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陸棲等脚類の飼育2

2019/08/11


 陸棲等脚類との付き合いはけっこう長くなりますが、今年になってかなり飼育ノウハウが確立してまいりました。それには様々な情報を提供してくださった良き隣人に依るところが大きく、本当に感謝している次第です。
 去年からご縁あって懇意にしていただいている なまものがかり様には、多くの情報とアドバイスをたまわり、大きな成果が得られました。今日はその「なまものがかり萌萌虫式陸棲等脚類飼育法」を大盤振る舞いで公開したいと思います。
 なお、陸棲等脚類とは言わずとしれたワラダンすなわちワラジムシ&ダンゴムシのことです。

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 ワラダンの飼育に欠かせないと言われているのが腐葉土ですね。これがワラダンの主食になるのだ、それが現在は定説になっており、筆者もそれを否定しません。しかしながら腐葉土さえあれば良いというものではありません。腐葉土のみでも飼育は可能ですが、長期的な飼育が難しくなる場合が少なくありません。
 腐葉土は園芸店やホームセンター等で容易に入手できますが、それらは植物栽培を目的として製品化されており、植物の生育に適した添加物や虫や病原体を寄せ付けない農薬等が混入されている場合が少なくありません。店員さんにこれは無農薬かと尋ねても自信をもって応えてくださることが意外に少なかったりします。ダンゴムシ飼うのに使えるかと尋ねると気味悪がられます。
 100歩譲ってミミズやカブトムシの幼虫を飼いたいのだが、というアプローチには応じてもらえることもありますが多くありません。そこで、筆者の場合はネットでそういうものを検索して探しました。ミミズの飼育セットとして腐葉土とミミズを売っている、ネット通販の評価でカブトムシの幼虫の飼育に使ってますとある、そうした情報が強い味方になります。
 野山へ赴いて集めてくるのも良いですが、その場合はワラダンにあだなす敵虫がワラワラ混入していることを覚悟しなければならず、それを回避するために加熱処理をほどこす必要があります。

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 ワラダンは陸棲動物であるものの、呼吸法は水棲甲殻類時代から基本的に変わっていないので、呼吸には水分を要します。ということで飼育者は腐葉土をせっせと湿らせ、多湿な環境を作るわけですが、彼らが高湿度の環境を好むとは限りません。むしろ湿度が災いになることが少なくありません。高湿度の腐葉土の中で飼っているうちに次第に数が減り消えてゆく、そんなワラダンも少なくありません。
 多くの飼育者が腐葉土にバーグチップ等の木片を混入させるといった方法を採っているようですが、これは虫たちが乾いた足場を得るためのものでしょうか。
 筆者の場合は、クワガタムシの繁殖用いる産卵木(主にシイタケの栽培に使用したあとのホダ木)を使用しています。半日から1日水に浸け込んで柔らかくして樹皮を剥がし、木部は半分に割って腐葉土の上に置き、その上に剥がした樹皮を被せます。木部よりも樹皮の方が足場として重宝します。正直木部は不用なくらいです。木部はクワガタの繁殖に用い、樹皮をワラダン用に使うと合理的ですね。クワガタブリーダーのみなさん、不用な樹皮があったら送ってください。あるいはうちの木部と交換しましょう。

 昼行性のトカゲ等を飼っている方は、ケージ内に温度勾配を設けるということを知っていますが、ワラダンの場合は湿度勾配が重要になります。高湿度の腐葉土に乾いた足場を配することでワラダンが好みの場所を選べるようになります。
 湿度の問題ですが、腐葉土の表面に乾いた部分が目立つようになれば少量の水をケージのすみっこから補給してやる、その程度でよいと思います。数日おきに加水しているとふと気づけば腐葉土がどろどろになっていて手が付けられなくなります。

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 アーチ型をした樹皮、これはひじょうに役に立ちます。腐葉土の上に置いておくと、高湿度の場所にずっと留まることを好まないワラダンたちがアーチの裏面に集まって休んでいます。
 上の写真にはニシキワラジムシ、ハナダカダンゴムシ、モンテネグロダンゴムシの姿が見えます。うちの混成飼育の様子です。

