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無脊椎たち

 海水魚を扱うショップやガイドブックを見ていますと、様々な魚のカテゴリーに加えて無脊椎動物とか無脊椎類といった言葉が出ています。何かと覗いてみると、エビやイソギンチャク、ヒトデ、ケヤリムシ、クラゲ、貝類など要するに魚類意外の動物がこれに含まれます。上手いこと言うなぁと感心してしまいました。確かに魚類以外は無脊椎動物で、魚類以外と表現するよりずっとスマートです。
 筆者は、あまのじゃくではないのでこの表現が素直に好きです。余談ですが古いタイプの硬骨魚類を古代魚と呼ぶのも気に入ってます。そういうわけで、ここでもそれを遣わせてもらいます。ただし、海水魚飼育の経験がない筆者としては、淡水性あるいは水辺の無脊椎動物をここで記述することにしましょ。
 筆者がこれまで飼ってきた無脊椎たちと言えば、エビやカニ、ヤドカリなどの甲殻類に、貝類、ウズムシくらいかなぁ。貝類でもデンデンムシは雑虫に分けたいし、オカダンゴムシは甲殻類だけどやはり雑虫行きです。水棲昆虫は水辺の生き物ですが雑虫でしょう。生物分類学にうるさい方が顔をしかめそうですが、分類学なんて生き物たちにとってはクソ食らえなわけで、ダンゴムシがヌマエビと同じに飼えるわけがないし、カタツムリだって水中生活は無理です。ヤゴは水棲昆虫ですが成虫になるとトンボだせ。オタマジャクシもしかり。
 ごたくはともかく、今後飼ってみたい無脊椎たちはですね、ミジンコ、ヒドラ、クマムシ……。顕微鏡が要りますね。そして海水棲の無脊椎たちも。ただし僕の代わりに水の管理をしてくださる方がいると最高なんですが。お金持ちだったら海水魚のレンタル水槽なんていいですよね。

インドヒラマキガイ

2013/11/12


 赤黒い小さな巻き貝です。大好きな動物でかれこれ20年ばかり飼い続けていると思います。息子が小さな頃に熱帯魚を飼い始め、購入した水草にくっついていたのが本種との出会いでした。タニシやカワニナとは趣がちがっって、水中の小さなカタツムリといった感じの巻き貝で、貝も身も同じ色でソフトな感じがして、粘土細工のようです。成長しても貝の直径が1cmを上回るていどです。



 原種はかなり黒っぽくわずかに赤みが差すていどでけっして美しいとは言えません。それが魚の水槽で大繁殖すると、飼育者はゴキブリがわいたように嫌い、餌で集めて除去します。小魚を多数飼っている水槽では、魚の餌食になってしまって増えないものですが、水草水槽や大型の魚食魚を飼っている水槽では外敵がいないのでどんどん増えます。
 水槽に繁殖する茶苔を食べてくれるので、水槽の掃除屋として紹介されることもありますが、その役目を果たす前に魚の餌食になることがほどんどです。また水草水槽では、柔らかい葉を食害するので、けっきょく嫌われ者です。
 小さな貝たちは魚の水槽ではゴキブリ扱いで、筆者が飼い始めた頃には、たまたま水草にくっついていたものくらいしか入手手段がなく、熱帯魚店の水草にこいつを見つけるとお店の人に頼んで分けてもらったりしたものでした。食堂でゴキブリをいただくようなものですから、お店の人はあまりいい顔をしませんけどね。
 本種はかなりの確率でアルビノ個体が得られました。メラニン色素の欠乏する個体は、鮮やかなルビー色です。筆者はそればかりを選別してアルビノ品種の固定に成功したのですが、同じことを多くの人がやっていたようで、やがてレッドラムズホーンの名でアルビノ品種が市販されることが目につくようになり、自分の努力の虚しさを思い知りました。


 ↑ レッドラムズホーンことインドヒラマキガイのアルビノ品種。(上2枚とも)

 小さな生き物ですから、小さな容器でたくさん飼えるのですが、個体密度が増加すると互いに互いの殻を舐め合い、殻が下の写真のように白くボロボロになってしまいます。ひじょうに見すぼらしいです。これを防ぐのは困難で、あるていどはあきらめるしかありません。ところが近年、殻が硬く容易にボロボロにならない品種が作出され、多数の個体を1つの容器で飼っていても綺麗な状態を維持できるようになりました。素晴らしいですね。
 最近は市販されるのをあまり見かけませんが、一部の熱心な愛好家によって改良品種があれこれ作出され、ピンクのものブルーのものなどもいます。



