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ジュラシック・ワールドの実現

2015/10/24


 大ヒットした映画「ジュラシック・ワールド」のロードショー公開もそろそろ終わりのようですが、みなさんご覧になりました? 恐竜がモンスター化したパニックムービーだ、あるいは恐竜のような特殊な動物を収容しているわりには設備が普通だ、普通のアトラクションのように客が大勢詰めかけているのも不自然だ、そう言った批判も耳にしましたが、筆者はこのシリーズはひじょうにリアルに恐竜を再現していると思いますし、この最新作もそれを裏切らなかったと思っています。
 もちろんドラマチックな演出をするために、実際にはそう上手くはゆかないだろうというシーンはたくさんあります。しかしながらハラハラドキドキの演出に関してそれをあり得ないと言っていたら、映画なんか見れません。事実を忠実に再現したドキュメンタリーか、報道ものでも見るしかなくなります。

 第1作「ジュラシック・パーク」の恐竜の登場シーンには、当時ひじょうに感銘を受けましたが、2作目「ロスト・ワールド」のハンティングのシーンにはもっと衝撃を受けました。恐竜は爬虫類であるという先入観から巨大なトカゲというイメージを持たれがちですが、悪人ハンターの車に追い立てられる恐竜たちの群れは、まるで形の変わったサイやゾウを見ているようで、いかにも哺乳類的なんですよね。これこそがリアルな恐竜像だ、筆者はかなり興奮してその映像に見惚れたものです。
 恐竜は爬虫類ですが、現生の爬虫類の大型版ではありません。中生代を通じて地球上で支配的な繁栄を築いていた彼らは、現生の哺乳類の位置づけにあったのです。恐竜たちはいずれもトカゲのような腹ばい姿勢ではなく、哺乳類のように4足で立ち上がっているか後足2本で歩行していました。あるいは最近よく指摘されているように体毛を有するものや、羽毛のある小型恐竜も存在したかも知れません。
 現在は人類が支配的繁栄の地位をものにし、哺乳類さえも極めて進化的なものはすっかり衰退してしまったのですが、細々と生き残るゾウやサイ、奇蹄類の草食獣たちの方が、現生のヘビやトカゲよりも恐竜に近い生きざまをしていますし、動きや、集団生活、営巣と子育てといった生態も哺乳類的でした。哺乳類と同じように温血だったという説さえあります。
 恐竜たちが滅亡したあと、新生代になると鳥類や哺乳類が繁栄し大型化を果たすわけですが、恐竜たちが現生の哺乳類に近い生態を有していたのだとしたら、どうして恐竜が滅び哺乳類が生き残ったのか、そんな疑問が生じるかも知れませんが、地質時代の中生代から新生代へ移行する時期に、地球は大きな異変に見舞われているんですね。巨大隕石の衝突という説が有力なようですが、筆者は中生代の温暖な気候を作っていた造山活動が終息し、氷河期と間氷期を繰り返す時代に突入したことが、地球上の生物に大きなダメージを与えたと考えています。
 恐竜たちは、現在よりも平均気温が10℃以上高かった中生代の環境に特化した動物たちでした。それが失われると、彼らは真っ先にダメージを受けたわけです。もちろん他の多くの動植物もダメージを受け、連鎖的にひじょうに多くの生物が死滅したわけですが、小型で少量の食料でも生きて行ける動物たちは比較的ダメージが少なく、新生代の初頭には爬虫類も哺乳類も、共に小動物からの再スタートになったわけです。そうしたところ、高い恒温性を有し地中にも進出していた哺乳類たちは、生きて行くうえで爬虫類よりも有利になり、躍進的な進化放散を開始したというわけですね。
 実際には、これほど単純ではなかったのですが。鳥類の短期的な繁栄とか、様々なドラマがありましたし。

