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ロイヤルパイソン

2013/12/21


 北アフリカの草原やサバンナに棲息する徘徊性のヘビです。人の身長くらいまで成長します。長さ的にはアオダイショウ等と変わらないかむしろ負けるくらいですが、胴部はひじょうに太く体重があり、かなり大きな動物に見えます。
 ニシキヘビの代表みたいな種で、色形がロイヤルの名を冠するにふさわしい風格を放っています。ほんとうに美しくてカッコイイです。しかしながら、流通量が多く比較的安価に手に入ることから軽んじられることも多く、悔しいというか残念というか。その反面で、アルビノをはじめひじょうに多種多様の品種が作出されており、品種によってはひじょうに高価だったりします。
 丈夫で飼いやすく、飼育者にもよく馴れてくれます。飼育下での繁殖も難しくなく、日本でも多くの飼育者が繁殖を手がけています。こうした事情はニシキヘビにおけるコーンスネークの位置づけと言ってよいでしょうか。


 ↑ 生後間もない幼蛇。

 国内CBも充実しており、生後間もない個体が安価で入手できます。初心者の方はショップで餌づけ済みのものを購入するとよいでしょう。繁殖を目指す場合も、国内CBが断然有利です。生後間もない個体でも上の写真のようにそこそこの大きさがあり、成蛇の長さが同等のコーンスネーク等と比べるとかなり大きいです。コーンの幼蛇は頭が小指の先ほどもありませんからね。



 本種の飼育で注意が必要なのは、乾燥した環境では脱皮不全になりやすこと、獲物に飛びかかる習性が強く噛みつかれることが多いこと、季節ごとに採餌状況が変化することですかね。
 多湿の環境で飼えば脱皮不全は防げますが、もともと乾いた草原に棲むヘビなので熱帯雨林を想定したような飼育環境はだめです。通気性のよいケージで飼い、大きめの水入れを用意します。飼い始めは臆病なところがあり、かつてはそのことがクローズアップされシェルターは必須みたいに言われていましたが、筆者の経験ではシェルターを使用するとかえって飼育者に馴れにくく、神経質な状態が長く続く気がします。成長は早く重量級のヘビに育ちますが、やたら広いケージも不向きです。
 ヘビがとぐろを巻いた面積の3〜4倍の広さで高さも20cmくらいのケージが適しています。彼らは馴れるとケージ全体を自分の住み処として認識するようで、そこにいることで安心するようになり、飼育者とも友好的な関係を築きます。
 大きなピット器官を頭部に備え、熱分布で周囲を認識しますから、マウスを触った人間の手は、彼らにとっては体温+臭いで餌そのものということになります。マウスを見失うと人の手に飛びついてくるほどです。飼育者は噛まれて痛い目をするていどですが、あわてて引き離すとヘビの方が負傷し、口内感染症の危険にさらされます。これは本種にとってはひじょうに深刻で、回復に至らず死んでしまう場合もありますから、噛まれないようにしましょう。



 本種は、日本ではボールパイソンの名で呼ばれることがほとんどで、その名の由来が上の写真のように護身のために丸くなる様子を表現したものらしいのです。日本に輸入されたばかりのころは、WC個体やヨーロッパCBが多く、神経質な面が目立っていたのでしょう。ボールのように丸くなる臆病者のパイソンなんて不名誉な呼称が今なお常識的に使われ、その名の由来を知った人の多くが臆病なヘビだと認識し、ブログやサイトでそのように記述しているのはじつに残念なことです。
 実際、上の写真のような状況を飼育下で見る機会はほとんどありません。筆者もたまたま撮れたものの、今後こんな写真を撮る自身はありませんし、飼育下で神経質になってしまうような環境を作るつもりもありません。


 ↑ 脱皮不全。

 幼蛇を入手した場合は、最初は30cm長ていどで高さの内ケージで飼い、目に見えて育ってきたら60cmていどのものに移すとよいでしょう。60cmで生涯飼うことも不可能ではありません。多くの飼育者がこれを否定しますが。まぁ個体によっては2メートル前後まで育ち、胴回りも人の腕ほどになるものがいますから、そんな場合はもう少し大きなケージを考えた方がよいでしょうね。あと、繁殖を考える場合も早い内から90cmていどのケージに馴れさせておくと、ペアリングするのに好都合です。それに繁殖には水入れと共に産卵床になるウェットシェルターも必要ですし。


 ↑ 水浴するロイヤルパイソン。

 風通しのよいドライな環境と共に高温が望ましいです。日本の場合は10月から翌5月頃までは加温するようにします。とくに幼蛇の場合は充分な加温が重要になります。性成熟に達した個体は秋から春にかけて寒冷期は半年近く採餌しなくなりますが、幼蛇は年間を通じて採餌し、充分な食事量が成長と体力作りにとって重要になります。
 高温乾燥を維持すると脱皮不全になりがちです。それを防ぐにはヘビがゆったりと水浴できる水入れの設置が重要になります。幼い幼蛇のうちから充分な大きさの水入れに新鮮な水を満たしておくようにします。大きな水入れは、飼い始めで神経質な個体のシェルターの役目もします。



