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環境変化の要素

2014/12/10


 生物は、自然環境に適応するために生態や形態を変化させてゆきます。進化のメカニズムがそれを可能にしています。自然には様々な環境の変化があり、それぞれの環境に適応するために生き物たちは姿形や食性、生活様式を変えて行きます。変化の条件は、温度、湿度、気圧、地質と様々で、一様に見える海の中でも千差万別です。環境の変化はまた1日の時間ごと、1年の季節ごとにも刻々と変化します。地球が自転しながら太陽の周りを公転しているからです。温度変化が地表を絶えず移動し、空気の対流が起こり水の蒸発と降雨が繰り返されます。地質それ自体もじつはゆっくりと対流しています。マグマとなって空気中に吹き上がり、冷えて岩石となって堆積します。長い長い歳月のうちに堆積物の上に堆積物が積もり、古い堆積物は次第に地中深所の高圧高温の場所に還ってゆきます。
 生物が暮らしている大地や海は、標高数千mの高山から深度数千mの深海に至るまで、すべて地殻という地球の表層部に含まれます。地殻は高温の液体マントルを覆うひじょうに薄い皮膜に過ぎません。その皮膜の上に生物のすべての生活環境が存在します。この皮膜は地球の自転によって揺さぶられ、ゆっくりと動き続けています。地表はいくつかのプレートに分乗していると言われ、各プレートごとに動く速度や方向が変わるため、接近したり遠ざかったりするため、大陸の分布状況も地質時代ごとにまちまちです。
 水は温度を温存するので、大陸の分布が散漫になり、世界的に海洋性気候が広がると、地球は温暖化傾向に向かい、海面が上昇して陸地の端を覆って広い大陸棚を築きます。海が陸地に進出する状況を海進といい、海進時には生物は繁栄します。逆に大陸の分布が集中的になり、広大な大陸が形成されると、海から遠い内陸部では氷床が広がり、海が陸地から退く海退が生じます。年々寒さが厳しくなる気候に陸生動物のとくに大型種は急速に衰退します。海洋でも大陸棚の面積の現象に伴い、生物の衰退が進みます。
 生物の棲息する自然環境の変化には、日々の変化や周年の変化、そして地質時代レベルの長く大きなスタンスの変化と様々なものがあります。同じ場所にいても日々および周年の変化に見舞われますし、場所を移動すると温度や湿度や土壌に様々な変化が見られます。場所によって昼夜の差が穏やかなこともあれば、昼と夜とで劇的に変化が生じることもあります。
 環境に変化をもたらす要素は、温度、湿度、気圧、地質といった無機質なものばかりではありません。バクテリアによって育まれる土壌の状況や、そこに育つ植物の状況(植生)も生物の暮らしを左右する変化の要素です。生物は環境の変化に適応するために進化し、姿形を変え、生活様式に応じた形質の特殊化を進めますが、生物の存在そのものが環境の変化の要素になっています。
 生物は基本的に自分が適応した場所に定住して子孫を残してゆきますが、その場所は永続的に同じ環境ではありません。地質学的な要因で徐々に温暖化傾向に向かったり、寒冷化が進んだりします。それに伴い、棲息域が少しずつ北上したり南下したりします。自分が移動しなくても別の種が移動してきて生活環境に変化を加えることもあります。
 環境が地質学的にほとんど変化しなかったとしても、生物は移動します。別の所にいた鳥が、たまたま飛来して定住することもあるでしょうし、その鳥が別の所の植物の種を運んで来ることもあるでしょう。生物は偶発的な出来事によっても移動し、移動先で繁殖に成功すると、棲息範囲の移動または拡大が実現します。移動先に天敵が少なく、食料が充分にあれば爆発的に個体数を増やすといったインパクトが生じるかもしれません。これはその地における劇的な変化になりますから、先住の動植物は衰退したり、変異を余儀なくされたりします。
 生態系は、動植物の絶妙なバランスによって維持されていると言われていますが、じつは常に変化にさらされ、バランスは頻繁に危うくなります。生物は永続的に定住しているように見えて、徐々に場合によっては急激に移動して行くものなのです。
 時間的あるいは空間的に変化に富むようなエリアでは、生物の繁栄と衰退が目まぐるしく、種の進化と分化が促され、他種多様の動植物がせめぎ合うことになります。熱帯ジャングルの方が北極や南極よりも圧倒的に変化に富み、多数の生物が棲息しています。
 地質時代的にも変化が少なかったエリアで、生物の移入も多くはなかったような場所に棲む生物は、あまり進化せず太古の姿を今にとどめています。環境の変化に耐え、植生に幅がある生物もあまり変化を必要とせず、むかしながらの形態と生態を維持しているでしょう。短期的に著しく進化と分化を繰り返し、次々と古い種が滅んで新しい種に塗り替えられて行くような環境に棲む生物もいれば、閉塞的な環境でゆっくりとした変化の中に生きている生物もいます。
 ある一定の環境に特化して、大型化と特殊化を進めたような種は、環境が変化するともろくなります。一定の環境で最強を誇っていたものほど、環境が変化するとあっけなく滅びます。古い形態と生態のまま細々と地味な暮らしを続けてきたものは、しぶとく生き残ります。それだからと言って古いタイプの生物がまったく変わらないというわけではありません。変化が緩やかで数十万年もあるいは数億年以上も変化していないように見えるだけです。現生のクラゲと数億年前のクラゲを比較してまったく同じというわけにはゆきません。見た目はクラゲのままでも、新しいタイプの生物たちと共存するための形質の変化が必ず生じています。

