スイセン
2014/04/02
うちの庭のスイセンは、10年を経たマイホームと同級生です。ここへ越してきた年に嫁さんの母君が植えていかれたのです、勝手に。越前(福井県北部)から車に乗ってはるばるやって来ました。毎年でっかい黄色の花をたくさん咲かせます。とても見事です。

庭の東面は、ほぼスイセンで埋めつくされています。早春、冬の終わりを実感する頃、サクラと同時期に満開になります。

それにしても大した数です。数えたくもないです。こんなにたくさんのスイセン……、どれだけスイセン好きやねん、と言われそうですが、きっぱり申してそう思われるのは本意ではありません。べつにスイセン園を計画したわけではなく、彼らが勝手に暴力的な増殖を発揮しただけです。
10年前、うちの庭にこっそりとスイセンを植えて行った嫁さんの母君にしてみれば、あたかもリスが木の実を埋めて隠すごとく、こっそりとささやかにいたしたことなのです。それがまさか、庭を占拠するに至るとは、誰も想像しなかったことでした。
スイセンの球根って、地中を自在にはい回るんですかねぇ。

庭を占拠したように見えるのは、春先までです。冬の間の青々とした細葉を茂らせていますが、暖かい季節には葉を落とし、球根で休眠します。夏場に庭を掘り返していると球根がコロコロ出てきます。
夏草たちが太陽を謳歌する間は休眠していて、寒い季節に葉を茂らせるので、花や緑の少ない冬のアクセントとして有り難い存在です。それと特筆すべきは、彼女らが庭の縁に隊列を成して増えることです。上の写真からも判ると思いますが、意図的に庭の縁石に沿って植えたように並んでいます。
筆者はこれまで、スイセンの苗や球根を意図して移動したことはありません。最初に植えた球根の場所すらも覚えていません。それなのにお行儀よく庭を縁取っているのには感心させられます。
華のない冬場を細葉で彩り、春の訪れと共に黄色で庭を縁取ったあと、多様な植物が競演する夏場の喧騒を避けて過ごす、彼女たちのそんな清楚な姿勢を、庭を占拠したなんて表現するのはまちがいですね。前言を撤回してお詫びいたします。
まだまだツボミも残っていますので、もうしばらくは黄色いスプリングエフェメラル(春の妖精)たちが風に舞うさまを堪能できそうです。