キマダラコウモリ
2016/06/09
でたぁ、なにやら異様な雰囲気を放つ大型の蛾を見つけました。一昨年、あれほどムキになって様々な蛾を撮って回ったのに、筆者の生活圏内にまだこんな大型種が新たに見つかるなんて。濃い茶色の体は、棒状に丸くなった枯れ葉のようで、そこから4本の太い肢が生えています。その肢がちょっと葉っぱぽくて、コノハムシの枯れ葉版といった感じを受けます。コノハムシほどではないけれど、擬態効果はなかなかのものだと思われます。筆者としては初対面の虫です。
キマダラと名にありますが、ほぼ黒褐色の地味な蛾です。そうとう古くなった枯れ葉のようです。
横から見ると、蛾然としてきますね。
前から見ると、太い前中肢が目立ちます。後肢は小さく退化的で翅の下に隠れているようです。
最初の画像から、尾端にくっついてる白いツブツブが気になっている方も少なくないと思いますが、ご想像通り産卵中です。
見つけた時には産卵していませんでしたが、写真を撮るのに不都合だったので、近くの葉を除けて、蛾自身を指で軽くつついてちょっと移動をお願いしたところ、急に腹部を震わせ始めポロポロと卵を放出し始めたのです。
卵はとめどなくいつまでも次から次へと出てきます。出血大サービスです。一昨年に出会ったタケカレハを思い出します。翅を開かせたりしていじくっているうちに産卵を始め、それを確保して育てたっけ。今回は、それを上回る量の卵が、ほんと止まりません。
体は動かさず、腹部だけを震わせて延々と生み続けています。蛾のメスって刺激すると産卵してしまうようにできているのでしょうか。
翅を開いて見せてもらいました。なかなか飛翔力がありそうな翅です。
あんまりいじくったので、とうとう暴れ出し、翅をバタバタさせはじめました。産卵もようやくとまりました。
コウモリガ科に属します。形はちがいますが、雰囲気は確かにコウモリっぽいです。前翅にわずかばかりの黄白色の小さな紋がいくつかあり、それがキマダラの由来でしょう。
コウモリガのメスは、飛び回りながら卵を適当にばら撒くのだそうです。地表で孵化した幼虫は、近くにあった草木の茎に食い込み、その内部を食害しながら育ちます。餌にできる植物はかなり広範囲に渡るようで、ネットで調べてみましても、じつに様々な植物の名があがります。
卵はひじょうに小さく、産卵数は10,000にも及びます。空中散布以外にも静止状態でも産卵するそうです。一昨年のタケカレハのように育ててみようかとも思いましたが、面倒そうなので止めました。最初はきれいな純白の卵でしたが、時間が経つとまっ黒になりました。蛾のいたあたりに撒いておけば、孵化した幸運な幼虫は、手近な植物への寄生を成功させることでしょう。