 本種の繁殖は容易です。複数飼育していると必ず産卵が見られ、やがて1ミリにも満たない稚貝が生まれてきます。透明なゼリー状のもので包まれた卵塊はかなり丈夫で、水槽のガラス面にくっついたものなどは手荒に扱っても容易にはがれません。水槽を乱暴に水洗いしても、たいていはちゃんと稚貝が孵ります。水槽に水草を入れず、ウィローモスのような糸状藻を入れておくと、ガラス面に産みつけるので、卵塊の中の稚貝の成長が観察できます。水草を入れておくと葉に産みつけます。
 稚貝の成長は早く、したがってどんどん増えます。近親交配にも強くて、数年間は安定して個体数を維持しています。ずっと1つの入れ物を維持し続けるとさすがに種の劣化が生じるのか、急に個体数が減少したりします。その時は新たに購入した個体を放り込んでやります。


 ↑↓ 水槽のガラス面に産みつけられた卵塊。


 小魚との同居では負けてしまいますが、小型のヌマエビとの同居は大丈夫です。国産のヌマエビやビーシュリンプは一緒に飼えます。水草やウィローモスを入れておくと本種とエビが共に繁殖します。ただ、成長したエビが稚貝を食べないとは限らず、エビとの同居によって繁殖力が低下するのも事実です。本種を絶やさないためには、本種のみで飼育する水槽も設けると良いでしょう。


 ↑ 熱帯魚用のペレット状飼料に集まっているところ。親貝をはじめ様々な成長過程のものが見られる。

 本種が互いに舐め合うのは、カルシウムを得るためでしょう。殻はカルシウムの宝庫ですからね。稚貝や若い個体は、新陳代謝によって舐められた傷は回復するようですが、成熟するほど回復しなくなり、白い筋が目立つようになり、やがて白くぼろぼろになってしまいます。


 ↑ 成長するにつれて白い筋が目立ってくる。まるで白髪のようだ。

 最近の硬質の殻を持つ品種は、成熟しても白い筋が少なく、殻も艶やかで綺麗です。水槽のゴキブリと嫌われていた貝たちを、こんなに美しい品種に改良した人がいるなんて、すごいですね。


 ↑ 硬質の殻を持つ改良品種。

 インドヒラマキガイを飼うには、水を入れられる容器があればそれでOKで、特別な装置は何も要りません。2〜3匹ていどなら小さなグラスでも飼えます。水量が少ない場合は給餌量をひかえ、小まめに水換えをします。1日か2日に1度、容器の水を全部すてて新しい水を入れてやるだけです。エアレーションも冬場のヒーターも無用です。猛暑にも極寒にもよく耐えます。
 筆者はアサガオ型の金魚鉢に浅く砂利を敷き、小さな水草を入れて飼っています。この状態で9年になるかな。一頃はサカマキガイやビーシュリンプを同居させていました。水草があれば餌はほとんど必要ありませんが、週に3回ほど熱帯魚用の餌を微量与えます。これで大いに繁殖します。
 夏は30℃を越え冬は10℃以下になる筆者の自室で、貝たちは元気にしています。2〜3週間に1度は金魚鉢を丸洗いします。きめ細かいネットに金魚鉢の水をあけ、水道水を直接注入してまたあけるを数回繰り返し、ネットに残った貝を金魚鉢に戻しておしまいです。冬は筆者が在室していると暖房で水温が上がりますが、水換えに使用する水は水道から直接出る真水です。強烈な水温差ですが、貝たちにはほとんどダメージはありません。つよっ!
 ビーシュリンプと同居させていると貝たちの繁殖が低下すると上述しましたが、けっきょくこの金魚鉢で最後まで生き残るのは貝たちの方で、エビたちはおおよそ2年で絶えてしまいます。よわっ!


