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ケツァルコアトルス

2015/08/20


 中生代は爬虫類が支配的な地位を確立した時代でした。先代の両生類も、次世代を担う鳥類や哺乳類も、爬虫類の繁栄に阻まれ思うように進化できませんでした。陸生脊椎動物の進化の歴史は、いつの時代も1群独裁が基本で、2つの動物群が2大政権を握って拮抗するようなことはありませんでした。中生代は事実上爬虫類の時代であったわけで、地球上の様々な環境に様々な動物が進化放散して行きました。
 とは言え、その多様化は哺乳類ほどではなく、中生代は地中や樹上は比較的ノーマークでした。現在でこそ地中や樹上はヘビやトカゲの繁栄の中心舞台となっていますが、中生代の爬虫類は森にいても木に登るよりも大地を闊歩し、土に潜るなんて地味なことはお断りだったんですね。目がよく発達しており、物事を視認する行動が中心でしたから夜行性動物も多くはなかったようです。なので、当時の哺乳類は、夜間に活動したり地中に営巣したりすることで、大型爬虫類の脅威から逃れ、地味に繁栄していたわけですね。中生代には数で爬虫類を凌駕するほどのネズミタイプの哺乳類が棲んでいました。
 地中ともうひとつの盲点である樹上は、初期の恐竜の仲間から分化した鳥類たちが営巣等で利用していたと思われます。
 鳥類たちは、駿足ランナーの小型恐竜から進化しました。なので彼らは助走して飛び立つ技を最初から会得していたのですが、恐竜とは別系統の主獣形類として進化してきた翼竜類は、現生の飛行能力を持つ哺乳類すなわちコウモリやムササビ、モモンガ、ヒヨケザルのように、高所から飛び下りることで浮力を得て飛行することを発達させたと思われます。
 現生の飛行能力を有する哺乳類の進化は、木から木へと飛び移る生活からやがて滑空能力を発達させたわけですが、翼竜類はどうだったのでしょう。翼竜類の祖先が樹上生活者であったことはあまり考えられません。現生のトカゲのような木登り上手の主竜形類が見当たらないのです。
 翼竜類はひじょうに高度な滑空の名人ですが、鳥類ほど自在に飛び回ることはできなかったでしょう。現生の小鳥たちは木々の間のような場所でも器用に飛び回りますが、翼竜類はもっと開けた土地で優雅にグライディングを行ない、ワシやタカのように小動物を狩ったり、海上を飛んで魚を採ったりしていたのでしょう。
 彼らは丘の急な斜面や崖のようなところに営巣して子育てを行ない、そういう立地から飛び下りることで浮力を得て飛んでいたと思われます。
 現生の大型の鳥類も平地を助走して飛び立つのは苦手です。フラミンゴほどのサイズになりますと、充分な助走距離あるいは充分な向かい風がないと飛び立てませんし、大型のワシやタカは飛び下りたり上昇気流に乗ったりして飛び立ちます。彼らが崖に営巣するのは常時上昇気流が発生しているような立地だからです。
 翼竜類の仲間は、前足が進化した翼はひじょうに立派ですが、後足は退化的で華奢です。彼らは地上を歩き回るのは得意ではなかったでしょうし、浮力を得るほどの助走も不可能だったでしょう。何かの事情で無風の平地に降りることになってしまった翼竜は、たちまち捕食動物に狩られる危機に瀕したことでしょう。



 翼竜類ではなんと言っても翼の開長が9mにもなるプテラノドンが有名ですが、ケツァルコアトルスはさらに大型で、開長が12mに達しました。でかいですね。この史上最大の飛行動物が大空を飛ぶ雄姿は圧巻だったでしょうね。映画「ジュラシック・ワールド」では、翼竜がワシのように後足で人間をさらって行くシーンがありますが、彼らの後足にそれほどのパワーがあったのかどうかは疑問です。
 翼竜類はまた、鳥類ほどには羽ばたかず、その飛行はほぼ滑空に依っていたようです。翼を動かすのは操舵のためで、鳥類のように羽ばたいて浮力を得て、急上昇したり微速前進したりといった芸当はできなかったと思われます。1枚の皮膜で構成される翼竜の翼はとてもシンプルな構造で、鳥類のような複雑な動きはできなかったでしょう。



 翼竜類がどんな動物からどのようにして進化してきたかは謎です。翼竜類の祖先型となる動物として、初期の恐竜に近縁な動物ラゴスクスが候補に上がっています。ラゴスクスとはウサギのようなワニという意味だそうで、すばやく走り回ったり跳ねたりすることが得意な4足動物だったのでしょう。
 ラゴスクスのような動物が、駆けたり跳ねたり高所から飛び下りたりといった生活を続けるうちに、駿足の2足歩行の小型恐竜が導かれる一方で、翼竜類が分化したのでしょうか。ただ、ラゴスクスから翼竜へと進化する過渡的動物の化石は見つかっていないようです。
 鳥類が5本の指が翼の骨格に変化したのに対して、翼竜では前足全体がひじょうに長くなるのに加えて親指だけが異常に伸長して、たいへん大きな翼を形成するに至りました。なので翼竜は翼の途中に指を持っているのですが、これはあまり役に立たなかったでしょう。
 滑空生活に特化した翼竜類は、飛び回ることは得意でも、餌を採ったり地上を移動したりといったシーンではかなり不器用だったと思われます。それでも彼らがよく繁栄し、多くの種類が分化したのは、飛ぶことで行動半径がひじょうに広くなり、索餌や生活圏の拡大という点で大きなメリットがあったからでしょう。

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