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両生類

 脊椎動物のうち最初に陸に上がったのが両生類であることは周知の事実ですが、現生の両生類が幼生時代を水中で過ごし、成体になってから肺呼吸に切り替わって陸棲生活者に転向することからこの名が付いたと思われますが、太古のむかし両生類が陸上生活を目指して華々しい進化と多様化を展開した頃はどうだったのでしょう。
 古生代デボン紀に陸生動物に進化を遂げた両生類の祖先たちは、浅い貧しい水域から陸地という新天地を目指して旅立って行った開拓者たちでした。当時の陸生動物は昆虫をはじめとする節足動物で両生類にとって彼らはあまり脅威ではありませんでしたし、それどころか水域よりも豊富な餌でした。両生類の直接の祖先は、強力な遊泳能力を有する進化的な魚たちの脅威から逃れるために浅い水域に逃れてきた魚たちで、そこは乾期には干上がってしまうようなこともしばしばで、天敵は少ないものの豊かな漁場ではありませんでした。両生類たちは、そうした水域を見限って、新たな餌場を求めて陸地へ進出して行ったのです。
 宿敵となる爬虫類が進化してくるのはまだずっと先になる古生代に、両生類は爆発的な進化を遂げ、さまざまな四足動物を輩出しました。陸上で支配的な地位にのし上がった動物群の常として、あらゆる環境に適応放散しましたから、その一部は再び水域にも進出しましたが、当時の主流は大形の陸生動物で、中には全長3〜4mに達し、植物質を摂っていた可能性を指摘されているものすらいました。そうした巨大で極めて進化的な両生類を原生動物に中に見ることはできませんが、古生代の両生類の中には硬くて厚い皮膚を持ち生活史の中でほとんど水域を必要としないような仲間もいたでしょう。
 現生の両生類は、生殖に水域を必要とする体外受精を行ない、幼生はエラ呼吸して水中で暮らしますが、古生代の進化的な両生類では、交尾をして胎内受精を行ない、肺呼吸の子供を産むものもいたかもしれません。強靱な骨格を持ちかなりの体重になった両生類の中には、その肥満した体型が植物食を示唆するといった説明をしている学者もいますが、大きなお腹はじつは卵胎生で胎内孵化した幼生がそのまま母体の中で変態して肺呼吸なるまでとどまるためのものだったと推測するのは、まったく見当外れでしょうか。
 現生種でも胎内受精を行なって卵胎生を実現しているものがいますし、一部のカエルのように卵の中で発生から変態までを済まし、肺呼吸のカエルとして孵化してくるものもいます。これらは古生代の進化的な両生類とはまったく系統がちがうので、これらの例をして古生代の両生類の卵胎生や肺呼吸する幼生の出産の証拠とすることはできませんが、より陸上寄りの暮らしを求めた開拓者たちが、同じような生殖方法を進化させた可能性はあったと思われます。ちなみに魚類でも胎生メダカの仲間のように胎内受精と卵胎生を実現しているものがいるのです。
 両生類の定義は、生活史に水域と陸地の両方を必要とするという意味ですが、それは現生の代表的な両生類に言えることで、古生代の進化的な両生類たちは、もっと乾燥した環境にも適応したでしょうし、水域に進出したものの多くが、原始的なゆえではなく、新たな適応放散先として水域を選んだというものも少なくないでしょう。
 爬虫類や哺乳類でも、進化して水中生活に戻ったものがたくさんいます。カメや中生代の魚竜類、首長竜類、哺乳類ではクジラやイルカがそれです。ウミカメ類は繁殖のためだけに陸地を必要とするという、まるで両生類と逆のような生活史を持ちますが、中生代の水棲爬虫類の魚竜類や首長竜類は胎生で繁殖にも陸地を必要としなかったかも知れません。
 現生の両生類は、古生代の進化的な仲間と比べるとかなり原始的な系統の生き残りであると言えます。その多くは繁殖や幼生の生活に水域が欠かせませんし、皮膚の耐性が充分でないために乾燥に弱く水辺を離れられない種が多いです。皮膚の耐性が充分でないことは、塩分にも弱く、現生の両生類は海にも進出できず淡水域で暮らしています。
 したがって現生の両生類の飼育は、アクアリウムまたはアクアテラリウムが主流になります。完全に陸棲の種でも極一部を除き水場が必要です。これらの飼育に慣れている人が、軟体動物や多湿を好む爬虫類を飼う時にやらかす失敗が過度の多湿です。自然界では似たようなところで暮らしている動物であっても両生類と爬虫類では、飼育環境の仕立て方が基本的にちがってきます。おもしろいものですね。

