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自然史博物館

 2016年の6月、友人に誘われて長居公園にある大阪市立自然史博物館を訪れました。息子が幼い頃に恐竜展を観に行って以来ですから、20年以上のご無沙汰です。以前の建物についてはまったく覚えていませんが、白を基調にした優美な建物になっていたのでびっくりしました。現在の建物はそう古くはなさそうです。
 福井県の恐竜博物館では、中生代の爬虫類を中心に、新生代の哺乳動物までの骨格標本が主な展示内容でしたが、今回は「生命大躍進展」と題する催しで、古生代の節足動物やそれ以前の原始的な生物の化石、あるいは古生代の魚類の化石などが充実していて、これまで自分があまり研究して来なかった生物の標本がたくさんあったので、なかなか興味深かったです。
 カナダのバージェス動物群の化石には、カンブリア爆発時代に一時的に出現した奇妙な系統のはっきりしない海洋動物たちには驚かされるばかりです。現在では彼らについて紹介した文献や写真、図、CG動画といった資料が豊富に出回っていて、絶滅動物としては恐竜に次いで人気者になるほど有名になりましたが、地球全体が海で覆われたカンブリア紀には、ひじょうに多種多様の動物系統が実験的に出現し、それが現在の節足動物や軟体動物へと収束していった様子がしのばれます。
 アノマロカリスやオパビニアのような動物の子孫たちが、主流を成す系統として存続していたら、現在の動物たちの様子もずいぶん変っていたことでしょう。

 展示はその後の節足動物や軟体動物、甲冑魚をはじめとする古生代の魚類、そして陸地を目指した脊椎動物、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類に及ぶ展示があり、古代人類についてもかなり詳しく説明してありました。
 期間限定のイベントではありましたが、標本数もひじょうに多く、カンブリア爆発以降の動物の歴史を学ぶうえでひじょうに勉強になる展示であったと思います。

バージェス動物群

2016/11/25


 カナダのブリティッシュコロンビア州の頁岩中から発見された有名な化石群です。嫌気性の粘土質で一気に化石になったと推察され、動物の軟質部分もよく保存されており、体組織がかなり克明に観察できるものも多いそうです。
 年代的には、5億年〜5億3000万年前で、カンブリア爆発から少し経過した生物の多様化がひじょうに進んだ頃の化石が多数出土しています。
 これよりもさらに古くはオーストラリアのエディアカラ生物群が有名ですが、先カンブリア時代の生物化石で構成されたこの生物群に比べ、バージェス動物群のそれはより進化的で多様化が進んだユニークな動物が多数見られます。
 カンブリア紀には動物を分類するうえでのグレードの1つである"門"が出そろったと言われていますが、バージェス動物群に含まれる動物の中には、現在知られている以外の門に属する、いわゆるまったく別系統の動物が存在する可能性があります。
 体長数十cmから1mを越えるような大型種でありながら、系統が今もってはっきりしない奇妙で個性的な動物が多数見つかっていることは、驚くべきことですね。カンブリア爆発によって進化に加速がついた動物たちの様々な仕様が試され、試行錯誤され、その多くの系統が後生に子孫を残すことなく滅んで行ったのでしょう。

先カンブリア時代

2016/11/27


 地球は約46億年前に誕生したとされていますが、最初の約40億年以上の間は生命の目覚ましい進化はありませんでした。約5億4200万年前になって初めて肉眼で見えるサイズの硬質の殻を持った生物が化石として残り、それから1200万年ばかりの間に生物の急激な進化と多様化が起こりました。この間に動物では分類学上のすべての"門"が出そろい、この大躍進はカンブリア爆発という呼称で知られています。
 生物の目覚ましい進化のドラマが展開される5億4200万年の歴史は、ご存じのように古生代、中生代、新生代の地質時代に区分されていますが、これをまとめて顕生代とも呼称します。これに対して先カンブリア時代は隠生代です。

