解説されている文献やサイトもなかなか見つかりません。なので、種の同定についても正確を求めても虚しいかななんて考えています。亜種が見つかったり、亜種や近縁種が統合されたりってことも今後もあるでしょうし。




 ↑ 飼育下でサソリダンスと呼ばれる交配行動をとるペア。(下2枚も)





 ↑ ソノラデザートヘアリースコーピオン(ブラックトランクデザートヘアリー)と呼ばれる近縁種。ソノラ砂漠に棲息するデザートヘアリーの地域亜種ではないのだろうか。

スズメバチ

2013/10/11


 スズメバチは、筆者の住んでいるところでは秋の風物詩です。春でも夏でも山に行けば活発に活動しているのですが、毎年秋が近づくと住宅地にも飛んできます。この虫はオオスズメバチなんて誇張した呼び名でも知られ、刺されるとショック死することもあり恐ろしい危険動物とされていますが、住宅地に飛んでくるのはたいてい単独で、これが人に危害を加えることはあまりないと思われます。迷子にでもなったのでしょうか。単独飛行で住宅地をうろつく意味が判りません。
 秋のスズメバチはかなり獰猛です。冬に備えて生活基盤を固めようってことでしょうか、他のスズメバチやミツバチの巣を襲撃して蛹や幼虫を奪取したりといった侵略行為に及びます。ふだんあまり来ない住宅地にもしばしば姿を現すのは、生活圏拡大のための偵察行動でしょうか。女王は10月頃から羽化し、越冬ののち翌年春から新しい巣作りを始めます。
 黄色と黒のバンド模様がたいへん美しく、飛翔の際の羽音が迫力があって、筆者にとっては大好きな昆虫の1つです。カッコイイですよねスズメバチ。有毒動物であるというだけで、一般的に嫌われ者扱いされていますが、毒を持っていることとカッコイイことは別ですよね。


 ↑ 飼育中の様子。

 2005年に筆者は、この虫をたくさん集めて飼ってみました。スズメバチの採集は、それほど困難ではありません。巣の近くや集団行動しているところには近づかない方が良いですが、単独行動している個体は、捕虫網があれば容易に捕獲できます。また林でカナブンたちと一緒に樹液を舐めている個体は、それに没頭して長い時間動かないでいることが多く、大型のピンセットで前胸部を挟んで捕まえることができます。捕獲したスズメバチを持ち帰り用の容器に移したり、容器からケージに移したりする際には刺されないように注意が必要です。かなり毒性が強い虫で、刺されると命の危険にさらされることもあります。すでに1度刺された経験のある人は、3度目はないと思った方が良いでしょう。2度目でショック死する場合が多いからです。1度刺されると体に抗体ができて、急性アレルギー反応が1度目よりも強烈に生じ、それでショック死するそうです。
 スズメバチによる人の死亡例は、他の動物(毒ヘビやクマなど)の被害を上回るとも言われています。彼らの巣の近くではとくに好戦的で、巣に近づくことはなにより危険です。巣の近くではないところでも、騒ぎ立てたり追い払おうとしたりすると攻撃してきます。毒を空中散布してそれで仲間を呼び寄せるとも言われています。刺すのはメスだけですが、働きバチと言われるスズメバチ社会の最多構成員がメスです、難儀なことに。


 ↑ スズメバチの頭部前面。これが戦士の顔だ。

 飼育下では、単独飼育の場合はおとなしいことが多かったです。昆虫ゼリーと飲み水とジャンボミルワーム(生き虫)を与えていました。複数飼育にすると、とたんに獰猛さを見せます。飼育者が近づくと一斉にカチカチという警告音を発します。聞いていてひじょうに緊張感のある音です。すごい迫力で、戦士の貫祿のようなものを感じます。自然界でこの音を聞いた場合は、早々にその場を立ち去らねばなりません。彼らは集団でそしてひじょうに迅速かつ正確に行動します。
 複数飼育では、新入りの追加が難しくなります。すでに同居している者同士でコミュニティが形成されているのでしょうか。新入りは寄ってたかって攻撃を受け、殺されてしまいます。
 スズメバチを長期間飼育することは不可能です。働きバチの寿命自体が1ヶ月ばかりしかないそうですから。筆者のところでは約40日生きていた個体もいましたから、飼育下でのんびりしていると案外長生きできるのかも知れませんね。
 餌はよく食べますが、生き虫は巣に持ちかえるために肉団子にするだけで、自分は食べないとも聞きます。飼育下ではつまり与えても無駄だと。筆者が飼っていたスズメバチたちもジャンボミルワームを捕獲して噛み砕いていましたが、食べているのか噛み砕いているだけなのかは確認できませんでした。昆虫ゼリーはたいへん有効ですね。
 餌の交換にはたいへん苦労します。多くの昆虫はケージのフタを開けても、出口ができたことに気づかないことが多いのですが、スズメバチはフタを開けたとたんに殺到します。飼育者を攻撃目標と定めて躊躇なく行動するからでしょうか。怖いですね。安全なメンテナンス方法は見つけられませんでした。まぁ、幸い刺されたことはなかったですが。


 ↑ ジャンボミルワームを捕獲したところ。

 綺麗でかっこよく魅力的な虫なのですが、飼育には危険が伴ううえに長期飼育ができないので、飼育の甲斐があまりありません。残念です。また、他人に飼育を勧めることもできません。自分が刺されなくてもにがしたりしたらご近所の人たちを危険にさらすことになりますし。
 スズメバチのサイズですが、働きバチで30〜40mm、女王では40〜45mmていどの体長があります。筆者が飼っていた個体の中に43mmもあるやつがいました。これは山口県在住の某氏が採集して送ってくれたものですが、10月という時期を考えると女王だったかも知れませんね。