シリケンイモリ

2014/02/08


 奄美大島、沖縄、渡嘉屋敷島、渡名嘉島等に分布するイモリです。本州のニホンイモリ(アカハライモリ)とは同属でたいへんよく似ています。ニホンイモリは筆者の家の近くの山の水域にもたくさん棲息しており、採ってきて飼ったこともありますが、シリケンイモリはもちろんうちの近くにはいません。たまたまショップに入荷があったものを買いました。背中には個体によって差異がある黄色系の斑紋が現れます。アマミシリケンイモリ(基亜種)、オキナワシリケンイモリなどの地域亜種がいるようです。



 水から上がったところ。背面からでは本州にいるニホンイモリと目立ったちがいがありませんが、よく見ると背中の中央の隆起と平行するように小さな点刻が並んでおり、これが本種の特徴です。個体によってはこれがひじょうによく目立つものもいます。



 腹面は、ニホンイモリのように真っ赤ではなく、朱色から濃いオレンジです。



 ニホンイモリの飼育の経験から、本種も頻繁に陸地に上がることを想定し、30cmのガラス水槽に浮島をいくつか設けるというレイアウトにしました。また、底には大磯砂を敷き、水作君で濾過とエアレーションを施すという魚類の飼育と同じにしました。



 上の写真は水の中にいるところです。成体はもちろん肺呼吸ですが、泳ぐのが得意ですし水底を歩行しながら餌を漁ったりもします。生きた魚を捕まえるのはあまり得意ではないようです。自然界でも水棲昆虫やミミズを食べているようです。
 飼育下では、冷凍アカムシや人工飼料によく餌づいてくれます。カメ用や魚用の水に浮くタイプの小さなスティック状の餌を喜んで食べます。うちでは試していませんが、沈降性の餌ももちろん食べるでしょうし、自然界での生態を考えるとむしろこの方が良いと思われますが浮上性の餌の方が、食べ残しの処理も容易ですから水を汚さなくてすみます。



 正面から見るとカエルみたいです。上の写真の個体は、腹面の色がかなり明るくて黄色に見えます。



 シリケンイモリは、ニホンイモリ同様に丈夫で飼いやすいです。それと飼育下での繁殖も容易です。筆者の飼育経験ではニホンイモリよりも本種の方がよく増えました。冬から翌年の夏にかけてが繁殖期だそうですが、このあたりが南国の生き物ですね。ニホンイモリのように越冬ののち春に繁殖期を迎えるというのとはずいぶんちがいます。



 卵は水中に植えた水草にも産みつけられますが、加水した水草をタッパーに入れて水面上に配置しておくと、そこにもよく産卵しました。透明なゼリー状の卵は胚が大きく、中で幼生が発生してゆく様をよく観察できるので、学校教材にうってつけだと思います。



 卵は、カエルのそれのように卵塊になっておらず、個々に独立していますから、拾い集めて親と隔離して管理します。親と同じように仕立てた水槽に入れておけばよいですし、じっくり観察したいなら、小さな容器に集めておき、観察の時に容器ごと水槽から取り出すようにします。



 孵化した幼生は、けっこう大きくて取り扱いが楽です。冷凍アカムシを最初から食べれます。外鰓がよく目立っています。とても頭でっかちで四肢は細く小さく頼りなげです。歩くよりも泳ぐ方が得意な水棲動物です。



 成長はけっこう早いですよ。外鰓が目立たなくなり、四肢がしっかりしてくると陸地に上がるようになりますが、成体と同様の浮島では上陸がきついので、成長した幼体には、大磯砂に傾斜を付けて浅く水を張ったアクアテラリウムを用意してやります。



 イモリの幼生は複数を一緒にしておくと共食いすると聞いたことがありますが、そんなことはなかったです。たくさんの個体を一緒に飼っていましたが、共食いによってどんどん数が減ってゆくようなことはなかったです。共食いしないと断言はできませんから、石や水草を用いてレイアウトを複雑にしたりするとよいでしょう。



 とにかく旺盛な繁殖力に驚かされました。成熟した成体では、メスがよく太ってしっかりした体つきです。雌雄の明瞭な差異は、尻尾の形状と総排泄孔で、メスは尻尾が先端へ向けて一様に細くなって行きますが、オスの尻尾は先端近くから急に補足なり、総排泄孔のところが膨らんでいます。上の写真では左がオス、右がメスです。メスの方は背中の点刻模様が顕著ですね。
 また、このイモリはニホンイモリもそうですが有毒です。フグと同じ成分の毒を持っているそうです。それによる被害はまずありませんが、触ったら手を洗う方がよいでしょう。噛まれて負傷するタイプの動物でもないし、まず噛まれることがないので筆者はまったく気にしていませんでしたけど。 お腹を見ると確かに有毒動物っぽい警戒色ですよね。上から見ると目立たない黒色で、下から見ると強烈な色をしているのは、上からだと鳥などに見つかりにくい保護色系で、上陸のために水面近くを泳いでいるところを下から魚食魚に狙われた際には有毒であることを示す警戒色になっているといった効果があるのでしょう。

