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フトアゴヒゲトカゲ

 最初に本種を知った時、あまりにも不細工な和名に嫌悪感を覚えました。ショップの水槽の中にいる彼らはひじょうに風格があり、ミニドラゴンといった雰囲気をていしているのに、フトアゴヒゲトカゲって……。命名者のセンスのなさに呆れます。モリドラゴン類やウォータードラゴンのようにカッコイイ通り名で流通している種もあるというのに。フトアゴヒゲトカゲも原産国のオーストラリアでは、ベアーデッドドラゴンという英名で呼ばれているのに。もっともこの英名を直訳すると、あごひげ竜なんですけどね。
 ニホントカゲやニホンカナヘビを野山で見かけた経験は誰にでもあると思いますが、彼らに比べると、フトアゴヒゲトカゲはでかくてどっしりしていて、アニメやゲームに登場するドラゴン的です。今にも口から火とか吹きそうです。飼育下では比較的短時間で人に馴れるようになり、物陰に隠れることもほとんどありません。昼行性で昼間活動し夜間はぐっすり眠りますが、夜間でもシェルターに潜り込んだりせずに無防備な体勢で寝ています。警戒心とかないんですかね。野生暮らしは無理だなぁ、と呆れてしまいます。




 ↑フトアゴヒゲトカゲの幼体


 オーストラリアやアフリカや中東のアガマ科のトカゲたちやイグアナ科の仲間には、飼育下では人間によく馴れるものが少なくありません。頭胴長が15cmていどになる中型種で、乾燥地帯に棲むトカゲにこの傾向があるように思えます。大型スキンク科のアオジタトカゲもよく馴れますね。彼らもまた乾燥地帯に棲息しますが、乾いた痩せた土地では敵も少なく、警戒心があまりないのでしょうか。これはなんの根拠もない憶測ですけどね。そう言えばベタ馴れヤモリで有名なヒョウモントカゲモドキも乾燥地帯性です。
 これら乾燥系トカゲの中でもとりわけ人への馴化が早いのが本種だと思われます。幼体のうちから人の手から餌をもらうようになりますし、ハンドリングにもすぐに馴れます。そこそこ育ったサイズであまり人に触れられた経験を持たないような個体でも、捕まえようとしても逃げないし、捕まえられてバタバタ暴れるのも最初のうちだけで、すぐに馴れてくれます。




↑日光浴をする子供たち


 加えて頑健で入手しやすく、トカゲ入門にうってつけの種だと思われますし、多くのショップでもそのように案内しているでしょう。ベテランの飼育者ではコンスタントに自家繁殖させていますし、冬場は休眠させて飼育の手間を省くような飼い方をする人さえいます。しかしながら、幼体の飼育が意外に難しかったり、飼育環境に合わずに餌を取らなくなり衰弱してしまう個体もいます。ショップの方に、このトカゲは大丈夫です、安心です、自信を持って推薦できます。なんて言われて連れて帰ったところ、元気をなくし衰弱して行くさまを見続けなければならないといった事態に陥ることは、皆無ではないのです。また、最初に飼った個体がひじょうに上手く飼育でき、次の個体を買い求めたところ、見る見るやせ細ってしまったということもありがちです。
 筆者は、じつは爬虫類初心者の頃の方が、こうした失敗に遭遇しませんでした。たまたま上手くいっていたわけで、その成功事例からは多くを学べませんでした。結果、そこそこベテランになってから数々の問題に遭遇したような次第です。

 この魅力的で可愛くて風格も兼ね備えるトカゲについて、そうした利点ばかりがネット上や専門書に記載され、失敗例や失敗の危険性について述べられていることは少ないように思います。なので、本章では、フトアゴヒゲトカゲのデメリットと解決策についてなるべく書いて行こうかと考えています。メリットの部分は他でたっぷり述べられていますからね。
 少しでも多くの飼育者が、本種を失敗なく健康に飼い続け、苦い経験や失望を減らせるようになればと願っています。