タランチュラとは

2013/10/24


 タランチュラという大型の毒グモは、ずいぶんむかしから有名で、筆者が子供の頃から映画やテレビに登場していました。にぎりこぶしほどもある胴体に小指ほどの太さの脚を備えたクモで、サソリと並んでひじょうに危険な生き物であると知らされてまいりました。
 じつはタランチュラというクモがいるわけではありませんで、クモ目オオツチグモ科に属する800種類ばかりいるクモの総称なんですね。同科のクモは、北アメリカ南西部から南アメリカ、アジアの熱帯地方、地中海地方、アフリカ、オセアニアなどのいずれも熱帯域に分布しています。
 恐ろしい毒グモというイメージは、ドラマなどに登場する際に誇張表現され、それが広まったものと思われます。多くの大型種は温厚で、気の荒いヤツはやや小型のものが多いようです。また、毒グモと言われるものの高い殺傷能力を持つわけではなく、ゴケグモの仲間のような神経毒を有するわけでもないようです。アメリカ大陸に棲息するタランチュラは、かぎ針状の体毛を飛ばして自衛し、この毛に触れると痛かゆい目にあいます。クモの仲間の常として体外消化を行なうので、鋭い大腮で噛まれると、傷口から消化液が混入するので、患部が腫れ上がります。強酸性の消化液を注入されるわけだから、そりゃ腫れますって。タランチュラの仲間はサイズがでかく、その分大腮も大きいので、人間の皮膚もやすやすと食い破ることができ、それで消化液を注入されることが多いわけで、たのクモたちと同様、特別に毒を持っているわけではありません。毒性の点から言うと、神経毒を持つゴケグモの仲間の方が危険だと思われますが、ゴケグモはちっこいうえにそれほど獰猛なクモでもないので、噛まれて負傷することも少ないと思います。
 そんなわけで、これを読んでいただいた読者の方々には、タランチュラはけっこう可愛い動物なんだという認識を持ってくだされば嬉しいな、と思います。でもまぁ、触ったりはしない方が良いですけど。日本の人家に出現するクモのように、壁をシャカシャカ走ったり、糸を使って天上から降りてきたりなんて不気味なことはあまりやらない子たちです。


 ↑ ゴライアスバードイーター。まだ子供。
 ↑ 成熟したゴライアスバードイーター。↓



 今ではペットとして日本でも大々的に流通していますが、彼らは4つのグループに大別されます。ツリースパイダーは、南米とアジアに棲む樹上性のクモ。バードイーターは、南北アメリカに棲む地上性のクモ。バブーンはアフリカ産で地中に巣を作るものが多い。アースタイガーはアジアに棲むクモで、地中性から半樹上性でたいへん気の荒いものが多い。
 この中で筆者が大好きなのはバードイーターです。和訳すると鳥食いというすごいネーミングです。小鳥を襲うほどの大型種がたくさん含まれ、量感のある体型と太い脚がなかなかの迫力です。実際に小鳥を襲うかどうかは知りませんが、ヒナ鳥が巣から落ちてたまたまバードイーターに遭遇した場合、彼はやすやすとヒナ鳥を捕食するでしょう。


 ↑ ゴライアスピンクフットバードイーター。淡いピンクの脚先がおしゃれ。

 タランチュラはたいへん成長が早いです。子グモを入手することができれば、その目覚ましい成長ぶりを観察できます。成熟したオスは短命ですが、メスは長命です。筆者のところでも2001年に子グモを入手したものが現在も元気にしています。飼育は簡単です。最大級のものでも、それほど動き回らないので30cmていどのプラケースに浅い水入れを用意してやり、時おり生き虫を入れてやればよいだけです。生き虫でなくても冷凍マウスなどでも飼育できると聞いたことがありますが、筆者は試したことがありません。熱帯の生き物なので冬場は加温が必要です。
 繁殖は、国内でも手がけられていますが、容易ではないようです。筆者ははなっから挑戦する気がありません。
 メスを入手できれば、ひじょうに丈夫で長生きするのですが、唐突に死んでしまうことが少なくありません。これはサソリやウデムシ、サソリモドキ、ムカデといった他の毒虫でも同じです。筆者の飼い方になにか問題があるのかもしれませんが。
 日本でも多数のタランチュラが比較的容易に入手できます。興味をお持ちの方はぜひ飼ってみてください。できれば子グモから育てることをお勧めします。


 ↑ ベネズエランブラックバードイーター。腹部の毛がハゲているのは脱皮前の兆候。


 ↑ ブラジリアンブラック&ホワイトバードイーター。


 ↑ サンタレムピンクヘアードバードイーター。↓


グリーンボトムブルータランチュラ

2013/10/24


 バードイーター好きの筆者が唯一飼育したツリースパイダーです。ベネズエラ産です。大きさよりも美しさで勝負です。といっても日本のクモたちに比べるとずっと大型ですけどね。



 ↑ 3cm径の試験管に入っている幼虫。

 岡山県で爬虫類ショップを営む権威の方に送っていただきました。なにせ日本で最初にタランチュラを飼育動物として輸入し、日本タランチュラ協会を設立した方ですから権威ですよ。タランチュラの魅力を筆者に教えてくださったのも彼。それまで筆者はクモ類にはあまり興味がありませんでした。これはおそらく筆者が幼少の頃、自らを昆虫少年と自称しており、クモ類は昆虫ではないことから
意識的に遠ざけており、クモ類についてあまり知識がなかったせいです、たぶん。


 ↑ 15cmのプラケースに移した幼虫。
 2001年の6月に幼虫を入手したのですが、すでに頭胴長で2cm以上に育っていたので、数日して小さなプラケースに移してやりました。
 ツリースパイダーは、日本のコガネグモのような鮮やかな巣を作りません。オオツチグモの仲間は進化的には原始的な部類です。糸を綿状に張りめぐらせてその中に潜みます。せっかくの美しいクモが、プラケースを外から見ると白い綿まみれのみすぼらしい光景になっちまいます。試験管にいるときはそうでもないのですが、広い入れ物に移したとたんに見る見るうちに白く曇らせてしまいます。


 ↑ 自作したハンモックの中で脱皮中。

 グリーンボトムブルータランチュラの名は、緑のボトムの青いタランチュラという意味ですが、オレンジボトムブルーの方が適切なような気がします。ボトム(下履き)つまり腹部はどう見てもグリーンに見えません。