 隠生代すなわち先カンブリア時代には、灼熱の火の玉であった地球表面が徐々に冷めて地殻ができあがり、地中より噴出した水蒸気が雨となって降り注いで、地殻をさらに冷ますと共に海洋が形成され、有機物が生成され、生命の元が誕生した時代でした。
 初期の生物は、水に浮かべた油のような有機物の液滴(顕微鏡サイズ)のものや、核酸を有して自己増殖するウイルスであったと思われます。原核生物と呼ばれる細胞と核酸から成る原始生物は、有機液滴とウイルスの両方の特性を備えたような存在で、有機液滴とウイルスの共生によって生じたのかもしれません。
 ウイルスは細胞を持たず、他の生物に感染し自己増殖をする原始生命で、生物の最小単位である細胞を持たないことから生物ではなくその前段階であるといった言われ方をよくします。しかしながらウイルスは核酸(DNAまたはRNA)を有し、自己増殖には遺伝情報を利用できるので、それを持たない有機液滴よりも増殖(自己複写)という点では機能的です。
 一方、有機液滴の方は外界と体内を隔てる皮膜を持ち、高等な者では近くの有機物を取り込んで栄養にしたり、原始的な光合成によって滋養を形成したりといったことができるようになったものの、自己増殖は、あるていど成長すると体積的な限界に達して2つに分裂するといった乱暴な方法に依っていたのでしょう。
 ウイルスはそうした大型の有機物の集合体を見つけてはそれに感染し、自己増殖をしていましたから、やがてウイルスが感染した状態の有機液滴が、初期の生物細胞へと進化したのかもしれません。
 以上は筆者が想像する生物誕生の1つの仮説に過ぎませんが。

 細胞と遺伝子を持つ最初の生物であるバクテリアが誕生したのは、今から約35億年前よりも古いと言われています。バクテリアは明瞭な細胞核を持たない原核生物ですが、やがて細胞核に遺伝子を格納した真核生物が進化すると生物細胞はより大型で多機能になりました。そして真核生物は複数の細胞から成る多細胞生物へと進化しました。
 現生の生物の中には、原核生物でありながら簡単な多細胞構造を持つものがいたり、真核生物であっても単細胞のものが存在したりします。ただ、多細胞であっても同じ細胞が寄り合っているか、機能が異なる細胞が集合して1個の生物を構成しているかには大きなちがいがあります。
 動物の場合は、完全な多細胞生物を後生動物と呼んでいます。後生動物の中でももっとも原始的な海綿動物は、どこからどこまでが1匹なのかよく判らないようなコロニー状をしていますが、それ以降の動物は真正後生動物としてくくられ、1匹1匹がはっきりした動物です。
 いずれにしろ、原核生物が誕生しそこから多細胞生物が導かれるのに25億年以上を要したと言われています。

 先カンブリア時代は、化石証拠も不充分なよく解らない時代であるわけですが、その長い歴史の中で生物の基礎が構築されました。そして先カンブリア時代末期には、海洋のかなり深いところまで凍結し、地球丸ごと氷に覆われる大規模な氷河時代が到来し、やがてそれが氷解すると多細胞生物の最初の躍進がありました。
 スノーボールアースというユーモラスな表現がされる大氷河時代のあと、地球は海洋で埋めつくされ、そこで様々な生物が一気に進化しました。オーストラリアで見つかったエディアカラ生物群には、先カンブリア時代末期に花開いた様々なユニークな生物が含まれます。そしてこの生物群の登場は、動物の躍進的な進化が導かれたカンブリア爆発を誘致するたいへん貴重なできごとでした。
 エディアカラ生物群以前の生物の歴史は、ウイルスからバクテリア、そして真核生物、多細胞生物という生物の基礎を構築する長い長い準備段階でしたが、35億年前頃から活躍した藍藻類すなわちシアノバクテリアは、大量の遊離の酸素を製造し、後の好気性生物の歴史の基礎を築きました。
 生物はもともと酸素のない世界で暮らしていたのですが、初期のバクテリアである藍藻類の光合成によって大量の酸素がもたらされたおかげで、大型で酸素を呼吸する生物が住める環境が整ったのでした。

