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集団生活のこと

2013/10/17


 爬虫類の中には、集落(コロニー)を作ったり群生したりするものが少なくありません。1種類の動物が1ヶ所にあるていど集まっていることには、餌の取り合いになるというデメリットもありますが、繁殖期に異性にめぐり合いやすいといったメリットもあります。明瞭なテリトリーを作って暮らすものは、爬虫類の中にはあまり存在しないようですが、同じところに同一種類のトカゲがワラワラ群生していたり、散漫な集落を形成するものは少なくありません。
 地球全体を見渡しますと、赤道寄りの高温多湿の豊かな自然環境には生物の種類が多くなり、極地方にゆくにつれて、種類が減り同じ種が群生する傾向があります。熱帯ジャングルには多種多様の生き物が混在しますが、南極や北極では、アザラシの大群やペンギンの広大な営巣地が観られます。
 もっとも熱帯雨林でもチョウの大発生やコウモリの大集落があって、群生は貧しい土地に限ったものではないのですが。
 そして我らがトゲオアガマは、概して砂漠地帯や荒れ地といった貧しい土地に暮らしています。彼らは乾燥にもよく耐え、灼熱の太陽で日光浴し、暑くなると深い穴を掘って潜り込んだりします。
 野生での彼らの暮らしぶりを観察する手立てを筆者は持ちませんが、聞き知る情報では、ウィッキー君ことインドトゲオアガマなどは、浅くて広い穴を掘って集団生活するそうです。
 筆者ができることと言えば、飼育中の様々なトゲオアガマを、同居させたり単独飼育にしたりしてみることくらいですが、これを様々な取り合わせでくっつけたり離したりしていると、どのトカゲがどれだけ集団生活に向いているかが判ってきます。
 結果、トゲオアガマのほとんどの種が、集団生活向きであると筆者は判断しました。フトアゴヒゲトカゲのように、単独飼育では神経質なメスが、複数飼育に移行してやると間もなく元気になるといった例があるように、多くのトゲオアガマが同じような傾向を示しました。


 ↑ フィルビートゲオアガマ(左)、マリトゲオアガマ(下)、インドドゲオアガマ(右)。フィルビーは異種複数飼育にしてから食欲も旺盛になりよく太ってきた。

 集団生活の中で、競い合って餌を食べるのは、複数飼育でもっともよく見受けられる光景ですが、集団の中でも個性があって、他のトカゲにまったく干渉せず他からの干渉も受けないもの、他のトカゲには遠慮がちだが単独でいるよりも複数でいる方が元気なもの、他の個体にとりあえず威嚇や攻撃を加えるもののしばらくすると馴れて同居を認めるものなど様々で面白いです。


 ↑ フトアゴヒゲトカゲ(上と中)のオスは、新入りを威嚇する傾向にあるが、相手に敵意がないと同居を認める。

 エジプトトゲオアガマは、同属の最大種で縦横ともにでかく、硬質の棘を持つ尻尾もひじょうに立派でこの一撃を受けると大きなダメージを負うことになりますが、性格はたいへん温厚で、他のトカゲの同居を拒みません。体の小さなトカゲがエジプト君の背中に乗っかっているのをよく見かけます。餌皿をケージ内に置いてやると、駆け寄ってきたエジプト君の背中から降りて餌を食べようとするマリトゲ君やフトアゴ君に、場所を譲ってやるといった心温まる光景すら観られます。


 ↑ エジプトトゲオアガマの背中が大好きなマリトゲオアガマ。

 筆者のところでは、エジプトトゲオアガマ、マリトゲオアガマ、クジャクトゲオアガマ、フィルビートゲオアガマ、インドトゲオアガマと、フトアゴヒゲトカゲの同居はひじょうに上手く行きました。これらのトカゲたちは単独飼育よりも複数飼育の方が良好でした。ただ、サバクトゲオアガマだけは同居が難しかったです。同種もメス、あるいは養殖個体であれば温和な性格の個体もいるかもですが、野生採集個体では人間にさえ噛みついてくるものもいるほど気が荒いです。
 他にも、ヨロイトカゲや中型で雑食性のスキンクを同居させておおむね良好な結果が得られましたが、ヨロイトカゲやスキンクは、アガマたちにとっては無害ですが、彼ら自身にとってはアガマたちとの同居ではずいぶん遠慮がちになるので、彼らにとってはこの同居は歓迎できるものではありません。また雑食性のスキンクでもアオジタトカゲは、体格も大きくなり逆にアガマたちに攻撃を加えることも少なくなく、お勧めできる同居者ではありません。うちでは問題なかったですが、たまたま温厚な個体だったというだけでしょう。


