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経験の記録と平行進化

 生物の進化を促すものは、偶発的な突然変異の積み重ねではなく、生物の経験や後天的に獲得した形質の情報の蓄積である可能性を筆者は疑っています。でなければ、人為淘汰による品種改良や、環境のちがいによる地域変異の集団発現を説明できないと。
 生命を掌る遺伝子の情報量は膨大な量に及び、そのほとんどが使用されていない無駄な情報です。しかしそれらは破棄されずに貯め込まれ、細胞分裂や生殖の際にその正確になコピーが、次の細胞、次の世代に受け継がれます。それら使われない莫大な量の情報は、生物がたどって来た進化の歴史であり、経験や後天的に獲得した形質の情報なのではないか、そういう情報を記述し記録しておくメカニズムを遺伝子は有しているのではないか、そして普段使用している遺伝子の情報では対処できないような状況に遭遇したとき、参照したり活用したりするのではないでしょうか。こうした考え方は荒唐無稽な想像でしょうか。
 生物が暮らしている環境は変化し続けています。例えば温暖な土地が何らかの理由で寒冷化し始めたとき、その生物の祖先に寒冷地に住んだ経験があり、その時の遺伝情報が保存してあれば、それを参照して寒冷化に対処することができます。防寒用の皮下脂肪や厚い毛皮を再現することができます。薄毛の親からいきなり剛毛の子が生まれるような劇的な変化はないにしても、まったく何も情報がない状況よりもずっと有利でしょう。

 生物の進化における面白い現象のひとつに、平行進化または進化の収斂現象というものがあります。場所や時代の異なる別々の環境に暮らす別の種類の生き物に、同じような形質が顕現するという現象です。例えば現生の哺乳動物であるイルカ、これとそっくりな爬虫類が今から1億年ばかりむかしの海に棲息していました。イクチオサウルスというその海洋爬虫類は、大きな目と鋭い聴覚を有し、知能も高かったと想像されています。両者はまったく別の種類の生き物で、進化して来た時代にも大きな隔たりがあります。両者の共通点といえば、海に暮らし強力な遊泳能力と鋭い感覚器を有していたこと、高い知性に恵まれていたことなどです。イクチオサウルスも中生代の海でイルカのような社会生活を送っていたのかもしれません。
 海で知性的な暮らしをしようとすれば、必然的にあのフォルムになるのでしょうか。それとも両者とも祖先は魚類であり、海洋生活に適応するにあたり古い遺伝情報を参照した結果、同じような形質を顕現するに至ったのでしょうか。筆者の考えはもちろん後者です。
 別々の場所に暮らす別々の生き物に見られる類似性のすべてが古い遺伝情報を参照した結果であるとは申しません。同じような環境に適応するという生活条件が、たまたま体の特徴の類似を生じさせるようなこともあるでしょう。しかしそのたまたまにしても、それぞれの生物が同じ進化の道筋をたどった同じ組成の遺伝子システムを持つ者同士なのだから、遺伝子に起因した発想の類似性が生じるのではないでしょうか。


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