サカマキガイ

2013/11/13



 ヨーロッパ原産の小型の淡水棲マキガイで、鑑賞用の水草と共に輸入されたものが帰化し、日本各地に分布しています。平野部のあらゆる水域に生息し、水質の変化や悪化にも強く、乾燥や寒さにも耐性があるので棲息地では大量に見つかります。主に植物食で微小な藻類等をヤスリのような歯舌で削り取って食べます。近縁のモノアラガイとは貝の巻き方向が逆で、左巻きになることが名前の由来です。貝殻の長さは5〜6mmほど。



 ひじょうに黒っぽくて小さな貝です。水槽でもよく繁殖するので、大量発生すると黒くて小さな虫がたくさんガラス面に着いているように見え、たいていの熱帯魚飼育者が嫌います。うじゃうじゃ湧き系が苦手な人には好かれないですね。可愛いのに。



 水草をお店で買うとくっついていることもありますが、筆者が池や水たまりに採集に行きました。大きな川や池よりも、流れのゆるく淀んだところに多い気がします。小さな彼らにとってそうした水域の方が外敵が少ないですし。


 ↑ 卵塊。ミジンコの顕微鏡写真ではない。

 本種を飼育下で繁殖させるのは、あきれるほど簡単です。複数を1つの水槽で飼っていれば勝手に増えます。増やさない方が難しいほど。増やさないために卵塊を見つけては駆除したとしても、いつの間にか稚貝が発生しています。たくさん産む卵塊をすべて駆除するのは無理です。時おりゼリー状の卵塊を背負っている個体が見受けられますが、守っているのでしょうか。



 孵化した稚貝は、ゴマ粒より小さいくらいです。親と同じような貝殻を一人前に背負っていますが、透明感があります。体も親に比べると淡い色をしています。サカマキガイのアルビノっていないのでしょうか。筆者が採集した個体をずいぶんチェックしましたが、いくぶん色の明るいものがあるものの、まっ白というのは見つかりませんでした。



 本種を飼育目的でストックするなら、魚やエビとの同居は避けた方が良いです。筆者はしばしばインドヒラマキガイと同居させていましたが、この組み合わせは問題なかったです。卵や稚貝がインドヒラマキガイに食べられることもあるかもですが、それよりも本種の繁殖力が勝りました。ただ、インドヒラマキガイの活動が活発になる暖かい季節は、稚貝がどんどん食べられてしまいました。本種とはかなりサイズ差がありますからね。
 基本的に植物食ですが、動物質もよく食べます。野生では虫や魚の死骸にも集まります。水槽では熱帯魚用の飼料をなんでも食べますが、水質の悪化を防ぐために餌は微量にとどめます。水草を入れておけば葉の表面に付着する茶苔を食べており、餌を与えなくても長期間生きています。

スクミリンゴガイ

2013/11/14



 南米原産のかなり大型のマキガイです。アップルスネイルやジャンボタニシといった俗名で知られ、時たまショップでも見かけます。もともと食用として輸入されたそうですが、その後国内にもかなり帰化しており、大量発生してイネを食害することがあり有害動物として嫌われています。帰化の原因は養殖場からの脱走で、アフリカマイマイという陸棲巻き貝も同様な経路を経て帰化しており、両者は共に世界の侵略的外来種ワースト100に名を連ねています。



 ショップで鑑賞用に市販されるものはたいていアルビノ品種で、綺麗な黄色をしており、ゴールデンアップルスネイルという可愛らしい名前が付いています。貝の直径が3〜4cmにもなり、水槽内ではなかなかのボリュームです。それにしても侵略的外来種がペットとして流通しているのもおもしろいものです。
 大きな貝なので、水槽内で水草をバリバリ食べますし、どんどん増えて飼育者をうんざりさせるとも言われていますが、なぜだか筆者は本種を上手く飼育できず、繁殖はもちろん長生きさせることもできずじまいでした。