マダライモリ

2014/02/09


 フランスやイベリア半島に生息する美しいヤモリで、繁殖期のオスでは背中にヒレ状の隆条が発達します。半水棲生活を営み主に夜間は陸上で過ごすことが多いそうです。ヨーロッパには同類のイモリが何種類かいるみたいです。



 形態およびサイズ的には、ニホンイモリと同じような感じです。ただ、色彩がずいぶんちがって、その名のとおり鮮やかなマダラ模様を呈しています。緑と黒(ひじょうに濃い茶色)のコントラストに加え、背中に赤い線が入っており、かなりハデです。繁殖期のオスは背中には大きな帆のようなが隆起の列発達するというのでさらにハデですね。



 ニホンイモリの成体はしばしば水から上がり長時間を陸地で過ごすことが多いですが、本種はさらに陸地寄りの傾向が強いようです。飼育には水を張った水槽に浮島を設けたアクアテラリウムでよいのですが、餌も陸地に用意した方がよいようです。



 上の写真は、マダライモリの飼育レイアウトですが、水はうんと少なくし、ミズゴケを満たしたタッパーや置物(ここではコルクバーグの模造)が水上に露出するようにしました。そして陸地のところに浅いガラス皿を置き、その中に生きたミルワームを入れておきます。



 上の写真は、ミズゴケの上のミルワームを食べるところですが、最初のまだ慣れない頃は、こうして餌を見つけやすいミズゴケの上で給餌しました。ミルワームは湿度にたいへん弱い虫なので、この状態ではすぐに死んでしまいます。本種がミルワームを餌だと認識するようになったら、餌皿を用意しそこにミルワームをいれておくようにします。
 飼育者が与えた餌を食べるようになるのにかなりの個体差がありました。これはある程度予測できたことですけどね。ミルワームに餌づかなければコオロギやゴキブリのような動きのある虫を与えるとよいでしょう。これらの虫は自ら水に飛び込んで溺死します。あまりうじゃうじゃ入れておくと水槽内が死んだ虫だらけになってしまいます。あらかじめ殺して餌皿に入れるとか、冷凍コオロギを解凍して与えるといった方法も有効でしょう。また、虫と一緒に魚類や爬虫類用の人工飼料を入れておき、それに餌づかせるのもよいでしょう。



 イモリは水の中の生活がメインだと思われがちですが、それは幼生の頃に話しです。図鑑等でも水中の写真が多く、ショップでもたっぷり水を満たした水槽の中で泳いでいる姿を目にします。浮島もなくずっと水の中にいるお店のイモリたちを見ると、早く売れればいいのにと思ってしまいます。もっとも地表にいるイモリは乾いた体でじっとしており、水の中にいる方が同じようにじっとしていても元気に見えるので、ショップではアクアリウムで販売しているのかもしれませんが。イモリを飼育下で長生きさせたかったら必ず陸地を設けてください。また、本種では陸地に餌を置く方が餌づきも良いです。餌づきには個体差があるので、水中に冷凍アカムシや人工飼料を投じて、食べるか試してみるのも悪くはないと思います。食べ残しは水を汚すので、管理が面倒になりますけどね。



 筆者が本種を飼育していたのは、2004年〜2005年でした。正確に個体差の激しいイモリで、4頭のうち1頭のメスはずっと水中にいて、水に投じた魚用の人工飼料や冷凍アカムシをよく食べていました。もう1頭のメスは、主に陸地の虫を食べ時折水中での採餌も見られました。1頭のオスは常に陸地にいて採餌も陸地、水に入っている姿をほとんど見かけませんでした。もう1頭のオスもおおむね陸地にいましたが、なかなか餌を食べずひじょうにやせ細っていました。
 総じて4頭中3頭がおおむね陸上生活、1頭のメスだけが常時水中生活といった様子でした。途中からシリケンイモリと同じ水槽で飼うようにしてみたのですが、まったく問題なく一緒に暮らしていました。
 本種は水深のある水槽では溺死することもあると聞いたことがありますが、まったく大丈夫でした。陸地ではシリケンイモリと重なり合ってボーッしていたりとか。
 シリケンイモリは毒持ちですが、それもマダライモリに対して悪影響はありませんでした。また、陸地に餌を置くようにすると、シリケンイモリもそれを食べるようになりました。日本のイモリも雨上がりの夜などに陸地に餌を求めることがあるようですから、これもうなずけます。

 残念ながら、マダライモリの繁殖には成功しませんでした。オスの繁殖期の性徴を見ることもできませんでした。太古の大形爬虫類の一種のような背中に帆を持った姿を見たかったんですけどね。

モリアオガエル

2014/04/30


 アオガエル科の仲間としては、大きなカエルではないでしょうか。日本中の山地に棲息している森の主要な住人です。山歩きをしていて本種のでっかい卵塊を見つけた経験をお持ちの方も少なくないでしょう。世界的に見ても小さい方ではないと思います。イエアメガエルみたいな巨大種はべつとして。



 上および下の写真は、本種ならではの斑模様の個体ですが、筆者がうちから遠からぬ能勢山系で出会った個体はなぜか無紋のものばかりでした。



 これらは、斑模様の個体を見たくて、ショップで買い求めたものです。本種はしばしばペットショップにもお目見えします。愛知県産とのことです。



 模様にはかなりの個体差があります。



 こちらは能勢産の模様なしたち。同じ無模様でも色あいが様々です。また、気分やコンディションによっても、明るい色になったり暗色になったりするようです。



 繁殖シーズンは春から夏にかけて。この時期に雌雄を一緒にしておくと、繁殖行動が見られます。産卵の観察をするには、静かにして夜中中見張っている必要がありますが、オスがメスに抱きついている姿は昼間も普通に見られます。斑紋タイプと無模様タイプですが、両方とも愛知県産です。



 産卵を終えた翌朝の様子です。ご存じのようにモリアオガエルの卵は、泡に包まれて卵塊になります。分泌した粘液を産卵放精と同時に後脚でかき回しながら卵塊を作っていくようです。これは雌雄の共同作業になりますが、この際に別のオスがしばしば飛び入り参加し、受精卵は個々に別の精子を受精していたりします。



 卵塊はひじょうに大きなものになります。上はメス2×オス3による卵塊です。なんだかえらいことになってますね。



 時間が経つと卵塊の表面は乾いて固まり、卵塊自体を容器から取り出すことができるようになります。これをバーベキューネットなんかに乗っけて、下に水を張った容器を受けておけば孵化の準備は完了です。白い卵がいっぱいです。
 ところがです。たくさんの卵を得たにもかかわらず、1匹も孵化しませんでしたよ。飼育経験者のアドバイスに従って、時折水をかけたりとか世話を焼いたのですが、けっきょく繁殖は失敗に終わりました。うまくゆけば1週間ほどでオタマジャクシが孵るようです。
 自然界では、けっこうカラカラに乾いた卵塊を見つけますが、水をかけたりせずに放置した方が良いのかも知れませんね。



 モリアオ君たちの餌として、筆者はジャンボミルワームを与えていました。ピンセットで与えても置き餌にしてもよく食べました。一説によると、ジャンボミルワームは消化される前にカエルの腹を食い破ってしまうこともあるとのことですが、2年ほど飼っていてそんなことはなかったです。
 モリアオ君は、シュレーゲルアオガエルとたいへんよく似ています。虹彩の黄色の部分がモリアオ君の方が暗い色をしているとか、口吻がとがりぎみだとか、四肢の水掻きがシュレーゲルより発達しているとか、いろいろ差異がありますが、そういした特徴は個体差によってかなり曖昧になります。それよりも肌質がモリアオ君の方が少しザラついた感じがあり、これが筆者としては最も判りやすいちがいに思えました。あと、総じてモリアオ君の方が一回り大きいです。



 11月頃から気温が低い時期が続くと、モリアオ君たちはミズゴケの中に潜り込むようになります。加温せずに管理している場合は、そのまま冬眠に入ります。冬眠中の死亡率は凍結させない限り高くないです。春の気温上昇と共に起き出してきます。
 まれに1月でも飼育温度が13℃とかになることがあって、ミズゴケから這い出したこともありました。そんな時はしばらく水に浸けてやりました。水を飲むかと思って。そして夜になって気温が下がると冬眠に再突入していました。
 2004年から2005年まで2年ばかり飼っていましたが、丈夫で飼いやすいカエルでした。最後は懇意にしているショップに引き取ってもらいました。

シュレーゲルアオガエル

2014/05/02


 形態も生態もモリアオガエルに近縁のカエルです。日本固有の動物なのに、外人みたいな名前ですが、発見して命名した人がシュレーゲルさんだったりしたのでしょうね。



 本種とモリアオガエルの区別は小さな個体ほど判りにくいかも知れません。大きなものでは体格の差が歴然としていますから。モリアオ君の大きなメスでは全長が7cm前後から8cmくらいありますが、シュレーゲルのメスでは大きくても5cmを上回る程度です。オスはもう一回り小さいです。小さな固体では、今度はアマガエルとの区別が難しくなりますね。
 シュレーゲルとモリアオ君とでは、口吻がモリアオ君の方がやや尖っているとか、四肢の水かきがモリアオ君の方が発達しているといった差異が挙げられますが、本種の方が虹彩の色が明るい、肌のざらつき感がモリアオ君の方が顕著になるといった特徴の方が判りやすいかもです。