 ↑ 幼体のうちは腹部がトラ縞だが、成長するにつれてオレンジの毛で覆われる。


 ↑ コオロギを捕食するところ。乳白色の消化液の分泌が見える。


 ツリースパイダーが、飼育下でケージ内を白綿まみれにしてしまうのは、その方が安心できるからでしょうね。窮屈な試験管に入っている時の方がじつは安心感があるのかもしれません。広いケージで飼う場合ほど糸は張りません。
 また、一見して無造作な綿まみれ状態は、クモにとっては階層構造になった整理された巣なのかもしれません。クモはこの中を自由に動き回っています。


 ↑ 一見無造作に張りめぐらされた巣は、じつはクモにとっては整然とした階層構造なのかもしれない。


 ↑ 幼虫は約1ヶ月で成熟した姿になった。腹部はオレンジの毛で覆われている。


 タランチュラは、よく水を飲むと言われています。なので水入れを常設したいところですが、ツリースパイダーにはそれも無駄なようです。水入れはすぐに白綿で覆われてしまい、水入れとして機能しなくなります。餌となる生き虫が保湿のために敷いた土に潜り込むのを防ぐために餌皿に入れるようにしても、これも無駄になります。水は、スプレーで巣を濡らして与え、餌は生き虫を巣に中に投じて与えるしかありません。


 ↑ 餌入れを用意しても、白綿で埋められてしまう。

 本種のようにメタリックな輝きを呈する動物が、自然界で鳥などに食べ尽くされてしまわないのは、熱帯雨林の照葉樹の間ではこの方が目立たないのだと、日本タランチュラ協会の設立者は言います。ということは、本種は昼行性が強いのでしょうか。じっさい明るい場所で飼育温度が高い時ほど体色は鮮やかで、調子も良いようです。しかし高温にしても多湿は禁物です。日中に大量に水をスプレーしたり、ケージの通気性が悪かったりすると、クモを蒸し焼きにしてしまいます。本種に限ってはとくに乾燥ぎみで飼う方が良いような気がします。


 ↑ 頭部のクローズアップ。

ボリビアンサーモンピンクバードイーター

2013/10/25


 バードイーターですよ。ボリビア(南米)産の大型種です。その名のとおりサーモンピンクの毛で覆われますが、からだ全体をピンクで覆うのではなく、黒っぽい体をピンクの毛で縁取るって感じです。それでもなかなか綺麗です。成長すると、各脚に白毛で形成されたストライプ模様が目立つようになりなかなかオシャレです。
 比較的温厚なクモですが、成熟すると前脚4本を振り上げて威嚇ポーズをとるようになります。カッコイイです。



 ↑ 3cm系の試験管に入っている幼虫。

 生後間もないCBの幼虫を入手しました。頭胴長十数ミリの小さな個体を2頭。みずみずしい体がいかにも幼虫って感じです。これが最大級のタランチュラとはとても思えません。
 試験管の中で何度か脱皮してスクスクと育ち、試験管が手狭になってきたところで、プラケースに移しました。


 ↑ 試験管の中で脱皮している様子。上が脱け殻で下が脱皮直後の幼虫。


 ↑ 試験管から出した少し育った幼虫。こうして見ると、日本の普通のクモと変わらない。


 バードイーターは地上性(徘徊性)のクモなので、飼育レイアウトは土を敷いて浅い水入れを用意するだけ。試験管より広めのケージに移されてしばらくは落ち着きなく歩き回っていましたが、その内ケージの隅でじっとしているようになり、夜間に巣穴を掘って潜り込みました。
 ケージの中に偏平な石などを置いてやると、その下を堀り、水入れをひっくり返されたりしなくて良いです。


 ↑ バードイーターの少し育った幼虫の飼育レイアウト。


 ↑ 幼虫の掘った巣穴をケージの側面から観たところ。黄色矢印が入口付近、緑矢印が巣のいちばん奥、ピンク矢印のところに幼虫がいる。


 飼育を始めてから約2ヶ月で、体長が倍くらいに成長しました。サーモンピンクの体毛が顕著になり、ずいぶん貫祿が出てきました。
 あるとき脱皮中のところを見つけました。半分旧皮から出たところで動かずに横たわっていたので、脱皮の途中で死んでしまったのかと思いました。そのままにしておくと休み休み何時間もかけて脱皮を行ないました。地表でまったく無防備な状態で脱皮しました。


 ↑ 脱皮中のところを手にとってみた。まったく動かないので最初は死んでしまったのかと思った。


 ↑ 脱皮直後の様子。脚や体がまだ柔らかく、腹部がたいへん小さい。


 ↑ 飼育開始から約2ヶ月で体長が約2倍になり、風格が出てきた。


 成長したボリビア君は、巣穴に潜り込むことが少なくなりました。地表に薄く糸のマットを敷き、その上にボーッとしています。この方がじっくり観察できて良いですね。
 そして飼育を開始してから13ヶ月で、頭胴長が8cmていどになりました。でかいです。頭に太くて大きな触肢が突き出ていますから、さらに1cmくらい頭胴長が大きく見えます。レッグスパンつまり8本の歩脚を拡げた大きさは15cmくらいになりました。




 ↑ ケージのフタを開けると飛び出してきた。

 充分に成長したバードイーターは、30cmていどの偏平なプラケースに浅く土を敷き、水入れを置いてやれば飼育レイアウトはOKです。土に潜り込むこともなく、地表にうっすらと糸でマットを敷いて、昼間はその上でボーッとしています。メンテナンスのためにケージのフタを開けると、驚いて飛び出してくることもありますが、基本的に夜行性なので、そのまま逃げ去ることもあまりありません。昼間はとにかくボーッとしていて扱いやすいです。





 手を近づけても襲ってきません、触ると怒りますけど。上の写真のように体色が薄くなってくると脱皮してからずいぶん時間が経過してるってことです。節足動物は成長過程で外骨格である外皮を何度も脱ぎ捨てます。昆虫の場合は成熟すると脱皮はそれでおしまいですが、クモの場合はその後も脱皮は繰り返されます。脱皮の周期は幼虫時代に比べて長くなりますが、それでも年に何度か脱皮を繰り返します。
 昆虫以外をほとんど飼育したことがなかった筆者にとって、生きている限り続くクモの脱皮というのは、目新しいものでした。クモ類にとって脱皮は、爬虫類のそれと似たところがあります。すなわち老朽化した外皮を代謝によって刷新するわけです。爬虫類の場合は薄い皮質が脱落するわけですが、節足動物にとって外皮は骨格でもあるので、爬虫類のように容易なものではありません。体が大きなものほど脱皮には時間と体力を要しますし、脱皮前は新しい体が形成される間かなり長期にわたり採餌できないし、脱皮後も外皮が固まるまで絶食が続きます。また、脱ぎ捨てられた旧皮は、クモ丸まる1匹分の形状を保っています。

