タマムシ3
2016/10/02
筆者が現在の住所に越してきた頃、辺りは家よりも空き地が多かった頃には、しばしばご近所でも見かけたのですが、どんどん家が増えて空き地がなくなると、キリギリスやヒバリと共にタマムシも次第に姿を消してゆきました。ところが2年前くらいから、以前ほどの頻度ではないものの飛んでいる姿を見かけるようになりました。すっかり住宅地と化してしまったここいらに、彼らが帰って来たのか、たまたま筆者が見つけることが重なったのかは判りませんが、今でも近くの森ではタマムシたちが繁殖し続けているようです。
地味で素朴な虫が多い日本にあって、本種はかなり派手でサイズ的にも大きいです。エノキやサクラなど、普通に見られる樹木で繁殖する本種は、今でもたくさん棲んでいます。
カナブンやカブトムシの多い雑木林には本種もよく姿を現わし、昼間から飛び回っています。昼行性で盛んに飛ぶ姿が見られます。
大きな目をしていますね。肉食ならぬ本種が、よい視力を持つ必要性が解らないのですが。もっとも大きいから眼が良いとも限りません。チョウの仲間は花を視認して花蜜の在り処を見つけるそうですが、タマムシの成虫は採餌にあまり積極的ではありません。筆者の飼育経験でもサクラ等の葉を少しかじるていどです。
腹面図。お腹もピカピカです。
頭部を腹側からズームすると、口器が見えますが、あまり機能的には見えません。上唇がひじょうに小さく、その下にある1対のものが大腮ですよね。
タマムシの後翅は、カナブンやカブトムシのように2つに折り曲がりません。腹部が長いので翅も長くでき、折り曲げて格納しなくても良いのです。この単純構造は、いつでも素早く飛行に移行するのに貢献していると思われます。
タマムシは飼育繁殖の方法が確立していれば人気のある昆虫になったでしょうね。ただ、葉っぱ食いという点が、飼育者にあまり歓迎されないかもですね。チョウの幼虫を飼うのにせっせと食草を採集してくる人でも、ハムシやタマムシの場合は、植物を食い荒らす虫はちょっと……なんておっしゃる人がいます。これは葉や樹木を食害するハムシやカミキリムシの輸入が、植防の観点から規制されていることに関係しているのでしょうか。葉っぱ食いの飼育イコール悪という考えは、いささか勘違いです、国産の虫に関しては。
飛んでゆきました。
愛好家の中には、タマムシの幼虫の飼育方法を確立している方がいます。筆者もそうした人たちに習ってエノキのフレークで幼虫を成虫まで育てたことがありますが、飼育下で成虫に産卵させることができれば、累代飼育も夢ではないようです。
タマムシの産卵している木を見極めて持って帰る達人もいます。これはカミキリムシの採集飼育と同じですね。
ネットオークションでもタマムシの幼虫が出品されていることがあるので、興味がある方は、探してみてください。
筆者の幼虫の飼育記録は、庭虫のタマムシの項をご参照ください。