 モリアオ君は、綺麗な斑紋を呈する個体が多いですが、シュレーゲルは無紋で、斑紋のあるモリアオ君については本種と見間違えようもありません。また、本種の小さな個体と、アマガエルの緑の個体が見分けにくいですが、アマガエルでは目と鼻先を結ぶ茶色い帯状の紋があります。アマガエルの茶色い個体ではこの帯状紋が判りにくくなりますが、その代わりに体がまだら模様になり、茶色の個体でもそうはならない本種と区別できます。



 上はよく肥えたメスです。ブリブリで可愛いですね。日本のアオガエル科の仲間に関しては、テラリウムで飼育するのが良いです。水を張ったプラケースに島を置いて飼っている人を見たことがありますが、それはカメの飼い方です。テラリウムに水入れを常設してやるような飼い方が良いです。アマガエルに比べると本種は乾燥に弱い気がします。水入れは大きめのものを用意し、とくに高温になる夏場は時々ケージ全体にスプレーしてやる方が良いです。あと、直射日光の当る場所で小さい入れ物で飼うのも禁物です。カエルが干物になってしまいます。



 今度はオスです。雌雄の判別は難しいですよ。オスでは喉元がやや茶色くなる、親指にイボができるなどの特徴があるようですが、それも繁殖期以外では顕著になりません。大きな個体では体格の差が明らかなので判りやすいかな。メスの方が縦横とも大きく、よく太っています。ただ、健康優良児でないとこれも一概には言えませんけどね。



 シュレーゲルは、多種に比べて神経質だと言われます。確かに繁殖期にゲロゲロ鳴くことは少ないです。用心しながら時折短く鳴くていどのことが多いです。飼育下では鳴かないオスも多いです。でもそれよりも怖いのは拒食です。過度に神経質で餌を食べない個体は、上の写真の右の子のようになってしまいます。それでもなかなか死に至ることはありませんが、落ち着かせて立ち上げるのは容易なことではありません。
 筆者の経験では、複数飼育の方が、飼育者にも環境にも早く馴れてくれる気がします。その中で馴れない個体、あるいは他の個体を脅威に感じて神経質になってしまった個体は深刻です。上の痩せた個体は、単独飼育にし、匂いの少ない植物をたくさん入れてやって落ち着かせることで、再び元気になりました。



 春から夏にかけて、繁殖シーズンに雌雄を同居させておくと、オスがメスに抱きついている光景が見られるようになります。自然界では、オスたちが競って鳴いてメスを呼び寄せるのでしょうが、飼育下では最初からメスがいるので、オスは鳴かずともメスを獲得できます。



 飼育環境にすっかり馴化した個体は、繁殖シーズンはいつでもラビューなシーンが展開しています。ちなみにカエルは体外受精ですよ、交尾はしませんからね。充分に加水したミズゴケなんかをタッパーに入れて、飼育環境を多湿にしておいてやると、夜間に産卵が見られます。



 産卵までは順調に進むのに、なぜだか孵化に至りません。自慢じゃないけど、筆者は湿度を好む生き物の飼育が下手くそです。イモリは繁殖に成功したのに、カエルはまるでだめです。敗因はきっと過剰な湿度でしょう。卵塊が乾かないように注水したり加水したミズゴケで被ったりあれこれやった結果がかえって悪かったのではないかと、今になって思います。



 アオガエルの仲間の卵は、水中に産卵するカエルのそれと違って透明で胚が見えているようなタイプではありません。自然界では本種は土の中に産卵することも多いそうです。白濁した卵はあるていどの乾燥に耐え得る疎水性の膜で覆われているのかも知れませんね。




 上の写真は無紋の個体が多い中で珍しく斑紋のあるものです。じつはこの子も元々は無紋で、寒い季節が近づくにつれてこんなふうになりました。



 冬のはじめ、ミズゴケの中にもぐりこんで越冬の態勢になっているメス。なんかアズキ色になってるんですけど。



 この方は、目を閉じてすでに寝ちまっていますね。写真では多量の水でグショグショですが、これだと冬季に水が凍るとカエルにとってダメージになると思われます。これは日々の気温変動を緩和するための処置です。真冬になる前にもっと水を減らします。
 それではお休みなさい。以上は2004年〜2005年にかけての記録でした。