メキシカンレッドニータランチュラ

2013/10/25


 たいへん有名で美しいバードイーターです。成長すると脚の間接部分が朱色の毛で覆われ、朱と黒のバンド模様になります。メキシコ産です。温厚な性格ではありますが、危険を感じると後脚で腹部をこすって毒毛を飛ばします。微細な毒毛が空中を舞い、これが肌に触れると痛かゆい思いをします。筆者も最初はこれに悩まされましだが、いつしか慣れちまったというか、ほとんど気にならなくなりました。バードイーターはたいてい毒毛飛ばしをするのですが、本種はとくによくするような気がします。これさえなければタランチュラ初心者にも絶対お勧めなんですが。



 ↑ 3cm径の試験管の中のベビーたち。体長数ミリの生後間もない幼虫たちだ。

 バードイーターの場合、メキシカンレッドニーバードイーターのように最後にタランチュラと付けないことが多いです。他のグループと区別するためですかね。バブーンやアースタイガーでも、まぁそうですか……。でも、筆者の経験では本種に関しては、メキシカンレッドニータランチュラと呼ぶケースが多い気がします。この点について専門家に尋ねても、明確な答えは返って来ないでしょう。オオツチグモを熟知する人たちにとって、そんなことはどうでもよいことです。グループ分けを明確にしたければバードイーター呼べばよいし、業者が商品としてタランチュラの名を強調したければそう呼べば良いのです。メキシカンレッドニーは古くから有名で、かつてはグループ分けはそれほど重視されておらず、その名残でタランチュラと呼称されることが多いのかもしれません。その後、棲息地域毎にオオツチグモの特性がかなり明確に分けられることが判り、グループ分けが重視されるようになったのでしょうね。


 ↑ 試験管の中で脱皮するみずみずしい幼虫。

 メキシカンレッドニーもかなり大型になるタランチュラです。したがって幼虫の成長速度もかなり早いです。何度も脱皮を繰り返し、みずみずしい小さなクモから、黒とオレンジのコントラストが明瞭な美しいタランチュラへと成長します。


 ↑ 20mmていどに成長した脱皮直後の個体。脚は全体が薄いオレンジの毛で覆われバンド模様にならない。右に脱け殻が見える。


 ↑ 体が白っぽく、腹部の毛がかなり剥奪してしまっている。脱皮前の兆候だ。


 成長して、脚が美しいバンド模様になるのに1年近くかかりました。頭胴長は5cmほどです。まだ成長しますが、この色あいを見ますと性成熟しているように思えます。クモは性成熟して成体になってからも成長が続くようです。


 ↑ 頭胸部のクローズアップ。



 ↑ 美しいタランチュラに成長した。ハンドリングしてみた。ここまで成長するのに約1年、まだまだ大きくなるが今後の成長は遅い。


 バードイーターは、ツリースパイダーのようにたくさんの糸を吐いてケージを白綿で覆ってしまうようなことはありません。また、成長するに従ってあまり土を掘らなくなるのでケージを覗くとちゃんと姿が見えるので、飼ってる感があります。それでもまったく糸を吐かないわけではなく、地表をうっすらとモヤのような白いものが覆っている感じになります。自分の居場所を糸のカーペットで覆い、侵入者があると振動がすぐに伝わるようになっているという説明を聞いたことがありますが、真偽のほどは定かではありません。より進化的で高度な巣を作るクモでは、巣に獲物がかかると巣の振動でそれを感知しますから、タランチュラのカーペットにもその機能があるのかもしれません。



 上の写真では、自分の居場所の周りだけを小さくカーペットで覆っていますが、これは脱皮の準備だと思われます。普段はケージのほぼ全体を糸で覆っています。飼育環境に慣れたバードイーターは、ケージを自分が独占している洞穴だと認識しているようです。
 大きく成長したタランチュラの脱皮は一仕事です。爬虫類のように簡単に旧皮が脱落するのではありません。何時間もかけて少しずつ脱皮します。その間、タランチュラは仰向けになったまままるで死んだような状態になり、時々わずかに動いて、ゆっくりゆっくり旧皮から新しい体を引き出して行くのです。タランチュラにとって脱皮前後の数日間は、ひじょうに無防備で危険な状態です。その間に外敵が侵入して来ないことを祈るしかありません。飼育下では外敵の心配はありませんね。


 ↑ 頭胸部腹面(裏面)のクローズアップ。口器の大きく鋭い大腮が恐ろしげだ。これに噛まれ、傷口から消化液が入ると、患部は大きく腫れ上がる。

 タランチュラは、オスは短命だがメスはひじょうに長生きすると言われています。オスはメスと出会って交配を終えると、それで死んでしまうとも。では、メスと出会わなければいくらか長生きするのでしょうか? 筆者は3頭の本種を幼虫から育て、そのうち1頭は生後4年で他人に譲り、1頭は生後6年で死去しました。残る1頭は生後14年が経過した2013年現在も元気にしています。今では脱皮のスタンスも10ヶ月からそれ以上になります。存命中の個体がメスなのは間違いないでしょうが、6年間生きた個体はどうだったのでしょう。タランチュラの雌雄の見分け方は慣れればそれほど難しくないらしく、オスの前肢にあるフックで見分けられるそうです。あるいはオスの触肢の膨らみでも見分けられるとか。自分の飼っていた個体の性別も判らなかったなどと言うと、また専門家の方に叱られそうですね。



ウザンバラオレンジバブーン

2013/10/31


 バブーンです。獰猛です。たいへん怒りん坊で、危険を感じると前肢を振り上げて威嚇ポーズをとり、敵を至近距離に感じたら飛びかかってきます。慣れてない人は取り扱いに窮するかもしれません。でもすぐに慣れると思いますが。小さな生き物は、獰猛なことよりも逃げ足が速くてすばしこいことの方が取り扱いが大変です。その点では、バブーンは、威嚇ポーズのまま固まっていたり、飛びかかる動作を繰り返したりし、逃げに転じるのはその後なので、世話するのにそれほど困難はありません。襲われて噛まれないように注意していればよいだけです。慣れれば、この威嚇ポーズが愛おしくなります。