 人間以外の生物は、環境に応じて進化し形質を変化させるのに対して、人間は自分の都合に合せて環境を造り替えてしまう存在であるとよく言われます。環境に適応するために進化する生物たちはどんどん様々な種を輩出して行くのに対して、人間は同じ種のままで世界中の多くの場所に適応してゆきました。しかしながら、人間以外の生物の中にも環境を変えてしまうものがいますし、多種に分化せずに多くの環境に適応したものもいます。人間の場合はひじょうに短期的に大きな変化をもたらし、世界中に適応放散したので、そのふるまいはかなり特別だと言えますが。しかしその人間ですら、遺伝子レベルでは差異が小さく互いに交配して子孫を残せるものの、人種という差異が生じており、ちがいはかなり歴然としています。
 生物の進化のていどが様々で、太古の形態および生態のタイプをそのまま受け継いだものが多数存在し、あたかも地質時代ごとの生きた標本が残っているような状況は、生物学や古生物学、進化学にとってひじょうに幸いです。両生類が地上に君臨したあと新たな動物群として進出した爬虫類にすべて置き換わってしまい、両生類がすべて死滅してしまったとしたら、学者たちの両生類に対する研究は化石を調べるしか手立てがなく、それら滅亡動物がどのようなものであったか解明できなかったかもしれません。両生類がどのようなものであったか判らなければ、爬虫類の進化も謎のままだったでしょう。
 化石という形で、太古の生物の生きていた証拠が残り、それが地殻の変動によって地層として露出し、人に発掘の機会を与えているという状況も、不思議と言えば不思議ですよね。考古学者や古生物学者にとっては幸運ですが、なんだかあまりにも人間に都合が良すぎて驚愕します。

 科学者たちは、新旧様々なタイプを取り揃えた現生生物のサンプルから、地層中に見いだした化石証拠から、生物が進化し続けるものであることを知り、原始的な生き物から次第に高等な生物が分化し、地球上に原始的な生き物と進化的な生物が共栄する生態系が構築されたことを知りました。
 生物が進化し変わり続けることと、一定の所に永続的に留まらず移動し続けることは表裏一体です。絶えず変化しながらバランスし続けているわけです。
 生物はまた、現代の学識では神が創造したものではなく、自然発生して進化を遂げたものだとされています。メタンガスの大気に覆われ大量の紫外線や宇宙線が降り注ぐ環境の中で、化学変化が促され、有機化合物が生成され、小さな水滴のような原生生命が誕生し、遺伝子システムを獲得し、後世の生物のために大量の酸素を放出し、後世の生物の安全のために紫外線や宇宙線をさえぎるオゾン層を構築した。そういうことがプログラムもシナリオも無しに自然に起こったのだそうです。
 地球は過去に何度も、生物が死滅するようなインパクトに遭遇しています。大規模な火山活動や大質量隕石の衝突。しかしそうしたダメージにも関わらず、地球上生物は途絶えることなく生き長らえました。氷河の進出も生物にとっては脅威です。生物の進化がまだ微生物段階であった頃に生じた氷河期では、凍結が赤道付近にまでおよび、スノーボールアースが形成されたと言われています。脆弱な原始生物たちはそれでも滅びなかったのです。最近の学説では、この氷期の終焉が生物の爆発的な進化いわゆるカンブリア爆発の起因になった可能性が指摘されています。スノーボールアースが、カンブリア爆発に必要な現象だったのだとしたら、それはオゾン層の構築ほど生物の進化にとって都合のいい話しです。あるいは後世の知的生物に充分な量の生物エネルギー(石炭および石油)を残した巨大植物たちのように都合のいい話しです。

 生命は様々な変化にさらされ、そのおかげで進化を遂げ続けています。その変化はまた地球規模の絶妙なバランスを伴い、幾多の危機を乗り越えて現代に生命をつなぎました。この地球規模のバランスにプログラムのようなものは存在しないのでしょうか。また、生物の進化のプロセスにシナリオのようなものは存在しないのでしょうか。カンブリア爆発から5億数千年という時間は、人類という知的生命が導かれるのに充分な時間だったのでしょうか。
 有機化合物の生成から人類進化までの歴史のドラマが、まったくの自然発生の出来事なのだとしたら、それは奇跡としか言いようがない、そんな気もします。このような奇跡が、地球以外でも生じたことがあるのでしょうか。考えると眠れなくなるのでこの辺にしておきましょう。

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