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軟体動物と節足動物

2016/12/11


 初期胚に形成される原口がそのまま口に成長する仲間すなわち前口動物(旧口動物とも)にはひじょうに多くの動物群が含まれますが、そのほとんどは微細で原始的な仲間です。その中で軟体動物と節足動物は、卓越した進化を遂げました。
 節足動物では、カンブリア紀前期(5億2500万年前〜)にアノマロカリスはすでに体長2mに達する化石を澄江動物群に残していますし、古生代中期のデボン紀(4億1600万年前〜)になるとウミサソリの仲間が体長2.5mに達しています。ただしアノマロカリスはそのあまりにも異質な形態から節足動物門には属さない系統不明の動物とする考え方もあります。
 軟体動物としては古生代シルル紀(4億5360万年前〜)から中生代白亜紀末まで生存していたアンモナイトが有名ですが、その最大種では殻径が2mに達しました。大きさで言えば現生のダイオウイカは18m以上になる個体が発見されています。
 体の大きさが進化の証しであるとは一概に言えませんが、多細胞から成る動物の体を統制するうえで、骨格や神経系が未発達では充分な大きさになることは難しいでしょう。動物の中でも原始的な刺胞動物門の中にはエチゼンクラゲのように直径2mに達するものもいますが、これは例外的です。
 前口動物とは動物進化の初期の段階で分かれた後口動物(新口動物とも)の最も進化的なものは脊索動物の中の脊椎動物ですが、この仲間になると最大種ではシロナガスクジラの体長30mがいます。中生代にはアルゼンチノサウルスという竜脚類に属する恐竜が全長33〜40mに達したそうです。
 外骨格を持つ節足動物が内骨格を持つ脊椎動物にサイズで勝てない理由は、体を支えるうえで外部支持構造よりも内部支持構造の方が有利だからとよく言われますが、確かに地上ではその理屈は通用しますが、水生動物に関しては体重は水が支えてくれるので骨格のちがいは大きさの限界の理由にはならないでしょう。それよりも問題なのは上述のように多細胞から成る動物の体をどれだけ上手く統制できるかということが重要だと思われます。
 軟体動物は骨格を持っておらず、文字どおり軟らかく伸縮性にすぐれた体をしています。その中の一部のものは強固な殻で身を守っています。節足動物は鎧のように多くのパーツで構成された外骨格を有し、体の伸縮性はほとんどありませんが防御と機動性を両立した形態をしています。
 軟体動物は神経系がそれほど発達していません。おそらく伸縮自在な体が神経系の発達の妨げになっているのでしょう。節足動物では神経系はよく発達しており、クモやサソリ、昆虫といった地上生の仲間では高い知能を有し、複雑な生態を有しています。
 軟体動物では未発達な神経系が体のサイズに限界を与えており、節足動物では外骨格がサイズを制限しているようです。節足動物は成長に応じて外皮を脱ぎ捨てねばならず、それにはひじょうに大きなエネルギーを必要とします。体重が気にならない水生種であっても脱皮を繰り返しながら成長して行く外骨格の維持には大きさの限界が生じるのでしょう。
 その点で、脊椎動物はがぜん有利でした。巨大脊椎動物のサイズが、軟体動物や節足動物を大きく凌駕しているのは、内骨格であることと脊柱に同期した神経束が発達しているからでしょう。それでも無限に巨大化できるものではなく、地球という環境ではクジラや恐竜が動物のサイズの限界なのでしょう。

 動物を大きく2分するのに、脊椎動物と無脊椎動物という表現がよく使われますが、無脊椎動物には、脊椎動物以外の脊索動物門の仲間も含まれ、言わば脊椎動物のみをクローズアップする考え方です。そして無脊椎動物の中では、軟体動物と節足動物が抜きんでて進化的な動物群(厳密には進化的な動物を含む)であると言えます。
 そしてその無脊椎動物における化石動物の花形と言えば、軟体動物のアンモナイトと節足動物の三葉虫でしょう。
 三葉虫はカンブリア紀にはすでに存在しており、ペルム紀末に滅んでいます。アンモナイトの仲間はオルドビス紀に出現したオウムガイの子孫としてシルル紀に誕生し、中生代白亜紀末まで生存していました。三葉虫と同じく節足動物のウミサソリの仲間はオルドビス紀にはすでに存在し、ペルム紀末に滅んでいます。三葉虫とウミサソリを滅亡に至らしめたのは、P-T境界と呼ばれる地質学上のカタストロフで、P-T境界を生き延びたアンモナイトは、次のカタストロフK-T境界によって滅びを迎えました。2つの生物大絶滅については「人類汎幼進化計画」をご参照ください。

 正直申しまして筆者はアンモナイトや三葉虫についてほとんど知識がありません。自然史博物館に展示された数々の化石標本の名称を目にしても聞き覚えのあるものはほとんどありませんでした。アンモナイトも三葉虫もひじょうに多くの化石が出土しており、進化系統および分類についても詳しく研究されていて、示準化石としても重要な役割を担っているようです。
 アンモナイトは現生のイカやタコと同じく頭足類の仲間です。現生の頭足類ではオウムガイとタコブネくらいしか殻を持っていませんが、中生代以前の頭足類は偏平な巻貝状の殻を持つものが主流であったようです。ちなみに、アンモナイトの祖先であるオルドビス紀のオウムガイの仲間には、チョッカクガイと呼ばれる殻が一直線に延びたものがおり、多くは殻径が10cm〜15cmでしたが中には10mに達するものがいたそうです。
 三葉虫は、多数の体節から成る典型的な節足動物で、各節の腹面に歩脚があり、ムカデを小判状に縮めたような形態の動物です。背面は半月状の頭部、体の大部分を占める胸部、尾部の3つに大別され、胸部と尾部は連続的で、中央部が柱状に盛り上がり、左右が偏平なヒレ状になります。そして柱状の中葉と左右の側葉の3葉構造が三葉虫の名の由来になっています。
 アンモナイトが捕食動物であったのに対し、三葉虫の多くは腐食生活者で、一部捕食を行なうものもあったのでしょう。
 そしてウミサソリの仲間は、強力な捕食者であり、アノマロカリス亡きあとは食物連鎖の頂点に君臨しました。しかしやがて大型の魚類が出現すると、王座を奪われることになりました。
 アノマロカリスやオパビニアといった謎の生物の体節構造と三葉虫のそれはよく似ていると筆者は思います。澄江動物群およびバージェス動物群の怪物たちは足を持たない遊泳型捕食動物であったのに対し、三葉虫の仲間は水底をはい回る腐食動物であったものの、基本構造は共通しています。

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