ダンゴムシ似
2013/09/30
ダンゴムシの続きです。危険を感じると丸くなるというユニークな生態を有するこの虫ですが、分類的には、甲殻類の軟甲綱等脚目に属し、同じ目の内にワラジムシやフナムシといった仲間がいます。フナムシは浜辺の生き物で、岩場などをゴキブリ並みの速度で駆け回ります。サイズもゴキブリ並みで、同じ等脚目のダンゴムシとは比べ物にならないほど活発な生き物です。甲殻類はひじょうに大所帯で、エビやカニからミジンコまで多数の種類を擁しますが、その多くが水棲または水辺の生き物で、等脚目の仲間は比較的陸棲寄りに進化した仲間です。
そして、ダンゴムシと同様の丸くなるという生態を持つものを同目あるいは同綱の中に求めると、意外にいないんですよね。あのアルマジロスタイルの生態はなかなかナイスで、多くの生き物が採用していてもおかしくないと思われるのですが。どうやらこれは、ダンゴムシが陸地の分解者へ進化して行き、俊敏な動きを失うのと代償に得た個性的な生態のようです。
ところが、分類学的にまったく別の多足類倍脚綱にはアルマジロスタイルの虫がたくさん存在します。オオクワガタブーム以降の昆虫ブームに乗って、これらの虫もいくつかペットとして輸入されるようになり、筆者も実物を見ることができました。
多足類は、節足動物の中でも甲殻類よりも陸棲寄りに進化した仲間です。進化系統的にかなり離れているのに類似した形態と生態を有する収斂現象(平行進化)の好例ですね。倍脚綱中のネッタイタマヤスデ目に属するこれらの虫は、重厚な体つきといささか派手な色あいを有します。ビーダママルムシとか、パステルオオダンゴムシなんて和名で市販されていますが、いずれもヤスデの仲間です。
日本のヤスデと言えば、たいへん長径のムカデみたいな虫ですよね。ダンゴムシ採集をしていると、一緒にいたりします。彼らも丸くなる習性を持ちますが、なにせ細長い体なのでナルトみたいなことになりますね。
ちなみに一般的なヤスデとよく似ていると言われるムカデの仲間ですが、多足類の唇脚綱に属し、多くは獰猛な肉食動物です。ムカデはヤスデよりも体節が少ないうえに脚が1節に1対ずつなのでヤスデよりもずっと脚の数が少ないです。ただ脚力はたいへん強いです。ヤスデとムカデの実物を比べると、彼らがそれほど似ておらず、一見して区別できることが判ります。
長い虫の話しは置いといて、日本にもタマヤスデの仲間はいます。筆者はその実物を見たことがありませんが、あきれるほどダンゴムシそっくりなのもいるらしいですよ。
タマヤスデ以外にも、ヒメマルゴキブリという昆虫綱ゴキブリ目の動物でダンゴムシに似た形態の虫がいます。また外国産のゴキブリの中にも成虫になっても翅が生えず、体節がよく目立つダンゴムシタイプのものがいくつか存在します。丸くなる習性は持ちませんが。
体を独特のバンド模様で区切る体節は、甲殻類や多足類や昆虫類といったすべての節足動物の基本的な体構造ですから、多くの動物に類似性が見られるのは当然ですかね。そして体節を見ると筆者は、絶滅動物の大スター三葉虫類を思いだすのですが、もちろん彼らも節足動物です。
↑ ビーダママルムシ(タイ原産のネッタイタマヤスデの仲間)
↑ ビーダママルムシとオカダンゴムシ(左)
↑ パステルオオダンゴムシ。名前はダンゴムシでもネッタイタマヤスデの仲間。
↑ レインポーメガボール。
↑ メガボール。ネッタイタマヤスデの最大種。
↑ メガボールの腹面。倍脚綱の仲間は、1つの体節に2対の脚がついている。すごい脚の数だ。
↑ 昆虫綱ゴキブリ目に属する ヒメマルゴキブリ。日本産。
↑ マダガスカルヒッシングローチ。大型のゴキブリだが、幼虫はダンゴムシに似る。
↑ ゴキブリ最大種。ヨロイモグラゴキブリ。オーストラリア産。大型のゴキブリは成虫でも翅が退化しているものが多い。