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ホッグノーズ

2013/11/21


 ホッグノーズは、和名をシシバナヘビと言い、口吻の先端がとがってちょっと豚鼻みたいで大変可愛らしい顔つきをしています。基本的にカエルや小さなトカゲ等を食する温厚なヘビなのですが、食性の幅が広いウェスタンホッグノーズ(セイブシシバナヘビ)は、マウスに餌づきやすくポピュラー種として大量に流通しています。
 シシバナヘビ属自体は、北アメリカ大陸を中心にカナダ南部からメキシコ北部まで広く分布し、トウブシシバナヘビ、ナンブシシバナヘビ等がいます。ウェスタンが最大種で150cmくらいまで育つ個体も存在し、最小種のサザンでは50cmそこそこです。ショップで、トリカラーホッグノーズやメキシカンホッグノーズというのを見たことがあるのですが、これらが種名なのか改良品種なのかは筆者には判りません。


 ↑ シシバナヘビ属で最もポピュラーで飼いやすいウェスタンホッグノーズの幼蛇。

 ひじょうに温厚で飼いやすく、馴れればハンドリングも容易になりますが、そうなるためには根気よく付き合う必要があります。ウェスタンホッグノーズは、生後少し経過しマウスへの餌づけも完了しているCB個体がよく流通しており、初心者にも飼いやすいです。それでも幼蛇はかなり神経質で、触ろうとするとシューシューと噴気音を鳴らして威嚇してきます。動きは緩慢で飛びついて来ることもあまりないので、威嚇してきてもそっと持ってしまえばハンドリングも可能なのですが、後牙類なので一応有毒です。本種に噛まれることは少ないものの、噛まれて毒を注入されると激しい痛みと患部の腫れを伴います。


 ↑ ウェスタンホッグノーズの頭部。とがった口吻とまん丸の目が可愛い。

 後牙類は、ナミヘビ科に属するヘビの中の有毒種で、口内の奥の方の歯で毒を注入するので、深く噛まれなければ大丈夫ですし、噛みついて毒で攻撃する習性を持つ種はあまりいませんから、有毒でありながら特定動物の指定を受けておらず、飼育に制限はありません。ただ、日本にも棲息するヤマカガシは動きがひじょうに素早く、噛まれて人が死亡した例もあり、ナミヘビ科の後牙類でありながら飼育には制限があります。最近ではヤマカガシ等をユウダ科としてナミヘビ科から独立させる考え方が主流になりつつあるようで、後牙類の定義は、一群のヘビを差すというよりも毒ヘビの口器の構造による分け方といった感じです。


 ↑ 脱け殻にも模様がある。

 本種は、獲物に毒を注入することによって獲物の動きを止めて飲み込みやすくする、毒ヘビとしては原始的な位置づけで、こうした仲間から獰猛で危険な毒ヘビが進化して行ったのでしょう。ユウダ科のヘビは、毒を攻撃にも使い始めた進化型で、そこからクサリヘビ科、コブラ科といった危ないヘビたちが分化して行ったと思われます。
 後牙類の多くは、普通に俊敏で、獲物に飛びついて仕留めますが、本種は飼育下でこの動作を見たことがありません。ゆっくりと獲物に近づき、あんぐりと口を開けてくわえ込みます。こんなやり方で自然界で上手く狩りができるのでしょうか。飼育下ではマウスの死骸に馴れさせるため、なおさら動きが緩慢になるのかもしれませんが、ホッグノーズが優秀なハンターであるとはとても思えません。ゆっくりとした変化の少ない直線的な動きで獲物に近づき、気づかれる前にくわえ込んでしまうという狩猟方法が、カエルやトカゲには案外有効なのでしょうか。動かないものを視認しないカエルや夜行性のヤモリなどは、昼間はぼんやりしていてホッグノーズの接近になかなか気づかないのかもしれませんね。
 ホッグノーズの直線的な動きを、イモムシのようだと表現する人もいます。確かに本種がS字に身をくねらせて迅速に動くところはあまり見ません。危険を感じると一応あわてて逃げますが、それほど素早くなく、逃げられないと思うと擬死行動をとることがあります。腹を上にして動かなくなり、総排泄孔から悪臭を発するそうですが、筆者の経験ではこれを観察できた機会はひじょうに少なく、悪臭はほとんど感じませんでした。


