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情報の流れ(4)
暮らしの豊かさと情報


 情報を取得し、その価値や真偽について判断するという行為は、そのまま物事を考えるということにほかなりません。ネットやテレビから取得するものから、人から見聞きするもの、あるいは観測や観察から得られるものまですべて情報です。ニュースやゴシップもうわさ話も、海や空の色も、鳥や虫の声も、味や匂いも、すべて情報です。言葉を持たない人間以外の動物たちは、得られた情報を本能によって直感的に判断します。色や形、匂い、温度、大きさといった条件に適合していればそれを餌であると判断して食べます。人間のように"餌"という言葉を持ちませんから、適合した条件そのものが食べるという反応につながります。高等な動物では、捕食対象が武器を持っていて攻撃して来たり、毒を持っていたりした場合、攻撃をかわす方法や獲物にダメージを与えて無力化する方法を学習します。有毒であれば、毒を持つ部位だけ食べなかったり、対象そのものを餌から除外したりすることを学びます。
 さらに高等な動物では、社会生活を営み、情報を共有します。餌のありかであるとか、天敵の襲来を鳴き声や動作を使って仲間に伝えます。社会生活を営む動物は、情報を信号に変えて仲間に伝えるすべを先天的に持っています。
 人の場合は、情報の信号化を言語によって行ない、頭の中で情報を処理する時も、他の誰かにそれを伝える時も言語を用います。話し言葉に依れない場合には、文字を使ったり、ジェスチャや絵やマークを用いたり、道具を用いて音や光で伝えたりします。写真や映像といった高度な情報伝達技術も存在します。そして人が情報処理に用いる言語やその他の手段は、すべて後天的な学習によって習得する必要があり、他の動物のように本能で処理できる情報は多くありません。痛いとかかゆいとか、空腹や睡魔、恐怖といった直接的な刺激に関することくらいですか。もっとも学習するという能力自体は本能というべきものであるわけですが。
 情報を言語に置き換えて処理するという技能は、情報を吟味したり蓄積したり、仲間と共有したりといったことに長けており、そのことが人の暮らしに進歩をもたらしました。そして進歩し続ける暮らし(文化や文明の発展)は、情報の価値や真偽を時間の推移と共に変えて行くという事態をもたらしました。
 情報の価値や真偽が変わり続けるゆえ、先人の教えはいつまでも正しいということはなく、人によっても異なり、ノウハウも変わり続け、マニュアルも適時改訂され、真実も答えも流動的にしてとどまるところを持たないのです。
 高度な情報化時代には、膨大な量の情報が錯綜し何を信じてよいか判らない、どの情報が正しいかを見極めることが重要だ、そんなことがよく言われますが、この表現はあたかも、詐欺やペテンの類の情報が氾濫していることへの警鐘のように聞こえ、人々の情報に対する猜疑心をあおっているように見えます。
 しかしながら、情報が多いということは、人々にとって有益でありたいへん喜ばしいことです。そのことを見失って情報化時代を先進的に生きることを臆していては、人類の進歩も台無しです。ものが豊富にあってもそれらを恐れて手にしないのと同じです。人々は豊かな暮らしを求めますが、多くの情報を手軽に取得できるというのは、そのこと自体が豊かな暮らしです。だまされるのが怖いからと、携帯電話も持たず、インターネットも活用しない生き方を選ぶのは、自ら豊かな暮らしを放棄していることです。最近の若い人たちは、物欲にしか興味がない低能な資産家の経済支配によって、重労働低賃金にあえいでいます。それでも彼らが迷妄し道を踏み外さないのは、金銭や物に恵まれなくても情報というものに豊かであることができるからだと思います。低収入でただ働くだけで、さらにネットやスマホがもたらす情報さえも絶たれてしまったとしたら、彼らこの世の中に生きがいさえも見いだせないでしょう。