 ↑ 黄色く輝くたいへん美しいクモであるが、バブーンはひじょうに獰猛だ。ただ、それが飼育者への脅威になることはなく、むしろ可愛いとさえ思える。


 ↑ 威嚇ポーズをとっているところ。本種を飼えば飽きるほどこれを見られる。


 バブーンは、アフリカ産のクモですが、地中性から半樹上性であること、ひじょうに気が荒いものが多いことなどは、アジア産のアースタイガーと共通します。筆者が本種を購入した際、クモは小さなプリンカップに入っていましたが、カップの底に糸で白い小山を作ってその上に陣取っていました。長期飼育にはどう見ても狭そうです。ほとんど身動きがとれません。販売者のアドバイスで、土をたっぷり入れたプラケースを用意し、クモが地中に巣を作れるようにしました。
 ところが実際には土を掘ることはまったくせず、地表を白い綿ですっかり埋めつくしてしまい、その中に隠れてしまったのです。飼育ケースは土とその上の白綿しか見えず、なんとも寂しい飼育状況になりました。これではツリースパイダーと同じです。


 ↑ プリンカップに入っている時の様子。フタに張りついて腹面を見せてくれたところを撮った。

 ケージの中を白綿のような巣で覆い尽くすことができれば、それで彼にとって安住の地となったのでしょう。あえて土を掘り返して巣作りする労をするまでもないというわけです。バブーンは完全に地中性の生き物というわけでもなく、樹上生活にも適応できるようです。樹上の方が餌である虫の収穫も多いでしょうし。もしかすると筆者が幼虫から飼育していたバードイーターのように、小さなうちは地中を好み、成長するに従って穴を掘らなくなるのかもしれません。


 ↑ 頭部のクロースアップ。


 ↑ 白綿で埋めつくされたプラケースを開けたところ。


 ↑ 巣の中の本種。


 ずいぶん後になって思ったのですが、クモを飼育するのに広めのケージというのはむしろ適さないのかもしれません。お店では窮屈なプリンカップの中で長い間過ごしていたそうですが、その方がむしろクモにとって安心感があったのではないでしょうか。身を落ち着かせるために足場にマウントを築いたもののプリンカップを白綿で埋めてしまうこともなく、クモが観察しやすい状態が維持されていました。
 ところが、広いプラケースに移したとたんに、彼は大急ぎでケース内を白綿で埋めつくしてしまったわけです。
 筆者が幼虫から育てていたツリースパイダーも、狭い試験管にいる時は巣を作りませんでした。成長して大きなケージに移したとたんに、ケージ内を白綿で埋めてしまったのです。
 今度、バブーンやツリースパイダーを飼うことがあれば、窮屈な入れ物で飼ってみようかと考えています。それでは可哀そうというのは人間本意の考え方であって、クモにとってはむしろ落ち着ける環境かもしれません。


 ↑ 怒ってますねぇ。




キイロスズメバチ

2013/11/26


 山岳地帯に住んでいる筆者のところでは、いちおう住宅街であるものの秋になると大きなスズメバチをたくさん目にするようになります。冬支度に忙しい秋のスズメバチは普段にも増して獰猛であるとも言われますが、筆者の家の近くに飛来するスズメバチはほとんどが単独飛行で、むやみに攻撃してくることはありません。
 俗に言うオオスズメバチは、そのサイズからよく目立ちよく目にする気がするのですが、実際のところはキイロスズメバチの方が出会う確率は多いと思われます。スズメバチの仲間は、オオスズメバチが例外的にデカイですが、その他の種は20〜30mmていどのものが普通です。キイロスズメバチも働きバチで20mm前後、女王でも30mm以下といったところです。
 2年ほど前になりますが、昆虫採集と標本作りを生業にされている方から、本種の巣を譲っていただき、自室に飾っているのですが、今日はそいつを観察してみることにします。


 ↑ キイロスズメバチの巣。幅が約30cmくらい。

 上の写真の人の手と比してどれくらいの規模の巣であるかがお判りいただけると思いますが、小さな虫がよくこれだけのものを作るものですね。ハチやアリの属する膜翅目の昆虫類の社会性や高度な巣作りには感銘を受けるばかりです。


 ↑ 巣の中ほどにある出入り口。数千匹のハチがこの1つの穴から出入りする。

 キイロスズメバチは、スズメバチの仲間のうちでも最も立派な巣を作ります。中には幅50cmを越えるものもあり、ひじょうに多くの幼虫がこの中で育てられ、巣立ってゆきます。
 彼らは肉食昆虫ですが、捕獲した虫は自らは食せず肉団子にして巣に持ち帰り幼虫に与えます。高タンパクを得て丸まると育った幼虫が分泌する栄養液が成虫たちの直接的な餌になります。筆者はオオスズメバチを飼ったことがありますが、虫を与えても肉団子にするだけで食べることはありません。同時に与えていた昆虫ゼリーが飼育下での餌になっていました。スズメバチの仲間は野生でも樹液や花の蜜を舐めますが、ミツバチの仲間のようにそれを巣に持ち帰って幼虫の餌にすることはありません。
 キイロスズメバチはひじょうに攻撃性が強く、人の刺傷被害は本種がスズメバチの仲間ではトップです。オオスズメバチは山岳地帯に多いですが、本種は平野部や人里近くにも棲息します。キイロスズメバチの危険を回避するには、その巣に近づかないことに尽きますが、彼らはけっこう目立つところに巣を作るので、幼虫育成中の現役の巣を見つけたら近づかないことです。
 ちなみにオオスズメバチは、樹木のウロの中や土中に営巣し、外観が目立たないので、ハイキング等でまとまった数のハチを見かけたら危険地帯に接近していると思った方がよいでしょう。多くの羽音を間近で聞いたり、カチカチという威嚇音を耳にした場合は、最大級の危険が間近に迫っています。


