とりたち
筆者が子供の頃は、ペット屋さんにはたくさんの小鳥がいました。小鳥と熱帯魚は、イヌやネコに比べて手軽で種類が豊富で、ひじょうに人気がありました。筆者も小学生の頃にジュウシマツを、中学になってからセキセイインコを育て、いずれも繁殖に成功しています。それから長いブランクがあって、息子が幼稚園児くらいの時に、夏の夜店のペットくじで当てたウズラの雛を育て、たくさん卵を産ませました。ウズラは繁殖には至りませんでした。
1990年代までは、ペットショップで多数の小鳥を見かけたのですが、それから急に彼らはペット業界から姿を消してしまいました。21世紀初頭から日本でも感染が拡大した鳥インフルエンザがペットの小鳥たちを人から遠ざけてしまったということを聞いたことがありますが、ニワトリと観賞用の小鳥たちは別物だと思うのですが。
むかしは、カナリヤやブンチョウ、種々のインコやオウム、メジロ、キュウカンチョウなど、様々な鳥類が市販されており、ご近所でもそこここで鳥たちの鳴き声を聞いたものです。その多くは大空を飛行する動物ですが、小さな鳥かごの中でも長生きし、飼育下での繁殖が難しくない種も少なくありませんでした。
現在は、爬虫類ショップでフクロウやミミズクといった小型の猛禽類が手に入ります。人に慣れたオウムやインコとちがって、それほどかまってやらなくても平気な、人々が古くから親しんできた鳥類とはかなり毛色がちがいます。
鳥類はまた動物のインプリンティングの好例として人々によく知られており、生後間もない雛鳥から育てると、人間に対してまったく警戒心のない鳥に育ちます。いわゆる手乗りですね。鳥類の多くは育児の習性を有しており、人から餌をもらって育つと、人と鳥との親子関係が生涯続きます。これに対して鳥に育てられた鳥は、たとえ人工の飼育下で育ったとしても人に近づこうとはしません。筆者の経験では、人が手を出そうとしない限り、人が近くにいても平気で、餌を差し出すと寄ってくるていどには馴化するようです。
鳥類は、現在ひじょうに繁栄している動物群です。かつて新生代のはじめ、恐竜たちが滅亡したあと、哺乳類の進化に先んじて大型化と生活圏の拡大を進め、現生のダチョウよりもずっと大きな鳥類が進化し、地上で支配的地位を獲得しようとしましたが、間もなく勢力を増してきた哺乳類にそれを阻まれてしまいます。その後、支配的地位は哺乳類に譲ったものの、小型から中型サイズのひじょうに多くの種類が地球上のあらゆるところに進出し、繁栄しています。
鳥類は、中生代初期に原始的な恐竜の仲間から分化しました。その進化系統だけを理由に、鳥類を恐竜の仲間のひとつとし、爬虫綱に分類する学者もいると何かで読んだことがあるのですが、確かに鳥類の骨格はひじょうに恐竜的です。恐竜の営巣地は古くから見つかっており、彼らの中に育児を行なったものが多数いたことが知られていますが、近年の研究では、一部の恐竜に羽毛があった可能性があるそうで、ますます鳥類との共通点が多くなってまいりました。
鳥類は、基本的には哺乳類と同じ内温動物で、自ら発熱して恒温性を維持していますが、その恒温性は哺乳類ほどではなく、鳥類の中には自分の体温があまりあてにできず、他の鳥の巣に産卵して抱卵から育児までを任せてしまう托卵という習性を持つものがたくさんいます。哺乳動物の中に育児を他者に委ねる者はほとんど見当たらないのに対し、鳥類ではかなりの種類この習性が持つものがいます。筆者の家の近くでよく声を聞くホトトギスやカッコウも托卵の習性があります。
鳥類が、哺乳類ほど高い恒温性を獲得しなかったのは、彼らが今よりもずっと温暖だった中生代に恐竜類と平行して進化し、それなりの繁栄を築いていたからでしょう。自らそれほど発熱しなくても高い気温がそれを補ってくれましたし、発熱にエネルギーを消費するよりも身軽に機敏に動き回ることの優位性を彼らは重視したのでしょう。
中生代の鳥類と平行して進化した恐竜のうち、ひじょうに大型化の進んだ種は、内温性をほとんど有していなかったでしょう。彼らの巨体は日光でひとたび温められると、夜間でも冷めきってしまうことはなく、日が昇るとすぐに活動できたでしょう。夜間でもけっこう動き回れたかも知れません。一方小さな種では、体の体積に比べて表面積が大きくなるので夜間にはすぐに放熱してしまったでしょう。それを防ぐために彼らは近縁の鳥類と同じように羽毛を発達させ、あるていどの内温性(発熱)も獲得していたかも知れません。
