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ジョロウグモ

2014/02/06


 日本中の山地や平地でよく見かける有名なクモですね。棲息地にはじつに多くの個体が群生しており、大きな網をそこここに張りめぐらせます。ひじょうに美しくとても大きく、そして芸術的な大きな網状巣を作成します。クモの仲間はいずれも糸使いですが、わけても網状巣を作る仲間は糸の使い方があまりにも素晴らしすぎて感動的ですらあります。これほど大きく美しいクモが希少種ではなく普通に見かけるという点もまた素晴らしいですね。



 成熟したメスは20〜30mm程度の大きさになり、それをはるかにしのぐ長さの8本脚で強力な粘着力の巣網を平然とスタスタ歩きます。前脚はとくに長く、糸を紡いだり獲物を拿捕したりするほか触角の役目もしているようです。メスは成熟までに8回、オスでは7回脱皮すると言われていますが、オスは小さな茶色い虫で、見つけるのがやや困難です。オスはせいぜい10mmそこそこのサイズで、交尾のためにメスに接近するのは命懸けです。メスに存在を気づかれたらたちどころに餌食になってしまいます。交尾後のオスもカマキリと同じようにメスの餌食になると聞いたことがありますが、こうしたオスを餌食にするメスの習性が、男を食い物にする女郎にたとえられ、この名が付けられたのでしょう。もっともこの習性は本種に限ったことではないのですがね。



 ジョロウグモはとても有名で普通に見られる種であるにも関わらず、しばしば他のクモと混同されます。本種を見かけた人が、物知り顔で「コガネグモだ」と言っているのをよく見かけます。筆者の経験では本種を正しくジョロウグモと呼んでいる人を見かける方が少ないです。たまに「ナガコガネグモ」と呼ぶ人もいて、その人はいくらかクモに対する知識があるようです。
 関西では、網状巣を作る大形種をコガネグモと呼び、人家にもよく出没するアシダカグモをジョロウグモと呼ぶのをしばしば聞きます。アシダカグモは巣を作らない徘徊性の種で、隠れるのが上手く身近な生き物なのに見つけるのが大変です。



 ジョロウグモもコガネグモも黄色と黒の遮断機みたいな綺麗な脚をしていますが、腹部背面の模様に明瞭な差異があります。コガネグモでは黄色と黒のバンド模様になり、ジョロウグモはバンドがかなり不鮮明になります。また、コガネグモよりもスリムな体を持つナガコガネグモは、プロポーション的には本種に似ていますが、バンド模様は鮮明で緻密になります。これら3種を並べてみると見まちがうことはありません。そして本種はアシナガグモ科、他種はコガネグモ科に属し、形態も生態的にもひじょうに似ているものの系統は異なります。これも一種の平行進化と言えるのでしょうか。



 最初の3枚の写真はメスの成虫、4枚目(すぐ上)の写真は亜成体、昆虫で言うところの終令幼虫です。もっとも昆虫の中でも内翅類では間に蛹を挟みますし、カゲロウの仲間は亜成虫の段階を有するので、厳密にはクモの成虫直前のものを昆虫と比較するのは適切ではありませんが。じつは筆者はクモの成体についてあまり詳しくないのですが、飼育中のタランチュラは成熟後も脱皮を繰り返しており、これは昆虫には見られない生態です。写真の亜成体もメスです。オスはどこにいるのでしょう。



 上の写真は、破棄された古い巣とそこ残る脱け殻です。蜘蛛の巣はひじょうに丈夫にできていてとても大きな昆虫も捕獲できますし、風雨にもかなりの耐性があります。しかしながらご存じのように人間くらいの力では難なく破壊できるレベルの強度です。ひじょうに緻密で大規模な網状巣ですが、クモたちは何度も破壊されては作り直すことを繰り返します。ほぼ8時間で見事な巣を完成させると聞いたことがあります。本能という知性はすごいもので、彼らは誰にも教わることなく、立地に合った巣を迷うことなく作り上げてしまいます。



 2012年の夏は、うちの家の敷地の北側にジョロウグモが大量に巣を作りました。上の写真は全てその時のものです。この素敵な隣人の到来をたいそう喜んだのですが、2013年にはほとんどいなくなりました。本章のヒゲコガネとハンミョウの項に記述したと思うのですが、生き物はその年によって棲息地での数が大きく増減することがあります。それが自然環境の変化への適応のひとつの形であると筆者は考えているのですが、本種の場合はそれが当てはまるのかどうかは疑問です。筆者が毎年本種を目にする棲息地では、2012年に限って個体数が大きく増えたという現象は見られなかったからです。駅前から延びる歩道橋のところに毎年巣を張るジョロウグモたちは、例年と様子が変わりませんでした。
 では、筆者の家の敷地でこの年に限って大量発生した原因はなんだったのでしょう。ジョロウグモは孵化直後の幼虫がしばらく群生し、やがてバルーニングという方法で方々に拡散し、生活範囲を広げます。バルーニングとは、糸を風邪に乗せ、それにつかまってなるべく遠くまで飛んで行くという行動です。2012年にはたまたま筆者の家の敷地に多くの幼虫が飛んできたのでしょうか。それでも多数のクモが成長するに充分の餌がなければ大発生には至らないでしょう。飛来したジョロウグモの数は変わらないけれど、多くの個体が成長できるだけの餌虫がこの年は大発生したのでしょうか。
 翌年は大発生は見られなかったものの、まったく目撃しなかったわけではありません。なので今年2014年の夏にも彼らの元気な姿が見られたらと期待しているのですが。うちの敷地がこの美しいクモの安定した棲息地になれば素敵なんですけどね。

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