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人間社会の格差

2014/01/16


 社会の格差や差別のことを考えると腹が立ちますね。悪いことしてるヤツばかりが豊かに暮らして、正直者はつらい仕事を低賃金で延々と続けている。人を豊かにするお金というものは、持っている者にどんどん流れ込み際限なく貯まる仕掛けになっているそうです。ウソかホントか知りませんが、そのようなことをよく耳にし、それはひじょうにもっともらしく聞こえます。筆者の知っている、サプリメントの販売員で大金持ちになった方の話しによると、仕事が成功して成果が出始めると、マネーブローというものが発生して、あとはそれほど苦もなくお金が流れ込んでくるようになるのだそうです。お金というものは、互いに引きつけ合ってどんどん膨らんでゆく性質を持っているのでしょう。
 マネーゲームという言葉がありますが、なんだか汚くて下品な言葉ですね。小さな社会では、ひとりが何でもがめつく独占してしまうと、下品でイヤなやつと評されますが、世界規模の社会になるとお金の独占者は偉大な成功者ということになります。殺人は犯罪ですが、国家レベルの大量殺人は戦争の英雄です。どうやら人間社会には大社会と小社会が存在し、そこではものの価値基準が逆転しているようです。
 このような社会形態は、他の生物には見られません。もっとも、他の生物たちに他人を汚いとか下品だとか思うような感情はなく、体の大きさや腕力による同種間の序列は、最初からそういうものなのだと受け入れられています。動物の群れ社会の中で序列が生じ、勝者が優先的に繁殖に加わり子孫を残すというのは、強い種を残すために有益であるといった説明をよく目にします。たいへん合理的な考え方に思えますし、そうして種は定行進化に準じるのでしょう。定行進化とは、生物の進化がより大型化しより力強くなる方向に進むという法則です。
 では、人間社会における格差や不平等も生物というレベルでは正しいものなのでしょうか。ヒューマニズムという高度な考え方によると、これは肯定できません。人たるものは不当な力を行使してガツガツと富を独占すべきではなく、弱者には優しく、分け与えることを美徳としなければなりません。ヒューマニズムは、人間社会を円満かつ快適に運営するのにたいへん有益な考え方ですが、生物の自然の摂理には反するものなのでしょうか。
 そもそも定行進化の法則は、生物進化のある側面を表現したものに過ぎません。エネルギー(水や食料や滋養や温度など)が豊かな環境で、多くの種のせめぎ合いが生じるような状況では、定行進化はかなり顕著で、動植物は競って大型化を目指し、小型化を図って成功する例は多くありません。ところが、エネルギーが貧しい環境では大きな個体は体を維持するのに不利になり、小型種が繁栄する場合があります。ある動物が生活圏を拡大するべく様々な土地に適応放散した場合に、たどり着いた先がたまたまエネルギーが充分でなかったとき、その動物は新たな環境で上手くやってゆくために小型化します。これをドワーフ化と呼んだりし、自然界でしばしば観察されるできごとです。
 進化は、すべての生物に斉一的に生じるものではなく、ある種は目まぐるしく変化し、ある種はいつまで経っても古いタイプの形質をとどめたまま生き長らえます。ある種はせめぎ合って大きくなりますが、別の種は小型化して少量の食料でも健康を維持できる有利性を選択します。
 要するに生物界にとって重要なのはバランスなのです。強いもの弱いもの、小さなものデカいものが1つの環境にバランスよく共存して生態系は維持できるのです。最も生物の強い弱いは人間の勝手な見解に過ぎないのですが。

 人間社会は、生物の生態系と比較するとひじょうに奇妙です。強者や弱者が存在し、社会が絶妙にバランスしている点は生態系に似ていますが、その中で不平不満や差別や蔑視が生じるところが奇妙です。富める者は、富まざる者たちの生産性を当てにし、それを搾取しているのに、富まざる者を蔑視し、勝ち組負け組なんていう下品な表現を当然のことのように使います。愚かなことです。
 社会を統治するもの、会社を経営するもの、そうしたいわゆる重職という仕事をまっとうするために平均以上のエネルギーを必要とし、その対価としてのお金をたくさん持つことは必要でしょう。群れを統率するボス猿みたいなものです。しかし、分業によって成り立っている社会において、職業ごとに過度の格差や差別を行なうことは不条理ですし、社会の安定の維持にとって不利です。
 社会の統率や会社の経営は、平均以上のエネルギーを要する社会的役目、それだけです。ものを作る能力、後片付けをする能力、それも社会にとって必要不可欠であり、統率者や経営者にはない能力です。生産や片づけが政治や経済よりも劣っているというのは幼稚な考え方です。
 東大を卒業して小難しい学問を習得したから、町工場で油まみれになって車を修理する人より優れているというのは幼稚な考え方です。自動車修理工はたいへん多くの人々の足を支えており、経験と鍛練によって絶妙な調整を行なう技術が、先人の考えた学問を受け売りする能力よりも劣っているというのは、まるで分別のない駄々っ子のような考え方で、呆れてものも言えません。
 政治家や経営者がそれほど優れていて、労働者をバカにするなら、生産や片づけも素晴らしくこなして見せてほしいものです。
 職業や社会的役割には、多くの修練を要するもの、突出した技能を要するもの、それほど鍛練しなくてもこなせるものが存在するのは事実ですが、様々な役職が社会にとって必要であるならば、そこに優劣があってはなりません。