拒食と光周期

0213/08/27


 飼育動物が餌を食べてくれないというのは、飼育者にとって最も大きな悩みのひとつであり、しかもなかなか解決困難な問題だったりします。筆者も様々な動物を飼育してまいりましたが、わけても爬虫類や両生類はこの問題に悩まされることが多いように思います。他の動物の場合、飼育環境への馴化がたいへん困難な種やその動物にとって適切な餌を用意できないような場合に拒食が起こり、それら飼育難易度の高い種を避け、飼いやすい種の健康的な個体を入手できれば、積極的に採餌してくれることが多いです。ところが、爬虫類では飼育難易度が低く初心者向きと言われる種でさえ、しばしば拒食を来し、飼育者を困らせます。
 爬虫類が飼育下において拒食しやすい原因のひとつは、彼らが外温動物であるからでしょう。内温動物である哺乳類や爬虫類では、ものを食べないことは死に直結します。体内にエネルギーがないと体温を維持できないからです。しかし外温動物では、体温の維持を外気温に依存しているので、その分エネルギーの消費量が少なくて済み、哺乳類ほど多くの食料を必要としません。

 また、体温が下がると食物を充分に消化できなくなり、未消化の食物がいつまでも体内にあるとそれが腐敗して体調管理に影響します。爬虫類にとって消化不良は深刻な問題で、腹の中で食物が腐って有害な細菌が繁殖したりガスが発生したりするのを防ぐために、餌を吐き戻してしまうことがあります。トカゲはヘビのように上手く吐き戻すことが苦手で、腹の中の未消化物の腐敗によって体調を崩したり、そのまま死に至ることも少なくありません。したがって外気温が充分でないと判断した場合は、餌を食べようとしません。採餌することで身を危険にさらすことになりかねないからです。
 ショップでは積極的に採餌しておりひじょうに良好な健康状態を維持していた個体が、買って帰ったとたんに餌を食べなくなる。そんな経験をした覚えのある飼育者は少なくないでしょう。飼育温度は適切な状態を維持しているのに。ショップの人に尋ねてみると、飼育環境に馴れていないせいという答えが返ってくることが多いと思われますが、馴れないと採餌しないというのはそもそもどういうことなのでしょう。
 ショップの方に教わって適切な温度と光環境を整え、餌もそれまで食べていたものと同等なものを用意したのに食べてくれない。新しいケージは匂いがちがうからでしょうか。それもあるでしょう。しかしそれよりも飼育動物にとって気になるのは温度変化だと思います。フトアゴヒゲトカゲのような昼行性の動物を飼育するには、必ず昼夜の差異を設けてやらねばなりません。屋内で飼う場合には、照明の入り切りによって昼夜のちがいを演出し、彼らに活動時間と休眠時間を設けます。この光周期に問題があるのではないでしょうか。


↑日光浴をするフトアゴヒゲトカゲ。外温動物でも昼行性で活発に動き回る動物の多くは日光浴をする。

 一般に昼行性の生き物を飼育する場合、光周期はおおむね自然の周期に合わせます。すなわち昼間は照明をほどこし、夜間は消灯します。これを逆に行なっている方はあまりいないでしょうし、ショップの方も、夜は必ず消灯してくださいと教えてくれるはずです。
 ところが、そのショップでこれが守られていないようなケースが少なくありません。夜の10時まで営業しているショップで、昼行性の爬虫類のケージだけ真っ暗にしているところはありません。彼らは本来なら寝ている時間帯に煌々と輝く白熱球の下で活発に活動しています。その暮らしに馴れ、もりもり採餌していたトカゲが、新しい飼育者のところで昼夜の時間を大幅に変えられたら、彼らは寒冷期の到来を感じ取るかも知れません。つまり、餌を食べても気温が下がるようなことがあれば、恐怖の消化不良に見舞われることになる、それを肌で感じたトカゲは、餌を食べようとはしないでしょう。すでに充分に採餌し良好な健康状態を維持している個体にとって、食事は重要な問題ではありません。それよりも光周期の大幅な変化を無視して食べる方が不安なのです。

