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エラスモサウルス

2015/08/20


 爬虫類を大きく2分する鱗竜類と主竜類のうち、有鱗類と共に鱗竜類を代表する動物群に首長竜類がいますが、これはえらい生き物ですねぇ。えらいというのは偉大というのではなくて、えらいことになってるという意味です。だって首が体より長いってどゆこと? ろくろ首もビックリですって。知ってます? ろくろ首。江戸時代に人気を博した日本妖怪の有名人です。
 中生代初期、爬虫類が爆発的な進化放散を開始した頃、鱗竜類は主に水棲に、主竜類は陸棲に適応していったような気がします。鱗竜類の仲間には首長竜以外にもモササウルス(有鱗目)のように極めて水棲生活に適応した大型動物が存在しましたし。
 対する主竜類の大半を占める恐竜の仲間はいずれも陸棲です。水辺で暮らしたり頻繁に見ずに入ったりする動物はいたでしょうが。ただ、主竜類の中でも恐竜以外は、カメ類は淡水および海水に適応し、ワニ類は水中で狩りをする水辺の生き物という適応をしました。カメ類は繁殖は地上で行なうというくびきを断ち切れていませんし、ワニ類は古生代の大型両生類の位置づけを継承した感じです。



 エラスモサウルスを含むプレシオサウルス上科の動物たちは、いずれもひじょうに長い首を備えた大型動物ですが、その中でも本種はとくに巨大で全長が14mにも及びました。そのうちの8mが首です。首は体の後半部に顔を届かせられるほど長く、自在に動き回り、これに対して胴体は短くて固定的で尻尾も小さくてほとんど機能していませんでした。プレシオサウルス上科の動物の水力は大きなヒレ足で、これをオールとして用いることで遊泳しました。オールを力強く動かして泳ぐためには、胴体はしなやかであるよりも固定的でしっかりしている方がよかったのです。その代わりに首が独立した生き物のように自在に動いて、魚を仕留めていました。



 首長竜の仲間は大半が長い首を有していましたが、クロノサウルスやリオプレウロドンのように短い首と大きな頭部、ワニのような口器を有する仲間もいました。彼らはたいへん獰猛で、大型の魚やワニを仕留めていたようです。

 むかしむかし、スコットランドのネス湖に恐竜が出たとウワサになり、調査隊が組まれるわ、博物館ができるわで世界的な話題になりました。日本でも池田湖のイッシー、屈斜路湖のクッシーが一頃話題になりましたが、存在を証明する確たる証拠が出なくて、そのうちみんな飽きちまうわ忘れちまうわで、恐竜現代に蘇るの巻はおとぎ話に終わりました。
 でも、福島県で高校生の鈴木君が見つけたフタバスズキリュウは骨格化石という確たる証拠が残り、Futabasaurus suzukii という学名も付けられました。生きた証拠じゃなくて残念ですが。
 ぶっちゃけ、ネッシーもクッシーもイッシーもフタバサウルスも、恐竜ではなく首長竜目プレシオサウルス上科の仲間で、たとえ生きていたとしても現代に蘇った恐竜ってことにはなりません、学術的には。
 でだ、首長竜にしろ恐竜にせよ、6500万年前に滅びたとされるものの生き残りが現存し得るかという話しになると、あれこれ考えてみて、あり得ないと断じざるを得ないですね。ギアナ高地の昆虫じゃあるまいし、観光地にもなるような場所にいる大型動物が人間様の調査を振り切って存続し続けられるかよ、って話しです。子孫を残すにはそこそこの数が生息していないといけません、せめて100頭はいてもらわないと。100頭いれば見つかるでしょう。気温の問題もあります。九州の池田湖はまだしもネス湖や屈斜路湖は外温動物の首長竜が活動するには寒冷すぎます。6500万年の歳月のうちに進化して内温性を獲得したとしたら、存続可能な頭数の首長竜を養えるだけの餌が足りません。夏期だけ活動し、寒冷な季節は休眠するという生態を獲得したとしたら。究極の特殊化を果たした巨大な生き物に、内温性だの寒冷期の休眠だのという新たな機能を追加する余地はないでしょう。あんなデカいもの簡単に変容させられまへん。
 新生代は、地球全域が寒冷化する氷河時代と比較的温暖な時代が数回に渡って繰り返された時代です。比較的温暖な現代でも中生代に比べると平均気温が10℃以上低くなっています。こんな時代に彼らは適応できないです。
 もしも中生代の進化的な大型動物が生き残っているとしたら、年間を通じて高温で、しかも新生代以降に進化した動物がほとんど入り込んでいない秘境ということになるでしょうね。海と岩礁に阻まれた絶海の孤島と言えども、鳥や昆虫、流木に乗って漂着する動物などが入り込みますし、植物も新しいタイプのものが進出しているでしょう。南米やオーストラリア大陸のように独自の進化を遂げた動物群が健在であるためには秘境と言えども充分なポテンシャルを持った広大な土地が必要でしょう。そんな土地は地球上には残っていそうにありません。
 6500万年という時間は、彼らにとってあまりにも長すぎました。たとえ一握りでも、たとえひじょうに小型の種であっても、絶滅系統の生き残りが存続し得る時間ではありません。
 恐竜と同じ時代に生きていたワニ類とカメ類は、現在も中生代からそれほど変わらぬ姿で生きています。であれば小型の恐竜ならどこかでひっそりと生きながらえている可能性があるかも。残念ながらそれも考えにくいですね。それが可能ならばトキは滅びないし、新生代中期に栄えた進化的な哺乳動物も衰退することはなかったでしょう。カメもワニも見た目は似ていても中生代のそれとは別物です。中生代の覇者たちは、すでにその役目を終えてこの世を後にしているのです。

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