ヤコウチュウ
2016/08/03
主に日本海でよく見られる海洋性プランクトンです。プランクトンといってもミジンコのような後生動物ではなく、単細胞の原生生物です。原生生物は動物界にも植物界にも菌界にも属さない単細胞もしくは組織化のていどの低い多細胞生物で、一般に顕微鏡サイズの生き物ですが、ヤコウチュウ(夜光虫)はその中でもきわめて大きく体長1mmかそれ以上に達することもあるそうです。
むかし子供の頃、福井県の海岸で夜光虫が発光しているのを見た記憶があります。ホタルイカも見ました。記憶がごっちゃになっています。何分にも物知り顔の大人に教えてもらい、ほうっと感心していただけでした。
生物発光の例としては有名ですが、そうとうな大群を形成しないと人が見つけられるていどの発光には至らないとも言われています。また、波打ち際のように大群を揺り動かす刺激が発光のトリガーになるようです。なのでユラユラと揺れている海面が青く光る幻想的な光景が拡がります。
ヤコウチュウの人工飼育を可能にした人がいます。すごいですよね。ビンの中は人工海水で満たされており、底の方にヤコウチュウの群れが沈んでいます。
何やら黄色っぽい虫の大群が肉眼でも判ります。
ビンを振ってみますと、ヤコウチュウが水中に舞い上がり、なんとなく虫っぽく見えます。肉眼でこの見え方は原生生物としては大きいと言わねばなりません。
飼育キットの説明通り、夜になって暗くなってから1時間以上経過した後に、ビンを振ってみると、鮮やかな青い光が出現します。ビンを振っている間だけ発光が確認できるので、暗闇の中では上手く撮影できません。振り終えるとすぐに光は消えてしまいます。
何枚も写真を撮りましたが、青い残像のようなものがかろうじて撮れただけでした。肉眼ではひじょうに鮮やかな輝きが見られるんですが。
光学顕微鏡で観察してみました。思っていたのとはかなり異なる生物の像が得られました。
単細胞の真核生物っぽいものの他に何やら有機物の欠片のようなものが写っていますが、ビンに混入した微生物か、ヤコウチュウの死骸ですかね。
筆者はもっと球形に近い細胞を予想していたんですけど。プレパラートの上に垂らした水滴からは、細長い細胞ばかりが見えました。
顕微鏡の操作が悪くてこんな像になってしまうのでしょうか。ゾウリムシの観察では、もっとそれっぽく見えたのに。
核分裂中の細胞に見えません?
思ってたのとはちがう細胞ばっか見えたので、もういいやってあきらめました。
かれこれ1ヶ月ほど飼っています。半月ごとくらいに付属の栄養液を与えてやります。フタに機密性がないので、蒸発した水は真水を補填してやりました。
ヤコウチュウにもいくつか種類があるそうです。その辺りのお話しは筆者の手には負えません、すみません。
ヤコウチュウはまた大群を成すと赤潮現象を生じるプランクトンでもあるようです。夜間は青く輝き、日中は海面を赤く染めるというわけです。小さな規模の赤潮は海岸付近の水面をピンク色に染めるていどで、海洋生物にとってもほとんど無害ですが、規模が大きくなると溶存酸素の低下や、魚類の鰓に詰まるといった現象により魚介類に悪影響を与えることもあるそうです。
赤潮の原因となるプランクトンはヤコウチュウだけではなく、ヤコウチュウによる赤潮は悪質になるものは少ないようです。
ヤコウチュウは、原生生物の中でも葉緑素を持たず光合成をしない従属栄養生物なので、動物的な原生生物であると言えます。動物の分類では渦鞭毛虫門に属しますが、植物の分類として渦鞭毛植物門に属するという考え方もあります。
そもそも独立栄養生物である植物の起源が、光合成を行なうバクテリアを捕食してそのまま共生関係に移行したものだという説がありまして、原生生物の世界はひじょうに混沌としています。