毒虫
世間には生きて行くために毒を持つ動物がたくさん存在します。そしてそれらの多くがたいへん魅力的だったりするんですよね、難儀なことに。子供の頃に、科学雑誌でサソリの写真とその生態の記事を目にしたとき、すっかりとりこになってしまいました。なんてカッコイイ生き物なんだろう。サソリすげー、サソリ飼いたい。そしてその思いは大人になってから実現するわけですが、実際に飼ってみるとますます大好きになりました。
同じく子供の頃、山にハイキングにいってでっかいムカデと遭遇した時も感動しました。ゴム製のムカデのオモチャがいかにリアルな出来かを思い知りました。オモチャ職人すげぇ。ムカデも大好きになりました。高校生の時、山でスズメバチに遭遇してその美しさに魅了され、大型ピンセットでわしっとつかむとそのまま連れて帰りました。
爬虫類を飼うようになってから、タランチュラを日本に入れた業者の人が幼虫を何匹か送ってくれ、それは10年以上経った今でもご健在で、最初はテントウムシほどだったのが今は手のひらサイズです。
ネットで知り合った方が、毒ヘビをあれこれ送ってくれました。それはそれは魅力的でした。ある造形作家の方は、孵化したばかりのマムシを小さなタッパーに入れ、封筒に詰めて送ってくれました。残念ながら毒ヘビは特定動物に指定されており、飼育するには市区長の許可が要ります。それでなくても万一うちの温室が災害などで破損して脱走したら、ご近所で毒ヘビ被害が発生します。ひじょうに残念ですが、毒ヘビの飼育は断念せざるを得ませんでした。
同様に、現在は多くのサソリの仲間が飼育に制限のある特定動物に指定されており、ショップにも入って来なくなりました。最近になってサソリに興味を持つようになった人たちは、毒性の強いサソリ及び近縁種として分類させる種の実物を見る機会が日本ではなくなってしまいました。多くの魅力的なサソリが飼育禁止になった背景には、家庭で繁殖した幼体がゾロゾロ逃げ出してご近所の方々を震撼させるといった事件があったそうですが、実際のところサソリはそれほど危険な生き物でもありません。
それに比べるとムカデはかなり危険です。飛びかかってきます。噛まれると傷口がパンパンに腫れ上がります。体が弱かったりすると致命的な負傷になるかも知れません。ところが外国のムカデの輸入には今のところ規制はないようです。
行政のルールの矛盾には首を傾げたくなることもたくさんありますが、それを批判しても仕方ありません。大切なことは、周囲の人に迷惑をかけないってことです。そして迷惑をかけないということは、他人を傷病の危険にさらさないということだけではありません。精神衛生上の被害ということにも配慮が必要です。小さな生まれたてのサソリがゾロゾロ這い回ったからといって、それに触れた人が負傷したり命の危険にさらされるわけではありません。蚊ほどの危険もありません。しかし毒を持った虫が野に放たれ、それが自然繁殖でもしようものなら、そう考えるだけで一般の人にとっては心理的なダメージです。そのことを、変な虫を飼う者はしっかりと自覚する必要があります。
余談ですが、喫煙は筆者の若い頃は男性なら当たり前で、成人男性のくわえたばこは日常的な光景でした。ところが、たばこの健康被害について情報が充実してくると、多くの人たちが身近で喫煙されることを脅威に感じるようになりました。喫煙は心理的暴力なのです。ポイ捨てだって大したゴミではありません。でもそれが山火事の原因にもなるわけですし、他のゴミよりも危険で不潔なものと認識されるようになりました。物質的な公害よりも精神衛生上の被害の方がじつは問題なのです。子供たちは大人に失望しますし、身勝手を覚えるかもしれません。
筆者にとっては、サソリもクモもムカデも、大好きな隣人であり飼育観察の対象です。そうした生き物が飼育動物として家にいるってだけで心が充足します。この魅力的で可愛い生き物たちが多くの人々から忌み嫌われていることを考えると悲しくなります。でもそれは筆者の勝手であって、この思いを主張したり他の人々に理解を求めたりするべきではないでしょう。それでも彼らは実在します。実在する以上、多くのナチュラリストが興味を持ちます。世間一般が忌み嫌う彼らの持つ毒性も、その特異な進化がもたらした独特の形態と生態となって、我々を魅了してやまないのです。
