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ゾウリムシ

2016/08/05


 近年、ゾウリムシはメダカ用の飼料として養殖されています。孵化直後のメダカの稚魚はたいへん小さく、与える餌に苦慮するのですが、生きたゾウリムシを常備することで稚魚の餌に困らなくなるというわけです。ゾウリムシは水の中ならどこにでもいるような微生物ですが、混在する多数の微生物の中からこれだけを選別して養殖管理するのは容易ではありません。よくもまぁこんなことをやり遂げたものだと、メダカ愛好家の執念に感服いたします。
 ゾウリムシは原生生物の仲間です。原生生物とは単細胞もしくは組織化のていどの低い多細胞生物と定義されます。ちと曖昧な分類群で、多系統です。組織化のていどの低い多細胞とは、細胞ごとの役割分担が発達しておらず、同じような細胞が集まってるだけ、というように解釈してください。



 メダカを扱う業者から取り寄せました。自然採集するより百万倍楽で確実です。小さなタレ容器に入って送られてきました。お弁当に付いてる焼き肉のタレ容器あるでしょ? あれです。その中身を少量だけペットボトルに移します。お店で飲料水のペットボトルを買ってきて、その水をそのまま培養用に用います。不純物がなくて理想的ですね。



 ゾウリムシ培養に用いられる餌には、ワラの煮汁、米のとぎ汁、ビール酵母、牛乳、胃薬、麦茶、キャベツなどがあります。ひじょうに広範囲な栄養素が利用可能なようですね。
 筆者は、テトラミン(熱帯魚用の人工飼料)を使ってみることにしました。
 これ自体はゾウリムシの直接的な餌ではなく、水中に含まれる有機物をあてにして雑多な微生物ががどんどん増え、それをゾウリムシが食べて増殖するようです。



 数日後、こんなことになりました。ゾウリムシよりも緑藻類が大繁殖したようです。笑ってください。緑藻類はウィルスやバクテリアのように空気中を漂って水域に到達し、そこで繁殖することができるようです。ペットボトルのフタをかっちりと閉めて機密性を保っても、筆者のように空気中にさらしっぱの餌を与えるとこうなります。



 ゾウリムシ、いませんかぁ? 返事がありません。



 気を取り直して、今度はメダカ屋さんの指南書に忠実に培養を勧めます。ペットボトルの水を利用するのは同じですが、栄養素にはエビオス錠(胃腸薬)を使用します。
 ゾウリムシは呼吸するので、フタは密閉しないようにするとよく言われますが、それだとまたもやアオコの侵入を許してしまいそうなので、きつくフタを閉めます。水量を少し減らしておき、1〜2日に1回ていどペットボトルを振って、溶存酸素を確保するようにします。



 数日後、肉眼でも小さな点として認められる微生物がたくさん漂い始めました。おめでとうございます。

 稚魚用のゾウリムシのことをインフゾリアと呼ぶのをしばしば目にします。今どきそんな言葉あるのか、と唖然とするむかしの学術用語だったと思うのですが。あれこれひもといてみますと、ゾウリムシを代表格としてその周囲に共存する微生物一般のことを総じて言い、稚魚の餌の銘柄として業界が用いている言葉のようですね。誤用ではないと思いますよ。ただ、インフゾリア=ゾウリムシの誤解をなさらないように。思うに、餌用ゾウリムシを販売したものの、顕微鏡で観察した購入者から「ラッパムやらツリガネムシも混ざっとるやんけ」とクレームつけられそうなので、クッション材として古語を引っ張りだしてきて命名したんじゃないかなぁ、なんて思ってます。

 ところで、ゾウリムシを飼育動物としてデータに加えるかどうかですが、ムシとつくので動物じゃあ、と強引に加えようと考えています。同ブログの飼育動物データに記述しました。
 でも、分類学上は動物界には含まれません。動物界に含まれる生物は、多細胞の後生動物のみです。原生生物界はひじょうに混沌としていて、上述のように多系統で、植物的なものも含みます。光合成を行なって自ら栄養を作り出して利用する独立栄養生物も、他の生物を捕食してその栄養を利用する従属栄養生物も存在します。じゃあ、原生生物を2者に区分すればよろしかろうってもんなのですが、ミドリムシのように両方の特性を持つものもいたりして、独立栄養生物=植物の祖先、従属栄養生物=動物の祖先と割り切れない部分がありますし、運動性ということでも2者に区分しがたいのです。
 分類学的には、動物界、植物界、菌界のいずれにも含まれない真核生物といったあいまいな定義を持ち、原生生物界というグレード自体が系統学的な意味をあまり持っていません。ミドリムシなんか植物学者によってユーグレナ植物門なるグループに属し、ユーグレナ植物類は、"界"相当の上位分類エクスカバータ類に含まれます。原生生物界が便宜上のものであり多系統である証ですね。
 なんか、もういいやって気になっちまいますね。学者先生の間でも、原生生物の取り扱いについては、今だ議論中ってことなのでしょう。
 同じプランクトンでもミジンコになると、甲殻類という確実な動物界の住人に定義されます。ミジンコを飼っている場合は、動物を飼っていると胸を張って豪語することができます。

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