 本種ていどのニシキヘビの仲間は、幼蛇の頃からマウスにすぐ餌づいてくれます。ナミヘビのように幼蛇のうちはトカゲやカエル食いという傾向はありません。また、飼育者によっては常に高栄養のマウスばかり与えるよりも、たまにはウズラやヒヨコを与える方が良いという人もいますが、マウスオンリーで生育や健康に支障があるとは思えません。最初はヘビの頭のサイズていどのマウスを、できれば一肌くらいに温めて与えるようにしますが、馴れてくれば大きめのマウスを与えてゆきましょう。ヘビの胴回りくらいのマウスでも飲めます。ヘビの口器はそういう構造になっています。
 成長期の幼蛇には週2回は給餌します。成長してからでも寒冷期のインターバルを考えれば多めの給餌が必要だと思います。



 手のひらに乗る小さな幼蛇も、飼育者と友好的な関係を築き充分に食事を摂ることによって次の春までには、ひと抱えもあるような重量級のヘビに育ちます。大きくなった本種はロイヤルの名にふさわしい風格と美しさを備え、飼育者はこのヘビがますます好きになり飽きるようなことはないでしょう。寿命は15年ていどとよく言われますが、さらに10年ていど生かすことは困難ではないと思われます。
 翌年の秋から拒食が始まるかもしれませんが、それは性成熟の証でもあります。飼育者によっては寒冷期の拒食は飼育者の管理不足で、温暖な飼育環境と餌を加温するようにすれば年間を通じて食べ続けるという人もいます。筆者は、それが本種にとって有益かどうかは疑わしいと思っています。ヘビが季節感を感じ取ってインターバルに突入するのは自然なことですし、その間は代謝がていかして目立って痩せることもありません。拒食状態になった場合は加温のていどを25℃かそれ以下にとどめることによって代謝を抑えて痩せることを防げます。
 また、繁殖行動も寒冷期に行なわれますから、この期間だけは雌雄を同居させると良いでしょう。寒冷期に交尾を果たしたメスは、次の春から繁殖を開始します。メスの負担と健康な卵ということを考えると、生後最初の寒冷期に交尾を促すよりも、2度目以降の寒冷期にペアリングする方が良いです。
 ペアリングの方法や、繁殖のための環境作りについては、ネット上に様々な情報がありますが、最も肝心なことは、ヘビたちが飼育環境と飼育者に充分に馴化していることと、メスの体重が充分であることだと思われます。飼育者をすっかり信頼し、ハンドリングも容易な個体にまずは育て上げること、そうすれば繁殖もきっとうまくゆきます。
 産卵をできれば、メスから卵をとりあげ、隔離して管理しますが、充分に加水したミズゴケを満たしたケースで、できれば30℃くらいの温度を維持するのが望ましいようです。市販の孵化器のように温度と湿度を自動制御する装置を用いるのがベストですね。
 卵をとりあげたあとのメスは、たっぷり水浴させるか温水で充分に洗って繁殖時の臭いを消してそれを忘れさせると、普段通りに採餌するようになりますが、飼育者にベタ慣れの個体であればそうした処置をしなくても通常モードに戻ってくれる場合も少なくありません。



 本種は、優雅さと風格を兼ね備えた素晴らしいヘビであるうえに、高い知能も持っており、それだけに飼育者との友好関係というのは飼育するうえで重要になります。充分に馴れ、元気な個体はケージのフタを開けたとたんに飛び出してきて噛まれることも多いです。こればかりはヘビの本性として避けられません。そうした個体には餌をフタの隙間から差し入れる等の工夫をしましょう。
 噛まれた場合は、じっと我慢です。ヘビの方でまちがいに気づいて離してくれますから、それに委ねむやみに引き離さないことで口器の負傷を防げます。
 暴れん坊の個体は、餌をくわえさせておいて触るというのも手です。この方法を奨励する人は少ないですが、筆者は当たり前のようにこの方法を常用しています。あるいは寒冷期によく触ってハンドリングに馴れさせるのも手です。
 すっかり馴化した個体は、飼育者がフタを閉め忘れて脱走しても、自分のケージの上に舞い戻り、飼育者を待っていることも少なくありません。可愛いですね。

 本項では、本種の様々な品種については触れませんでしたが、拙著「すねらぼ」の本種の項に一部記載していますので、併せて参照いただければと思います。


http://momo.punyu.jp/damdam/hebi/04/00.htm

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