アリの飼育ケース
2014/03/20
アリンコの飼育ケースを自作してみましたよ。現在クロナガアリの飼育に使用している「ありんこすぽっと」さんのオリジナル飼育ケースは、ひじょうに優れているのですが、各室を丸いチューブで連結してあり、それは固定されておらず、乱雑に扱うとすっぽ抜けてしまったりするんですよね。ふつうはそんな事故は起きませんが、本体を移動させる時に傾けて中で室がズレて、チューブが抜けそうになったことはあります。チューブが抜けるとアリンコたちの脱走事件が発生するので大変です。
かといって、チューブを固定すると掃除等(あまりやりませんが)のメンテナンスがかなり面倒になり、かつまた室を増設するといった拡張性も失われるので、この飼育ケースについては現状がベストでしょう。
また、すべての室を加水したマットの上に乗せて、アリの脅威になる乾燥を防ぐという工夫は、豊富なアリの飼育経験から生まれた成果ですね。ほんとすごいです。ただ、これも水量の加減と飼育ケースを置く環境の温度管理に不備があると、結露でアリたちを水没させてしまうという事態になり、経験浅薄な筆者は2度ほど、クロナガアリを水害の試練に合わせています。
インターネットでいろんなサイトを覗いてみると、いろんな飼育ケースのアイディアが紹介されていて、その都度感心させられるばかりです。とにかくアリを透明なケースで飼おうという発想に、まず筆者は感服しています。いったいどなたがこんな素晴らしい思いつきを実現したのでしょう。今はアリは土がなくても透明で観察しやすいケースで長期的に飼育できるというのが定説になっていますが、最初に実行した方はすごいですね。
今回、飼育ケースを自作するにあたって配慮した点は、小さなケースをたくさん並べてそれらを連結して使うタイプのものにするけれども、各室を個別に取り外して掃除や交換ができること、少々乱暴に扱っても全体のレイアウトがズレたり、連結が外れたりしないこと、室を増設するための拡張性があることです。
そこで、市販のフタ付きのプラケースを、基盤にはめ込むタイプのものにしようと考えました。プラケースの4つの側面に穴を開けておけば、各室間をアリンコが自由に行き来できます。単にそれだけなら、ケースを密着して並べればよいわけですが、それだとケースを個別に取り外すことが難しくなりますから、個々のケースをはめ込むフレームが必要になりますが、そうなるとフレームの分だけ、ケースとケースの間に間隙を作ることになり、そこをどうするかが最も悩めるところとなるわけです。フレーム自体にも穴を開けておけば解決ではあるのですが、それだとケースを外した場合に、別室のアリたちが嬉しそうにゾロゾロ脱走しだすでしょう。で、フレームの通路の部分にシャッターを付けるということが必要になるわけです。シャッターには穴の空いたものと空いていないものを用意し、開いてないものを差し込めば、ケース間のアリの行き来をシャットアウトできるというわけです。
上は、今回各室のために求めた透明プラケースです。サイズは50mm(w)×40mm(d)×15mm(h)くらいのもので、通販で1個50円もしなかったです。今回はこれを16個並べることにしました。20個買っておきました。あまりは汚れたり破損したりした時のための予備です。
高回転のハンドドリルに、波板に穴を開けられるビットを付けて、プラケースの4側面に1つずつ穴を開けます。穴の位置は各面の中央、穴の下部が底面に接するくらいの位置にします。たくさん開けなきゃならないので、目分量です。だいたいです。穴のサイズは6.5mm径。その根拠は駅前のホームセンターで手に入ったビットのサイズがこれだったからです。これくらいの穴を開ければ、穴の位置が少々ずれたところでアリンコたちの移動にはさほど問題はないでしょう。
これは金魚や熱帯魚の水換えに使うカルキ抜きです。ウソです。直径5mmのアクリル角棒を1cmの長さに切断したものです。逃げて行かないように袋に入れると、こんな絵柄になりました。基盤にプラケースを固定するためのフレームに使う部品ですって。