 筆者の経験では、とくに未成熟の個体に、拒食や長期の食欲不振が多いように思います。性差ではメスの方が拒食しがちな気がします。通販で購入した個体では、暗く低温な容器に長時間入れられたせいで、休眠モードになっているかもしれません。この個体がショップで、あるいは生まれてから今日まで、どのような光周期の下で育てられたのかが把握できれば、それに合わせた照明時間の調整で、拒食を回避できるかもしれません。


↑夜間、睡眠中の子供たち。飼育環境に慣れた個体は、シェルターに潜り込むこともなく無防備な状態でぐっすりと眠る。

 購入してきた幼体が餌を食べようとしないので、夜10時頃まで照明を点灯するようにしたことがあります。するとその個体は徐々に拒食が解消できました。その後、長期間かけて少しずつ照明時間を自然光に合わせてゆきました。ただ、この方法がよかったのか、たまたま飼育環境に馴化して食べるようになったのかは、多数の個体に対して実験を試みていないのでよくわかりません。

 拒食と光周期の関係について思いついたのは、あるベテランの飼育者が、フトアゴヒゲトカゲを冬場は冬眠させてしまうという話しを聞いたのがヒントになりました。つまり彼らは寒冷な時期を経験し休眠するような生態を有していることなのでしょう。日本のような冬が存在しない地方に棲むような生き物でも、休眠期がある種は少なくありません。ロイヤルパイソンというニシキヘビの仲間は、年間を通じ半年近く活発な活動を控え、採餌もしません。ただし休眠中でも日本の冬のような気候には耐えられず、加温してやらないとたちまち死に至ります。

 ロイヤルパイソンの場合は、加温していても冬期は休眠に至るケースが多いですが、フトアゴヒゲトカゲは加温していれば夏冬関係なく活発に活動し、よく食べます。フトアゴヒゲトカゲの拒食と光周期の関係については、もう少し詳しく調べる必要があると思います。

拒食とコロニー

2013/08/29


 フトアゴヒゲトカゲの拒食の問題で、複数の個体を一緒に飼うと、まるで競争心が芽生えるように食べるようなるという事例がしばしばあります。前項で述べた光周期の調節よりも、複数飼育の方が拒食解消には効果的な場合が多いです。
 筆者の経験でも、光周期を調節してもホットスポットの温度を変えてもなかなか食欲がわかない個体に対して、複数飼育に変えると食欲旺盛になり健康が改善されたというケースが何件もありました。
 フトアゴヒゲトカゲは、幼体の頃から人間に馴れやすいトカゲです。人の手から餌をもらうようになるまでの馴化にそれほど時間を要しません。餌を皿に入れて置いてやっても見向きもしないのに、ピンセットでつまんでやると食べるということがしばしば見られます。この様子は、ピンセットという同胞が食べているのを見て、自分も食べたくなったといった風にも見受けられます。あまり食欲のない個体に対して、餌皿にピンセットを突っ込んでかき回していると、つられて駆け寄ってきて、ピンセットでつまんだ餌を横取りしようとする、そんな習性がこのトカゲには確かにあります。
 原産国のオーストラリアの野生個体がどのような暮らしを送っているのかを、筆者はほとんど知らないのですが、高度な社会生活は営まないまでも、ある程度のコロニー(集落)を作って暮らしているのではないかということが、飼育下での観察から推測できます。フトアゴヒゲトカゲはあきらかに単独で飼うよりも複数飼育に向いています。人に飼われている時間の長い成熟個体では、単独飼育でも良く食べよく肥えますが、幼体では数等を同じケージで飼う方が、良好な結果が得られます。


↑ フトアゴヒゲトカゲは複数飼育に向いているが、あまり個体差のあるもの同士の同居、あるいは成熟した複数のオスの同居は避けた方がよい。

 以前筆者は、原産国のちがう数種類のトゲオアガマ、チャクワラというイグアナ科のトカゲ、それにアオジタトカゲをも交えて、本種を飼っていました。フトアゴヒゲトカゲとアオジタトカゲの同居なんて絶対に不可能だと言われましたが、筆者のところでは長年仲良く暮らしていました。最初の数時間、フトアゴヒゲトカゲのオスは新入りのアオジタトカゲに対して激しい威嚇行動を繰り返しましたが、やがて無関心になり、その日のうちに同じ皿で一緒に採餌していました。


