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オマキトカゲ

2013/12/13


 ソロモン群島、パプアニューギニアの森林に棲息する、世界最大のスキンクで、全長70〜80cmに達します。ほぼ完全な植物食で、幼体の頃から野菜や豆類を食べます。基本的に夜行性ですが、飼育下では昼間でも食事するようになります。四肢の爪が発達しており、これでしっかりと木につかまり、長い尾を枝に巻き付けて樹上で体を安定させます。樹上生活者で、平坦なところを歩くのは苦手なようです。



 俊敏で取り扱いが大変な小型種が多いスキンク類にあって、アオジタトカゲやマツカサトカゲとならんで、重量級で動きのゆっくりした、たいへん迫力のあるトカゲですが、本種の個性的な点は、完全な樹上生活者であることと生涯を通じて植物食であることです。中生代の大型恐竜でもあるまいし、現生の爬虫類で完全植物食なんてじつに珍しいです。


 ↑ 飼育中の様子。

 本種が、これだけ大きな体躯でありながらモニター類のような樹上生活に適応したこと、植物食に移行したこと、その背景にはどのような経緯があったのでしょうか。ジャイアントパンダは、動物質の餌の確保が難しい環境に逃げ延びて笹を食べる生活に適応したそうですが、本種もパンだと同じでしょうか。彼らは消化器内のバクテリアに植物繊維の分解を委ねています。モニター(オオトカゲ)類の樹上種は、木々の間を俊敏に移動して虫などを捕食する生活に適応したのですが、本種はずっしりとした体を抱えてゆっくりと移動しながら葉を食べて暮らしています。


 ↑ 成体はたいへん大きくずっしりしている。

 重量級の体にものを言わせて、ひじょうに大きな子供を産みます。胎生です。幼体は数ヶ月から1年ばかり母親と行動を共にするそうです。母親の糞を食べて有用なバクテリアを受け継ぎ、それを消化器内に繁殖させます。この育児期間はひじょうに重要で、有用バクテリアの受け渡しに失敗すれば幼体は食物を消化する能力を失うことになり、それは死に直結します。


 ↑ 食事をするペアの成体。上がオス。

 本種は、ひじょうにのんびりしたトカゲですが、飼育環境や飼育者に充分に馴れていないとかなり獰猛な側面を見せることもあります。危険を感じると噴気音を鳴らして威嚇し、それで相手がひるまない場合は突発的な動きで飛びかかり噛みつきます。大きな頭と丈夫な口器を持っていますので、噛む力はかなり強いです。
 本種が人間を安全で友好的な存在であると認めた場合は、ひじょうに良好な関係を築くことができます。人を見ると寄ってくるようになりますし、ハンドリングも自由自在です。人と戯れるのが楽しいと感じているのではと思えるほどです。
 筆者は、一時期3頭のオマキトカゲを飼っていましたが、3頭ともたいへんよくなつき、メンテナンスの時は前開きのケージを開放して、餌入れを洗ったり野菜を刻んだりしていました。そうすると彼らはケージから出てきて筆者の腕につかまったり、調理中の小松菜を勝手に食べ始めたりと、なんだか彼らが爬虫類であることを忘れるほどでした。ほんとうに可愛かったです。


 ↑ オマキトカゲの歯。草食哺乳類のような異歯性は見られない。

 彼らは夜行性動物で、野生では洞穴などで休息するそうですが、飼育下ではシェルターは用意しませんでしたし、給餌はいつも日中でした。多くの夜行性爬虫類が飼育下では日中の活動に馴れるのを見てまいりましたが、本種もその例にたがわず、飼育者の生活リズムに合わせて昼間に食事をとるようになってくれます。餌はそのままケージに置いておくので、夜でも食べているのかもしれませんが。
 野生では、サトイモ科の植物の葉や、果実を食べているそうですが、飼育下では小松菜を中心にイグアナフードや高タンパクの昆虫ゼリーなどを与えていました。


 ↑ オマキトカゲの目。左がメス。

 オマキトカゲは、薄い緑色をしています。これには個体差が著しく、かなり濃い緑色のもの、黄色みが強いもの、背中が茶色になるものなど様々です。筆者が飼っていた3頭は、オスは色白で、2頭のメスが濃い緑と黄色みが強い色あいでした。黄色みが強いメスは後から入手した個体で、最初は人に馴れていませんでしたが、先住者たちに習ってかしばらくすると馴れて、人の手から餌をもらうようになりました。



 本種は大きくて三角形の頭をしています。頭頂部が広く偏平になり、頭を支える首は太く、頭と首とで角張らない矢印といった形状になります。そしてオスは後頭部のでっぱりが顕著になり、より矢印らしくなり、これが雌雄同定の目安の1つになっています。上の写真では下の大きな個体がオスですが、メスよりも後頭部が出っ張っているように見えませんか?


 ↑ 人の手から小松菜をもらうメス。

 ひじょうに頑健なトカゲですが、栄養状態が良好でないと爪が欠損するなどの傷害が発生して衰弱してしまうことがあります。また、低温にも弱いのでヒーター装置には信頼性のあるものを使用しましょう。じつは筆者は2005年の冬に温室のヒーターの故障で本種を1度に死滅させてしまうという悲劇に遇っています。現在は1つのヒーターが故障しても大丈夫なように2機のヒーターを稼働させています。大型な動物であるだけに、フィルムヒーターのような簡易的なものでは役に立ちません。越冬や休眠の習性がない彼らを飼うには、季節に関係なく温暖な環境を維持できなければなりません。



 オマキトカゲの飼育に関しては、もう1つ悲劇がありました。それは2003年の上述の3頭を飼育するよりも1年くらい前の話しです。オマキトカゲの幼体を入手して飼い始めたのですが、頭胴長で20cmくらいある幼体を、当時の筆者は生後間もない個体とは知らずに買い求めたわけです。じつは親離れの時期を過ぎていないまま、知識のない飼育者によって母親から引き離されてショップに渡ったものだったのです。なので有用バクテリアの受け渡しも不充分な状態で、植物食生活者として自立できる状態ではなかったのですね。
 それを知らずに飼い始めたわけですから、この子の運命は決まっていたようなものでした。


 ↑ 生後間もない幼体。

 入手した時は、ひじょうに獰猛で手を近づけると猛然と襲いかかってきました。胴長短足の体型でどこにそんな瞬発力があるのかと驚くほどの猛ダッシュで15cmくらいはジャンプして噛みついてきました。
 なんとか餌を食べてくれるほどには馴れたのですが、人を怖がるのはけっきょくそのままで短い生涯を終えてしまいました。飼育期間は1ヶ月ていどでした。


 ↑ 水浴中の幼体。目つきが悪いところも、なんだか可愛かった。

 その後、本種はペット用の輸出のせいで棲息個体数が減少し、原産国が輸出規制に踏み込み、日本のショップでの入手が不可能なトカゲになってしまいました。ところが、このブログを書いているたった今、王手のいくつかのショップで数年ぶりの入荷の記事が上がっていました。その奇遇にいささか胸をときめかせつつ、明日にでも問い合わせてみようかなんて思っている次第です。

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