タランチュラとは
2013/10/24
タランチュラという大型の毒グモは、ずいぶんむかしから有名で、筆者が子供の頃から映画やテレビに登場していました。にぎりこぶしほどもある胴体に小指ほどの太さの脚を備えたクモで、サソリと並んでひじょうに危険な生き物であると知らされてまいりました。
じつはタランチュラというクモがいるわけではありませんで、クモ目オオツチグモ科に属する800種類ばかりいるクモの総称なんですね。同科のクモは、北アメリカ南西部から南アメリカ、アジアの熱帯地方、地中海地方、アフリカ、オセアニアなどのいずれも熱帯域に分布しています。
恐ろしい毒グモというイメージは、ドラマなどに登場する際に誇張表現され、それが広まったものと思われます。多くの大型種は温厚で、気の荒いヤツはやや小型のものが多いようです。また、毒グモと言われるものの高い殺傷能力を持つわけではなく、ゴケグモの仲間のような神経毒を有するわけでもないようです。アメリカ大陸に棲息するタランチュラは、かぎ針状の体毛を飛ばして自衛し、この毛に触れると痛かゆい目にあいます。クモの仲間の常として体外消化を行なうので、鋭い大腮で噛まれると、傷口から消化液が混入するので、患部が腫れ上がります。強酸性の消化液を注入されるわけだから、そりゃ腫れますって。タランチュラの仲間はサイズがでかく、その分大腮も大きいので、人間の皮膚もやすやすと食い破ることができ、それで消化液を注入されることが多いわけで、たのクモたちと同様、特別に毒を持っているわけではありません。毒性の点から言うと、神経毒を持つゴケグモの仲間の方が危険だと思われますが、ゴケグモはちっこいうえにそれほど獰猛なクモでもないので、噛まれて負傷することも少ないと思います。
そんなわけで、これを読んでいただいた読者の方々には、タランチュラはけっこう可愛い動物なんだという認識を持ってくだされば嬉しいな、と思います。でもまぁ、触ったりはしない方が良いですけど。日本の人家に出現するクモのように、壁をシャカシャカ走ったり、糸を使って天上から降りてきたりなんて不気味なことはあまりやらない子たちです。
↑ ゴライアスバードイーター。まだ子供。
↑ 成熟したゴライアスバードイーター。↓
今ではペットとして日本でも大々的に流通していますが、彼らは4つのグループに大別されます。ツリースパイダーは、南米とアジアに棲む樹上性のクモ。バードイーターは、南北アメリカに棲む地上性のクモ。バブーンはアフリカ産で地中に巣を作るものが多い。アースタイガーはアジアに棲むクモで、地中性から半樹上性でたいへん気の荒いものが多い。
この中で筆者が大好きなのはバードイーターです。和訳すると鳥食いというすごいネーミングです。小鳥を襲うほどの大型種がたくさん含まれ、量感のある体型と太い脚がなかなかの迫力です。実際に小鳥を襲うかどうかは知りませんが、ヒナ鳥が巣から落ちてたまたまバードイーターに遭遇した場合、彼はやすやすとヒナ鳥を捕食するでしょう。
↑ ゴライアスピンクフットバードイーター。淡いピンクの脚先がおしゃれ。
タランチュラはたいへん成長が早いです。子グモを入手することができれば、その目覚ましい成長ぶりを観察できます。成熟したオスは短命ですが、メスは長命です。筆者のところでも2001年に子グモを入手したものが現在も元気にしています。飼育は簡単です。最大級のものでも、それほど動き回らないので30cmていどのプラケースに浅い水入れを用意してやり、時おり生き虫を入れてやればよいだけです。生き虫でなくても冷凍マウスなどでも飼育できると聞いたことがありますが、筆者は試したことがありません。熱帯の生き物なので冬場は加温が必要です。
繁殖は、国内でも手がけられていますが、容易ではないようです。筆者ははなっから挑戦する気がありません。
メスを入手できれば、ひじょうに丈夫で長生きするのですが、唐突に死んでしまうことが少なくありません。これはサソリやウデムシ、サソリモドキ、ムカデといった他の毒虫でも同じです。筆者の飼い方になにか問題があるのかもしれませんが。
日本でも多数のタランチュラが比較的容易に入手できます。興味をお持ちの方はぜひ飼ってみてください。できれば子グモから育てることをお勧めします。
↑ ベネズエランブラックバードイーター。腹部の毛がハゲているのは脱皮前の兆候。
↑ ブラジリアンブラック&ホワイトバードイーター。
↑ サンタレムピンクヘアードバードイーター。↓