シュレーゲルアオガエル
2014/05/02
形態も生態もモリアオガエルに近縁のカエルです。日本固有の動物なのに、外人みたいな名前ですが、発見して命名した人がシュレーゲルさんだったりしたのでしょうね。
本種とモリアオガエルの区別は小さな個体ほど判りにくいかも知れません。大きなものでは体格の差が歴然としていますから。モリアオ君の大きなメスでは全長が7cm前後から8cmくらいありますが、シュレーゲルのメスでは大きくても5cmを上回る程度です。オスはもう一回り小さいです。小さな固体では、今度はアマガエルとの区別が難しくなりますね。
シュレーゲルとモリアオ君とでは、口吻がモリアオ君の方がやや尖っているとか、四肢の水かきがモリアオ君の方が発達しているといった差異が挙げられますが、本種の方が虹彩の色が明るい、肌のざらつき感がモリアオ君の方が顕著になるといった特徴の方が判りやすいかもです。
モリアオ君は、綺麗な斑紋を呈する個体が多いですが、シュレーゲルは無紋で、斑紋のあるモリアオ君については本種と見間違えようもありません。また、本種の小さな個体と、アマガエルの緑の個体が見分けにくいですが、アマガエルでは目と鼻先を結ぶ茶色い帯状の紋があります。アマガエルの茶色い個体ではこの帯状紋が判りにくくなりますが、その代わりに体がまだら模様になり、茶色の個体でもそうはならない本種と区別できます。
上はよく肥えたメスです。ブリブリで可愛いですね。日本のアオガエル科の仲間に関しては、テラリウムで飼育するのが良いです。水を張ったプラケースに島を置いて飼っている人を見たことがありますが、それはカメの飼い方です。テラリウムに水入れを常設してやるような飼い方が良いです。アマガエルに比べると本種は乾燥に弱い気がします。水入れは大きめのものを用意し、とくに高温になる夏場は時々ケージ全体にスプレーしてやる方が良いです。あと、直射日光の当る場所で小さい入れ物で飼うのも禁物です。カエルが干物になってしまいます。
今度はオスです。雌雄の判別は難しいですよ。オスでは喉元がやや茶色くなる、親指にイボができるなどの特徴があるようですが、それも繁殖期以外では顕著になりません。大きな個体では体格の差が明らかなので判りやすいかな。メスの方が縦横とも大きく、よく太っています。ただ、健康優良児でないとこれも一概には言えませんけどね。
シュレーゲルは、多種に比べて神経質だと言われます。確かに繁殖期にゲロゲロ鳴くことは少ないです。用心しながら時折短く鳴くていどのことが多いです。飼育下では鳴かないオスも多いです。でもそれよりも怖いのは拒食です。過度に神経質で餌を食べない個体は、上の写真の右の子のようになってしまいます。それでもなかなか死に至ることはありませんが、落ち着かせて立ち上げるのは容易なことではありません。
筆者の経験では、複数飼育の方が、飼育者にも環境にも早く馴れてくれる気がします。その中で馴れない個体、あるいは他の個体を脅威に感じて神経質になってしまった個体は深刻です。上の痩せた個体は、単独飼育にし、匂いの少ない植物をたくさん入れてやって落ち着かせることで、再び元気になりました。
春から夏にかけて、繁殖シーズンに雌雄を同居させておくと、オスがメスに抱きついている光景が見られるようになります。自然界では、オスたちが競って鳴いてメスを呼び寄せるのでしょうが、飼育下では最初からメスがいるので、オスは鳴かずともメスを獲得できます。
飼育環境にすっかり馴化した個体は、繁殖シーズンはいつでもラビューなシーンが展開しています。ちなみにカエルは体外受精ですよ、交尾はしませんからね。充分に加水したミズゴケなんかをタッパーに入れて、飼育環境を多湿にしておいてやると、夜間に産卵が見られます。
産卵までは順調に進むのに、なぜだか孵化に至りません。自慢じゃないけど、筆者は湿度を好む生き物の飼育が下手くそです。イモリは繁殖に成功したのに、カエルはまるでだめです。敗因はきっと過剰な湿度でしょう。卵塊が乾かないように注水したり加水したミズゴケで被ったりあれこれやった結果がかえって悪かったのではないかと、今になって思います。
アオガエルの仲間の卵は、水中に産卵するカエルのそれと違って透明で胚が見えているようなタイプではありません。自然界では本種は土の中に産卵することも多いそうです。白濁した卵はあるていどの乾燥に耐え得る疎水性の膜で覆われているのかも知れませんね。
上の写真は無紋の個体が多い中で珍しく斑紋のあるものです。じつはこの子も元々は無紋で、寒い季節が近づくにつれてこんなふうになりました。
冬のはじめ、ミズゴケの中にもぐりこんで越冬の態勢になっているメス。なんかアズキ色になってるんですけど。
この方は、目を閉じてすでに寝ちまっていますね。写真では多量の水でグショグショですが、これだと冬季に水が凍るとカエルにとってダメージになると思われます。これは日々の気温変動を緩和するための処置です。真冬になる前にもっと水を減らします。
それではお休みなさい。以上は2004年〜2005年にかけての記録でした。