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 木炭も意外に役に立ちます。樹皮のような薄いものとちがって表面積を稼ぐのに苦労しますが、ワラダンはけっこうこれを足場にしています。スズムシやムカデの飼育にはダニ除けとして木炭を用いますが、ワラダンにもこれは使えます。
 写真はキボシダンゴムシ、小さな幼虫たちにも木炭は無害のようです。また、木炭上に糞がたくさん付着していることも多く、ここが彼らの生活の場になっているようです。

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 腐葉土の上に足場をたくさん設置したら、今度はエサです。腐葉土のみでも大丈夫かもですが、良質なエサは繁殖促進にもつながります。写真はドッグフード、とくに大型種ほどよく食べます。左はダルメシアンワラジムシ、右はシルベストリワラジムシの食べつくしたあとの様子。糞がたくさん残っていますね。
 エサは浅い皿に入れ、週1ていど供給しています。腐葉土の上に直接置くとすぐにカビてしまいます。ところがダルメシアンほどの大型種になると、エサをすぐに皿から引っ張り出してしまうので困りものです。見ているとその場でおとなしく食べているのですが、筆者が見ていないと悪さをするようです。かといってあまり深い皿を使うと、彼らが入れなかったり、入ったものの出られなくなったりといったトラブルが生じます。
 生野菜もよく使われますが、ケージ内の個体数が少ないとあまり消費している様子が伺えません。大量飼育ではニンジンや小松菜等に群がっているのを目にします。筆者は野菜はあまり使いません。

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 ワラダンはエビである、そんなことを言う人がいます。なるほどそうかもしれません。オカエビですね。つなわち甲殻類なのでカルシウムの補給は重要になります。野生では石の上や道路、壁などを這いまわっている姿を見かけますが、これは鉱物に含まれるミネラルをなめている、そんな話しを聞きました。腐葉土の上に石ころを置いておいてもよいかもです。
 小鳥の飼育に用いるボレー粉、貝を砕いたものも有効です。なまものがかりさんは、カトルボーンというものを提案してくれました。彼が仕入れてきたものを与えてみると、ひじょうによく食べました。カトルボーンはコウイカの殻です。太古のむかし頭足類は大きな殻を有しており(アンモナイトみたいな)その名残がこれですね。写真右は使用前、左は食べつくされた状態です。カルシウム補給にこれはひじょうに有効です。現在は飼育に手放せないアイテムになっています。
 整腸剤のビオフェルミンもサプリメントして有効です。エサ皿に入れておくと食べています。うわさでは衰弱した個体の滋養強壮に役立つとか。筆者はたまに粉タイプを使っていますが、錠剤タイプも使えます。錠剤の方がかじった痕が判って使用感があるかもです。

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 必殺アイテム乾燥葉。これも なまものがかりさんの情報です。彼がネット上で仕入れた情報なのですが、クワの葉を乾燥させたものをよく食べ、繁殖も促されるというんですね。クワの葉がいけるならクズもいけるだろうと思い、両方を試してみました。写真上の左がクワの葉、右がクズの葉です。
 クワはもちろん、クズも葉脈を残してきれいに食べられています。
 クワの木はそう簡単には見つからないかもですが、クズならそこら中にありますよね。これらの葉を2〜3日干してカラカラになれば与えます。ひじょうによく食べるしカビたりしないし、理想的なワラダン資料です。乾燥葉を使用することで繁殖が促されるという情報もあります。筆者は今のところそこまでは実感していませんが、よく食べるということは生育に大いに貢献しているはずです。
 乾燥葉ですから長期保存にも向いています。冬場も加温して飼育する方にとっては夏期の間にたくさん収穫して冬の分もストックしておくということが可能ですね。
 乾燥葉はワラジムシ、ダンゴムシ、コシビロダンゴムシ、アリノスワラジムシのすべてで有効でした。ただヒメフナムシはあまりお好みではないようでした。
 また、乾燥葉を恒常的に与え続けていると食いが低下してくることがあります。種類にっては食べ続けるものもありますが。それで最近は食べつくしても補給せず、2週間に1度ていどの供給にとどめています。

