アオドウガネ
2013/11/07
日本の昆虫の名前(和名)には、すごいものがあります。コクヌスト、マグソコガネ、ゴミムシダマシ。コクヌストは穀類に着く小さなゾウムシでなんだか泥棒呼ばわりです。マグソコガネは草食獣の糞に集まるコガネムシの仲間、ゴミムシダマシはゴミムシに似た小さな甲虫類の1科で、妙名の強者が多数名を連ねています。チビコブツノゴミムシダマシ、クロズハマベゴミムシダマシ、コガシラスナゴミムシダマシ等々。クロホシテントウゴミムシダマシなんか虫の名前が2つほど入ってますよね。カラカネチビキマワリモドキ、コクヌストモドキ、キクイムシモドキもゴミムシダマシ科の昆虫です。日本人は発見したすべての虫に和名を付けようとしますから、どんどん名前が長くなって早口言葉みたいになってしまうんでしょうね。あとから発見された微細な虫ほど、既存の名前にニセとかダマシとかモドキとか付けられ、なんとも人聞きの悪いことになっています。
ネットに、ニセゴミムシダマシモドキというのが載っていましたけれど、これって本当に存在するのでしょうか。ゴミムシダマシの似せ物のモドキなんて、すさまじいネーミングです。
聞き慣れた名前ですがゴキブリもなかなかすごい響きです。その名の由来について尋ねられた折りに、害虫なのでブッ殺そうと首をへし折ってやったところ、ゴキッと音がしてついでにブリッとおならが出たことからゴキブリになったと回答したことがあるのですが、あれは冗談ですよ。
ほかにも、カヤノトゲトゲだとかドウガネブイブイなんてのもいます。考えてみれば今挙げたのはすべて甲虫類ですね。甲虫の仲間は他を圧倒して種類が多いので、おのずと名前もすごくなってゆくのでしょう。
で、以上は長い前ふりです。本題はここからです。ドウガネブイブイとは、日本ではそこそこサイズのあるコガネムシの仲間で、平地でもよく見られる虫です。昆虫に対して知識の乏しい人から、ブンブンとかカナブンとか呼ばれていますが、確かにブンブン羽音を立てて飛びますが、ブンブンという和名の虫はいませんし、カナブンは別の昆虫です。
ドウガネブイブイは、丸っこい体型の銅金色の虫で、カナブンは同じコガネムシかですが、もっと角張った体型で四角く出っ張った頭部が特徴です。ドウガネブイブイは、コガネムシ科コガネムシ亜科に属する葉食い虫で、カナブンはコガネムシ科ハナムグリ亜科に属する樹液吸い虫です。
樹液吸いは、昆虫ゼリーで飼育できますし、昆虫マットの名で市販されているクヌギやナラを砕いた土で幼虫が育てられます。葉食いは、食草になる植物の葉を用意してやらねばなりませんし、幼虫はその根を食べますから、成虫幼虫とも飼育がやっかいです。
筆者が幼少の頃に読んだ昆虫生態図鑑には、葉食いコガネの幼虫を飼育するには、ジャガイモやサツマイモを土中に埋めて発芽させ、張り出した根を食わせるべしと記載してありました。また成虫にはマメ科植物の生葉を用意せよとのことでした。
そんな面倒なこと……、筆者はこの図鑑から得た情報ゆえにはなっからコガネムシ亜科の昆虫を繁殖させてみる気になれませんでした。ところが、筆者がさらに幼かった頃に、ドウガネブイブイの成虫をキュウリで飼っていたことがあるのを思いだしました。その虫は与えられた野菜をモリモリ食ってたくさん糞をしてました。
そしてまたある時、クワガタムシの幼虫を飼っていた頃に、庭先で甲虫の幼虫を見つけ、その幼虫が朽木食いや腐葉土食いならと、クワガタムシの幼虫を同じマットを入れた入れ物に放り込んでおいたのですよ。幼虫はマットを食べてスクスクと育ち、1度の脱皮を終え、次に蛹室を作ってその中で羽化しました。小さなクワガタムシかハナムグリの仲間だろうと確信していたのに、羽化して出てきた虫は、じつにアオドウガネでした。上述のドウガネブイブイの近縁種で綺麗な緑色をしています。
葉食いコガネの成虫は必ずしもマメ科植物の葉を用意してやる必要はないし、その幼虫である根食い虫も生きた植物の根を与える必要はないということです。驚きです。葉食いコガネあるいは根食い幼虫の中には、食草が決まっていて、このような飼育が通用しないものもいるのでしょうが、ドウガネブイブイやアオドウガネ以外にもこの方法が通用する虫はきっといるでしょう。
コガネムシは身近なところにたくさんいますから、興味のある方はあれこれ試してみてください。
こんな感じのを,もっとください!