タイワンサソリモドキ
2014/05/23
別項で記述したウデムシと並んで、世界3大奇虫の1つです。タイワンサソリモドキの名称ですが、棲息地は日本の八重山諸島にまで及び、ヤエヤマサソリモドキとも言われます。また、九州南部以南にはアマミサソリモドキが棲息し、こちらは人の手による帰化で伊豆諸島の一部にも棲息するそうです。
世界3大奇虫ですが、ウデムシよりはずっと理解に苦しまない形態をしています。これならサソリの方がよっぽど奇異です。尾節が背中の方に反り返り、その先端が頭の前まで届いて、それで獲物を毒殺するなんて。サソリが希少な虫であったならば、きっとそっちが奇虫とされていたことでしょう。名前もサソリの方がサソリモドキだったかもです。
余談になりましたが、当のサソリモドキを見てみますと、1番前の歩脚がウデムシと同じように触角化しています。両者が遠からぬ間柄であると推察できますね。そして、尾端から後方に伸長する長いノズルは、強い酸を噴射する武器になっています。
内側に湾曲した前肢のハサミは、ボクサーっぽいです。このたくましい前肢で獲物を押さえ込んで捕食します。
前肢を開いていると、クワガタムシの大腮っぽくみえます。しかしこいつで威嚇行動をとることはあまりありません。尾部のノズルから噴射される酸はひじょうに強烈で刺激的です。酸っぱい臭いが鼻にツーンと来ます。ただ、連射はしてこないし、飼育下ではそのうち攻撃して来なくなります。酸のストックがなくなり次第打ち止めの一発武器っぽいです。酸のチャージには時間がかかるようです。あるいは1度きりの武器とも聞いたことがありますが、そんなことはないでしょう。
ジャンボミルワームをむさぼっています。食事風景には意外と出くわしません。サソリでもウデムシでもそうですが、コンスタントに餌に飛びつくような性格ではないようです。神経質な虫で、食事は物陰に隠れて行なうとの情報もあります。
メスが産卵しました。幼虫を直接仔産するサソリとちがって、こうして卵を透明な袋に収容して母親が保護します。最初の産卵では、危険を感じたメスが食卵し、1頭の幼虫も得られませんでした。神経質すぎます。
飼育環境に充分馴化してからの産卵では、抱卵したまま採餌する姿を見せてくれる大胆さを発揮しました。えらくなったものです。
卵のクローズアップ写真もバッチリ撮らせてもらいました。どうやってぶら下げているんでしょうね。
今度は無事に孵化しました。幼虫たちは母親の腹部にしっかりとくっついています。
幼虫たちもズームアップしておきましょ。よくふくらんだお腹には滋養がたっぷり詰まっているのでしょう。これで親離れするまで食事は必要ないわけです。
背中はもとより、お腹にも幼虫が張りついています。どうやって張りついているんでしょうね。サソリでは背面にしか幼虫を着けませんが。
親離れした幼虫たちです。すでに成虫と同じ色あいをしています。
親離れしたばかりの幼虫と成虫との差異でよく目立つのは、各肢の先端と尾端のノズルが赤いことです。ウデムシの孵化子も前肢が赤い色をしていました。
親離れした幼虫のズームアップ。歩脚も前肢も先端が赤くなっています。
サソリモドキは、アマミサソリモドキも飼育しましたが、こちらも繁殖に成功しました。また、両者とも酸の攻撃は最初だけで、あとはメンテ中に攻撃を受けたことはありません。このとっておきの武器はやたら行使するタイプのものではないようですね。