 情報はまた、人と人とをつなぐ重要なツールです。人が孤立することなく仲間と共にあるために情報は用いられるべきです。
 子供や未成年者は、錯綜する数々の情報を正しく判断するには経験不足であったり、知識が足りなかったりするといった考え方により、情報から遠ざけられることがよくあります。子供や未成年者を有害な情報から守るという点においてこれは正しいと思います。暴力描写や性描写の過激な演出をされた画像映像作品やビデオゲームに年齢制限を設けることも必要です。ただ、その必要性について社会的に議論がなされず、規制に対しても評価されていない現状には問題があると思われます。
 子供はいつまでも幼くはありませんし、未成年者もやがて成人に至ります。年齢制限つきの情報に触れて良い年齢に至ったとたんに大手を振ってそれらの情報を取得し、精神的な衝撃を受けたり情報を誤認したりしても自分で責任を負えと言われても、持て余してしまいます。身近に相談できる理解者がいたり、あらかじめアドバイスしてくれる親や兄弟や先輩がいれば良いのですが、年齢制限つきの情報というものは、なかなか厄介なもので他人に相談しにくい要素が少なくありません。たとえばアダルト作品に興味を覚えてもそのことを身近な人に相談するというのは容易ではありませんよね。
 しかしながら、情報を誤解することによって損失を被ったり、社会的な弊害をもたらすに及んだりすることは少なくないので、経験豊かな人に相談できると過ちを小さくすることができます。アダルト作品では男性主体の性表現に偏りがちで、それを基準にして女性に接すると失敗します。アダルト作品では日常的な性表現だけでは観客の興味を引き付けたり引き止めたりすることはできないので、非日常的あるいは非現実的な表現が多用されます。そのことを承知せずに、それをお手本にせっせとSEXテクニックを磨いても女性の好感を得ることは難しいでしょうし、軽蔑されてしまうことも少なくないでしょう。女性の気を引こうとせっせと自分すごいPRをしても、多くの女性はそんなことを望んでいません。アダルト作品が、もっと女性をヨイショする手管を盛り込んでくれると良いのですが、それでは観客を満足させられませんしね。
 まぁ、失敗を重ねて学ぶしかないのでしょうかね。

 情報のもたらす価値について記述するつもりが、情報の弊害や怖さを語ってしまいましたが、上記を逆に捉えて、正しい情報の重要性に気づいていただけたらと思います。情報のもたらす弊害を恐れるあまり、有益な情報さえも遠ざけてしまうことは大きな損失です。それに情報を誤認して失敗したり、恥をかいたりすることは、皮肉にも良い勉強になります。恥をかくことが人生経験ですらあります。失敗や人に尋ねることを臆するなとは、古くから言い伝えられたことでもあります。
 電脳ネットワークによる情報の氾濫の弊害ばかりに目を向けないでください。情報化時代はサイバー犯罪等の新しいタイプの犯罪を世にもたらしましたが、古いタイプの殺伐とした犯罪が減少したのも事実です。市民生活に有益な情報が迅速に伝達されるようになったおかげで、公共マナーも向上し事故の抑止にも役立っています。
 電脳ネットワークによる情報の管理は、人々のプライバシーを脅かせているとも言われます。確かに通販等を利用すると買い物の傾向が自動的に調査され、あなたにお勧めなんてメールが届くようになりますし、街頭の防犯カメラや駅の改札機に搭載されたカメラが、人々の移動を監視しています。それを超管理社会であると批判することもできますが、現行の管理は人々の暮らしの安全に貢献しているものの、人々の移動の自由を束縛してはいません。ネット通販等の利用で、買い物の傾向に応じたお勧め商品が表示されるのも、買い物の自由を束縛するものではありません。売り手に購買傾向がばれるのは不本意だと思うかもしれませんが、お勧めは機械的に行なわれているものであって売り手が管理しているものではありません。売る側にしてみれば、対面売りの方がはるかに購買傾向を把握できます。お勧めを上手く利用すれば、目当ての商品を効率的に探すのにも役立ち、購買の自由度が向上するくらいです。もっとも自制が効かなければ無駄な買い物をするはめにもなりますが。
 権力者が一方的に人々を管理するのではなく、ネットワークが自動的に管理するタイプの管理社会では、人々の安全や相互理解といった公共性が大きく向上します。人々は管理されることによって、より安全に、より自由に暮らすことができるのです。その理由の子細について述べるとまた長くなるので省きますが、スマホやパソコンのある生活、手軽にネット通販やネットオークションが利用できる生活に、従来よりも不便で窮屈であると感じることは多くないと思います。そう感じる人は、情報化社会に適応する努力をしてくださいよ、人間は進歩し続ける生き物ですよ。
 ネットワークを絶たれ、テレビやラジオにも厳しい報道管制が敷かれ、外の情報が入って来ないような暮らしは、ひじょうに不安で殺伐としています。自由もなくなり健全な精神を維持することさえ難しくなります。そのことを思えば、情報のあふれる時代がどれだけ恵まれているかが判るはずです。恵まれるのは良いけれど、人を惑わせたり陥れたりする余計な情報まで飛び込んでくるから困る、なんて不平を言っている方、そんな声ばかりが増えて行けば規制が厳しくなる一方です。利便があれば弊害もあることも学んでください。それに弊害から身を守るのは目や耳をふさぐことではありません。多くの情報にアンテナを巡らすことで自衛も身に着くものです。
 人間社会は、権力者の世の中から民主化の方向へ進化して行きます。みんなが情報を持ち寄ってみんなで築く社会に時代は推移して行きます。それに乗り遅れないようにしましょう。

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