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スマトラヒラタクワガタ

2013/11/22


 インドネシア産の大型のクワガタムシです。1999年の秋に友人のブリーダーの方に幼虫をいただき、育ててみました。国産のヒラタクワガタというと、筆者が幼少の頃はあまり人気がありませんでした。ノコギリクワガタやミヤマクワガタに比べ、偏平で丸みを帯びた体型とオスのまっすぐな大腮は、なんだかコクワガタをでっかくしたような感じで、地味なクワガタとして見下していたものです。
ところがオオクワガタブームが到来した20世紀末には、希少価値から人気が高まり、野生のものを見つけようものならマニアが狂喜するようになったのです。ヒラタクワガタは今やオオクワガタ並みの希少種になってしまったわけです。
 ところが、最近では飼育繁殖ノウハウが確立され、飼育下で容易に増やせることから天然ものでなければ安価で手に入れることができます。大きなものでは65〜70mm近くになり、大腮の形状のちがいを覗けばオオクワガタと比べても見劣りしません。普通は60mm以下です。
 

 ↑ スマトラヒラタの終令幼虫。左がオスで右がメス。メスはこころもち色が黄ばんでいる。

 当時はオオクワガタブームから、外国産の甲虫ブームが導かれつつある時期で、本種はまだ入手困難な虫でした。友人は本格的なブリーダーで輸入業者の知り合いもあり、世間一般よりもいち早く珍しい外国産の甲虫を次々に手に入れて来ました。本種は国産のヒラタクワガタよりもはるかに巨大で、オスでは全長100mmに達する個体もざらで、太くて鋭い大腮はまるでペンチのようです。当時はヤシガニクワガタなんて呼ばれ方もしていましたっけ。



 幼虫の成長は早く、孵化して2ヶ月ばかりで2度の脱皮を終えて終令幼虫になります。大人の親指を越える太さの幼虫はすごい迫力です。
 マニアやブリーダーは、菌糸ビンなんて秘密兵器を用いてでっかい幼虫を育てますが、筆者はクヌギのフレークを発酵させたマットをビンに詰めて育てました。クワガタムシの幼虫は朽木食いなのですが、この幼虫はかなり獰猛で、近くに他の虫がいればそれをバリバリ食べてしまいます。業者によってはカブトムシの幼虫を量産して、クワガタムシの幼虫の餌として売るほどです。また、メスの成虫も樹液のみならず虫を食べることもあるらしく、業界では高タンパク昆虫ゼリーなる代物が商品化されています。筆者はこの高栄養ゼリーを爬虫類の餌として流用してますが。


 ↑ 蛹室を作るメスの幼虫。

 終令幼虫の期間は長く、その間にどれだけ太らせるか、あるいは体重を維持できるかが大きな成虫を得るためのカギとなります。筆者にはあまり興味はありませんでしたが。9月に終令まで育った幼虫は、加温して管理し、翌年3月にまずメスが蛹化しました。
 蛹室は、糞を塗り固めて作りますが、糞を使い果たして尾端が白くなった前蛹は1週間ほどで蛹化、これは国産のカブトムシと同じくらいです。


 ↑ メスの蛹。↓蛹室から取り出したところ。


 筆者は甲虫の蛹が大好きです。蛹フェチと呼んでください。幼虫と似ても似つかない成虫に大変身する過程が甲虫の蛹はひじょうによく観察できます。体のディテールが露呈した裸蛹ですから。そんな筆者が蛹をビン越しに眺めて気が済むわけがなく、蛹の体が固まればビンからほじくり出してやりました。
 小学生の頃から高校を通じてカブトムシを飼っていた経験から、人工蛹室に収容して蛹を観察することは予定にあったのですが、カブトムシの場合は蛹を立てるために厚紙を筒状にして人工蛹室を作成しましたが、クワガタムシの場合は横向きの蛹室を作るので、発泡スチロールを半田ゴテで溶かして作成しました。これに加湿したティッシュを敷いてなめらかな室壁を築き、幼虫が作った蛹室の壁の一部を少し入れておきます。天然蛹室の壁には蛹にとって有用なバクテリアが存在し、それが寄生虫などから蛹を守ってくれるはずです。
 以上のような人工蛹室計画は、上述の知人と相談して試行錯誤したものです。いずこも考えることは同じで、その後人工蛹室が市販されるようになったのには驚きました。


