1_萌萌虫雑記帳.png

恒温性と胎生

2015/11/03


 先日、海外のテレビ番組で「恐竜は鳥に姿を変えて現在も生きている」と豪語していました。鳥類を爬虫類に含めるという考え方をする学者はけっこういるそうですが、鳥が恐竜の姿を変えたものというのは無茶苦茶だなぁと思いました。まぁ、そう言えるだけの根拠がなくはないのですが。でも、姿を変えてという表現はまずいです。姿を変えるってどういうことでしょう? 鳥は恐竜から進化したと言いたいのでしょうか。それもまた根拠がなくはないわけで、なんとも頭のかゆいお話しなんですね、これが。
 鳥類の祖先は、確かに恐竜の仲間です。竜盤目獣脚亜目の仲間から鳥類の祖先は分化しています。鳥類を分化した小型の獣脚類は、その後ジュラ紀から白亜紀にかけてヴェロキラプトルやチラノサウルスといった大型の恐竜を輩出して行く系統と、鳥類の系統に分かれたというわけで、なんと申しますか、鳥類が初期の恐竜の子孫であることはまちがいないのですが、有名な大型恐竜たちが鳥類に姿を変えて現在もいきている、そんな誤解を招かないかすこぶる心配です。
 最近では、一部の恐竜にも羽毛があったとし、恐竜たちの復元図もなかなかカラフルになってきたりしておりますが、なんかノリが軽いなぁと苦笑させられます。羽毛があった恐竜も存在したと思われますが、羽毛がカラフルなものであるというのは、現生の鳥類を模倣しすぎなんじゃないでしょうか。実際、何とも言えませんけどね。小型恐竜ならまだしも大型種まで派手な色や模様で染め上げちまうのは、なんかいただけません。なんて言うのも筆者が現生の大型哺乳類を見てそう考えているわけなんですけどね。

 かつて恐竜は爬虫類であるというだけで、愚鈍で低能な生き物であったと想像されたことがありました。しかしながら、彼らが高い水準の知能を持ち、集団生活や育児を行なっていたという考え方が多くなってきて、恐竜も温血動物だったとか、胎生だったとか、そいういったことが議論されるようになりました。
 恐竜の卵の化石はワラワラ見つかっています。ならば卵生じゃんと結論づけるのは早計です。全長ん十メートルというバカデカい恐竜たちの卵は発見されていません。卵はその構造上いくらでも大きくできるものではないそうです。数十メートルもある母親なら、直径数メートルの卵を産めばいいじゃんと思いますが、じっさいにはダチョウの卵あたりがかなり物理的な限界に近く、それ以上大きくすると、卵殻を大幅に強固にしなくてはならず、子供が卵を破って出ることが難しくなります。
 全長25mのアパトサウルスが(旧ブロントサウルス)、ダチョウの卵くらいの大きさの卵を産んだとします。もはや母さんアパトにとって卵は米粒くらいのもので、まちがいなく紛失してしまうでしょう。あまり小さすぎて産んだ自覚すらないでしょう。そんな小さな卵から生まれた手のひらサイズのアパトサウルスがいたなら飼ってみたいものです。
 アパトサウルスは、集団生活をしていた恐竜なのだそうです。子供たちを中央に集め、大きな大人たちが外側を固めて隊列を作っていた足跡が残っていると本で読んだことがあります。彼らにとって小さな虫のようにミニマムな子供をふみつぶさないように歩くのは至難の技だったでしょう。社会性を持つ恐竜のベビーは母さんとあるていどコミュニケーションが可能な大きさが必要だったと思われます。
 恐竜の卵生説をかたくなに主張する学者先生は、アパトサウルスのような超ド級の大型恐竜は、全長が3〜4mの頃に産卵して育児を行ない、それからでっかく育ったのだとおっしゃいます。育児をする母親が、じぃさんばぁさんに保護されていたというわけです。繁殖期を過ぎた老齢の方々が、大型恐竜の本領を発揮した、まさに高齢化社会を構築していたというのです。
 でもね、全長数メートルの恐竜の卵は化石として発見されていますが、巨大恐竜の卵や、彼らからすると小さな虫のような幼体の化石が見つかっていないんですよね。
 恐竜の仲間ではありませんが、ネッシーやクッシーのモデルになった首長竜たちは、四肢がヒレに進化した完全水棲動物です。彼らもまた胎生であったことはまちがいないでしょう。ウミガメのように上陸して、彼らにとっては豆粒のような卵をせっせと産んでいたとは考えにくいです。魚竜の仲間などはもはや陸に上がれそうにありません。浜に打ち上げられたらビチビチと虚しく跳ねているだけでしょう。
 アパトサウルスの子供は、少なくともゾウの子供ていどのベビーを産んでいたと思われます。母さんアパトの大きなお腹には、大きな胎児を育てる充分なキャパシティがあります。

