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未来社会の予想

2014/04/24


 筆者は若い頃から未来社会についてあれこれ妄想するのが好きでした。ですから近未来を描いたSFなんて大好物でした。しかしながら、筆者が想像するリアルな未来像というものを描いた作品にはなかなかお目にかかれず、今でも、これこそ納得できるいかにもありそうな未来だ、と思える作品を挙げることができません。
 23世紀の宇宙社会を描いた名作「スタートレック」も筆者の大好きな作品の1つで、まだ小学生だった筆者は、「宇宙大作戦」の日本向けタイトルでテレビ放送を見ていました。USSエンタープライズ号の驚異の冒険は、子供の筆者をワクワクさせました。
 中学高校に上がってから、より多くのスタートレックファンに出会いましたが、ファンたちはあの名作を絶賛しながらも、様々な突っ込みどころを見つけて笑い合ったりもしました。宇宙生物と普通に会話したり、様々な惑星で空気や重力の問題が解決されていることなど、名作も時代と共に突っ込みどころが増える一方でした。
 しかし筆者にとって最大の突っ込みどころというか謎は、まったくちがうところにありました。すなわち、23世紀まで滅びずに生き長らえた人類が、いまだに戦争に明け暮れているのが疑問だったのです。エンタープライズ号の宇宙就航の目的は探査でしたが、基本的に軍所属の火器を搭載した宇宙船で、宿敵も存在します。彼らの活躍する舞台は戦争が宇宙規模に発展した未来なのでした。
 スターウォーズは、遠いむかしのお話しだそうですが、優れた宇宙航行技術や華々しい建造物は、我々にとっては未来図的なシチュエーションでした。この作品ではさらに過激な戦争が描かれ、帝国軍と反乱軍、心身の鍛練によって特殊能力を得たジェダイと、その能力を暗黒面に利用して宇宙征服を企むシスといったキャラクターが登場します。ビーム砲で惑星1つを消し去るという破格の火器を開発するような技術文明が、帝国軍と解放同盟とに分かれて機動兵器による戦いや白兵戦を繰り広げるのです。
 ほかにも様々なSF作品の未来社会において、戦争や貧富の差が登場します。壮麗な未来社会の場末に悲惨な生活を強いられている貧民窟があって、そこに盗賊や賞金稼ぎ、闇商売の王だとかが暗躍しています。富裕層に虐げられた貧民たちが反乱を起こすといった未来もよくありますね。高度に発達した人工知能が、人間という矛盾した生き物を社会の秩序を乱すものと判断して駆逐しようとする、そんな未来もありました。
 これらの戦争や格差を伴う未来社会が示唆しているものは、どんなに技術が進歩しても人類は争い続ける運命にあるということなのでしょうか。そうではありません。要するにこれらの未来SFは、未来予想ではなく、舞台を未来に置き換えた現代風刺なのです。この逆パターンで、現代風刺を盛り込んだ時代劇もありますね。かつて一世を風靡した「必殺仕事人」とそのシリーズには、サラリーマン武士の家族との確執や、不況、受験戦争といった題材が登場し、我々観客は登場キャラに共感し、感情移入することができました。
 未来SFが未来社会予想ではなく、童話などと同様の現代風刺の場であるということも悟れない愚かな筆者は、こんな未来図は間違ってるなんて反感を持つこともしばしばでした。資本主義による競争がさらに膨れ上がり戦争の規模も大きくなるなら、未来社会なんて実現する前に滅んでしまうだろう、競争よりも協調がまさってこそ人間社会は存続の道が開け、壮麗な未来都市の建造が実現するのだ、筆者はそう考えていました。

 争いの回避による人類の存続という単純な理屈の組み立てについては、今も考え方は変わりません。人類が滅びることなく存続し、優れた技術力に裏打ちされた快適な未来社会が実現するには、より民主化が進んだ社会と、先端技術の一般への公開、有形無形の資産や資源の分配の公平化がさらに進まねばなりません。端的に言うと、誰もが高度な技術を手にすることができ、誰もが豊かな文化的生活や潤いのある食生活が可能にならねばならないということです。儲けた者勝ちのエリート主義の格差社会を増長させるのであれば、先端技術を大衆に与える必要はありませんし、大勢の貧窮と犠牲との引き換えとしてエリートだけが富をむさぼり、豊富な食材を独占し、高度な医療に健康を委ねればよいのです。
 人類の科学技術の進歩は、戦争のようなインパクトによって加速されるという人もいます。勝ち残りを賭けた競争こそが、新しいアイディアやノウハウを産むのだと。常に満腹で安逸をむさぼっている人たちは何も考えず、何も産まない。だから、格差や競争、戦争も人類全体から見れば必要なのだと。
 そうなのでしょうか。平和社会にだって問題は山ほどあります。人同士が争わなくても、人間は常に様々な問題と戦っています。高品質で安全な食材の量産、病苦や障害の克服、自然災害から被害を防ぐ方法、エネルギー資源の問題、宇宙開発の問題。戦争しなくても研究開発は進みます。
 これまで、発明や発見の多くはその道のエキスパートの手に委ねられてきましたが、ネット社会においてはかつて専門家やプロしか持たなかったツールやノウハウが万人に公開されるようになり、より多くの人々の頭脳で問題が検証されるようになりました。営利目的の企業が、専門家の中から頭脳を抜粋して少人数制で研究を進めるよりも効率的に追試やデータ収集ができるようになったのです。電脳ネットワークに大勢の人間が端末によってつながった状態は、言わば地球規模の巨大コンピューターみたいなものです。
 個人と世界をつなぐ電脳ネットワークが現実のものとなった現在、これから先の未来は、多くのSF作品にあるような一部の富裕層が富を独占し、高度な科学技術で武装した壮麗な都市に住み、多くの貧困層がそれを支えるために奴隷のような生活を強いられているといった未来は考えにくいと思います。先進技術は、今では一部の限られた列強国の富裕層だけの持ち物ではなくなりました。
 今の世界経済を支える資本主義と自由競争の考え方は急には変わらないでしょうが、大きな企業だけが技術力で優位に立てるとは限らなくなって行きますし、芸術や文化面でもますます素人の活躍が目覚ましくなるでしょう。イデオロギーの変更がなくとも、世界の流れは変容して行きます。
 壮麗な未来都市や宇宙都市は、より民主化が進み、自由と平等が今より進んだ文明によって実現されるでしょう。全人類が等しく平等な社会は実現が難しいでしょうし、完全な平等は逆に人々から自由を奪ってしまうかもしれません。しかし今よりはもっと公正な未来はきっと実現されるはずです。

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