 ↑ 巣の外観は二枚貝を重ね合わせたようなたいへん美しい模様になる。

 キイロスズメバチの巣は、たいへん美しい模様がほどこされており、この虫の美的センスに感銘を受けるわけですが、筆者にはこれが二枚貝をたくさん重ね合わせたように、あるいは鯉のぼりのウロコ模様に見えます。彼らは、古くなった樹木を粉状に噛み砕き、唾液で練って建材にします。これを器用に貼り合わせながら巣を建造して行くわけですが、美しい模様は材料に色のちがいによって再現されます。もしも働きバチたちがすべて同じ材質を建材に使用したならば、巣は単調な外観になってしまうわけですが、高度な建築家にして才能豊かな芸術家である彼らは、単調で退屈な巣を作るようなことはしません。


 ↑ 巣の出入り口のクローズアップ。

 1つの巣の中では数千匹から大きなものでは1万匹以上の幼虫が育てられていますが、これだけの規模のものであってもひじょうに軽量にできていて、吊り下げ式であっても重みで落下してしまうことはありません。軽量にして強度を保つために、外装の二枚貝模様は重要なのでしょう。外装は多数の二枚貝状のパーツを幾重かに重ね合わせて形成され、外装部分に多数の空気の層を作っています。このことは巣の強度と軽量化を実現すると共に、巣の内部の保温にも大いに貢献しているはずです。風雨や直射日光を避けた立地に建造するにしても、巣の内部は密閉空間です。夏場の高温を巣の内部に伝えにくく、かつ内部の熱の放射にも優れた構造であることが伺えます。また夏の終わりから著しく気温が変化するようになっても、外装の空気の層が温度変化を巣の内部に持ち込みにくくしています。
 このような高度な設計思想と、大規模な行動物を小さな虫が建造してしまう技術を、生き物の進化の過程で彼らが本能として獲得した事実に驚嘆するしかありません。彼らはどのようなチームワークを以て、このような建造物を造ってしまうのでしょうね。


 ↑ 巣と働きバチたち。撮影には標本を使用している。

 そしてさらに驚くべきは、球形をした外部構造の中に、ハニカム構造の巣が層を成す、数階建てのマンションが作られていることです。ハニカム構造の名は耳にしたことがあると思いますが、まさしくハチの巣構造のことで、正六角柱を敷きつめた構造物を言います。ハチの巣の実物を目にしたことがない方でも、写真や映像で見たことはあるでしょう。正六角形は隙間なく敷きつめることができ、六角柱の内部に充分な広さを確保することもできるうえに、全体の構造として高い強度を発揮します。じつに合理性の高い建造物であるわけです。その六角柱の内部が育児室になっており、1室に1頭ずつ幼虫が収容されています。下向きに口を開けた巣の作りは、ハニカム構造が露出しているアシナガバチ等の巣と同様ですが、これが幾重にも層を成し、マンションになっているわけです。
 

 ↑ 働きバチの顔。

 スズメバチの仲間は、1頭の女王バチが初期の原始的な巣を作って最初の働きバチたちを育て上げ、1シーズンのうちに数千匹から1万匹の大所帯の社会を作り上げてしまうわけですが、同様に大規模な巣を作るミツバチの仲間とちがって、球状の外装を持つ、たいへん手の込んだ巣を作るに至った理由を考えてみましょう。
 ミツバチの巣もハニカム構造は同じなのですが、大がかりな巣でもスズメバチのようなマンション構造にはならず、マンションを横倒しにしたようなもの、すなわち巣板と呼ばれる単層構造が数枚横並びになるものを作ります。彼らはスズメバチのような外装を作らず、ものの隙間などを利用して巣板を風雨や外敵から守っています。
 これに比べると、スズメバチの巣は、外部構造が風雨や温度変化から巣板を保護するうえに、出入り口が1つしかないので外敵の侵入からも安全性が高いです。また吊り下げ式の場合は、近隣の構造物から独立的で、そのことも外敵を遠ざけるのに役立っていますし、近隣の構造が熱や湿度を帯びていてもそれを寄せつけません。まさにもっとも進化した巣だと言えるでしょう。
 さすがにオオスズメバチになると、個々の虫のサイズが大きすぎて吊り下げ式の巣を作るのは厳しいので物の隙間を利用しますが、他のスズメバチの仲間は吊り下げ式を採用しており、その中でキイロスズメバチが最も大規模の巣を作ります。


 ↑ 上段2頭はスズメバチ。左の個体は長い腹部から女王と思われる。下段4頭がキイロスズメバチのオスバチおよび働きバチ。写真のスズメバチの女王で実寸が約40mm。


 ↑ 左がオスバチ、触角が黒くて大きい。右が働きバチ。


 さて、巣の内部構造を実際に観察したいところですが、撮影に協力してくれた息子と話し合った結果、解体したり一部を切除すると球状の構造物が維持できなくなり、けっきょくゴミになっちまうのではないかということになり、それを断念しました。巣は紙でできているように軽く、持っているだけで壊してしまいそうです。振ってみるとゴゾゴゾと音がします。巣自体が少々臭いますし、解体するとさらに悪臭を放ちそうですし、イヤなものが出てきそうです。
 代わりに、ネット上にアップされている画像を以下に借用することにしました。スズメバチの巣の駆除のプロの方が管理されているサイトから、許可を得て掲載させていただいたものですが、見事なマンション構造ですね。幼虫が顔を覗かせている室、白いフタがされ成虫の羽化を待つ室、すでに巣立った後の室などが伺えます。


画像提供「スズメバチを研究した、三重県山里の生け捕りスズメバチハンター」
http://www.8hiro.com/index.html


 同サイトでは、スズメバチの駆除に関する依頼や情報のほか、スズメバチの仲間の生態についても詳しく紹介され、画像や動画も豊富で、スズメバチのことがひじょうによく解ります。ぜひ参照してみてください。

