陸生等脚類の飼育
2019/01/19
今年の冬は、等脚類をあれこれ入手したので、その飼育繁殖に奮戦してみたいと思います。すでに何種類か記述しておりますが、まだまだいますので追って紹介してゆきます。等脚類とは、節足動物門甲殻亜門軟甲綱等脚目に属する仲間のことで、等脚目は最近はワラジムシ目とも称されます。いわゆるワラジムシやダンゴムシ、フナムシなどの仲間です。ひところ水族館で有名になったオオグソクムシもこの仲間です。
等脚類は甲殻類の仲間で、そのほとんどが水生動物で、陸生種であっても昆虫類や多足類のように乾燥にも適した呼吸器を有しておらず、腹肢に擬気管を持ちそれで呼吸します。これをエラ呼吸と言う人もいますが、あるていどの水分が不可欠であることはまちがいないようです。
これを聞くと飼育者は、皮膚呼吸をするカエルのように湿度が重要であると考え、せっせと土を湿らせて多湿にするわけですが、このことが蒸れによりダメージとなり飼育を失敗させることが少なくありません。筆者も過去にこの失敗を繰り返しました。
ダンゴムシあるいはワラジムシであっても種によって好む湿度が異なるわけですが、筆者としては例によって何でも同じやり方で飼育し、経過を観ていこうと考えています。
まずは、クワガタの産卵に用いる朽ち木を仕入れてまいりました。シイタケの栽培に使用したあとのクヌギ材やコナラ材などが、クワガタ飼育用に市販されていますね。これを流用します。
安売りしているものを買うと、古くて樹皮があっさりはがれてしまう材が多いですが、これはじつに好都合です。ぶっちゃけ筆者が欲するのは木部よりも樹皮の方です。
木部の方は、1日水に浸け込んでふやかします。樹皮がはがせないものはそのまま浸け込んで、ふやかしてからはがします。
樹皮の裏側および木部の表面につているシブを適当に洗い流します。
樹皮は理想的なシェルターとして重宝します。長期的に使用できます。
木部はあるていど砕いて、小さな木片にします。写真ではドライバーを用いていますが、硬い材だとこれでは歯が立ちません。なた、のみ、のこぎり等が必要になります。
なんとか、ドライバーと金づちで適当な木片に砕きました。
次に腐葉土を用意します。これは等脚類のエサになります。虫飼育用のものが購入できればよいのですが、園芸店で肥料として市販されているものの中には殺虫剤が混ぜられているものもあり、使用できません。山へ行って採ってきたものは、電子レンジで加熱して雑虫を駆除しておきます。
では、飼育セットを仕立てます。筆者の場合まずケージの底に昆虫マットを敷きました。これはなくても良いと思いますが、腐葉土の節約になりますし、なんとなく腐葉土を長持ちさせるような気がして敷くことにしました。これにたっぷり加湿します。
腐葉土を乗せます。おおざっぱに昆虫マット2cm、腐葉土2cmといったところでしょうか。大きなケージで大量に飼う場合はもっと増量します。
加湿して砕いた朽ち木をのせます。朽ち木がエサになるかシェルターとして重宝するかは不明です。腐葉土の水分の蒸発を防ぐ役にくらいは立ってくれるでしょう。
先に途中経過を申しますと、ユウレイオオワラジムシはけっこうこれをかじっておりました。朽ち木を定住地としても利用しており、たくさんの糞が見られました。
朽ち木は菌類の温床なので、カビが生えやすいです。多少の白いカビは問題あませんが、これが増えすぎたり、アオカビ等が繁殖したら除去してやる必要があります。途中経過では、意外とカビが生えないので、等脚類は菌類も好んで食べているのかもしれません。
以前にクワガタムシの繁殖に使用したあとの朽ち木を庭に放っておくと、土に半分埋もれて湿度を保った状態の朽ち木に多数のワラジムシと少量のダンゴムシが群れていました。
樹皮を被せます。樹皮がたくさん用意できれば、何枚も重ねてもよいでしょう。メンテ時に樹皮を裏返すと、そこに等脚類がくっついているのが見受けられます。
等脚類を販売しているとある専門家に、ビオフェルミンが良い飼料になる、衰弱している時の立ち上げにも効果があると教えてもらいました。顆粒タイプのものを何種類かのワラジムシに使ってみましたが、あまり食べませんでした。ケージ内で大繁殖した状態であれば有効な滋養強壮サプリになると思います。エビオスも可です。顆粒だと食べた痕が判りにくいので錠剤の方が良いかもです。ほかに爬虫類用のカルシウムパウダーも有効なようです。
熱帯魚のエサとビオフェルミンを小皿に入れて与えたところ。熱帯魚のエサはよく食べました。大量飼育の場合はドッグフードが安価でよいです。半生タイプよりも乾燥タイプがよいです。食べ残しを何日も放置してもカビたり腐敗したりしにくいし。
大型種では野菜クズも使用できます。小松菜やニンジン、キュウリ、カボチャがお勧めです。お勧めですがけっこう食いむらがあり、常設する必要はありません。水分補給に野菜を入れてやることは有効だと思います。
市販されている甲虫類の飼育に用いる木製の昆虫ゼリー置きは古くなると周りの樹皮が脱落してしまいますが。この樹皮がひじょうに重宝します。アーチ状のものを置いておくと、その裏側に群がったりします。
以前、等脚類を飼っていた時は、腐葉土を用いず、昆虫マットの上にこれを置いていたりしました。するとこれによく群がっていましたが、今から思うと昆虫マットの湿度過多から逃れていたのかもしれません。
今回は腐葉土を主食にし、朽ち木や樹皮をたくさん入れてやって、虫たちが多湿なところでも乾燥した場所でも選択しやすいように工夫します。
腐葉土の表面はすぐに乾いてしまいますが、上に朽ち木や樹皮を被せたところは湿度を保っているので、あまり乾燥を気にする必要はありません。乾燥しすぎたと思ったら、エサを取り除いた状態で水をバシャッとかけてやります。
餌は直置きではたちどころにカビの餌食になるのでエサ皿にいれますが、虫たちが乗り越えられない深いものは使えません。幼虫や小型種には、樹皮片を裏返したものをエサ皿として使います。また、個体数が少ない場合や幼虫にはせっせと給餌する必要はないと思います。腐葉土や朽ち木といった主食が潤沢に満たされているわけですから。
陸生等脚類は、地中に潜る習性があると思われることが多いようで、筆者が子供の頃に読んだダンゴムシの飼い方にも、十分な土を用意するとありました。たしかにダンゴムシは土に潜ることも多いですが、ダンゴムシが穿孔している土にジャバジャバと水を注ぐのは危険です。土を水分過多にしてしまった場合のためにもそこから逃れる足場は重要です。
筆者はワラジムシもダンゴムシも一緒くたに扱っていますが、厳密には生態に差があります。ワラジムシは動きが速く乾燥を好み、ダンゴムシには湿度が重要でしょう。しかしワラジムシやダンゴムシにも様々な種類がありますし、小さな幼虫と成虫とでも事情がちがってきます。決めつけてかかるよりも、汎用性のある環境を用意して、彼らの行動に任せるのがよいと思います。