 ↑ 下から、クジャクトゲオアガマ、インドトゲオアガマ、マリトゲオアガマ、エジプトトゲオアガマ。いずれも複数飼育向きのトカゲたちだ。

 複数飼育による共同生活は、トゲオアガマたちにとって本当に適しているのでしょうか。エジプトや中東や、インドからはたまたオーストラリアのトカゲまでもが同じケージの中に暮らして問題ないのでしょうか。筆者の答えはYESつまり問題ないしむしろ良好な結果が得られる場合が多いです。ただし、注意深く観察し、いじめられている個体がないか、神経質になって拒食しているものはいないか、常にチェックしなくてはなりません。最初のうちは逃げ隠ればかりしていたトカゲが、馴れると積極的に群れの輪の中に入って行くようになる場合もありますし、成熟して気が荒くなった個体が特定の弱者を攻撃するようになるケースもあります。とくに同種のオスの同居では、成熟するまでは良好な関係にあったものが豹変する場合があります。フトアゴ君ではガタイの大きなメスに怯えて若いオスが拒食するなんていうケースを筆者は経験しています。メスが荒々しく生き虫を追いかける様子に、オスが恐れをなしたようでした。

 魚の話しになりますが、オヤニラミという国産の魚は、オス同士の同居が不可です。徹底的に闘います。ところが数十匹の成熟したオスを、隠れる場所もない水槽で同居させるとイワシの群れのように順調に共同生活します。相手がたくさんいすぎて攻撃目標が判らなくなるようですね。知らない人がこれを見たら、オヤニラミは群生する魚だと思うでしょうし、オス同士が激しく争うなんて想像もつかないでしょう。
 このように、一見良好に見える同居であっても絶妙なバランスでたまたま上手くいっているようなケースもあるでしょう。うちのアオジタ君の場合がこれだったかもしれません。あるいは、獰猛な動物でも、良好な集団生活が出来上がっているところに後から入れてやると、和合する場合もあります。水族館の大水槽ではこの方法で弱い魚とサメが同居しています。
 しかし、上手くいっているからといって観察は怠れませんし、バランスが崩れることもあることを念頭に置いておくべきですし、他のトカゲを食べる可能性のあるものは、やはり同居させない方が良いです。また、共同生活でストレスを受けている個体は、トカゲの場合は拒食や日光浴のスポットに来ないといった行動で見つけられます。

 また、同居が可能なトカゲ同士であっても、湿度を嫌うものとある程度の湿度を好むものがあり、個体ごとのケアも必要になります。トゲオアガマの場合は、それらをまとめて週1ていどの温水浴をさせるという方法で解決しても良いですが、水浴を喜ぶものとそれに馴れるのに時間がかかるものとがあります。スプレーで水を飲ませる方法もあります。湿度を好むものは喜んで水を飲みに集まりますが、エジプト君なんかはこれをいやがります。
 飲み水をケージ内に置く方法もありますが、トゲオアガマは砂を掘り返すのが好きなので、水入れをひっくり返したり砂で埋めてしまったりします。砂場と水入れを分けるといった工夫が必要です。
せっかく飲み水を用意してもいつまで経ってもそれに気づかないもの、喜んで飲んだり水浴したりするものと、反応もさまざまです。


 ↑ トゲオアガマの温水浴。ぬるま湯で20分ていど温水浴させると、その間に水を飲むものや脱糞するものがある。水分不足や便秘にはたいへん効果があるが、温水浴になれるのに時間のかかるものもいる。温水浴は必ずしも必要ではない。

 いつだったか、イヌでもウサギでも小鳥でもなんでも売ってるペットショップで、2メートルくらいのケージに数十頭のトゲオアガマが収容されているのを見たことがあります。トカゲたちはまったく気の休まるいとまもないといった感じで、これは大変よろしくない飼育例ですね。

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