 本種は、雌雄同体ではなくちゃんと性別があるようで、成熟した個体は交尾をして繁殖します。なので水槽で繁殖行動を観察しようとするならペアをそろえなければならないのですが、ショップでペアを求めても「巻き貝だから雌雄同体ですよ」とか「巻き貝の性別なんて見分けられるんですかねぇ」なんて答えが返ってきます。何匹がまとめて買えば運悪くすべてが同性ってこともなかろうと、客と店員で納得して5匹くらい買って帰ることになるわけですが、上手く飼えば増えすぎて困る自体に直面するらしいです。
 ピンクのかなり派手な卵を水面上に固めてどっさり産み、稚貝は魚などの食害から守られます。1つの卵塊から孵化してくる稚貝の数はひじょうに多く、1度の孵化でたちどころに水槽内が稚貝まみれになったという話しも聞きます。大きなメスでは1回の産卵で1000個ほどの卵を産むこともあるそうです。健康なメスは数日毎に産卵し、生涯で数千個の卵を残します。
 卵は2週間ほどで孵化し、稚貝は2ヶ月ていどで性成熟に至ります。なんか繁殖力が強烈って感じですね。



 あるショップで、長生きさせられなかった話しをすると「そうなんですか。放っておいてもどんどん増えますよ」とあきれられました。また別のショップでは「自然界では1年くらいの命で、買われた個体がすでに老化していたのかもしれませんね」という返事でした。「大きな個体の方が見応えがあるので、ショップも大きなものを売りたがる。でもそれって実際はご老体ってことですよ。次回は小粒で若いと思われる個体を買うようにしてください」貴重なアドバイスありがとうございます。
 水槽内で冬場もヒーターを使用して飼えば、2〜3年生きることも珍しくないそうです。

ヤマビル

2013/11/15


 茶色い体に黒いストライプという形状や色あいはナメクジに似ていますが、軟体動物類のナメクジとは異なり、ミミズやゴカイ等の環形動物の仲間です。ヒルの仲間は種類が多く、たいていは水棲ですが、海の中にすむものや地上棲のものも存在します。食性は他の動物を捕食したり、哺乳動物の血を吸ったりですが、本種は吸血ヒルの仲間で数少ない陸棲種です。
 頭部よりにすぼまったやや偏平な体をしていて、通常は2〜3cmですが5〜6cmくらいに体を伸ばすことができます。多くのヒルの仲間に比べてずんぐりして短い体型です。体の前後に吸盤があって、シャクトリムシ歩行をします。普段は物陰でじっとしており、哺乳動物の呼気を関知すると動き出し、宿主に取りついて血を吸います。顎にノコギリ状の歯列があり、宿主にY字型の傷をつけて自分の体が4〜5倍にふくらむまで吸血します。血を吸いやすくするためにヒルジンという物質を分泌しますが、そのために吸血された動物は何時間も血が止まらなくなってしまいます。雌雄同体で、吸血した成体は単体で産卵することもできます。



 ヒルを飼うというと、変なものを飼うものだとドン引きされるのがオチですが、見た感じはそれほど変なものでもありません。ただ、餌は動物の生き血なので、それを用意するのが困難と言えば困難かな。肩凝りに効くぜと言ってヤマビルを肩にのせることを臆しない方は、本種を飼うのに向いています。田んぼにいるチスイビルは水棲ですが、本種は陸棲なので管理が楽です。落ち葉やミズゴケを加湿してタッパーにでも入れておけば飼育環境はOKです。ただし通気孔は確保してください。
 時々、自分の血を吸わせてやれば給餌もOK。ヒルは宿主に傷をつけますが、分泌する唾液に麻酔効果があるそうで痛みはあまりありません。ただ、麻酔効果と共に血の凝固を妨げる作用もあるので吸血後もしばらくは血が止まりません。傷口は消毒して感染症にならないようにしましょう。人によってはアレルギー反応が起きる場合があるらしいです。


 ↑ 伸縮の様子。

 筆者は会社勤めをしているので、感染症や流血事件はイヤなので、自分の血は与えませんでした。犠牲者はネズミです。ヘビの餌用に飼っていたハツカネズミをヒルの餌食にしていました。ヒルが腹部に食いついてもネズミはどうってことない顔をしていましたね。ネズミが貧血を起こす前に引き離してやります。
 元気なネズミは、ヤマビルを食っちまうこともあるので、ネズミを押さえつけてお腹に乗っけてやりましょう。ヤマビルは哺乳動物の呼気に反応するので、乗っけるだけではボーッとしてます。フーフー息を吹きかけてやりましょう。
 正直ネズミていどでは、ヒルのご馳走としては役不足で、成長したモルモットかウサギくらいは与えた方が良いでしょうね。まぁ、適当に飼って観察したらトカゲなどの餌にでもしちまいましょう。ヒルを長期的に飼ったり繁殖を手がけたりするのは、餌に生き血が必要なのでけっこう面倒です。


