フチゾリネッタイコシビロダンゴムシ
2019/06/16
沖縄地方に見られるダンゴムシです。石垣島で野外採集したものを送っていただきました。筆者が知るダンゴムシには、オカダンゴムシ科、ハマダンゴムシ科、コシビロダンゴムシ科ですが、本種はその名のとおりコシビロ君の仲間ですね。コシビロダンゴムシとオカダンゴムシは形態的にあまり差異がなく、尾部の形状にわずかにちがいが認められるていどですが、別科の動物なんですね。そしてコシビロダンゴムシ科の仲間は、日本在来種です。
本州にも生息する同科の虫たちと異なり、本種はオカダンゴムシに負けないほどの大きさがあります。フチゾリの名称通り各節の外縁部が上方に反っています。
種名にはネッタイという文字も含まれ、単純にこの文字が付くと大型のイメージを抱かせます。ヤスデ類であればタマヤスデとネッタイタマヤスデでは、サイズのちがいだけでなく、目レベルで異なる分類がなされ、それぞれタマヤスデ目、ネッタイタマヤスデ目となりますが、コシビロダンゴムシの場合はネッタイとついても同科の仲間になっています。
各節の反った外縁部については、分類上の差異ではなく、種類ごとの変異であるようです。とくに尾端のあたりの反り具合が顕著ですね。
尾部の末端節の形状がコシビロダンゴムシの特徴です。オカダンゴムシの仲間ではこの節が単純な台形になります。
正面から見ると、頭部よりの節も反っているのがよくわかります。なんか甲冑といった風情ですね。
丸くなった場合、オカダンゴムシはほぼきれいな休憩ですが、フチゾリ君では少しいびつな形になります。
そこそこまとまった数をいただきました。送られてきたときにすでに幼虫も混ざっていました。飼育を始めて3週間ほどになりますが、本州にもいるコシビロダンゴムシに比べて飼いやすそうです。でも、コシビロは湿度を高めにするという注意点には留意する必要がありそうです。
成虫幼虫ともたいへん活発で、本州産の地味めなコシビロ君のイメージ返上ですね。
幼虫たち。この子たちで生後かなり経っていそうですね。複数の個体を並べてみると、胸部の最前節が赤みが強くなる個体が見受けられます。ぱっと見はあまりよくわからないんですけどね。
各節の外縁部近くに色が明るく紋状になるところがあるのですが、これは幼虫の方が顕著で、からだ全体を通して筋状紋のようになります。また、幼虫はしばしば体をいっぱいに伸ばすので、各節外縁部がノコギリの歯のように見えます。
飼育環境は、他の等脚類とまったく同じにします。多湿を好むと言えども、樹皮で足場兼シェルターを設け、乾いた部分も設けてやります。
現在のところ、多種と同じ飼い方でまったく問題ありません。写真には右の方にミズゴケが写っていますが、これは送られてきたときに使われていたもので、これを捨ててしまうとその中にまざっていた微細な幼虫も捨ててしまいそうなので、こうしてケージの中に入れておくことにしました。
多湿を好む生き物は、これから夏場が心配です。湿度を保ちつつ蒸れないようにしなければなりません。沖縄地方=暑いというイメージで飼育すると失敗につながります。