スズメバチいろいろ

2013/11/30


 スズメバチは、筆者が大好きな昆虫の1つであるわけですが、この虫との思い出は断片的なものがほとんどで、いつの場合も予期せぬ時にバッタリ遭遇するといった感じです。オオスズメバチと俗に呼ばれる、いわゆるスズメバチは働きバチでも40mmていどのものがざらにいて、独特の羽音を響かせて筆者を感銘させてくれるわけですが、有名な球状の巨大な巣は、じつはスズメバチのものではなく、キイロスズメバチという小型種の仕事であったことを知ったのは数年前のことでした。
 筆者が山野でそれを見かける場合は決まってすでに使われていない廃屋で、巣の主が登場なさることはなかったのですが、あの見事な造形がスズメバチよりずっと小さなハチの仕業であると知った時はひじょうにショックでした。
 ハチの生態に詳しくない人たちは、あの吊り下げ型球状巣をオオスズメバチのものであると信じているかと思いますが、あれを建造するハチはキイロスズメバチというオオスズメバチの半分くらいの大きさのハチです。
 そうなのか、それならスズメバチとその仲間について少々勉強してみるか、ということでネットでいろいろ調べてみたのですが、最も参考になったのはスズメバチ駆除の業者さんのサイトでした。そこに記載されているスズメバチの恐ろしさについて読む内に、このハチに魅了され、あまつさえ捕獲して飼育に及んだことさえある自分を愚かに感じました。でもカッコイイし。
 さらに調べるうちに昆虫を採集して標本作りをしている方とメールをやりとりし、日本の様々なスズメバチの標本を集めることができました。収集には数年を要しましたが、今頃ようやく標本を整理して箱に納めたところです。
 今回はその標本の写真と併せて、日本に棲息するスズメバチ3属16種について簡単な解説を試みます。なお、生態や形態についてはスズメバチ駆除業者のサイトや学術サイトのお世話になりました。

◆Vespa(スズメバチ属7種)

 ↑ スズメバチ Vespa mandarinia
 女王バチ40〜48mm、働きバチ27〜43mm、オスバチ35〜40mm。オオスズメバチとも呼ばれ、働きバチでもひじょうに大型なものが多く、野外で目撃するとよく目立ちます。数千匹を育てる大型の巣を作りますが、木のウロや半土中といった閉塞環境に営巣することが多いです。人間などが巣に近づくとカチカチという威嚇音を鳴らしますが、これを聞いたときにはすでに臨戦態勢で襲われる確率はたいへん高いです。林に棲む蛾の幼虫からコガネムシ、カミキリムシなどを捕獲して幼虫の餌にしますが、秋口から他のスズメバチやミツバチの巣を襲うようになります。


 ↑ キイロスズメバチ Vespa simillima
 女王バチ25〜28mm、働きバチ17〜24mm、オスバチ約28mm。比較的開放的なところに大規模な巣を作り、数千から一万匹の幼虫を育てます。成虫の活動期間も長いうえに、山岳地から都市化が進んだところにまで進出しています。攻撃性が高く、刺傷被害の最も多い種。オオスズメバチよりも気が荒いような気がします。北海道には亜種のケブカスズメバチが棲息しています。


 ↑ ヒメスズメバチ Vespa ducalis
 女王、働きバチ、オスバチの体長の差異はあまりなく、25〜35mmていど。オオスズメバチに次いで大型のハチですが、巣の規模は数百頭の幼虫を育てるていどと小さく、攻撃性も高くないようです。また食性がアシナガバチ限定で、もっぱらアシナガバチの巣を襲って幼虫の餌にします。


 ↑ コガタスズメバチ Vespa analis
 女王バチ25〜30mm、働きバチ22〜28mm、オスバチ25mm〜27mm。北海道から九州南部の島々にまで分布し、都市化の進んだところにまで進出しています。女王が単独で作る初期巣はトックリを逆さにしたような形状で、巣の最下部が出入り口です。働きバチが巣立ってくるとボール状の外皮のある巣に発展させます。千頭ほどの幼虫を育てます。


 ↑ ツマグロスズメバチ Vespa affinis
 女王25〜28mm、働きバチ20〜22mmでオスバチもほぼ同等。宮古島以南の島々に棲息し、コガタスズメバチ同様に女王が単独で作る初期巣はトックリを逆さにした形状です。その後働きバチが羽化してくるとボール状の外皮を持つ巣に発展させますが、千から4千頭の幼虫を育てます。小さな虫ならなんでも捕獲するほか、果実にも訪れます。

 モンスズメバチ Vespa crabro
 女王バチ28〜30mm、働きバチ21〜28mmでオスバチもほぼ同等。コガタスズメバチと似ていますが、両複眼の間にある単眼の周囲が黒いこと、腹部の模様が波形になることで区別できます。低山地に棲息し、閉塞環境に営巣しますが、今では減少傾向にあるそうです。

 チャイロスズメバチ Vespa dybowskii
 女王バチ30mm、働きバチ17〜24mm、オスバチ20mm〜27mm。キイロスズメバチと同じくらいの小型のスズメバチです。赤茶色の頭胸部に黒っぽい腹部をしています。女王は単身で他のスズメバチの小型種の巣に侵入してそこの女王を殺し、繁殖を始めます。女王を殺された働きバチたちはそれとは知らずに本種の幼虫を育て、やがて本種の働きバチが宿主の働きバチと入れ代わってゆきます。

◆Vespula(クロスズメバチ属5種)

 ↑ クロスズメバチ Vespula flaviceps
 女王バチ15mm、働きバチ10〜12mm、オスバチ12〜14mm。小さくて黒いスズメバチですが、北海道から九州まで広く分布し、低山地から平地にかけてよく見かけます。閉塞環境の主に土中に営巣し、その規模は大きく1万頭以上の幼虫を育てることもあります。小さな昆虫を捕獲します。


 ↑ ツヤクロスズメバチ Vespula rufa
 女王バチ16mm前後、働きバチ12〜14mm、オスバチ13〜17mm。北海道から九州まで広く分布していますが、本州以南では高山に棲む傾向があります。閉塞環境に営巣し、主に土中に小規模の巣を作ります。幼虫の数は数百から千頭ていどです。


 ↑ キオビクロスズメバチ Vespula vulgaris
 女王バチ18mmていど、働きバチ10〜15mm、オスバチ約15mm。中部地方以北から北海道に棲息しますが、個体数は多くありません。閉塞環境の主に土中に長球形の巣を作り、その中で数千から1万頭近くの幼虫を育てます。