ストロマトライト

2016/11/27


 オーストラリアで発見された約27億年前の化石(実物)です。
 ストロマトライトとは、藍藻類と堆積物が層を成して化石になったものです。ストロマトライトを構成する藍藻類は、先カンブリア時代にそれまで無酸素状態だった大気と海に大量の遊離の酸素をもたらしたバクテリアです。藍藻類はまたシアノバクテリアあるいは藍色細菌とも呼ばれ、多数の現生種が存在します。



 先カンブリア時代の藍藻類はおそらく最初に光合成を行なった生物で、彼らが世界的に繁栄したおかげで地球上の海と大気には酸素が含まれるようになりました。とくに大気は多くの酸素を含むようになるときれいに澄み渡り、太陽からの紫外線を大幅にカットするオゾン層が形成されました。
 それまでの地球表面は、大量の紫外線や宇宙線の照射を受けた電子レンジ状態で、そのおかげで生物を構成するのに必要な有機化合物が生成されました。やがて生物が誕生すると、紫外線や宇宙線は体組織を焼いてしまうたいへん危険なものになったわけですが、藍藻類が大量の酸素を放出したおかげで紫外線や宇宙線は安全レベルまでカットされました。



 しかしながら、なんでも酸化させてしまう酸素もじつは生物にとって危険な分子であったのですが、やがてこれを利用して栄養素を燃焼しエネルギーを得る好気性のバクテリアやさらに進化した生物が出現すると、そうした生物にとって酸素は必要不可欠なものとなりました。
 光合成によって光エネルギーを栄養に変える生物と、他の生物を摂取してそれを酸素で燃焼してエネルギーを得る生物は、それぞれ植物界および動物界を構成する多細胞生物として進化発展を開始するわけですが、カンブリア時代末期以降は、藍藻類を食べる生物が増え、おかげで地球に大量の酸素をもたらしたストロマトライトを構成する藍藻類は急激に減少してゆきました。
 現在、藍藻類は光合成生物としては少数派の微生物になってしまいましたが、バクテリア以降の高等生物が存在しなかった頃の彼らの祖先が、その後の生態系の基礎を築いたのでした。

ボーキシア

2016/11/27


 海綿動物の一種です。海綿動物の仲間は、後生動物すなわち多細胞生物ではあるものの、細胞間の連結はゆるく器官の分化が明瞭ではありません。同じ細胞が寄り合っただけの単細胞生物のコロニーよりは組織的ではあるものの、細胞ごとの役割分担が曖昧で、原生動物に対して後生動物として区分されているものの、さらに進化的な他の多細胞生物は真正後生動物としてくくられ、海綿動物はそこからは仲間外れです。



 5億800万年前(カンブリア紀中期)カナダ、ブリティッシュコロンビア州(実物)。



 生前の想像図。動物というよりも外観的には植物みたいですね。岩などに固着し、海水を濾過して微生物等の栄養分を得ていました。現生の海綿動物もこの当時と同じ暮らしをしています。

ピラニア

2016/11/30


 ピラニアというとアマゾンの人食い魚を思い出しますが、これはバージェス動物群に属する海綿動物の仲間です。属名は Pirania で、アマゾンの魚類のピラニアの属名は Pygocentrus、英名が piranha となります。
 牛乳ビンを逆さにしたような円筒形の体に多数の毛状の突起を持っています。



 5億800万年前。カナダ、ブリティッシュコロンビア州(実物)。



 カンブリア紀の海底では、サンゴの仲間(刺胞動物門)よりも海綿動物の仲間の方が幅を効かしていたのではないかと思われます。サンゴはカンブリア紀初期にはすでに出現していますが、大きなコロニーを形成するサンゴが出現するのは古生代オルドビス紀(約4億8830万年前〜)以降であると言われています。
 現生のサンゴの仲間は、広大なコロニーを形成し、その死骸はサンゴ礁として多くの生物がシェルターとして利用したりする、いわゆる海底における植生のような役割を担っていますが、カンブリア紀はその役目を海綿動物が担っていたのかもしれません。