 これもテレビ番組(海外製作)で見たのですが、恐竜の子供はひじょうに成長が早かったのだそうです。早く大きくなり外敵に負けない体を作っちまった方が生存率が向上するからだそうです。とても理にかなっていますね。そしてそのためには彼らが高い代謝効率を持つ恒温動物であったはずだとおっしゃっていました。
 恒温動物は、温血動物とも呼ばれますが、ここは専門家チックに内温動物という言葉を覚えましょう。これに対して変温動物あるいは冷血動物は、外温動物です。内温動物は、自ら発熱して体温を維持する仲間で、外温動物は体温の維持を外気温にゆだねている動物です。だったら恒温動物、変温動物でいいじゃんとおっしゃるなかれ、外温動物でも高い恒温性を維持しているものが少なくないのです。現生の昼行性のトカゲなどは、日光浴によって体を温め、保温効果によってあるていどの恒温性を維持します。飼ってみると解るのですが、飼育者と友好的な関係を築いたり、なかなか知性的に振る舞います。
 恐竜が生きていた中生代は、現在よりも平均気温が10℃くらい高かったそうですから、彼らは内温動物でなくても充分に恒温性を維持できたんじゃないか、そう思うのです。とくにひじょうに大型になる恐竜では、体温を維持するよりも過剰に上がった体温を放熱するのに苦労したのではないでしょうか。
 体の容積に対して表面積の占める割合が大きくなる小さな恐竜や幼体では、よく放熱するので、小型恐竜や幼体ではあるていどの内温機構を持っていたかもしれません。あるいは、放熱を防ぐために羽毛を発達させ、それが鳥類の進化の前適応になったのかもしれません。
 中生代の温暖な気候で放熱になんぎしているような大きな恐竜たちは、あえて内温機構を備えていなくても充分に恒温性を維持でき、知的な生活を営むことができたでしょう。それに内温性を維持するにはひじょうに多くのエネルギーを必要とします。内温動物である私たち人間は日に3食たべますが、外温動物である爬虫類や両生類はその10分の1ていどの食事で充分ですし、1ヶ月くらい絶食しても平気です。大きな恐竜たちが、こぞって大食漢であったとしたら、温暖な中生代であっても食糧事情はかなり深刻なものになっていたかもしれません。たくさんいましたからね、巨大恐竜。
 運動する物体は慣性があるので、重力や空気といった抵抗がなければ、どこまでも運動し続けます。宇宙空間では、小さな推力でも宇宙船はどこまでも飛び続けます。いずれは天体の重力につかまるので永年に飛び続けることはないですが。
 地球上で物体を投擲すると、物体は地球の重力や空気の抵抗によって減速し、やがて地上に落下しますが、初速に応じた距離を飛び続けることができます。それと同じように外温動物の体温も熱源が絶たれたとたんに外気温と同じになってしまうわけではなく、徐々に放熱しながらゆるやかに低下します。このことを熱慣性とか言います。大型の恐竜は、中生代の温暖な気候と相まって、ひじょうに効果的な熱慣性による恒温動物であったことでしょう。日没以降は体温の低下も大きくなりますが、明るいうちは活発に行動することができたでしょう。

 ということで、恐竜は多くの仲間が高い知性を持ち高度な社会生活を行なっていましたが、そうした生活様式を実現するための恒温性(平易には血の巡りとか言いますね)を、彼らは熱慣性によって維持していたと思われます。幼体や小型の恐竜では、体毛や羽毛で放熱を防いだり、あるていどの内温性を有していたものもいたのかも知れません。
 多くの恐竜の卵の化石が見つかっているものの、ひじょうに大型化した恐竜たちは胎生だったでしょう。同様に首長竜や魚竜(分類学上は恐竜ではない)もまた胎生だったにちがいありません。
 中生代の恐竜たちを想像する場合、現生のヘビやトカゲよりも哺乳動物を参考にした方が、よりリアルにかれらの実態に迫れるのではないか、そんな気がします。

コメント
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック

索引


目次

スネさん リーザさん けもの 庭虫
雑虫 クモ 直翅系 半翅系 膜翅系 鱗翅系 鞘翅目 毒虫 魚たち 無脊椎
両生類 カメたち 絶滅動物 くさばな 庭草 雑草 高山植物 飼育と観察 ヒト □飼育動物データ




    123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930 
<< November 2018 >>

サイト内検索

NEW ENTRIES


Amazon Kindle 電子出版のご案内
cover4.jpg


★講読には
Kindle 読書アプリ
が必要です。



sijn.jpg






recent comment

recent trackback

プロフィール

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM