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ヒョウモン君

2014/04/19


 ヒョウモン君は、爬虫類の飼育者で知らない人がいない超有名なヤモリでして、今さら筆者ごときが語ることもないと言えばないのですが、2000年からけっこう長きに渡って累代飼育し、それなりに思い入れのある動物ではあります。



 ヒョウモントカゲモドキの和名で流通している、ランドゲッコーの代表選手です。物おじしない性格と、頑健種で飼育繁殖も容易、壁チョロのように脱走の名人でもない、まさに理想的なペットです。サイズは標準的なもので20センチ未満、俊敏に行動する動物でもないので小さな入れ物でも飼えます。バスキングライト等の設備も不用です。


 ↑ 2000年当時の飼育の様子。餌皿の中身はミルワーム。

 飼育のネックは、活き虫を与えねばならないことでしょう。それさえクリアできればリスやハムスターよりも扱いやすいし可愛いし、長生きするし(飼育下では15年以上は生きます)、初心者でも子供をとれます。
 学校の教材として飼うべきだと思うんですけどね。容易に飼えて学ぶところも多いです。カエルやカメなんて世話が面倒なものを飼うくらいなら、ヒョウモン君を飼う方がずっと楽です。
 活き虫の扱いやストックが無理という方でも、小鳥用に市販されているミルワームならなんとか馴れることができるでしょう。プリンカップに満たしたフスマの中でうごめいている状態でストックできますし、安価ですし。これを餌皿に入れて与えればよいです。
 ミルワームオンリーでの飼育に賛成する爬虫類愛好家は皆無だと思いますが、ガットローディングをマスターすれば、問題ないです。トップブリーダーの中には、この方法で多数の健康な子供をとっている方もいらっしゃいます。
 餌虫を理想的な栄養で太らせて、それをヒョウモン君に与えるガットローディングの方法については、専門ショップでお尋ねください。
 と言いつつ、筆者はコオロギとかゴキブリとか与えていましたけどね。



 ヤモリなのにまぶたがありますよ。トカゲの仲間からヤモリへ進化した際の過渡的な動物の特徴を継承しているらしいです。まぶたがあるけれど瞳はヤモリタイプの縦筋状で、鳥のような目をしたトカゲとは異なります。


 ↑ 産卵直後のメスと卵。

 飼育下では、春以降から産卵が始まります。乾燥系の動物なのでケージ内は通気性と乾燥を保ちますが、シェルターの中に湿度のある砂や土を入れておくと、そこを掘って産卵します。
 卵は親から隔離して管理し、高温多湿を維持します。常温でも高い孵化率が期待できます。



 50〜60日くらいで、親とは似つかないバンド模様の子供が生まれます。ピューンとか鳴きます。



 1回に2卵ずつの産卵を年間に数回繰り返し、1頭のメスから10匹くらいの子供が得られます。



 子供と大人はサイズ差が大きいので、分けて飼育しましょう。翌年の春には性成熟し、そうなるとオス同士が激しく争います。性成熟以降はオス同士を同居させることはできません。理想的なのは、1頭のオスと複数頭のメスのハーレム飼育です。
 上の写真では中央にいる特徴的な色彩の個体がオス。リューシスティックという品種です。



 上の写真はアルビノです。瞳も赤いです。皿の水を飲んでいるところです。



 お昼寝中の図です。飼育環境にすっかり馴化したヒョウモン君たちは、こうしてシェルターに隠れることなく昼寝します。弱いUVライトを使用すると日光浴すると言う人もいますが、筆者もほぼ同意見です。ただし、飼育に照明は必須ではありません。年がら年中照明なしで育てている人も少なくありません。
 基本的に夜行性ですが、飼育下では昼間もかなり活動的になります。採餌や水飲み、脱皮、求愛行動等を日中に行なう例を何度も目撃しています。採餌については、人が餌を与えることを覚えるようで、採餌行動は普通に観察できます。



 多くの爬虫類は単独飼育に向いていて、複数飼育が可能かどうかが問題になりますが、じつは複数飼育の方がよい結果が得られる種もいます。自然界でも集団で営巣する爬虫類も少なくないのですが、人は爬虫類イコール冷血動物すなわち単一行動という認識を持ちがちですが、同じ種の仲間と一緒の方が安心する動物もたくさんいます。
 本種も自然界では集落を作るとは聞いたことがなく、基本的には単独で暮らしているのでしょう。日差しの下で目を守るためのまぶたを持ちながら、彼らは警戒心が強く、日中は物陰に潜み、夜間に活動する暮らしを送っているにちがいありません。しかし、飼育下で同胞と暮らす生活を覚えると、用意してやったシェルターもあまり利用せず、日中も仲間と共にケージ内を自由に動き回るようになります。
 この理屈の是非についてはまだ確信がありませんが、筆者の飼育経験では単独飼育よりも複数飼育の方が餌食いも良く、飼育者の馴化も早いです。



 上の写真は、交尾行動です。ケージのいちばん手前の明るい場所で平然と交尾しています。このように警戒心がないのも複数飼育のおかげだと筆者は信じているのですが、本種は性成熟したオス同士を一緒に飼えないところが難点で、オスの数だけケージを用意しなければなりません。もっともこれは多くの動物に言えることで、それが本種ではひじょうに顕著だというだけです。
 複数のオスを同居させても比較的争いの少ない種もたくさんいますが、それらの中には飼育者が気づかないところで序列ができ、弱いオスはストレスを貯め込み餌もあまり摂れず疲弊しているかもしれません。衰弱した個体を単に虚弱な個体と思い込む前に注意深い観察が必要です。
 また本種の場合、オスはメスに対して盛んに求愛しますから、そのことがメスにとってはストレスになることも少なくありません。雌雄1頭ずつのペア飼育では。メスがオスを避けて隠れるようになり衰弱してしまうこともあります。これを解消するためには複数のメスを投入するしかありません。少なくとも2頭以上、ブリーダーによっては10対1ていどの飼育を当たり前にしているようです。



 ヒョウモン君は、成長に従って体の模様が激変します。上の孵化直後の個体が、どのように変貌するか、下の枚の写真と比較してください。



 生後2ヶ月ていどの個体です。



 夏に生まれ、翌年の春、ほぼ成熟した状態です。



 上の写真はまた別の個体ですが、尻尾の付け根にオレンジ色がのっているのが顕著ですね。また、胴部の黒い斑紋が極度に減少して、本種独特の豹紋が失われています。幼体の名残のようにうっすらとバンドが残っています。
 ヒョウモン君は、多くのブリーダーの手によってじつに様々な品種が作出されています。前掲のアルビノやリューシスティックもその一例ですが、ほぼ真っ白の個体やひじょうに強い赤みを呈する個体、黄色がなくなって白に黒い斑紋など千差万別です。
 ヒョウモン君の色素変異は、コーンスネークとよく似ています。コーンもヒョウモン君も青色の発色がほとんどありません。ただコーンの場合はラベンダー系の藤色というユニークな発色がありますが。代わりにヒョウモン君では尻尾だけが藤色です。尻尾だけ別の生き物のように色が変わっていることは、尻尾の自切という自衛手段を有するヒョウモン君にとっては身を守るのに有効なのかもしれませんね。



 ヒョウモンコレクターを目指すと、それこそキリがありません。大きなケージを用意すれば多数の個体を収容できるわけですが、そこにオスは1頭しか入れられないので、魅力的なオスを見つけた場合は、複数の連れ合いのメスを用意しなければならず、どんどん数が増えます。
 ヒョウモン君は、卵を管理する際の温度によって性が決定するTSD(Temperature-dependent sex determination)の好例として有名です。ハーレム飼育が望ましいことからメスの需要が増えますから、ベテランのブリーダーは、絶妙な温度管理によって雌雄の発生率を調整できるそうです。
 ヒョウモン君のTSDによると28℃以下ではほとんどがメス、30℃か〜31℃で半々、32℃で管理するとほとんどがオスになるそうです。34℃を上回るとまたほとんどがメスだそうです。
 筆者が繁殖を手がけていた頃は、卵の温度管理を常温に委ねていましたから、一定温度を維持することは無理でしたが、それでもよく増えました。



 ここ数年は飼育を手がけていませんでしたが、最近になって知人の飼っていた個体を預かることになり、久々にこのおちゃめなヤモリに触れることになった次第です。上の写真および以下はすべて、その居候君の写真です。



 筆者が知る品種からするとずいぶん赤みが強い個体です。あの頃にこんな個体を買い求めたら、すごい値段がしたと思います。当時はアルビノというだけで何万もあるいは10万円以上しましたから。筆者が目を離しているうちにまたどんどん新しい品種が作出されているのでしょうね。



 うちへ来たときはまだ成熟には至っていなかったと思います。それとハンドリングに全然馴れていませんでした。加温状態の環境で冬を越え、今では成体に達しましたが、いまだに思うように触らせてくれません。他に多数の生き物を飼っていて、この子に触れる時間があまりないままだったので、現在に至るも触るとバタつく状態です。



 この子は、女子ですね。性成熟に達したヒョウモン君の性別の判定は困難ではありません。ランドゲッコーの多くは、総排泄項の直下のオスのクロアカルサックの膨らみが決め手になりますが、この方法では本種の場合は誤認となることが時折あります。クロアカルサック以外に本種のオスでは前肛孔が顕著になるので、それも合わせて確認するとよいでしょう。



 うちへ来たばかりの頃は、少し痩せた感じがしましたが、今はこのように尻尾もブリブリです。いつでも繁殖に参加できる状態ではありますが、目下のところ単独飼育です。
 そのうち雌雄1頭ずつていどを加えて複数飼育にしてもよいかなと考えています。前述したように本種の場合は複数飼育の方が精神的にも落ち着く気がしますし。それに、久しぶりに可愛いベビーの姿を見るのも悪くないかなと思ったり……。

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