ムネアカオオアリ
2014/02/08
女王が20mm近くにもなる、クロオオアリやクロヤマアリと並んでたいへん大きなアリンコです。本種は胸部全体と腹柄結節から腹部前部にかけて赤みを帯びるので、他2種とのちがいは明瞭です。日本全土に棲息しますが、関西以西では山岳部に棲み、海外ではシベリアやヨーロッパにもいるそうですから、どちらかというと寒冷地の生き物ですね。
筆者の家は山岳地にありますが、この大きくて綺麗なアリンコを見つけようとすると、雑木林に分け入らないとだめですね。最近それが面倒で、珍しい虫はネット上に棲んでいると言ってはばからない筆者は、すぐ近くにおいしそうな森があるにも関わらず、ついネット上を探してしまいます。
アリンコは自然界でも働きアリはすぐに見つけられますが、卵や幼虫、蛹そして女王アリは地中の住人なので巣を見つけて掘り返さないと見つけられません。ただしアリの生態を把握していれば、新女王を地表で採集することが可能ですが。
そして、アリを長期的に飼育しようと思えば、交尾を終えた女王か、卵や幼虫や蛹にそれを世話するまとまった数の働きアリが必要です。子供の頃にトビイロケアリの巣を襲って卵や幼虫や蛹を確保し、たくさんの働きアリと共に飼育したことがある筆者にとっては、アリの飼育といえばとりあえず巣を襲うことでしたが、最近のネット上のアリはたいていの場合、女王または女王+彼女が産んだ子供たちという構成になっており、飼育のスタートは女王からというのが主流です。
上の写真は、2005年にアリの飼育のベテランの方が自作したスタートキットです。長径3cmほどのタッパーが3つつながっているこれはピルケースみたいですね。右が居住スペースで、真ん中が餌場、左が飲み水です。飲み水は加水したティッシュで与えます。餌場には砂糖やら生き虫やらを適当に入れておきます。働きアリたちは居住スペースからチューブを通って餌場や水場に行って、餌や水を居住区に運びます。餌が虫であった場合、食べ残して干からびてしまったものは水場に捨てていました。
この小さな飼育ケースでも数ヶ月飼育を続けることができ、卵や幼虫も得られました。その後、アリや飼育キットの販売を手がけている方のサイトで、石膏ケースというのを分けていただき、それを使用してみました。
透明プラケースの底に石膏が敷いてあり、それに加水することで水分補給を行なうというもの。これもチューブで別のケースと連結し、餌場を居住区とは別に設けるシステムになっています。
石膏の底は汚れやすいので、そこには加水せずに、けっきょく餌場に飲み水を置いてましたけどね。餌場には昆虫ゼリー、加水したスポンジ、生き虫なんかをボトルキャップに入れて与えていました。ムネアカオオアリはひじょうに俊敏なので、餌場のフタを開けたら迅速にボトルキャップを取り出し、新しいものを放り込むというかなり緊張を要するお世話が必要です。
ムネアカオオアリの成虫の構成はどうなっているのでしょう。女王はデカいので一目瞭然ですが、その他のアリは、数が増えてくるとサイズに差が出てきます。働きアリの数が増えると兵隊アリが出現すると、専門書やサイトで説明されていましたが、大きいものは兵隊アリ、小さいものは働きアリと定義すればよいのでしょうが、実際には中間くらいのものもいます。コロニーが小さな頃でも、同じ働きアリでもお腹の大きいものと小さいものがいて、小さいものが主に外に出て行き、大きなものは女王や幼虫の世話をしているみたいでした。大きなお腹には女王や幼虫に与える滋養が詰まっているのでしょう。
また、あきらかに働きアリよりも大きなものも羽化してくることがあります。これはオスアリか、未婚の女王あるいは女王候補のメスかもしれません。女王が何らかの理由で死去したり、生殖能力を失ったりした場合の予備戦力というのもアリ社会には存在するのでしょうか。