 ↑ 擬死行動の様子。口を大きく開けることも多いらしい。

 ホッグノーズは基本的には、ヒキガエル食いだと言われています。イースタンやサザンはとくにこの傾向が強く、ウェスタンだは食性が広くて小さな爬虫類や鳥類、哺乳類も襲うほか死骸も食べるようで、飼育下でのマウスへの餌づけも最も簡単です。もっとも簡単と言うものの、他の多くのナミヘビに比べるとかなり手こずる方で、餌づけの前に飼育者と飼育環境に慣れさせることが先決です。
 ショップで餌づけ済みとして販売されている個体でも、買って帰って環境が変わると食べなくなってしまうことも少なくなく、飼育者を心配させます。ただ、ショップでコンスタントに食べていた個体であればいずれは餌づいてくれます。



 飼い始めたばかりのうちは、小さめのマウスを与える方がよいでしょう。ラットスネークやキングスネークのように、猛然と襲いかかって締め上げることはまずしないので、大きなマウスは怖がります。また、ヘビを落ち着かせるにはシェルターの使用が有効であるというのが定説のように言われますが、これも諸刃の剣で、シェルターにこもりグセがついたおかげでなかなか飼育者に馴れてくれないこともあります。とは言うものの、まずシェルターで落ち着かせ、その出入り口付近に置き餌することで餌に馴れさせるのが良策にはちがいないのですが。
 筆者の場合は、1メートルを越えるサイズになるヘビには、繁殖用以外にはシェルターを用いないことが多いです。コーンやキング、ラットスネーク、ゴーファ、コーチウィップやボアやパイソンの仲間にはほとんどシェルターを使ってきませんでした。小型のハウススネークやガータースネーク、ツヤヘビなどにはシェルターは有効でした。あとロイヤルパイソンも個体によりシェルターがあった方が良好なものが多かったです。
 本種に関しては、床材を敷いて大きめの水入れを置くだけのレイアウトで飼い、とりあえず頻繁にかまってやって飼育者に馴れさせるという方法をとって来ました。野生でも食性の関係で水辺付近に棲むことが多いと思われるので、水入れは大きめにした方が良いですね。飼育下では水を飲んだり水浴したりする姿をよく見かけます。


 ↑ 水を飲んでいるところ。

 飼育者と飼育環境に充分馴化したホッグノーズは、とても飼いやすいヘビです。イースタンでもそうらしいですよ。しかしながら、彼らは季節感で拒食に至る習性があって、急に気温が低下するようなことがあると、寒冷な季節のスイッチが入ってしまうことがよくあります。ロイヤルパイソンでは、冬期の休眠が繁殖には重要になるのですが、本種はまだ冬が遠いのに雨や曇天続きの低温でやすやすと拒食スイッチが入ってしまい、暖かくしてやっても食欲が戻らないことがよくあります。とくにオスの拒食は深刻な場合が少なくなく、このまま衰弱してしまうことさえあります。無理に食べさせようとすると、せっかく馴れた飼育者を怖がるようになり、まったく手に負えません。
 ヘビの場合、拒食には高温の維持と強制給餌が有効な場合が多いのですが、筆者は、深刻な拒食状態のオスに強制給餌を行なって死なせてしまったことがあるので、それも難しいです。
 オスの飼育については、とにかく落ち着かせてやり、飼育者に充分に馴れさせることと、飼育温度の急な低下を避けることが重要です。一度拒食モードに入ってしまうと、なかなかそれが解除されず、あせって飼育温度を高温に保とうとすると、代謝が活発になって体力を消耗し痩せてしまいます。拒食が続いてどうしようもないと判断したら、逆に低温の環境に置いてやり、代謝を抑えて消耗を防ぎます。充分に時間をかけて低温に馴らしてから、徐々に高温に戻すのがよいでしょう。ただ、これも言うが易しで上手く行かないことが多いですけどね。
 その点、メスは人にも早く慣れますし食欲も旺盛ですし、世話が楽な場合が多いですね。冬期に拒食しても、春になれば食欲が戻ります。筆者が現在飼育中のメスは、加温状態で11月下旬の今もモリモリ食べています。
 雌雄とも大きく育って、飼育者を見ると寄ってくるくらいになれば安心ですが、それでもオスは油断できません。可愛い容姿とゆっくりとした動きは、ヘビが苦手な方でさえ微笑ませるほどなのですが、安心して飼えるようになるまでにかなり苦労が要ります。