 ↑ 手製の人工蛹室に収容した蛹。オスの蛹にも使えるようにサイズは大きくしてある。

 2000年3月18日に蛹化した蛹は、4月7日には6肢や頭部、前胸が色づき、翌日には羽化に至りました。カブトムシの蛹期間は2週間ほどですので、1週間ほど長くかかっています。それだけ体重も大きいですし。


 ↑ 蛹化から約3週間。羽化直前のメスの蛹。

 早朝に羽化した成虫は、昼頃には形も整い、夜には歩き始めましたが翌日になってもまだ赤みがあって少し柔らかそうな部分が残っていました。


 ↑ 羽化して数時間後のメスの成虫。

 羽化して充分に体が固まったメスの成虫を飼育用のケースに移すと、元気よくマットの中に潜って行きました。その前にノギスを当てると47mmありました。本種のメスとしてもこのサイズは充分な大きさだと思われます。日本のヒラタクワガタのそれに比べると、ひじょうに大きく見えます。
 メスは1週間くらいは昆虫ゼリーを与えても食べようとしませんでしたが、一度食べ始めると1日でゼリー2つをたいらげてしまう貪食ぶりです。



 そして、オスの幼虫が蛹室を作って前蛹になったのが、2000年の9月20日。孵化してからじつに1年ぶりです。幼虫として最後の脱皮を終えてから10ヶ月を終令幼虫でいたことになります。蛹化に至ったのが9日後。メスよりも2日長くかかりました。それから1週間ほどしてこの蛹も蛹室から取り出しました。


 ↑↓ オスの蛹。下は人工蛹室に収容したところ。


 オスは蛹の期間もメスに比べて長く、3週間くらいして目が黒くなり、4週間目で6肢が黒くなりました。頭部や前胸はまだ色づいていません。羽化までにはさらに1週間ほどかかりました。


 ↑ 蛹化から4週間目のオスの蛹。

 羽化したオスの成長の全長は65mm。本種としては小さな方ですが、日本のヒラタクワガタでは大型個体サイズです。飼育用のケースに成虫を移してから、採餌を始めるまで半月以上かかりました。日本の野生におけるヒラタクワガタやオオクワガタでは、羽化してもそのまま蛹室に停まり、翌年になってから活動を開始するケースが少なくありません。大型の甲虫になると体が完全に固まるのにかなりの日数を要します。飼育下では人によって強引に蛹室から取り出されるので、半月ていどで活動を開始するのですが、野生のスマトラヒラタではどうでしょう。日本のヒラタクワガタの場合では体が固まるのを待つ内に夏が過ぎてしまい、そのまま翌年まで休眠するといったことが生じるのでしょう。


 ↑ 活動を開始したオスの成虫。

 活動を開始した成虫は、異性と出会うと交尾に至りますが、新成虫のオスをあまり早期に交配させると、オスの交尾器が傷むことがあるそうです。大型の個体ほどじゅうぶんな時間をかける必要があり、羽化から2ヶ月以上はメスと一緒にしない方がよいと、知人は話していました。ちなみに筆者が長年飼っていたカブトムシでは、羽化するとその日の内に蛹室から出てくることも多く、けっこう早い時期に問題なく交尾していました。
 筆者が今回育てたスマトラヒラタは、2001年の2月にメスが死去、1ヶ月後にオスが死去し、けっきょく飼育下での繁殖行動には至りませんでした。成虫が短命に終わってしまったのは、未熟な筆者の冬場の温度管理が充分でなかったせいでしょう。幼虫はかなりの低温でも耐えますが、成虫はそうはゆかないようです。熱帯の甲虫類の多くは、別項で記述したエラフスホソアカクワガタのように日本の猛暑には耐えられませんが、本種はそれには何とか耐え、冬場の寒気は苦手のようでした。それでも加温して15℃以上をキープできれば良かったのでしょうが、かなり温度変化があったのでそれが敗因になったようです。死去する直前まで採餌していたので、弱っていることに気づくことができませんでした。



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