 ↑ 縮こまったところ。

 陸棲のヒルの仲間には、クガビルというのがいて、ミミズが大好物で猛然と襲いかかりまたたく間に丸飲みにするそうです。これだったら餌の用意が容易で飼いやすいですね。また、ヤツワクガビルという大型種になると、体長40cm級のシーボルトミミズさえも丸飲みにするらしいです。すさまじいですね。もっとも筆者的にはシーボルトミミズの方も飼ってみたいところです。以前に山道で真っ青の巨大ミミズがのたくっているのを見かけましたが、ヘビかと思いました。同行した家族の猛烈な反対に遇ってお持ち帰りを断念したのですが、残念なことをしました。  

コウガイビル

2013/11/12


 扁形動物門ウズムシ綱ウズムシ目コウガイビル科に分類される陸棲動物です。ヒルという名が付きますが、環形動物門のヒルとはまったく別物で、もっと原始的な動物である扁形動物の仲間です。同目の中に切っても切っても再生することで有名なプラナリアがいます。扁形動物の仲間はたいていが水棲で、本種のような陸棲に適応した仲間は例外的と言えるでしょう。
 ミミズのように長形の生き物ですが、ひじょうに偏平で、長さが10cm以上になるのに厚みは数ミリしかなく、動いていなければペンキか何かで描いた絵のようです。中には数十センチの長さになるものもいるようですが、幅は細いままなので、ヒモそのものです。頭部がイチョウ型になるのが特徴ですが、ここに口器はなく頭部は触手の役目を果たしているだけでしょう。頭部には微細な眼点が多数存在するらしいので明るさくらいは識別するのでしょう。口器は体の中ほどの腹面にあり、排泄孔を兼ねます。これほど原始的な動物が陸棲に適応したのはすごいことです。



 体がゴムのように伸縮し、個体の正確な長さを計るのは不可能です。そんなところはヒルに似ているかも。陸棲の軟体動物や環形動物と同じく、乾燥に弱くじめじめしたところにいます。雌雄同体であるところも同じです。動物は海の中で原始的なカイメンやクラゲの仲間から魚類にまで進化しましたが、節足動物や脊椎動物に進化する一歩手前まで雌雄の別が明確でなかったわけです。
 最も原始的な後生生物(多細胞生物)であるカイメン類は個体の別さえ判然としませんが、やがてクラゲやヒトデといった放射相称動物と言われる整った個体形状を持つものが進化し、それから左右相称動物と言われる左右対象の体を持つものが進化しました。我々人間も左右相称動物です。この左右相称動物のもっとも原始的な仲間が扁形動物で、体の前後の概念、頭部と胴部の概念がようやく整い始めたばかりという状況です。そんな古いタイプの動物がいまも原型を保ったまま生き長らえ、その一部が陸棲動物にまで進化したことは快挙といえます。


 ↑ 頭部のクローズアップ。ここに口器はない。眼もないが微細な目点が多数散在するらしい。

 筆者の現在住んでいる山岳地では、暖かい季節の雨上がりなどに、濡れた道の上をもそもそ這っている姿を時たま目にします。タイプは原始的でも数億年の進化の過程で様々な能力を会得しており、ミミズやナメクジを襲って捕食するハンターです。土や枯れ葉を適当に食べている土壌生活者ではありません。
 飼育するには、生きた餌を与えるほか充分な湿度を維持してやる必要がありますが、保湿のために密閉するのはよくありません。多湿を好む生き物を飼う際に飼育者がよくやる失敗が、湿度維持に専念して生き物を蒸し殺してしまうことです。かく言う筆者も多くの失敗を重ねています。
 餌であるミミズは湿った土の中で容易にストックできますが、本種の飼育環境を整えるには工夫が必要です。土や枯れ葉でレイアウトすると適切な環境にはなりますが、ケージの中で本種を見失いがちです。筆者は通気性の良い飼育ケースにキッチンペーパーを数枚重ねて敷き、それにたっぷりと加水しておくという単純な環境で飼っていました。見栄えは良くないですがとても観察しやすいです。
 餌のミミズを与えると、これに巻きついて口から吻を伸ばして消化しながらすすります。採餌にあまり積極的ではないので、ミミズの上にわざわざ乗っけてやるくらいのことをしてやらないと食べません。こんな消極的なで態度よく自然の中で生きてゆけるものです。