↑ 闖入者のアオジタトカゲに対して威嚇行動をとるオス。

↑体を傾けて横目で相手をにらみつけます。興奮状態では下顎の部分が真っ黒になります。


↑ 数時間後、和解が成立し、これ以降数年にわたって同居を続けました。


 まぁこれは特異な例で、常識的に考えると、フトアゴヒゲトカゲとアオジタトカゲはかなり食性にもちがいがあり、アオジタトカゲはより動物質を嗜好するようなので、フトアゴヒゲトカゲが小さかったりすると食べられてしまう恐れがあります。食べないまでも、ガブリと一撃を加えて殺してしまうか、重症を負わせることもあり得ます。長期間うまく同居していても、いつ事故が起こるか解りませんので、この同居の組み合わせはけっしてお勧めできません。
 フトアゴヒゲトカゲと問題なく同居できるのは、比較的温和なエジプトトゲオアガマやインドトゲオアガマ、チャクワラなどですかね。筆者はマリトゲオアガマ、サバクトゲオアガマ、クジャクトゲオアガマ、フィルビートゲオアガマなんかも同居させていましたが。あとシュナイダースキンクやヨロイトカゲの一種なども。熱帯魚の水槽じゃないんだからと、自分でも呆れますが、多種多様のトカゲの混合飼育の場合は、性格や個体のサイズ、入れる順番などを見極めないと調和が乱れます。また、ストレスで衰弱する個体も現れます。ケージをデカくすればそうした問題も解決できるのではと思われるかもしれませんが、ケージを広くすると、いじけた個体は餌場やホットスポットから遠ざかり半休眠状態になっちまいます。


↑ フトアゴヒゲトカゲの飼育下でのコロニー。インドトゲオアガマの顔も見える。

↑ 種類の異なるトゲオアガマたちと仲良く就寝するフトアゴヒゲトカゲ。


 現在は、フトアゴヒゲトカゲとエジプトトゲオアガマという混合で飼っています。もともと、エジプト君とフトアゴ君のメス2頭という環境にオスを導入したのですが、新入りのオスはさっそくエジプト君にけんかを売り、温厚なエジプト君は自分の半分くらいのサイズのフトアゴ君から逃げまどっていました。普通は新入りの方が萎縮するんですけどね。それも数時間で和解すると、1つの餌皿で一緒に採餌するようになりました。このフトアゴ君オスはたいへんに元気で威勢がよいので、ここに別のオスを入れることはまず不可能でしょう。
 サイズ差があまりにも大きいので同居を断念していたメスが、あるていど育ってからここへ入れたところ、最初の数日は同居をあきらめようかと思うほど新入りのメスがいじけてしまっていましたが、その後は積極的に輪の中に溶け込み、単独飼育の時に食が細くて手こずったのがウソだったように食欲旺盛になり、体つきもしっかりしてきました。
 フトアゴヒゲトカゲをコロニー状態で飼育する場合、失敗を回避するカギは2点です。群れの中にオスは1頭にとどめる。サイズに大きな差異がある個体同士は同居させない。この2点を守れば、本種の飼育は単独飼育よりも上手く行くはずです。群れの中に小さな個体がいても、基本的には食べられたりしないのですが、大きな個体が誤って噛みついて致命傷を負わせるようなことは少なくありません。彼らはなぜだか餌を取り合う習性があり、それがまたある種のコミュニケーションのようなのです。餌の奪い合いがケンカに発展することはありませんが、体格に大きな差があると小さな個体は噛みつかれて負傷する恐れがあります。また、群れの中にオスを導入する場合、メスはなるべく多い方が良いです。雌雄のペアといった飼育はお勧めできません。ショップの方はペア購入を勧めるかもしれませんが、中型以上のトカゲでペア飼育が上手く行くケースはあまりないと考えた方がよいです。これはヤモリやウズラ(鳥類)などにも言えることで、オスの性欲が1頭のメスに集中するとメスの負担が大きくなりすぎ、メスを衰弱させることにもなります。一夫多妻がもっとも理想的なのです。
 筆者は、フトアゴヒゲトカゲに関しては、ほとんど繁殖を考えていませんが、一夫多妻飼育は繁殖を狙うにも理想的です。筆者のところでもメスはしばしば産卵を経験しています。
 繁殖に挑戦される方は、メスの産卵用に高湿度の土を入れた産卵床を用意すると良いでしょう。と一口に申しても解らないでしょうから、仔細についてはネットで検索してみてください。筆者より経験豊かな飼育者が繁殖について仔細に記述されています。繁殖を望まない方は、何も用意する必要はありませんが、腹に卵を持ったメスは普段より水分の摂取が必要になります。通常は野菜の水分だけで充分ですが、繁殖シーズンすなわち春から秋にかけては、2〜3日に1回くらいはスプレーで飲み水を与えましょう。体内の水分が不足するとメスは卵詰まりを来し、それは死に直結します。