エッフェリア

2016/12/02


 ひじょうにシンプルな形態の海綿動物です。カイメンの仲間としても原始的な、言わば後生動物の初期のものなのかも知れませんね。
 海綿動物門の仲間は、現生のセンモウヒラムシ(平板動物門)と共に側正動物亜界を構成しています。器官の分化が不明瞭で、単細胞生物から多細胞生物への移行型の原始的な動物群です。これに対して刺胞動物門や有櫛動物門以降のすべての動物を含む真正後生動物亜界の仲間は、器官の分化がはっきりしていて、形態的にもしっかりしています。刺胞動物や有櫛動物では放射相称型(傘のように放射状に相称)がはっきりしており、それより高等な仲間では左右相称型(体が左右対称になる)がはっきりしています。海綿動物も基本的には放射相称なのですが、固着している立地条件によって形状はけっこういい加減なものになりがちです。



 5億800万年前(カンブリア紀中期)カナダ、ブリティッシュコロンビア州(実物)



 現生の海綿動物は、無性生殖のものと有性生殖のものがあり、有性生殖であっても雌雄同体のものと雌雄異体のものがあります。太古の海綿動物はもともと無性生殖であったのでしょうが、この仲間からすでに有性生殖への移行が始まりつつあったのかもしれません。
 太古の動物の復元図はしばしば色鮮やかな動物として描かれていますが、生物にとって色というのは、他者を惹きつけたり警戒させたりといったシグナル的働きが強く、視力の弱い、あるいは色を見分ける能力の低い動物にはほとんど意味を成しません。動植物の色づかいが鮮やかになってきたのは、強力な捕食動物が進化してきてからのことではなかったか、そんな気がします。カンブリア爆発の最初の頃の生物はほとんどが地味な色合いのものであったと思われます。

ディラフォア

2016/12/02


 腕足動物門の仲間は、現生種にシャミセンガイ等が存在しますが、形態的には軟体動物門の二枚貝に似ています。二枚貝の仲間が体の左右に殻を持つのに対し、腕足動物は上下(腹背)に殻を有します。復元図ではカイメンやサンゴのように固着生活を送っていたようですが、現生種のようにモソモソと歩くことができたのかもしれません。



 5億800万年前(カンブリア紀中期)カナダ、ブリティッシュコロンビア州(実物



 彼らの暮らし向きもカイメンやサンゴと同様、デトリタス(水中や水底の生物の残骸等)や微生物食いです。
 動物が体に硬質のパーツを持ち始めた頃の生き物です。

ミクロミトラ

2016/12/02


 その名が示すようにひじょうに体長数ミリの小さな生き物で、腕足動物門の仲間です。二枚貝のような殻を持っていますが、二枚貝のように砂の中に潜ったりするよりも、岩や海綿動物などに固着して暮らしていたのでしょう。



 5億800万年前(カンブリア紀中期)カナダ、ブリティッシュコロンビア州(実物)



 展示されていた復元図では、長い繊毛あるいは触手のようなものが見られますが、これで水中に漂うデトリタス(水中や水底の生物の残骸)や微生物を捕獲していたのでしょう。もっともこの毛はイソギンチャクのそれのようには発達しておらず、水流から獲物を濾しとる役割を果たしていたと思われます。

オルスロザンクルス

2016/12/04


 わずか数ミリの原始的な軟体動物(厳密にはちがう、次項参照)です。体側からはモシャモシャとひじょうに長い毛が生えているほか、スパイク状の棘を多数備えていました。また背面前方には殻を有し、腕足動物と軟体動物をつなぐ特徴を持っていたようです。



 5億800万年前(カンブリア紀中期)カナダ、ブリティッシュコロンビア州(実物)
 軟体動物の仲間は、腕足動物の一種から分かれたのかもしれません。軟体動物の仲間からは後に腕足類に似た硬質の殻を持つ二枚貝の仲間が出現しています。
 

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索引


目次

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