ヤビー

2013/12/01


 オーストラリア原産のザリガニです。原種は青黒い色彩をしていますが、ひじょうに鮮やかなブルーの改良品種がペットトレードに出回っており、甲殻類愛好家の間で人気がたかいです。自然界では20cmていどに成長するようですが、飼育下では12〜13cmていど。8cmていどで成熟して繁殖に加わります。
 丈夫で飼いやすいと言われていますが、日本に帰化しているアメリカザリガニほど強靱ではないでしょう。水温については下は氷点下にならなければ大丈夫で、上は35℃ていどまでと広い耐性を持ちますが、水質は中性以上を維持する必要があります。弱アルカリ性が望ましく塩分にも強いそうですから汽水域が得意そうですね。原産国の野生個体の棲息状況はどうなっているのでしょうか。



 デトリタス食いだという記事を読んだことがあります。いわゆる生物の破片等が水底に堆積し、そこに微生物がいい感じに繁殖した状態のことですが、それを確保するには底砂を敷くことは不可欠です。しかし川砂や荒磯砂で弱アルカリ性の水質を維持することは困難だと思われます。
 筆者は、アルカリ性にはこだわらず、とにかく小まめな水換えで、pHダウンしないように心がけました。食べ残しなどで水質が悪化するのも怖いので底砂も使用しませんでした。これは水量の少ない容器で飼うための苦肉の策でして、決して推奨できるものではありません。大きな水量の多い水槽で飼育する方が絶対に良いですし、魚を飼うのと同じようなレイアウト、すなわち底砂を使用し、フィルターを設置してやるのが望ましいです。本来はそうしたレイアウトが水質を維持するのに重要だからです。ただし、ヤビーがpHダウンに弱いことを考えると、水量の多い水槽であっても水換えは小まめに行なうことが重要であると思われます。


 ↑ ヤビーの飼育環境。浅くて水量の少ないケースにフラットタイプのフィルター、重りを付けた水草、シェルターというレイアウト。底砂は使用せず、餌は主食として生きたメダカを与えた。大きな容器を使用できない場合の苦肉の策だ。

 ヤビーはたいへん大きく強靱な前肢を持っています。上の写真では未成熟個体なのでそれほど大きくありませんが、成熟するとじつに見事なハサミになります。これは生きた獲物を捕らえたり、土に穴を掘ったりするのに適したツールであり、自然界でもそうした生態が見られるようです。
 飼育下では、穴堀り用の土を用意してやることは無謀でしょう。代わりにシェルターを多用します。本種は共食いもしますから、単独飼育でない場合にはシェルターをたくさん用意する必要があります。とくに成体については複数飼育は避けた方が良いでしょう。
 デトリタス食いであるというものの、それを参考にした餌を与えるよりも、沈降性の人工飼料や生きメダカを与える方が良いでしょう。筆者のところでは、小さな幼体でも果敢にメダカを襲っていました。


 ↑ メダカを襲う幼体。まだ体色は白い。上が下から抱きつくようにしてメダカを捕獲したところで、下が食べているところ。

 以上のようにヤビーの飼育について記述してみましたが、筆者が本種を飼っていたのは2004年頃からでした。現在は特定外来生物の指定を受けてしまい、日本では販売も飼育も禁止されています。これは外来生物法の定めによるもので、日本の自然環境を帰化生物から護るためのルールです。個人的な意見としては、アメリカザリガニが帰化して野放しになっている日本の水域に、本種を放したところで、大繁殖に至るのは難しいと思うのですが。ただ、汽水域ではあるていど定住できるかもしれませんね。
 水棲動物の外来種被害と言えば、ブラックバスやブルーギルの話しを最近はあまり聞かなくなりましたが、現状はどうなっているのでしょう。日本の川魚たちはことごとく絶滅危惧種になってしまったのでしょうか。それともある程度バランスしてお行儀よくしているのでしょうか。筆者は野生のタイリクバラタナゴを淀川水系で採集して飼育していたことがあり、その際にブルーギルの猛威によってタナゴが激減してしまったのを目の当たりにしています。タナゴは一切採れずにブルーギルがイヤほど採れるという状況の中でも、タナゴの稚魚が水面近くの藻の入り組んだところを泳いでいました。稚魚がいるということは成魚も絶えたわけではないということですから、ブルーギルの脅威を逃れてどこかに隠れ棲んでいたのでしょう。ただ、タイリクバラタナゴ自身ももともとは外来種なんですけどね。