 シダクロスズメバチ Vespula shidai
 女王バチ15〜19mm、働きバチ10〜11mm、オスバチ12mm〜14mmと女王が大きくよく目立ちます。クロスズメバチよりも山地寄りに多く棲息します。クロスズメバチよりは棲息個体数が少ないと思われますが、営巣規模はより大きくなる傾向にあります。

 ヤドリスズメバチ Vespula austriaca
 バチ16〜18mm、オスバチ11〜16mm。働きバチは存在しない。女王はツヤクロスズメバチの巣に侵入してその女王を殺し、オスと女王を産んでツヤクロスズメバチの働きバチに育てさせます。ヤドリスズメバチの寄生により、ツヤクロスズメバチは繁殖能力を失うので、本種はツヤクロスズメバチの働きバチが充分に育った巣を見つけて侵入することが重要になります。

◆Dolichovespula(ホオナガスズメバチ属4種)

 ↑ キオビホオナガスズメバチ Dolichovespula media
 王バチ19〜22mm、働きバチ14〜16mm、オスバチ15〜20mm。本州では山岳地帯に多く北海道では低地や都市化の進んだところにも棲息しています。北方に適応した種のようです。外皮のある吊り下げ型の巣を作り、数百から千頭以上の幼虫を育てます。オオスズメバチのように腹部は明瞭なバンド模様になりその見かけに似つかわしく高い攻撃性を有しています。

 シロオビホオナガスズメバチ Dolichovespula pacifica
 女王バチ16〜18mm、働きバチ11〜14mm、オスバチ13〜17mm。本州、四国、北海道の山地に棲息しています。巣は外皮のある吊り下げ型で、数百から千頭以上の幼虫を育てます。黒い体に白いバンド模様があります。攻撃性はそれほど強くありません。

 ニッポンホオナガスズメバチ Dolichovespula saxonica
 女王バチ16mm〜18mm、働きバチ11〜14mm、オスバチ13〜17mm。北海道の低山地から山岳地帯に棲息し、道東ではかなり普通に見られる種です。開放的なところに営巣することが多く、外皮のある吊り下げ型の巣を作り、数百から2千頭ていどの幼虫を育てます。全体的に光沢のある体をしています。

 ヤドリホオナガスズメバチ Dolichovespula adulterina
 女王バチ16〜18mm、オスバチ14〜18mm。北海道と本州の山岳地帯に見られる希少種です。女王は単独でシロオビホオナガスズメバチの巣に侵入し、女王を殺して繁殖を始め、宿主の働きバチに幼虫を育てさせます。自ら働きバチを産むことはないので、宿主の働きバチが充分な個体数存在している必要があります。


 ↑↓ スズメバチの標本の比較。


 以上、きわめて簡単にスズメバチについて見てまいりましたが、この昆虫の高度な社会性や他のハチを襲ったり寄生したりといった興味深い側面がお判りいただけると思います。大型のスズメバチは寄生の習性は持たないものの、他のハチを襲撃することは珍しくなく、他種への依存度は高いと言えるでしょう。特定のハチを専門に襲う偏食性のスズメバチや寄生性の種は、生活史を宿主のそれに合わせる必要があり、生活様式も限定的になります。
 いずれの種も外皮のある高度な巣を作りますが、中には巣棚の育房が露出しているものや不規則な形状のものなど、未熟な感じの巣を作るものもいます。スズメバチ属、クロスズメバチ属は木質感のある巣を作りますが、ホオナガスズメバチ属は白っぽい和紙のような外皮の巣を作ります。
 ハチ、アリを含む昆虫綱膜翅目の虫たちは、ひじょうに高い社会性を有することで有名ですが、その中でもスズメバチは、アリと並んで高度で大規模な社会性を見せます。ご存じのようにアリの仲間は翅が退化し、完全な地上性の昆虫に進化していますが、女王アリとオスアリは羽化してしばらく飛翔能力があり、繁殖範囲を拡げるのに役立てています。アリが地下に広大な洞窟巣を作り、女王を中心にした巨大な社会を形成するのに対して、ハチの仲間は高い飛翔能力にものを言わせ、広範囲な生活圏をもちます。また、腹部に毒針を持ち外敵や獲物の動きを止めるのもハチの特性です。スズメバチやアシナガバチ、ミツバチの仲間は育児室を主体とした大がかりな巣を作成しますが、ジガバチやヤドリバチのように営巣せず単独で生きている種も少なくありません。
 アリは、膜翅目の仲間から羽を退化させ地上性の生き物へと進化したと思われますが、その際に腹部の毒針も消失したのでしょうか。あるいはアリが分化した後にハチたちに毒針が発達したのでしょうか。ハチの攻撃性と毒針は、巣を守るのになくてはならない武器になっていますが、アリたちは巣を地表から隠蔽している分、ハチほどの攻撃性や毒針といった武器は要らないのかもしれませんね。もっともアリの多くの仲間が、他の虫や他のアリの巣を襲撃する習性を持ち、地表というステージに限ってはひじょうに好戦的な虫ではあります。
 ハチは、行動範囲が広いですから、様々な食料を狩猟や採集によって獲得して巣に運び、巣の機能はもっぱら育児用になっていますが、アリの場合は自分たちの足だけで策餌するので、狩猟や採集だけでは思うような収穫が上がらないこともあるでしょう。それを補うためにアリには、シジミチョウの幼虫の飼育、キノコの栽培、ポットアリによる滋養の備蓄といった高度でユニークな生態を持つものがいます。またアブラムシの群れを天敵のテントウシから守り、栄養液をもらうという行動は、巣外での放牧ですね。
 ちなみにハチたちは、幼虫にせっせと餌を運んで育児しつつ、幼虫が分泌する栄養液が主食になっています。ハチの幼虫はポットバチの役割も担っているわけです。
 小さな虫たちの高度な社会生活には目を見張る者がありますね。

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索引

目次
無脊椎 等脚類 クモ サソリ
多足類 無翅類 直翅類 半翅類
膜翅類 鱗翅類 鞘翅類 コガネ
クワガタ 魚類 両生類 カメ・ワニ
トカゲ ヘビ 鳥類 哺乳類 絶滅
庭草 雑草 高山 飼育 ヒト
□ 飼育動物データ


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