 陸棲等脚類の冬期の飼育については常温で管理し、ほぼ休眠状態にするのが一般的だと思われますが、筆者の場合は20℃ていどに調節した温室で管理していますから、冬も夏場と同じようにエサを与えています。多くの種類が冬場でも加温することで繁殖し続けます。

 長く飼っていると腐葉土が劣化してきます。葉の形がなくなり粉状になります。虫たちが食べるわけですから当然ですね。それをそのままにしておくと、ある時突然大量死を迎えることがあります。その原因は虫たちの糞が腐敗して有害な環境になるからだという考え方もあるようで、定期的な腐葉土の交換、足場の掃除が重要だという意見が少なくありませんが、繁殖が進み小さな幼虫が育っている環境を真っ新な状態にするのはよくないかも知れません。
 筆者は常々、幼虫たちが親と一緒に暮らしていてその糞を食べることで消化に必要な有用バクテリアを受け継ぐのではないかと考えてきましたが、彼らが乾燥葉をよく食べることでますますその思いが強くなりました。すなわち、幼虫がいるケージから糞をきれいに取り除いてしまうのはよくないということです。
 筆者の腐葉土の交換は、新たなケージに新鮮な腐葉土を入れ、そこに使用中の木片や樹皮などを移すという方法をとっていますが、この時樹皮等についている糞はそのまま新しい環境に持ち込んでします。まぁ、すべてを持ち込む必要もありません、糞は生体がいる限り供給され続けますから。あまり見栄えがよくない場合はさっと洗いますが、たいては汚れを手で軽く払うていどです。
 新たなケージを仕立てたら、虫たちを旧ケージからそちらへ移すのですが、木片や樹皮にくっついている個体はそのまま移動できますが、腐葉土に潜り込んでいる小さな幼虫の移動がやっかいです。で、おおざっぱに腐葉土ごと幼虫たちをすくい上げて新ケージに移します。つまり多少の汚れが新ケージに受け継がれることになります。
 人間の腸内環境で乳酸菌等の善玉菌の必要性がよく言われますが、小さな生き物の世界でもバクテリアの存在は重要であると思われます。清掃は大事ですが、きれいにし過ぎないというのも上手く飼う秘訣だと思います。

 陸棲等脚類の今後の課題は、類題飼育を繰り返してゆくうちに形質的な劣化が生じないのか、雌雄の量的バランスの偏りにより衰退が生じないのか、といったことを観察してゆくことですね。
 あとは、腐葉土ではなく昆虫マットで飼うとか、ヒラダケのような菌類の有効性を試してみるとか、異種混成の組み合わせをあれこれ試してみるとか、そういったことを続けてゆきたいですね。
 それに近年ますます新たな外国産種が輸入されるようになり、心が動きます。それに引っ張られるように日本の虫たちも様々なものがネットオークション等に登ってきたりします。世話やスペース、財力のことを考えると手を出すことは自粛しなければならないと思うのですが……。頑張って宝くじを当てたいと思います。

 陸棲等脚類の飼育は以上で確立されたわけではありません。今後も試行錯誤が続きます。そもそも生物の研究に完成とかこれでいいとかは存在しないのです。
 日常的に目にする虫ではありますが、付き合ってみるとひじょうに魅力的であることが解ります。国産の(もともとは外来種ですが)ダンゴムシはひじょうに個体変異が多く、改良品種を作出して新たなブランドを作ることに挑戦するのもおもしろいかもです。

 ということで「なまものがかり萌萌虫式オカエビ飼育法」の研究は今後も続くわけですが、なまものがかりさんはしばしば生物展示即売会に参加されており、筆者も重い腰を上げ、老体に鞭打ってたまにはアシスタントあるいは便乗組でそれに付き合うことがあります。その折にはブログ読んだぜ、なんてお声がけいただければ、ここで語りつくせなかったことを含めレクチャーしてさしあげますのでご期待ください。といいつつ腹の中ではみなさんからより良い情報を盗み取ってやろうと企んでいる次第です。
 僕たち私たちの善き隣人であるオカエビ君たちを、これからもよろしくお願いいたします。

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