30cm×20cmていどのアクリル板を基盤にしました。厚さは2mmを選びましたが、ケチらずにもう少し出費して3mmくらいはあった方がしっかりして良かったかもです。撮影のために白いウールマットの上に乗せています。透明ですが青い色が入ってます。本当は非透明の水色の板が欲しかったのですが、駅前のホームセンターにこれしか在庫がありませんでした。基盤は色付きがいいです。白だと卵や幼虫がめだちません。「ありんこすぽっと」さんの飼育ケースも、プラケースの下に敷く加水用マットが白なので、可能なら色付きのマットだといいなと思いました。色は水色がいちばんお勧めです。アリンコが引き立ちます。黒っぽいと卵や幼虫は目立ちますが、今度は成虫が見えにくくなります。
基盤に、1cm長に刻んだ5mm角のアクリル棒を、写真のように並べ、アクリルボンドで固定します。作業は、プラケースを置いてそれに沿ってアクリル棒を並べて行けば効率的です。いちいち計って目印線を引いたりなんかしません。
横置きにしたプラケースが4個×4段はめ込めるフレームが完成しました。フレームというよりステーって感じですか? 基盤の左側の空きスペースは餌場を置く場所ですよ。
次にフレームにプラーケースをはめ込み、ケース間のすき間をシャッターで埋めます。黄色い矢印のところのくず餅みたいなのがシャッターです。シャッターというか溝埋めというか…。この部品には、「型思い」という工作用材を使用しました。「型思い」は商品名です。熱湯に付けると粘土状になり、冷めると固まります。本来は小さな部品に押しつけて型を取り、部品を量産するための用材ですが、この透明感が気に入って採用しました。またうまいこと筆者の家にあったんですよ、これ。
「型思い」をば熱湯で柔らかくして適当なサイズにちぎって、ケースとケースの間に押し込めば完成。すぐに冷めて固まりますから、パテなんかよりはるかに使いやすいです。
シャッターというか溝埋めというか…は、単体だとこんな感じ。このまま使用するとケースとケースの間隙は埋められますが、ケース間をアリンコが行き来できません。こいつに穴を開けねばなりません。プラケースに穴を開けるのに使用したツールが再活躍します。
はい、穴あけました。くず餅みたいで美味そうだったものも、穴をあけると様子が変わりますね。すべてに穴を開けるのではなく、必要な分だけ考えて開けます。アリンコが行き来できるジョイントの役目をするものと、行く手をふさぐシャッターの役目をするものとを作っておきます。
完成です。上から2段目の左端のケースからチューブを伸ばして餌場につないでいます。餌場は、いただきものを流用しましたが、本当ならこれもフレームで脱着可能にしたいところです。
上から2段目左から2つめの室は、ウールマットでびっちり満たしています。アリンコたちは隣接する室からウールマットに触れることはできますが、ここに進入することはできません。この室のフタには1ヶ所穴を開けてます。そこからスポイト等で注水します。アリンコたちの飲み水ですね。
アリンコたちを入れてみました。16室ありますが、行き来可能なのは水場を囲む8室だけです。最右列と最下段へは、シャッターで行けない区してあります。アリのコロニーが育って、働きアリが増えてきたら、これらの室を開放しようと思います。最初は室数を多くせず、徐々に増やして行く方が良いと、「ありんこすぽっと」さんのサイトに書いてありました。
さてさて、作ってみたはいいものの、すごく気に入ったとは言いがたい出来です。とくにシャッターまたはジョイントが頼りないです。現状では、個々のケースを自在に取り外すにはけっこう難がありまして、「型思い」で適当に作った部品ではなく、もっとしっかりした使いやすいものを作らねばと考えています。プラケースを固定するフレーム自体を多重構造にして、必要に応じて穴の開いたシャッターと開いていないシャッターを差し替えるような構造が理想ですね。餌場も固定式にして、取り外して掃除する際に、連絡チューブを遮蔽できるようにすべきでしょう。餌場はよく汚れますから、しばしば水洗いが必要です。虫なんかを餌として与えるととくに汚れますし。
と言うことで、まずは試作品ということで、笑って許してください。また機会があれば、もうちっとはマシなものを考えてみたいと思います。