 職業に貴賤なしというある先人が残した言葉がありますが、それはあらゆる役職が平等だから、給料も待遇も平等にすべしというふうに解釈すべきではありません。貧富の差という不平等をなくすのは無理です。多くの修練を要する職業に就くにはお金がかかりますし、政治や経営という仕事を運営するのに労働者並みの賃金ではやってゆけません。常に多くの視線にさらされる職業や、高い緊張状態を維持し続けなければならない職業をまっとうするには、ストレスを解消し精神の安定を維持するための休暇や趣味や娯楽も重要で、それにはお金がかかります。しかしそのために法外な富の独占を当然とし、使い道もない金額を貯め込んで経済の血流を滞らせるのは罪悪です。
 職業に貴賤はありません。経営者と労働者は対等であるべきです。労働者ひとりひとりは経営者ほどの報酬をもらう必要はありませんが、会社一丸となって達成した利益は平等に分配しなければなりません。労働者にも休暇や趣味や娯楽がなければ正常に働き続けることはできません。正常に働けなければ会社の運営に不利益が生じます。そのことを対等な立場で討論し、必要な報酬を分配しなければなりません。
 労使の関係は主従関係ではありません。利益は経営者と労働者が互いの役割を全うした結果として発生するものであって、経営者のものではありません。経営者がどんなに理想的なプランを立てたからといっても、それを具体的に実行する労働力があって初めて成果が発生するのです。会社の資産はすべて経営者のものであって、労働者はありがたくそのおこぼれをちょうだいするという考え方は、あまりにも経営者本意が過ぎます。
 筆者はべつに社会主義者や共産主義者ではありません。さりとて資本主義者でもなければ、アナーキストでもありません。難しいイデオロギーの話しはよく判りません。筆者はまた新しい考え方を提案しているわけでもありません。労使対等の原理は民主主義の基本です。それを大むかしの主従関係の考え方か何だか知りませんが、無視して資本家の搾取や暴走を許してそれに無関心なのが特異なだけです。

 別項でアリの社会は横社会だと述べました。アリたちはエネルギーを平等に分配しています。働きアリはその労力に必要なだけの食事を自らの意志で摂取し、そのことで女王の許可を得る必要はありません。女王もまた繁殖と体力維持に必要な食事を摂取するだけで、食べきれないほどの食料を独占してカビさせるようなことはしません。アリ社会の経済は滞ることなく回っていて、その点において人間社会ほど幼稚ではありません。
 人間社会が幼稚なのは、資産家が我がままだからでしょうか? それはちがいます。人間が欲深いからでしょうか? それもまた人間を卑下しすぎです。人が他人の役に立ちたい助けたいという欲求を持っており、道義的に行動することを是とすることは別項で述べた通りです。
 社会において過度な格差や不平等が生じ、経済が資本の占有によって停滞してしまうのは、人々が無関心であるからです。自分の可能性を信じず、自分を過小評価しているからです。資本家が汚いからと他人のせいにしているからです。
 もっと自分を信じ、夢を持つこと、未来に希望を持つこと。そうした思いがたくさん集まれば人間社会は好転します。資産家の中にも格差や不平等を正しくないと思っている人はたくさんいますが、社会の流れが悲観的で、あきらめと無関心が蔓延していては、どうしたら良いのか判らなくなってしまいます。
 現在は高度な情報化社会です。インターネットを通じて個人と企業、個人と世界がつながる時代です。電脳世界では、人はより平等な立場で意見を交換することが可能です。人々の夢や希望が明るい未来社会を築く、それがますますリアルなものになる時代に私たちは生きています。

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