コメント
セイブシシバナヘビのオスを最近飼いました
2週間前からずっと拒食していてヒーターなどにより試したのですが口をほぼあけず餌を食べずにガリガリに痩せています。
強制給餌を試したのですが
死んだようにして15分以上口をあけています。
ショック死してしまったのでしょうか?
息はしているのですがずっと動こうとしません
そのまま死んでしまうのでしょうか。

  • たろう
  • 2016/01/27 4:19 PM
たろう様。
正直申しまして難しい状態だと思います。
ただ、シシバナヘビは危険を感じると擬死をとる習性があります。死んだふりですね。なので希望がまったくないわけではないと思います。
餌を与えたのであれば、温度は高めにしてください。ヒーターの種類にもよりますが、フィルムヒーターなどではケージ内の空気全体を温めるのは難しいので、タッパーなどのフタの一部を切り取って出入り口を作り、その中に水を含ませたミズゴケ等を詰め、そこにヘビをいれてやります。
タッパーの3分の2ていどにフィルムヒーターがあたるようにします。
飲み水も大変重要です。タッパー内のミズゴケは水が多すぎるくらいにしてください。それとは別に水入れを設けましょう。
冬場はとくにオスは拒食が激しいので、基本的には餌を与えず低温を保ちますが、痩せているのであれば与えたのは間違いではないと思います。
  • 筆者
  • 2016/01/27 7:48 PM
読ませていただきました。
とても丁寧にありがとうございます。
あれからしばらくすると動きだして
以前のようにヘビの方から手に上ってくるようなことはなくなってしまいましたが、
生きていることにまずほっとしました。
ゲージが暖かさを出来るだけ保てるように
網が少ないものにして床材をしき湿らして
ヒーターの温度も高めにこの3日ほど置きエサで様子を見ている状態ですがやはり食べてはくれません。

生後3ヶ月ほどで家に来てから20日間ずっと拒食で、ヒーターの使い方も工夫が足りず
痩せてしまって強制給餌で怖がってしまっています。


まずはしっかりした隠れ家をつくり水ゴケに
水を膨らまして、ヒーターの温度は高めに
少しでも痩せないように工夫を凝らして
餌を食べてくれるまで待ってみようと思います!

詳しく丁寧な返信、ありがとうございます!
  • たろう
  • 2016/01/31 2:40 PM
たろう様。
シシバナヘビはもともとカエル食であるうえに、オスの拒食はひじょうに頑固です。強制給餌後、吐き戻しはありませんか? なければちゃんと糞をするか気をつけて見ておきましょう。恒温多湿にしたシェルターの中でゆっくり休ませてやり、体力が回復して自分で餌を食べてくれるようになれば一安心ですが、それもなかなか難しいと思います。
シシバナヘビにとって高温多湿は理想的な環境なのですが、温度が高くなると代謝が促進されて、食べずにいるとまた痩せてしまうかもしれません。
糞が確認できたら、その後数日してからなるべく小さなマウスを再び強制給餌してやるのも手かも知れません。
ヘビは代謝さえ抑えられれば半年くらい食べなくてもまったく問題ありませんから、強制給餌は可能な限りやさしく、たっぷりと日にちを開けて行なった方がいいです。月に1回くらいでもよいと思います。

充分に環境に慣れて、温かい季節になれば、自発的に餌を求めるようになる可能性もあります。
とにかくオスはよく拒食するので、餌を食べ始めてからでもしばしば拒食が見られます。その場合も決して焦らず、痩せてこなければ食べさせなくてもいいと考えて、気長につきあってあげてください。
無事に健康を取り戻すことを祈っております。
  • 筆者
  • 2016/01/31 11:22 PM
補足です。
春が近づいて来て、ヒーターのせいでケージ全体が過剰に温かい状態というのは禁物です。シェルターを中心に恒温にし、あまり温かくない場所も設けておきましょう。ヘビが必要に応じて適切な温度の場所に移動したりします。
そのためには気温の上昇とともに通気性も確保するようにしてください。
  • 筆者
  • 2016/01/31 11:25 PM
ありがとうございます。
飼い主として大事に長く付き合えるように
アドバイスを参考に
育てていこうと思えました!
気持ち的にも前向きになれて、
ほんとうに助かりました。
では深夜に失礼しました。
ありがとうございました!
  • たろう
  • 2016/02/01 12:46 AM
たろう様。
ご丁寧に恐れ入ります。
今後ともよろしくお願いします。
  • 筆者
  • 2016/02/01 4:10 PM
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