↑ 昼行性のトカゲたちは、高熱のスポットライトの下に集まり、こうして仲良く日光浴をする。かわいい。

↑ 日光浴はずっとしているわけではなく、充分に体が温まると涼しい場所に移動する。昼行性のトカゲの飼育では、暑い場所と涼しい場所の温度傾斜が必要不可欠になる。ゆえにある程度の広さがなければならない。

拒食と食性と飲み水

2013/08/31


 爬虫類の飼育において、拒食の問題はじつにやっかいです。フトアゴヒゲトカゲは比較的この問題を起こしにくいトカゲですが、それでも拒食スイッチが入ってしまうと、それをオフにするのはなかなか困難です。光周期の変更による寒冷期到来の錯覚、餌や飲み水を覚えない単独飼育の幼体、コロニーの中で他の個体との相性で拒食してしまうケース。前項で、フトアゴヒゲトカゲの拒食解消には複数飼育が良いと述べましたが、体のサイズに大きな差異がある者同士の同居や、複数のオスの同居では、複数飼育が逆効果になってしまうケースもあります。
 拒食を解決するには、彼らの食性についてもよく知る必要があります。ショップでは、野菜と人工フードで充分飼育できると教えてくれる場合が多く、中型のトカゲが野菜中心の雑食性であると認識している飼育者がじつに多いようですが、爬虫類は基本的に肉食です。野菜をもりもり食べるトカゲを見て、我々人間と同じように考えてしまうと彼らの健康を維持できません。現生のトカゲの中で完全植物食に移行しているのは大型化したスキンク類のオマキトカゲくらいじゃないでしょうか。このトカゲは植物質を分解するバクテリアに消化を助けてもらっており、そのバクテリアは親から子へ受け継がれます。
 爬虫類が植物質を摂取するのは、体の大型化という進化の過程のプロセスで生じるものと思われます。かつて中生代の超大型の陸棲動物は植物食に進化しましたが、それと同じように現生の爬虫類でも大型化と植物食の傾向は比例するようです。小型のトカゲやヤモリは虫を捕食する肉食性です。彼らは昆虫やミミズ等を捕食し、雨つゆを舐めて暮らしています。それが大型種に進化するにつれて食性に植物質を導入するようになるのです。植物は滋養と水分をまとめて摂取できて便利ですし、俊敏な虫を追い回す労を省けます。