アシヒダナメクジ

2014/02/06


 黒くて偏平な軟体動物です。ナメクジという名前ですが、カタツムリやキセルガイ、ナメクジとは近縁ではあるものの系統を別にします。カタツムリたちが柄眼目に属するのに対し、本種はイソアワモチやドロアワモチといった汽水域の生物と共に収眼目に属します。この仲間としては本種は珍しい陸棲動物です。形態的にはナメクジを偏平にし柄眼を短くしたような感じで、貝殻を失った巻き貝の仲間という点では、ナメクジと同じです。



 収眼目の仲間は熱帯地方に多く、本種も同様ですが、日本では沖縄や奄美大島で見ることができます。ナメクジとちがってかなりドライな感じで、這い回ったあとがベタベタになることもないので、綺麗に飼えます。どう考えても高温多湿の飼育環境が必要ですが、注意すべきは充分な機密性を確保し、空気がこもらないようにしなければなりません。多湿を好む生き物の飼育でよくやる失敗が、熱と空気をこもらせて窒息させてしまうことです。高温状態はどんどん水分を蒸発させますから、乾燥をするのを恐れて機密性を高めようとする気持ちは解りますし、じつのところ筆者もそれで失敗を重ねてきました、恥ずかしながら。多湿を好む生き物でも陸棲動物である異常は恒常的でない限り、あるていど乾燥には耐えてくれます。充分な通気性を確保し、観たときに乾きすぎであったら加水するといったメンテナンスに心がけましょう。



 草食性です。水野菜をバリバリ食べます。小松菜やキュウリなんかたいへんよろしいですね。筆者は、何でもなるべく同じやり方で飼おうというなまくら思想を持っているので、爬虫類の飼育で常用している小松菜が、本種でもメインディッシュになります。小さな容器に加水したティッシュを何枚か敷き、小松菜を置きます。ついでに浅い皿(小さなタッパーのフタを流用)に、爬虫類用の人工飼料(ドライフード)を入れてやりました。イグアナフードは植物質が多めで、リザードフードは動物質の含有量が多めのフードです。これらにスプレーで加水して与えたところ、これもよく食べました。



 軟体動物の仲間は、伸縮性に富み伸びた時と縮んだ時のサイズがずいぶん異なりますが、本種は比較的差が少ない方です。伸びると7cmくらい縮むと4cmていどといったところです。葉っぱを食べると緑色の糞が糸状になって出てきます。ちゃんと消化してるのかよ、と言いたくなるほど鮮やかな緑がそのまま出てきます。これってまだ食べられるんじゃねーの、と思っちまいます。食痕はかじったあとが明瞭で、ちゃんと歯があるみたいですね。



 ナメクジが苦手な人でも、これはけっこう可愛いと思うんじゃないでしょうか。沖縄まで採りにゆかなくても最近はネット上に珍しい生き物が棲息しているので検索してみてください。本種はけっこう見つけやすい方だと思います。ネット上でね。

レッドチェリーシュリンプ

2014/05/23


 ミナミヌマエビの赤色変異品種との記述を見たことがありますが、日本にも棲息するミナミヌマエビにこのような赤色個体は見られないと思われます。品種というのですから人為的に作出されたのでしょうか。別の記述では、ミナミヌマエビの亜種シナヌマエビとありました。台湾に分布するヌマエビで、つまりはミナミヌマエビの台湾地域亜種というわけ。また別の記述では、海外で密かに選別固定した人為改良品種との情報も。台湾辺りで日本輸出むけに密かに品種改良しているのでしょうか。そしてこれは、ビーシュリンプの赤色個体のようなアルビノ品種というわけではないようです。



 安価で丈夫で綺麗で、なかなか素晴らしいエビです。ヤマトヌマエビ等を飼育されていた人なら、エビは水質の劣化に弱くデリケートなイメージを持っておられるかもですが、緩やかな劣化にはかなりの耐性があり、筆者のイメージとしてはデリケートな生き物といった感じはないですね。ただ、あまり長命ではないようなので、繁殖できなければどんどん数が減ってゆき、耐えてしまい、脆弱だと感じるかもしれません。