ニホンアマガエル

2014/05/01


 じつは筆者はカエルが苦手です。と言いつつこれまで17種ばかりのカエルの飼育経験があるのですが、きっぱり申してモリアオ君が素手で触れる限界です。トノサマガエルは弟と一緒にオタマから育ててことがあるのですが、とてもじゃないが触れません。あの腰骨がいけません。それより大きなものは絶対に無理です。ベルツノガエルなんか、可愛いSサイズが安価で市販されていますが、騙されてはいけません。やがてでっかくなります。
 水槽のガラス1枚隔ててくれれば平気なのですよ。でも、ケージのフタを開放し、彼と空気がつながったとたんに、局部麻酔をされたように手の感覚がなくなりまったく力が入りません。
 ヘビは平気なのにカエルがダメなんて動物好きの笑い物です。屈辱的です。でも仕方ないのですよ。幼少の頃にウシガエルに手を飲まれて以来、ジジィになった今に至るも呪いが解けないのです。
 その点アマガエルはいいです。可愛いうえに全然触れます。シュレーゲルでも大きなものだと、わずかな不安がありますが、アマガエルはまったくもって大丈夫です。この小さなカエルだけが呪いの及ばない天使です。

 以下は、今から10年前の記録です。


 山間の池でオタマをすくって来ました。本種は平地の都会化が進んだところでも見かけますが、オタマは都市の水域ではあまり見かけませんよね。都市のアマガエルはどこで繁殖しているんでしょうね。



 上の写真の2匹が、後脚が生え始めているのが判りますか? 上にいる子が少し判りやすいかもです。アマガエルのオタマはすぐに成長してしまいますよ。



 四肢が生えそろっても、立派な尻尾があるとまだ安心してしまいますが、こうなると上陸まで数日です。ケージのフタのすき間を点検して脱走に備えねばなりません。ご存じ、アマガエルは発達した吸盤でガラスでも平然と登りますから。



 はい、上陸しました。思うんですけど、飼育下では変態が早まるのでしょうか。自然界にいる方が長らくオタマでいてより大きなカエルになるとか。魚を飼っていらっしゃる方なら、水量と魚のサイズの関係を経験から熟知されているでしょう。溶存酸素量も重要です。大きな水槽でオゾン発生機など使用したならばバカでかい魚に育ちます。小さな水槽でこじんまり飼っていると大きくなりません。オタマにも同様の現象が出るのかもしれませんね。



 上陸したあとの生育を左右するのは餌づけです。餌づけが上手くゆかないとカエルは飼育の難しい動物になってしまいます。上手くゆくと丈夫で飼いやすい生き物です。
 オタマの頃、人を見ると寄ってきてバクバク餌を食べていたからと言って、カエルになっても人にベタ馴れというわけにはゆきません。ガラスを隔てて見る人影は、餌を放出する現象みたいなものですが、カエルの目で見る人間は匂いつき体温つきのリアルな存在です。
 餌づけの決めては、カエルの飼育環境への馴化です。観葉植物を入れてやると早く落ち着くとよく言われますが、そうかもしれません。そしてその環境に人が訪れることがカエルにとって当たり前になれば、飼育者の手から採餌するくらいに馴れてくれます。



 本種は、けっこう人に馴れやすいカエルだと思います。餌食いも良好です。ひとつ上の写真ではミルワームを食べていますが、動きが鈍くて捕まえやすかろうと最初は与えていたのですが、あの硬い虫は餌としてあまり適当ではありません。できればコオロギやゴキブリの幼虫を与えましょう。市販のレッドローチ(ゴキブリ)は、ストックも容易だしカエルの生き餌として最適ですね。



 茶色の個体です。もとは緑色でしたが、あるとき茶色の気分になったようです。自然界では保護色効果が上がるような変色が可能なようですが、飼育下では茶色になるメリットはなかったのですが。茶色になると同時に斑紋が出現しますが、これはシュレーゲルアオガエルにはない特徴です。シュレーゲルは緑のまま明るい色になったり暗色になったりといった変異が多いですね。