↑ 活きたコオロギを食べる幼体。葉野菜をバリバリ食べるフトアゴヒゲトカゲも、幼体のうちは活き虫を摂らせる必要がある。


 大型種が植物質の食物を取り入れるようになるのは、どういった理由からなのでしょう。もしもゾウやキリンが肉食動物だったとしたら、餌として大量の動物が消費されることになり、狩られる側の動物は大きなダメージを受けるでしょう。あるいは増え過ぎた植物を刈り取るのに大型種は効果的な力を発揮します。生態系のネットワークを維持するのに、大型動物界でも小動物の世界でも、食性と生態系のバランスには深い関わり合いがあるようです。
 と言うことで、フトアゴヒゲトカゲくらいのサイズのトカゲになると、成長するに従い、植物質を摂取する割合が高くなり、ショップなどでは生き虫を用意しなくても、野菜と人工フードで飼育できるなどとピーアールするケースが多く、それは間違いではないのですが、基本的にはもともと肉食性つまり虫を食べる動物であるということを念頭に置いておく必要があります。

 餌皿の野菜や人工フードに見向きもしないような場合、生きたコオロギやジャンボミルワームなどを与えると、大喜びで追い回して食べることが少なくありません。これは幼体においても成体においても同じです。餌づけのきっかけを作るのに生き餌は効果的です。
 また幼体の発育や痩せている個体の健康回復にも生き餌は欠かせません。幼体を野菜と人工フードだけで育てるなんてあり得ないと考えてください。
 ただし、充分に成長した個体に対しては、過剰な生き餌の摂取は肥満の原因にもなります。野菜と人工フードだけで痩せてこないようなら、生き餌を与える必要はありません。また、ショップで購入した動物に、野原で取ってきた昆虫を与えるのもお勧めできません。寄生虫をもらってしまう可能性があるからです。と言いつつ、筆者もたまに採集した虫を与えたりして失敗したことはないのですが、飼育下という環境が飼育動物にとってひじょうに異質な環境であり、彼らがそれに馴らされているという事実も忘れてはいけません。野生暮らしではどうってことない寄生虫が飼育下では猛威を奮うってことは、多くの飼育者がしばしば経験することです。


↑ フトアゴヒゲトカゲが口を開けているのは、放熱のためだそうです。イヌと同じですね。

彼らはスポットライトの熱でたいへん高熱になった石の上などが大好きです。体が充分に温まると、こうして口を開けています。暑いなら涼しいところに行けばよいのに。ケージの中の温度の低いところでも口を開けているのは、ケージ全体が高温になりすぎていおり、体力の消耗やストレスを招き、危険な状態です。


 そして、忘れてはならないのが、飲み水の問題です。飼育動物の食性を把握することと同時に、水分補給の重要性も知っておかねばなりません。とくに本種のような乾燥地帯の動物は、野菜を食べるだけで水分補給が可能なうえ、水入れを用意してやってもそれを利用しなかったりします。長期間、野菜だけでも飼育は可能なので、つい水分補給の重要性を忘れがちになるのです。
 爬虫類に水を飲ませることは、思いのほか難しいものです。それを手っとり早く解決する方法は、霧吹きで顔に水をかけてやるというやり方です。これは多くのトカゲやヤモリの飼育にも応用できます。数日おきに霧吹きを実施してやると、水分不足の問題は解決できます。
 幼体の飼育や、痩せてきている個体、お腹に卵を持っているメスなどには、積極的に霧吹きをしましょう。ものぐさで週1くらいしか生き物の世話をしない筆者でも、霧吹きは週に2回は行ない、彼らの健康を管理しています。それに、水を舐める仕種がまたひじょうに可愛くて、見ていて飽きません。