恐竜類が滅びてしまったあと、彼らは鳥類に姿を変えて生き残ったという表現を、某テレビ番組ではしていました。この表現だと、恐竜たちが進化して鳥類になったと誤解する人がいるかも知れませんが、恐竜と鳥類の共通の祖先が原始的な恐竜だったというのであって、鳥類の祖先があの大型動物だったと考えるのはまちがいです。
それにしても恐竜類と鳥類には共通点がひじょうに多く、絶滅してしまった恐竜の生きていた時の姿を想像する上で現生の鳥類を参考にすることは重要です。しかしながら鳥類を爬虫綱の一部と考えるのには賛成できません。系統(あるいは血統)は同じでも、鳥類のその後の進化のドラマは恐竜類とはまったく別ですし、他の爬虫類ともちがっています。中生代が終わり新生代が訪れる地質時代の入れ代わり期には、劇的な気象の変化があり、爬虫類は恐竜だけではなく大型のものを中心に壮大な絶滅を遂げました。そして鳥類はその空席を埋めるべく一気に適応放散と大型化を開始し、その中に彼らと同じように羽毛や内温性を持つ恐竜は含まれませんでした。恐竜は鳥類に姿を変えたのではなく、中生代に終焉を迎えたのです。
ペットショップやご近所の家や庭先からかごの鳥たちの声が聞かれなくなった現在、筆者は山岳地に越してきたせいで、毎日多数の野鳥を目撃しその声を聞くようになりました。野鳥愛好家にとってはうらやましい環境です。しかしながら現生の鳥類に対して不勉強な筆者は、鳥を見かける度に、大きな小鳥だなぁとか、色がきれいだなぁとか、育児中の巣を見つけて、何の鳥だろう、そんなふうに思っているだけです。もったいないですね。
筆者の家の軒下で鳥が巣を作ったこともありますし、巣から落ちた雛鳥が庭で騒いでいたこともあります。ご近所さんの中には、鳥たちのために果物を庭のフェンスに刺していたりするのも見かけます。道を歩いているとかなり人が接近しても飛び立たない鳥もいて、ここいらの人たちが鳥が嫌いじゃないことが判ります。でも鳥を飼っているご家庭は見当たりません。
筆者の家からそう遠からぬところ(車で十数分)に、むかしながらの小さなペット屋さんがあって、以前に熱帯魚や川魚を買ったことがあるのですが、そこには小鳥もたくさんいて、しきりにさえずっていました。今のご時世、どこで小鳥たちを仕入れるのでしょうね。
1990年代までは、ペットショップで多数の小鳥を見かけたのですが、それから急に彼らはペット業界から姿を消してしまいました。21世紀初頭から日本でも感染が拡大した鳥インフルエンザがペットの小鳥たちを人から遠ざけてしまったということを聞いたことがありますが、ニワトリと観賞用の小鳥たちは別物だと思うのですが。
むかしは、カナリヤやブンチョウ、種々のインコやオウム、メジロ、キュウカンチョウなど、様々な鳥類が市販されており、ご近所でもそこここで鳥たちの鳴き声を聞いたものです。その多くは大空を飛行する動物ですが、小さな鳥かごの中でも長生きし、飼育下での繁殖が難しくない種も少なくありませんでした。
現在は、爬虫類ショップでフクロウやミミズクといった小型の猛禽類が手に入ります。人に慣れたオウムやインコとちがって、それほどかまってやらなくても平気な、人々が古くから親しんできた鳥類とはかなり毛色がちがいます。
鳥類はまた動物のインプリンティングの好例として人々によく知られており、生後間もない雛鳥から育てると、人間に対してまったく警戒心のない鳥に育ちます。いわゆる手乗りですね。鳥類の多くは育児の習性を有しており、人から餌をもらって育つと、人と鳥との親子関係が生涯続きます。これに対して鳥に育てられた鳥は、たとえ人工の飼育下で育ったとしても人に近づこうとはしません。筆者の経験では、人が手を出そうとしない限り、人が近くにいても平気で、餌を差し出すと寄ってくるていどには馴化するようです。
鳥類は、現在ひじょうに繁栄している動物群です。かつて新生代のはじめ、恐竜たちが滅亡したあと、哺乳類の進化に先んじて大型化と生活圏の拡大を進め、現生のダチョウよりもずっと大きな鳥類が進化し、地上で支配的地位を獲得しようとしましたが、間もなく勢力を増してきた哺乳類にそれを阻まれてしまいます。その後、支配的地位は哺乳類に譲ったものの、小型から中型サイズのひじょうに多くの種類が地球上のあらゆるところに進出し、繁栄しています。
