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コウガイビル

2013/11/12


 扁形動物門ウズムシ綱ウズムシ目コウガイビル科に分類される陸棲動物です。ヒルという名が付きますが、環形動物門のヒルとはまったく別物で、もっと原始的な動物である扁形動物の仲間です。同目の中に切っても切っても再生することで有名なプラナリアがいます。扁形動物の仲間はたいていが水棲で、本種のような陸棲に適応した仲間は例外的と言えるでしょう。
 ミミズのように長形の生き物ですが、ひじょうに偏平で、長さが10cm以上になるのに厚みは数ミリしかなく、動いていなければペンキか何かで描いた絵のようです。中には数十センチの長さになるものもいるようですが、幅は細いままなので、ヒモそのものです。頭部がイチョウ型になるのが特徴ですが、ここに口器はなく頭部は触手の役目を果たしているだけでしょう。頭部には微細な眼点が多数存在するらしいので明るさくらいは識別するのでしょう。口器は体の中ほどの腹面にあり、排泄孔を兼ねます。これほど原始的な動物が陸棲に適応したのはすごいことです。



 体がゴムのように伸縮し、個体の正確な長さを計るのは不可能です。そんなところはヒルに似ているかも。陸棲の軟体動物や環形動物と同じく、乾燥に弱くじめじめしたところにいます。雌雄同体であるところも同じです。動物は海の中で原始的なカイメンやクラゲの仲間から魚類にまで進化しましたが、節足動物や脊椎動物に進化する一歩手前まで雌雄の別が明確でなかったわけです。
 最も原始的な後生生物(多細胞生物)であるカイメン類は個体の別さえ判然としませんが、やがてクラゲやヒトデといった放射相称動物と言われる整った個体形状を持つものが進化し、それから左右相称動物と言われる左右対象の体を持つものが進化しました。我々人間も左右相称動物です。この左右相称動物のもっとも原始的な仲間が扁形動物で、体の前後の概念、頭部と胴部の概念がようやく整い始めたばかりという状況です。そんな古いタイプの動物がいまも原型を保ったまま生き長らえ、その一部が陸棲動物にまで進化したことは快挙といえます。


 ↑ 頭部のクローズアップ。ここに口器はない。眼もないが微細な目点が多数散在するらしい。

 筆者の現在住んでいる山岳地では、暖かい季節の雨上がりなどに、濡れた道の上をもそもそ這っている姿を時たま目にします。タイプは原始的でも数億年の進化の過程で様々な能力を会得しており、ミミズやナメクジを襲って捕食するハンターです。土や枯れ葉を適当に食べている土壌生活者ではありません。
 飼育するには、生きた餌を与えるほか充分な湿度を維持してやる必要がありますが、保湿のために密閉するのはよくありません。多湿を好む生き物を飼う際に飼育者がよくやる失敗が、湿度維持に専念して生き物を蒸し殺してしまうことです。かく言う筆者も多くの失敗を重ねています。
 餌であるミミズは湿った土の中で容易にストックできますが、本種の飼育環境を整えるには工夫が必要です。土や枯れ葉でレイアウトすると適切な環境にはなりますが、ケージの中で本種を見失いがちです。筆者は通気性の良い飼育ケースにキッチンペーパーを数枚重ねて敷き、それにたっぷりと加水しておくという単純な環境で飼っていました。見栄えは良くないですがとても観察しやすいです。
 餌のミミズを与えると、これに巻きついて口から吻を伸ばして消化しながらすすります。採餌にあまり積極的ではないので、ミミズの上にわざわざ乗っけてやるくらいのことをしてやらないと食べません。こんな消極的なで態度よく自然の中で生きてゆけるものです。


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