 メスの方が赤色が鮮やかと聞きました。全体的に赤色が乗って体高があるのがメスでしょうか。複数飼育していると、やがてメスの抱卵が観察できます。そしてその内、ミニマムなエビが水槽内にお目見えします。最初は孵化子の数がたいへん少なかったですが、だんだん増えてゆきました。



 上の写真では、左側に成熟した個体、右側に稚エビが3頭ばかり写っています。成熟個体のうち赤みの強い大きなのがメスです、たぶん。稚エビたちは少し育っています。孵化子はもっと小さいです。他にはサカマキガイやインドヒラマキガイも写っていますが、彼らも同居人です。



 未成熟の個体は無色透明です。また孵化子をそのまま親と同居させておいても食べられることはないようです。あるかもしれませんが多くはないです。
 小さなエビの飼育の秘訣は、水槽内の水流にあると聞いたことがあります。水流が強いと稚エビが育たないそうです。筆者は貝を飼っている金魚鉢で貝たちと同居させていました。濾過器は使用していないので水流はありません。水質は換水で維持しています。水草と底砂利があれば小さな金魚鉢でも2〜3週間ごとの換水で問題ありません。
 あと、これは決してお勧めしませんが、真冬でも冷水でエビごとジャブジャブ洗ってました。飼育水との水温差は10℃くらいあったと思います。それで大きなダメージを受けることもなく健やかに過ごしていました。丈夫だ。
 水草は必要です。節足動物のエビは成長過程で脱皮を繰り返すので、シェルターがないと脱皮中に稚エビが大きなエビに食われるかもです。テナガエビのように魚食性ではないので大丈夫かもしれませんけどね。水草は酸素を出しますし水質安定にも一役買っています。
 底砂利は不可欠です。砂利が敷いてない水槽では水質はたちどころに劣化します。バクテリアによる生物濾過の威力がよく解ります。砂利は有用バクテリアの温床です。
 餌の量は少なく。餌は熱帯魚の餌で良いです。2〜3日に少量を与えます。活発な子は餌に飛びついてこれを抱え込み一心に食べます。可愛いですよ。

アシヒダナメクジ2

2014/07/06


 ナメクジと名がついていますが、系統的には異なり殻を失くした巻貝ですよ、これは。といってもナメクジも殻を持たない巻貝ではあるんですが。生態的にもナメクジと似た暮らしぶりをしています。水けの多い野菜をバリバリ食べ、雌雄同体で繁殖します。



 もうずいぶん前に飼育を手がけたことを前項に記しましたが、ネット上をはい回っているのを久々に見つけて入手しました。南西諸島から台湾に生息しますが、なんとインド、スリランカ、中国南部、そして東アフリカからマダガスカルにまで棲んでいるそうです。アフリカには人の運ぶ物資に紛れ込んで渡ったのではないでしょうか。そう考えるとなかなかの頑健種かもです。



 こんな顔をしています。軟体動物の形態は人の常識は通用しませんから。頭から足が生えて股間に口があるタコやイカよりもマシな顔つきじゃないですか。



 腹側はアワビっぽいです。中央のストライプがオシャレですね。



 カメの餌を与えてみました。以前に飼っていた時にはイグアナフードとかも食べていたので、これも食べるでしょう。あと昆虫ゼリーも。もっとも喜ぶのは野菜でしょうから、爬虫類の世話をするときに小松菜を分けてあげましょ。
 繁殖は卵生で、5mmの幼生が4cmの成体に至るのに7か月くらいかかるそうです。また大きいものだと8cmくらいまで伸びるらしいです。今回入手した個体はいずれも伸びて5cmくらいです。
 夜行性ということですが、昼間でもしばしば餌を食べています。

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索引


目次

スネさん リーザさん けもの 庭虫
雑虫 クモ 直翅系 半翅系 膜翅系 鱗翅系 鞘翅目 毒虫 魚たち 無脊椎
両生類 カメたち 絶滅動物 くさばな 庭草 雑草 高山植物 飼育と観察 ヒト □飼育動物データ




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