同じく子供の頃、山にハイキングにいってでっかいムカデと遭遇した時も感動しました。ゴム製のムカデのオモチャがいかにリアルな出来かを思い知りました。オモチャ職人すげぇ。ムカデも大好きになりました。高校生の時、山でスズメバチに遭遇してその美しさに魅了され、大型ピンセットでわしっとつかむとそのまま連れて帰りました。
爬虫類を飼うようになってから、タランチュラを日本に入れた業者の人が幼虫を何匹か送ってくれ、それは10年以上経った今でもご健在で、最初はテントウムシほどだったのが今は手のひらサイズです。
ネットで知り合った方が、毒ヘビをあれこれ送ってくれました。それはそれは魅力的でした。ある造形作家の方は、孵化したばかりのマムシを小さなタッパーに入れ、封筒に詰めて送ってくれました。残念ながら毒ヘビは特定動物に指定されており、飼育するには市区長の許可が要ります。それでなくても万一うちの温室が災害などで破損して脱走したら、ご近所で毒ヘビ被害が発生します。ひじょうに残念ですが、毒ヘビの飼育は断念せざるを得ませんでした。
同様に、現在は多くのサソリの仲間が飼育に制限のある特定動物に指定されており、ショップにも入って来なくなりました。最近になってサソリに興味を持つようになった人たちは、毒性の強いサソリ及び近縁種として分類させる種の実物を見る機会が日本ではなくなってしまいました。多くの魅力的なサソリが飼育禁止になった背景には、家庭で繁殖した幼体がゾロゾロ逃げ出してご近所の方々を震撼させるといった事件があったそうですが、実際のところサソリはそれほど危険な生き物でもありません。
それに比べるとムカデはかなり危険です。飛びかかってきます。噛まれると傷口がパンパンに腫れ上がります。体が弱かったりすると致命的な負傷になるかも知れません。ところが外国のムカデの輸入には今のところ規制はないようです。
行政のルールの矛盾には首を傾げたくなることもたくさんありますが、それを批判しても仕方ありません。大切なことは、周囲の人に迷惑をかけないってことです。そして迷惑をかけないということは、他人を傷病の危険にさらさないということだけではありません。精神衛生上の被害ということにも配慮が必要です。小さな生まれたてのサソリがゾロゾロ這い回ったからといって、それに触れた人が負傷したり命の危険にさらされるわけではありません。蚊ほどの危険もありません。しかし毒を持った虫が野に放たれ、それが自然繁殖でもしようものなら、そう考えるだけで一般の人にとっては心理的なダメージです。そのことを、変な虫を飼う者はしっかりと自覚する必要があります。
余談ですが、喫煙は筆者の若い頃は男性なら当たり前で、成人男性のくわえたばこは日常的な光景でした。ところが、たばこの健康被害について情報が充実してくると、多くの人たちが身近で喫煙されることを脅威に感じるようになりました。喫煙は心理的暴力なのです。ポイ捨てだって大したゴミではありません。でもそれが山火事の原因にもなるわけですし、他のゴミよりも危険で不潔なものと認識されるようになりました。物質的な公害よりも精神衛生上の被害の方がじつは問題なのです。子供たちは大人に失望しますし、身勝手を覚えるかもしれません。
筆者にとっては、サソリもクモもムカデも、大好きな隣人であり飼育観察の対象です。そうした生き物が飼育動物として家にいるってだけで心が充足します。この魅力的で可愛い生き物たちが多くの人々から忌み嫌われていることを考えると悲しくなります。でもそれは筆者の勝手であって、この思いを主張したり他の人々に理解を求めたりするべきではないでしょう。それでも彼らは実在します。実在する以上、多くのナチュラリストが興味を持ちます。世間一般が忌み嫌う彼らの持つ毒性も、その特異な進化がもたらした独特の形態と生態となって、我々を魅了してやまないのです。