 恐竜たちを現代の世界にクローン技術によって蘇らせることに成功したとして、彼らが現代の地球環境に適応できるかは難しいところですね。ジュラシック・ワールドを開園するには、まず中生代の気象条件を満たせるような温暖な気候が維持できる常夏の熱帯地方を選ばなければならないでしょう。高温多湿のジャングルはまさに理想的な環境と言えるでしょうが、多くの恐竜たちが草原にも進出しており、草原であっても充分な高温である必要があるでしょう。
 中生代と新生代を決したカタストロフは、地球上の生物圏をリセットしてしまうようなできごとでしたから、植生もずいぶんちがいます。草食恐竜たちが安全に食べて行ける植物をどれだけ確保できるかは、大きな課題になると思われます。あまり信憑性がない説ですが、白亜紀になって顕花植物が繁栄し始め、恐竜たちの多くがアルカロイド中毒になって死滅に向かい、恐竜たちの生態系が崩れたという説もあります。筆者が飼育している草食あるいは雑食の爬虫類でも、小松菜は食べますがほうれん草は食べられないという食物に対する適応が見られます。多くの草食恐竜を管理し続けるには、彼らにあった植物を充分に供給できるか、あるいは彼らが現生の植物にどれだけ適応できるかがカギになるでしょう。
 肉食恐竜の食事は大丈夫でしょうか。草食恐竜を餌にして置けば大丈夫ですが、クローニングによって蘇らせた貴重な草食恐竜を、餌として供給できるほどの数を維持できるでしょうか。現生の草食哺乳類を代用するのは問題ないと思われます。ただ、ヴェロキラプトルの餌は足りてもチラノサウルスの肉は充分か? と心配になりますよね。あいつデカいですよ。
 恐竜が最近よく言われるような温血動物だったら、肉食獣のみならず草食獣においてもひじょうに深刻です。でも、彼らが変温動物あるいは恒温性がひじょうに低ければ、食料事情はかなり解消されるでしょう。自ら体温を作らない変温動物はひじょうに省エネ的で、餌の摂取量も少ないです。

 ひじょうに温暖な中生代に生きていた恐竜たちは、自ら体温を作らなくても充分に体を高温に保つことができたでしょうから、彼らは変温動物でありながら、常に高い体温を維持する動物であったと思われます。幼体の成長がひじょうに早かった説を正しいとすると、幼体の間はかなりの恒温性を有していたのかも知れません。成体になって大型化すると体積に対して表面積の割合が小さくなり、保温性が大きく向上するので、生態になると自ら体温を作る機能は失われた、そんな可能性も考えられると思います。

 大きな体を有する彼らは、まちがいなく高い知性を有していました。幼体の生存率を高めるために育児も行なったでしょうし、集団生活もしていたでしょう。中生代の地層には、恐竜の営巣跡や、小さな個体を中央に集めて隊列を作っていた足跡などが残っているそうです。
 あるていど大きな動物は、知能が低いと索餌や自衛において高度で複雑な生態を必要とします。餌に囲まれて暮らしている小動物のようなわけには行かないのです。
 映画「ジュラシック・ワールド」では、飼育員が獰猛なヴェロキラプトルと信頼関係を築いている様子が描かれていますが、あれはリアルだと筆者は考えます。現生のトカゲの仲間でも飼育者に慣れたり、見なれない人間を恐れたりといった反応を示しますし、部屋で迷子になったヤモリが呼んだら出てきたり、脱走したヘビが元のケージの上に帰ってきたりといったことを筆者は経験しています。哺乳類のような表現力はありませんが、爬虫類も知性のない冷血動物であると考えるのはまちがいです。

 ということで、ジュラシック・ワールドの実現には、充分に高温多湿な気候を維持することと、草食恐竜が安全に食べられる植物を充分に確保することが重要になって来ると思われます。
 今回の映画では、翼竜が群れを成して飛び回り、人を襲うシーンがありましたが、あれはちょっと考えにくいですね。翼竜は優秀な滑空動物ではありますが、現生の鳥類ほどの飛行能力はなかったでしょう。
 また、チラノサウルスやヴェロキラプトルは、ジュラ紀ではなく白亜紀き生きていた動物です。トリケラトプスもそうですね。ジュラ紀の有名人と言えば、ブラキオサウルスやステゴサウルスですかね。
 最後に、チラノサウルスもビックリの水棲動物モササウルスが、あっと驚く活躍をいたしますが、あの動物は分類学的には恐竜ではありません、残念ですが。恐竜とされる鳥盤目と竜盤目の仲間は滅びてしまいましたが、モササウルスの属する有鱗目の仲間は、現生爬虫類の主流であるヘビやトカゲとして繁栄を築いています。あんなデッカイのはもういませんけどね。

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