1_萌萌虫雑記帳.png

種の多様性

 生物の進化は幸運な突然変異の積み重ねによって推し進められるのではなく、もっと能動的に変わって行くものだと、筆者は考えています。生物は自然環境へ適応しなければならないし、自然環境は変化し続けるものです。これに対して積極的に適応してゆかねば、生物としての存続が危うくなります。
 生物の環境への適応について考える上で、まず知らなければならないことは、種の多様性ということです。生物は様々な方法で自然環境に適応しようとし、その結果、様々な種が発生しました。
 種(しゅ)とは、いわゆる生物の種類のことで、タネとは読まないように。種の多様性とは、平たく言うと生は多種多様の種類が存在するということを言ってるわけです。
 動植物を育てることを趣味にしている人が、必ず感じることは、その種類の多さです。実に多くの種類の動植物が当たり前のように存在し、そのことがあまりにも日常的なので案外見過ごしてしまうこともあるのですが、動植物のことを知れば知るほど、たくさんの種類が存在することが判り、さらには亜種や地域変異個体群といった種がさらにグループ分されていることを知り、びっくり仰天しちまうのです。
 なぜこれほど多くの種類のヘビが、クワガタムシが、カメが、小鳥が存在しなければならないのか、同じ場所に同じ餌を求めてくらすヘビなら、クワガタムシなら、カメなら、小鳥なら、1種類でいいんじゃないのか? そんな疑問を抱くのは筆者だけではないはずです。それとも、たくさんの種類がいた方がマニア心をくすぐるからいいじゃないか、ってことで気にもしないのでしょうか。
 飼養している生物について詳しくなってくると、同じ餌を求める同じヘビでも(以外同文)、姿形のちがいと共に飼養環境への適応度のちがいがあることに気づきます。少々乱暴に世話してもたくましく元気に暮らしてゆく種と、ひじょうにデリケートで、長生きさせるには細心の注意と手間が必要な種があります。生物が厳しい生存競争の渦中にあって適者生存の理に則っているなら、どうして頑健種だけが生き残らないのでしょう? 学校の授業でダーウィン先生の進化論を習ったとき、弱者は自然淘汰され、強い種が生き残るんだって、教わりましたよね。
 じつは、適者生存と自然淘汰を額面通りの解釈をして、自然観察をすると壮大な誤解に突き当たってしまいます。
 自然環境には、弱者と強者が上手く共存するメカニズムがちゃんと存在し、共存のバランスがくずれて、種の単一化(多様性の逆)が起こりにくくなっているのです。
 自然環境は、様々な理由で絶え間なく変化しています。そして変化に応じてこれまで頑健種だったものが元気をなくし、弱小種が力を得るようになります。寒冷化が進むと大食漢が食欲をなくし、それに食べられていた生物が増加する。すると増加したそいつが好物の葉をたくさん食べてその植物の繁栄をさまたげる、じつはその植物は寒いのが得意だったので、繁栄をさまたげられたおかげで、他の植物とのバランスが維持できる。こういった絶妙な連鎖反応が機能して、その環境の生態系は全体としてバランス維持されるのです。
 だから自然環境は、できるだけ多くの種を絶妙なバランスのもとで維持し続けているのです。少しずつ性質のちがう似かよった種がたくさんいることで、自然は環境の変化にきめ細かく対応することができ、豊かな自然環境を維持できるのです。
 生物の種の多様性とは、環境の変化に対するショックアブソーバー(緩衝能力)なのです。
 そして生物は多様性を維持し、あるいは拡げて行くためにも、進化し続けなければならないのです。
 生物の進化は、古い種が別の新しい種に変わってしまうという形で起きるというよりも、古い種が別の新しい種を産むという形で生じます。なので、同じ環境で新旧双方の種の共存が始まり、このことによって種類を増やすことができます。このように古い種から新しい種が生じることを種の分化と言います。進化の実際は分化であるということができます。
 ただ、環境の変化が次第に大きくなり再び元のような状態にならなくなると、古い種はさすがに適応できなくなって滅びてしまうでしょう。でも、その頃には古い種はいくつかの新種を分化させて種の多様性に貢献し、種としての生涯をまっとうしていることでしょう。
 進化とはこのように自然環境への適応そのものであり、種の多様性というネットワークによって互いに種を維持し合っているのであり、あくなき生存競争を繰り返しているというわけではないのです。
 そして私たち人間は、種の多様性すなわち生物層の厚みの重要性を理解し、このバランスを崩さないようにしなければなりません。外来種の自然環境への持ち込み、環境の加工や破壊、こうした行為は、その自然環境の種の単一化を促進します。種の単一化が進んで、生物層の厚みが失われると、変化への緩衝能力を失った生態系は崩壊に向かい、環境の砂漠化が進みます。砂漠化は人類をも飲み込む重大な危機です。
 野山で、虫や小さな生き物を採集するのは悪いことではありません。個人の採集の能力なんてたかが知れてます。しかしながら、環境を破壊するような採集や大規模な乱獲は絶対にやってはなりません。我々人類も生物の一因として、生態系のバランスの枠からはみ出してはいけないのです。


コメント
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック

索引


目次

スネさん リーザさん けもの 庭虫
雑虫 クモ 直翅系 半翅系 膜翅系 鱗翅系 鞘翅目 毒虫 魚たち 無脊椎
両生類 カメたち 絶滅動物 くさばな 庭草 雑草 高山植物 飼育と観察 ヒト □飼育動物データ




1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< July 2018 >>

サイト内検索

NEW ENTRIES


Amazon Kindle 電子出版のご案内

cover4.jpg
学術エッセイ
人類汎幼進化計画


cover.jpg
小説
三角界の迷子たち


cover3.jpg
小説
少女たちと星の序章


cover2.jpg
エッセイ
単純世界の真面目症候群
Simple System and Serious Syndrome

cover.jpg
小説
あかねだいばくはつ

★講読には電子書籍リーダー Kindle が必要です。



sijn.jpg








recent comment

recent trackback

プロフィール

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM