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進化の漸進説と跳躍説

 生物は定行進化あるいは躯体大化の法則に則り、どんどん体が大きくなり器官の特殊化が進む方向に進化して行くわけですが、その進化がひじょうに漸進的(変化が判らないほどゆっくりしている)であったとしたら、矛盾が生じてしまう場合があります。
 どんな矛盾なのかは後述するとして、これとは逆に突然大きな変異が生じて進化が促されるという考え方もあります。広く信じられているように、突然変異が進化の原動力なのだとしたら、こうした大きな変化を期待しやすいですね。そしてこのように突然大きく変わるような進化の考え方を跳躍説と言います。
 筆者は、突然変異を進化のカギとする考え方にはあまり賛同できないので、生物の進化はひじょうにゆっくりと進む、いわゆる漸進説信望者でした。

 漸進説信者である筆者でも、進化のすべてが漸進的に生じるものだとしたら矛盾が生じると考えているのは、前述したとおりですが、ではその矛盾がどんなものかを見て行きましょう。
 たとえば鳥です。鳥類は大空を制覇した大変大きなグループで、ひじょうに多種多様な飛行動物を世に輩出して来ました。その鳥類の原点とされているのが、アーケオプテリクス(始祖鳥)といわれる爬虫類の一部から分化した動物で、彼らは羽毛の生えた翼を持ち飛行することができました。
 では、始祖鳥に進化する前の段階の動物ってどんなだったのでしょう。爬虫類が飛行動物に進化するには、前脚が翼に変わり、体は短くて強固でしかも軽量になる必要があります。翼を羽ばたいて浮力を得るには体が柔らかくぐらついていてはダメです。また後ろ脚は短くなって移動よりも獲物を押さえ込む手のように振る舞える形状になります。これらは走行を得意とする動物にとってはひじょうに大規模な改造です。
 ゾウやキリンの特殊化とちがい、爬虫類から鳥類への進化はあまりにも変更点が多く大きすぎます。
 鳥類へ移行する爬虫類の仲間は、2足走行が得意な小型のトカゲだったでしょう。彼らは素晴らしいスピードで走り、ジャンプも得意で、その駿足にモノを言わせて小動物を狩ったり、大型の捕食動物から逃げ延びたりしたのでしょう。
 そのうち、連続ジャンプによって長距離を一気に移動することが可能になり、彼らの体は滞空距離を稼ぐのに有利な形状に進化していったのかも知れません。
 ここまでは漸進説でも説明可能ですが、前脚が長距離ジャンプのバランサーとなり、やがては滑空が可能な大きくて羽毛を蓄えた翼になって行くプロセスは上手く説明できません。羽毛のない長くて大きな前脚は走行やジャンプの邪魔ですし、短い前脚のまま羽毛が生じてくるのもおかしな話しです。
 鳥類への進化の過渡的な動物たちは、次第に長くなる前脚を持て余しつつも、遠い未来に自分たちの子孫が飛行能力を会得することを夢見て我慢していたのでしょうか。走行のじゃまになる前脚をさらに伸長させながら、獲物の捕獲や強敵からの逃走にますます不利になりながら、それでも未来を信じて伸長させ続け、ついに始祖鳥になるまでなんとか生き延びたのでしょうか。
 そして、生きて行くうえでひじょうに不利な過渡的動物の化石は見つかっていません。化石証拠が示しているのは、鳥類に進化することになるであろう爬虫類の候補の存在と、鳥類の原点と思われる動物の存在だけです。
 化石に残る古生物は鳥類に限らず、進化前と進化後の完成度の高い生物ばかりで、途中の不安定なプロセスの生物の化石はほとんど残っていません。完成度の低い生物は生きて行くのに大変不利なので、短期的に変異を繰り返し、あまり長い間自然界に留まっていないので、化石に残りにくいだけなのでしょうか。そうだとしたら、そのことだけでも漸進説の立場は苦しくなります。
 過渡的な未完成な生物がまったくいないということはないにしても、不安定な生物の存在は不条理です。鳥類が現存する今だから、爬虫類から鳥類へ移行する動物のいた可能性が想像できるものの、鳥類がまだ見ぬ未知の動物だった時代、やたら長い前脚を持て余す不器用ないじめられっ子が実在し、しかも滅びることなく長い間存続できる理由が見当たりません。
 進化の跳躍説によると、特定の環境においてかなり大きな変異を来した子供が一斉に生まれてくるなんて現象が生じるらしいのです。同じ種類の生物でも他の場所で暮らしている仲間には変異が生じないのに、ある特定の場所で跳躍的に変異が進んだ子供が相次いで生まれ、新しい変異型同士の交配が進んで、別の種に進化してしまうのです。
 餌が少なく生活範囲の広くないところに進出した群れがその地で生きながらえる内に、体の小さい省エネタイプの子供を一斉に輩出し、ドワーフといわれる小型の個体群が生じることがあります。それと同じように大きな変異が突然一斉に生じて新たな進化をもたらすといったことは、実際にあることなのかも知れません。
 では、進化的な突然変異が特定の地域において多数の子供たちに一斉に生じるといった現象のメカニズムはどうなっているのでしょう。変異を起こすことを、みんなで話し合って決めるのでしょうか? そんなはずはないですよね。ひとつ謎を解く手掛かりになるのが、これまでお話ししてきた獲得形質や経験の記憶と記録というメカニズムです。特定の地域の仲間たちが、同じような経験を積んで同じような形質を獲得し、それが同じように遺伝情報として記録されるとしたら、その情報をもとに一斉に変異が生じることになるのかも知れません。
 生物の進化のカギは温故知新であることは前項で述べました。それぞれの個体の中に貯えられた同じ量的遺伝子の同じデータベース中の情報を参照して記録が作られ、遺伝子組み換えが起こるのだとしたら、特定の地域で同じような変異型が一斉に生じることも可能になるでしょう。その地で生まれる全ての子供に変異が生じなくても、複数の変異型が誕生すれば、新たな進化は期待できます。
 生物は、単独の個体が思い思いに生きているだけではなく、遺伝子レベルでは絶妙なネットワークでつながっているのかも知れません。今は使われていない莫大な量の不用な遺伝情報は、生物ネットワークのための大変重要なデータライブラリーなのかも知れませんね。

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