 上の写真は、茶色というかグレーに青がのった感じですが、これも飼育中に現れた変異です。けっこう綺麗でした。



 これは……、灰色の体にわずかに緑が残っているという変異です。カエルの変色は色素細胞の拡縮によって起こりますが、それが体中で一様とは限らないようですね。



 まだら模様が顕著に現れているのに緑がたっぷり残っている状態です。アマガエルの変色といってもじつに様々で楽しめます。

 カエルは乾燥に弱いというイメージがあるため、ケージの中を水浸しにする方が多いようですが、その必要はありません。多湿の方が温度変化を抑制できて良いのですが、温度変化がカエルへのダメージに直接つながることは少ないようです。それよりも夏場の高温時の多湿によって蒸し焼きにする方がピンチです。水域やその付近に棲むカエル以外は、テラリウムでの飼育が適切です。本種やアオガエル等は、水場を離れて暮らす陸生動物です。乾いたケージに時々水をスプレーしてやるといった方法が良いと思います。
 ポトス等の葉の厚くて広い観葉植物をケージ内に入れる人も多いようですが、これは適度な湿度も維持できて理想的でしょう。
 筆者は優しくないので、観葉植物は使いませんけど。植物を用いるとその世話も必要になります。植物を枯らしてしまうと、カエルは安心感を失うことになります。筆者はしばしば模造の葉を使ったりしてました。湿度調節には小さなタッパーに加水したミズゴケを入れていました。
 繁殖を試みる場合は、ドライな環境で飼い、充分に気温が上がった5月半ば頃から急に湿度を上げてやったりすると良いかもしれません。漫然と多湿で飼っているより繁殖行動を促すきっかけになると思います。

 うちで育てているレッドローチが、この冬あたりから爆発的に増えました。数日ごとに世話する際にいつも生まれたての新生幼虫がウジャウジャしてます。今なら生き虫食いの動物の飼育に困らないので、久々にこの可愛いカエルでも飼ってみようかな、なんて思っています。野原につかまえにゆくのは面倒なので、ネットの海を探してみようかと……。


ソバージュネコメガエル

2014/05/09


 カエルが苦手な筆者の限界への挑戦です。こいつは7〜8cmくらいあります。でかっ。かなりいかついです。これでもアマガエル科に属します。筆者がなんとか触ることに成功したのは、こいつが夜行性で昼間はじっとしていること、動作が緩慢で跳ねるような動きをほとんどしないこと、まろやかな丸みを帯びた体躯で、ゴツゴツした腰骨がないこと、ですかね。



 ずんぐりとした体躯に、夜行性に特化した目玉がよく目立ちます。明るい黄緑色もたいへんに美しいです。



 体側にそってくっきりとした白線があります。おしゃれっ。



 ニホンアマガエルは、腹面は白ですが、本種は腹面も緑色です。不規則な白いラインがあって、背面よりお腹の方が派手です。



 後ろ姿は、アマガエル的ですね。横から見るといかついです。日中は、薄めを開けたままこの体制で眠りこけています。



 夕方頃からモゾモゾと活動を開始します。けっこう物おじしない性格で、人の手から餌をもらうようになるのにそれほど時間がかかりません。ジャンボミルワームをピンセットでつまんで与えると、パクッと食いつくさまは、まぁ、可愛いかな。筆者はけっこうびびってますけど。



 明るさに応じて変化する虹彩の様子です。マブタもあります。目は突き出たり奥に引っ込んだりします。表情豊かだ。



 これはたぶんオス同士です。乗っかってる方は得意気ですが、乗られている方は不服そうな顔をしてますね。目が不機嫌です。なんか小さな声で、ブブブブとか言いながら追い払うわけでもなく、何時間も耐えていました。へんなの。



 夜です。お目目パッチリです。でも暗がりに合わせて体色は黒ずんでいます。



 大型の個体になると、背中にこぶ状の隆起が目立ち、目の上にも隆起が目立ちます。怖わっ。
 本種は体格の割には四肢が細長く、樹上をのっそりと移動します。ちいさなオランウータンみたいです。英名をワキシーモンキーフロッグ(蝋猿蛙)と言います。たしかにサルっぽいかもです。ワキシーの名は、本種が乾燥から身を守るために体液を分泌して、それを全身に塗りたくる即ちワックスがけすることに由来します。飼育下でも四肢を巧みに操ってボディにワックスがけする様子が見られます。
 南米の高山の乾燥地帯に棲息しているそうです。カエルとしてはかなり局地的な場所に特化したのでしょう。おかげでひじょうに個性的な生き物になりました。
 飼育環境にすっかり馴化した頃から、オスが大声で啼くようになり、家族の反対にあって手放すことになりました。啼くなよ。

アメフクラガエル

2014/05/08


 アフリカ南部に棲息する地中性のカエルです。乾燥した環境に特化した動物ですが、乾燥から身を守るために日中は地中にいるようです。幼生は卵の中で変態し、小さなカエルになってから孵化するので、生涯を通じて水とは無縁の暮らしをしているようですね。ただ、雨が降ると地表に這い出してきて採餌すると聞いたことがあります。



 とても柔らかな手触りの、なんというか、これはモチですね。ぷにょぷにょです。四肢は短くてずんぐりとした体の下に隠れています。とてもじゃないが俊敏な動きは不可です。いいですね、跳ねないカエル。



 なんとなくいつも不機嫌な顔をしています。カエルとしては口が小さいので、大きな虫は食べられません。また、跳躍力のあるコオロギなんかも餌として不向きです。レッドローチが理想的ですね。柔らかいし跳ねないし潜らないし。