鳥類は、中生代初期に原始的な恐竜の仲間から分化しました。その進化系統だけを理由に、鳥類を恐竜の仲間のひとつとし、爬虫綱に分類する学者もいると何かで読んだことがあるのですが、確かに鳥類の骨格はひじょうに恐竜的です。恐竜の営巣地は古くから見つかっており、彼らの中に育児を行なったものが多数いたことが知られていますが、近年の研究では、一部の恐竜に羽毛があった可能性があるそうで、ますます鳥類との共通点が多くなってまいりました。
鳥類は、基本的には哺乳類と同じ内温動物で、自ら発熱して恒温性を維持していますが、その恒温性は哺乳類ほどではなく、鳥類の中には自分の体温があまりあてにできず、他の鳥の巣に産卵して抱卵から育児までを任せてしまう托卵という習性を持つものがたくさんいます。哺乳動物の中に育児を他者に委ねる者はほとんど見当たらないのに対し、鳥類ではかなりの種類この習性が持つものがいます。筆者の家の近くでよく声を聞くホトトギスやカッコウも托卵の習性があります。
鳥類が、哺乳類ほど高い恒温性を獲得しなかったのは、彼らが今よりもずっと温暖だった中生代に恐竜類と平行して進化し、それなりの繁栄を築いていたからでしょう。自らそれほど発熱しなくても高い気温がそれを補ってくれましたし、発熱にエネルギーを消費するよりも身軽に機敏に動き回ることの優位性を彼らは重視したのでしょう。
中生代の鳥類と平行して進化した恐竜のうち、ひじょうに大型化の進んだ種は、内温性をほとんど有していなかったでしょう。彼らの巨体は日光でひとたび温められると、夜間でも冷めきってしまうことはなく、日が昇るとすぐに活動できたでしょう。夜間でもけっこう動き回れたかも知れません。一方小さな種では、体の体積に比べて表面積が大きくなるので夜間にはすぐに放熱してしまったでしょう。それを防ぐために彼らは近縁の鳥類と同じように羽毛を発達させ、あるていどの内温性(発熱)も獲得していたかも知れません。
恐竜類が滅びてしまったあと、彼らは鳥類に姿を変えて生き残ったという表現を、某テレビ番組ではしていました。この表現だと、恐竜たちが進化して鳥類になったと誤解する人がいるかも知れませんが、恐竜と鳥類の共通の祖先が原始的な恐竜だったというのであって、鳥類の祖先があの大型動物だったと考えるのはまちがいです。
それにしても恐竜類と鳥類には共通点がひじょうに多く、絶滅してしまった恐竜の生きていた時の姿を想像する上で現生の鳥類を参考にすることは重要です。しかしながら鳥類を爬虫綱の一部と考えるのには賛成できません。系統(あるいは血統)は同じでも、鳥類のその後の進化のドラマは恐竜類とはまったく別ですし、他の爬虫類ともちがっています。中生代が終わり新生代が訪れる地質時代の入れ代わり期には、劇的な気象の変化があり、爬虫類は恐竜だけではなく大型のものを中心に壮大な絶滅を遂げました。そして鳥類はその空席を埋めるべく一気に適応放散と大型化を開始し、その中に彼らと同じように羽毛や内温性を持つ恐竜は含まれませんでした。恐竜は鳥類に姿を変えたのではなく、中生代に終焉を迎えたのです。
ペットショップやご近所の家や庭先からかごの鳥たちの声が聞かれなくなった現在、筆者は山岳地に越してきたせいで、毎日多数の野鳥を目撃しその声を聞くようになりました。野鳥愛好家にとってはうらやましい環境です。しかしながら現生の鳥類に対して不勉強な筆者は、鳥を見かける度に、大きな小鳥だなぁとか、色がきれいだなぁとか、育児中の巣を見つけて、何の鳥だろう、そんなふうに思っているだけです。もったいないですね。
筆者の家の軒下で鳥が巣を作ったこともありますし、巣から落ちた雛鳥が庭で騒いでいたこともあります。ご近所さんの中には、鳥たちのために果物を庭のフェンスに刺していたりするのも見かけます。道を歩いているとかなり人が接近しても飛び立たない鳥もいて、ここいらの人たちが鳥が嫌いじゃないことが判ります。でも鳥を飼っているご家庭は見当たりません。
筆者の家からそう遠からぬところ(車で十数分)に、むかしながらの小さなペット屋さんがあって、以前に熱帯魚や川魚を買ったことがあるのですが、そこには小鳥もたくさんいて、しきりにさえずっていました。今のご時世、どこで小鳥たちを仕入れるのでしょうね。