クワキジラミ2
2019/06/15
ひじょうに神秘的な小虫キジラミですが、野外観察ではなかなかいい写真が撮れないので、飼ってみることにしました。飼育には何も労力は要りません。彼らは食草にくっついているのですから、それごと確保してケージに閉じ込めておくだけです。
飼育には小さなタッパーを使います。通気孔は小さなものでよいでしょう。今年は今頃になっても気温があまり高くないので蒸し殺してしまう心配はないと思います。この状態でしばらくは食草であるクワの鮮度が保てるはずです。
かなりズームアップしていますが、白い糸上の蝋物質ばかりで虫はほとんど見当たりませんね。
なんだか微生物の顕微鏡写真みたいです。肉眼で視認できる虫ですけどね、もちろん。
葉上にいるキジラミたち。写真上の方に幼虫や成虫がそれと判る形で写ってますよ。
葉上の小さな若令幼虫たちです。カビにやられたクモの幼虫といった風情ですね。
クワの茎についているものよりも葉についているものの方が虫の姿が判りやすいです。それとも、茎には蝋物質だけが残っているのでしょうか。
翅芽が確認できる終令幼虫です。尾端から蝋物質を出しています。
幼虫はほとんど動きません。刺激を与えるとめんどくさそうに緩慢な動作で少し移動します。
新成虫が羽化しました。みずみずしい色をしています。近くにあるのは脱皮後の抜け殻のようです。
飼育を初めて数日も経つと、成虫が次々に羽化してきました。幼虫の期間は長くないようです。
ケージの全体の様子。使用しているのは7cmほどの小さなタッパーです。飼育開始から1週間ですが、クワはまだしおれていません。
成虫たちが日に日に増えてゆきます。幼虫とちがって動きが速く、すぐに飛び立ってしまいます。タッパーのフタを開けると、かなりの数が飛んで行ってしまいました。放虫事件発生です。でも採集地からそんなに遠く離れた場所ではなく、自然に飛散するていどの距離なので、バイオハザードには至らないでしょう。
羽化した成虫たちが動きが素早く、すぐに飛び立ってしまうのは、生活圏を拡大するのに有利な行動であると思われます。これに対して最初に採集地で観察した成虫たちは、あまり動かず少々の刺激には動じませんでした。これは生殖行動に必要ないすわり状態だったなのでしょう。
現在は、新成虫の羽化が現地でも進んでいるのか、俊敏な成虫ばかりを目にします。写真撮りづらいです。そして、個体数がどんどん減っています。新成虫の多くは新たな生息地を求めて飛んで行ったのでしょうか。彼らはカイガラムシのように永住するタイプではないのかもしれませんね。もちろん、この地で生活を続ける個体もいなくなるわけではないのでしょうが。
話変わりますが、一昨年前まで毎年見かけたイセリアカイガラムシたちはいまだに姿が見えません。昨年クワが枯れてしまった際に一掃されてしまったのでしょうか。今年復活を遂げたクワには彼らと置き換わるようにキジラミがわいたと。自然は移り変わりとどまることを知りません。