 四肢は短くても、潜るのは上手ですよ。体を膨らませて硬度を保ち、後ろ向きに地中にもぐってゆきます。飼育下では潜りやすい、柔らかくてさらさらの土を用意し、底の方に多湿の腐葉土などを敷くと良いようです。



 怒ってます。2頭が地表で遭遇して威嚇し合っているのでしょうか。ご当人たちはかなり激怒していますが、飼育者から見ると可愛いすぎます。



 本種を土なしで飼育するのは困難でしょう。精神的に落ち着かないでしょうし、湿度を適切に管理できません。残念ですが、厚く敷いた土を用意してやり、そこに潜らせておくしかありません。餌は動きの緩慢な生き虫を地表に這わせておくとよいです。乾燥地の生き物なので採餌もあまりしないのかと思いきや、馴れれば意外と食べてくれます。主に夜間ですが。採餌を観察しようとケージ内に雨を降らせたり、掘り起こして餌を追わせたりしましたが、なかなか上手くゆきません。
 クワガタムシの飼育と同じで、飼育者は、そいつがいるであろう土を眺めているしかありません。どうしても見たいときに時々掘り返してやるのは問題ないですが。

 このカエルも飼っていたのは10年前のことなのですが、当時はフクラガエルの名で通っていたような気がします。それは筆者の周囲の間だけの話しでしょうか。ただしくはアメフクラガエルみたいですね。

ニホンアマガエル2

2014/05/10


 はい、と言うことでネットの海でアマガエルを捕獲してまいりました。この可愛い動物と再会するのも11年ぶりです。この間、不思議と自然界でも出会わなかったような。それだけ筆者が山歩きをサボッてたってことです。いえ、山に住んでるんですけどね。岐路は険しい上り坂なんですけどね。



 この子はまだひじょうに小さいです。今年変態したばかりかもしれませんね。アマガエルってどれくらい生きるんでしょう。これからよろしくお願いします。



 立派なメスです。今年はいまだに朝夕の冷え込みが強いのですが、繁殖シーズンは間もなく到来です。頑張ってください。



 5頭ばかりのケージなので、15cmのプラケースで良いかと。足場として模造のクネクネ枝と模造の葉をいれて、飼育レイアウトとしてはこれだけです。あとは、餌のレッドローチを撒いてやり、時おり気づいたときに水をスプレーしてやりましょ。
 アマガエルはけっこう乾燥に強いですが、これから暑い季節になるので、もう少ししたら、タッパーに加水したミズゴケを詰めて入れてやりましょう。水だけでも良いのですが、餌のレッドローチが水没して溺死するといやなので、足場用にミズゴケを入れておきます。なので、大量の水にミズゴケが浮いてるくらいの感じのものを用意します。
 レッドローチを撒いて、ケージ内にスプレーしてやると、1頭のオスがケロケロと短く啼き、目前の餌に飛びつきました。他の子たちも餌食べてました。小さいのに物怖じしないカエルです。

シュレーゲルアオガエル2

2014/05/10


 先日、むかしの飼育記録をほじくり返してカエルについて記述していると、久しぶりに実物に会いたくなって、ネットの海に探しに出かけました。いろんな生き物が棲んでいますよね、ネットの海には。で、本種と合わせてアマガエルを手に入れました。うちで飼ってるレッドローチが爆発的に増えたので、生き餌には困らないし。



 このメスは、なんと黄色い星がたくさんついてます。シュレーゲルと言えば無紋のイメージがあったので、びっくりです。暗色の体に黄色の点々がよく目立ちます。



 送って下さった方は、イエロースポットと呼称していました。なるほど。とてもよく肥えたメスです。



 こちらはオスです。ノーマル個体ということですが、よく見るとわずかに黄色い紋が見えます。こういう斑紋の出方は、以前にうちで飼っていた個体でも見受けました。あれは確か無紋から変化したものでした。シュレーゲルの体色や模様はずっと一定というわけではありません。



 無紋のメスです。じゃっかん暗い緑ですが、温度や明るさによって明るい緑に変わったりすることでしょう。



 今回は5頭を飼育するので、30cmのプラケースを使用しました。レイアウトに使っている植物は模造のものです。シュレーゲルはアマガエルに比べると乾燥に弱いのと、神経質な面があるので、落ち着かないようなら観葉植物を入れてやろうかと考えています。あと、これからの季節は水入れは必須ですね。それに加えてスプレーによる散水もしてやります。
 カエルたちが落ち着いたかどうかは、餌を食べているかどうかで判断します。また、精神面は個体によっても差異があるので、採餌しない個体があれば隔離して面倒みてやらねばなりません。
 以前に飼っていた時は、観葉植物やシェルターを用いなくてもおおむね良好でしたけどね。

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