↑ 成熟したオスの横顔。幼い頃は可愛かったのに、今は大した風格です。

第3の目

2013/10/17


 トカゲの第3の目をご存じですか? ムカシトカゲという進化系統上ひじょうに古い爬虫類に分類されるトカゲには、頭のてっぺんにそれがあります。目といっても通常に視力を持つものではなく、光受容体を持つ小さな器官で、これで明るさや太陽の位置を知ることができるそうです。
 頭頂眼といわれるそれは、じつは他の両生類や爬虫類にもあるようで、日光の方向をこいつで見極めることにより自分のいる位置を知るとも言われています。つまり頭頂眼のおかげで迷子にならないということです。迷子にならないってことは、迷子になると困るような生態を持つってことでしょうか。テリトリーや巣を持つ生き物であれば、餌探しに出たり異性とデートしたりしたあと、自分の巣へ帰る必要があるでしょう。子育て中の鳥なんかも、ヒナに餌を運ぶには、自分が巣からどれくらい離れたどの位置にいるのかを把握しておく必要があります。
 トカゲにもテリトリーを持つものはいるでしょうが、巣作りや子育ての話しはあまり聞きません。では、頭頂眼なるコンパスの必要性はどこにあるのでしょう。
 ムカシトカゲの頭頂眼は、成長するにつれて消失して行くとも聞いたことがあります。子供の時ほどコンパスが必要なのでしょうか。親と同居している子供にとって、ちょっくら冒険に出た場合、親のそばに帰還する能力がなくてはならないってことなのでしょうか。……つまりトカゲでも子育ての習性があると?
 筆者が長年飼っているフトアゴ君の頭を調べてみましたところ、確かにそれらしきものが確認できます。そして彼らは飼育下では一夫多妻でひじょうに良好な暮らしを送ります。神経質な個体で、単独飼育では食欲不振なものも、団体生活にすると食欲を回復することも少なくありません。また、年齢差のある個体同士の同居も可能です。あまりサイズ差があると、小さな個体が大きなものに誤って噛みつかれて負傷することもありますが。
 幼体や若いメスは、大きくて強いオスのいる集落にいることで安心できるようなのです。
 トカゲ類は育児も営巣もしない孤独な生き物のように思われがちですが、鳥のような明確な巣は作らないものの、社会性がまったくないわけではないようです。
 コンパスとしての頭頂眼の存在と、トカゲの社会性という考え方が正しいのか、まったく的外れなのかは判りませんが、自分の現在地を知ることの必要性ということで、筆者なりにちと考えてみた次第です。




水飲み

2013/10/19


 フトアゴ君が水を飲むときは、とてもユニークな特徴があるんです。それはですね、胸郭をいっぱいに拡げて体が円盤状になることです。頭−胴−尻尾が、三角−丸−棒みたいなことになってなかなか面白いです。写真だとそれほどでもないですが実際に見てみると、通常時とちがいは顕著です。なんでこんなことになるんですかね。
 オスが、相手を威嚇するときに同じように胸郭を拡げますが、水を飲むときはオスもメスも胸郭を拡げます。威嚇しながらでないと水が飲めないとか? それともこうすると水の通りが良くなるのかもしれませんね。もともと水を飲む機会の少ない動物で、我々人間のようにそれが当たり前ってわけじゃないですから。


 ↑ ケージのガラス面の水滴を舐めてます。体が丸く拡がっているのが判りますか?


 ↑ 通常のフトアゴ君です。胸郭は開いていません。


 ↑ 水を飲んでいるところを横から見ると、胴部がぺちゃんこです。


 フトアゴ君のような乾燥地帯の爬虫類は、池や水たまりの水を飲む機会はあまりないのでしょうか。ケージの中に水入れを用意してやってもなかなかそれを覚えません。覚えると、その水を飲んだり水浴をしたりするようになるのですが。水入れの水はすぐに汚れてしまいますし、砂で埋められてしまうこともしばしば。それよりもスプレーで水を与える方が手っとり早いです。顔に水をかけてやると、目を細めて鼻先から滴る水を舐めます。そのうちケージのガラス面や岩などに付着した水滴を舐めだします。
 水を飲むのは嫌いじゃないです。スプレーしてやると喜んで長い間飲んでいます。食べる野菜の水分で充分なのでとくに水を与える必要はないとも言われていますし、実際にそうです。でも、こうして喜んで水を飲むところを見ると、やっぱ時々でもスプレーしてやりたくなりますね。




 ↑ 成熟しよく太ったオスは、若い個体やメスのようには丸く拡がりません。お腹の贅肉がじゃまなようです。


 ↑ 水飲み中のオスを横から見ると、肋骨が浮きでていて、胸郭を拡げているのが判ります。


 ↑ これは食事中の図です。水飲みの時よりも舌を大きく出し、餌をそれにくっつけて口に引き込みます。

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