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生物の進化を理解する

  これまで述べて来ました生物の進化に対する考察は、あくまで素人の見地からのアプローチであり、これが現在の専門家たちによる標準的な進化論というわけではありません。進化は突然変異という偶然の積み重ねで起きるのであり、生物個体がその生涯で経験したこと、獲得した形質というものは記録として残らないし遺伝もしない。筆者がこれまでに出会って来た専門書にはそのように記載されていました。しかしながら、最新の進化論がどのような考え方になっているのか、個体の経験や獲得形質の進化への影響について、今の専門家がどう考えているのか、実のところは専門家ならぬ筆者には解りません。なので、本箸を読んだだけで進化について理解を深めたと思うのはまちがいです。本箸は、生物の進化に対する考え方と研究の仕方のひとつのかたちを提示したに過ぎません。
 テレビ番組等で、コメンテーターの口から「人類は食物連鎖のピラミッドの頂点に立っている」とか「食うか食われるかの生存競争が自然のおきてである」などといったセリフが飛び出すのを聞くと、たいへん悲しくなります。生物は個々の力量で競争を繰り返し、そのパワーバランスで生態系が維持されていると、多くの人々が盲信しているように見えるからです。
 あるいは、人類は進化の行き詰まりに直面しており、行き場を失った進化の形としてネオテニー(幼形進化)に至ったなんてことも耳にしたことがあります。進化的な哺乳動物ということで言えば、大型の草食獣や肉食獣、巨大な海獣、あるいは新生代に栄えすでに滅びた化石哺乳類の方が、人類よりもはるかに進んでいます。人類の形態や生態は、進化的哺乳類としての条件をあまり満たしていません。
 人間社会は古くから競争で成り立ち、殺戮と破壊を繰り返して来たと言われています。それを生存競争とダーウィン式の進化論になぞらえて社会ダーウィニズムという表現が生まれました。生物は競争し戦うものだから、人間社会が競争と殺戮で成り立っているのは自然の摂理だというわけです。
 しかしながら生物は競争などしていませんし、同じ種類の者同士が滅ぼし合うのは人間だけです。食物連鎖のピラミッドなんてものもどこにも存在しません。生き物たちは生態系の中で自分の役割を果たし、きちんと住み分けています。生存競争だの弱肉強食だのといった表現は、競争社会を正当化するための、金持ちの詭弁のように思えます。
 生物の進化を理解するためには、生存競争の宿命論から脱却し、個々の生物の進化よりも生態系というネットワークの中における種の進化という考え方で研究を進める必要があります。
 また、人類の進化についても哺乳類としての進化の頂点を極めた結果ネオテニーを来たしたのではなく、人類がまだ進化して来て間もない未成熟な種であり、幼形進化によった祖先型から生まれ変わりつつあるということを理解しなければなりません。人類の進化については別章に後述します。


 筆者は、専門書をせっせとひもとくよりも、種々の動植物を飼養することで、生態系の中の生物個体の位置付けや、進化のメカニズムについて理解a深めました。あるいは昆虫採集等で同じ野山を毎年繰り返し歩くことで、生き物の住み分けや生物層の厚みの必要性について学びました。陳腐な言葉ですが、筆者にとっては自然はでっかい教科書でした。
 とは言っても、物事をきちんと分析し理解するためには、それを表現する言葉が必要です。あるていどの専門知識と専門用語を学習することは重要です。ただ、専門書に精通するだけで達人気取りを決め込むのはまちがいです。専門知識を習熟することで物事を充分に理解したつもりになり、独創性を失ってしまってはいけません。
 学習は重要です。しかしあるていど学習が進んだら、研究をしてゆかねばなりません。研究とは想像力です。
 学習とは物事を分類すること、つまり垣根を作ることで、研究とはその垣根を壊してゆくことであると筆者は思っています。物事をより統一的に理解し、新たな方法論を見つけることが研究です。
 生物の進化について、現在どのように研究が進んでいるのかについて知るのに、インターネットでキーワード検索を行なうのは、お手軽であるうえにひじょうに有効な手段でもあるので、ぜひ実施していただきたいと思います。専門知識や用語を理解するのにもひじょうに有効です。
 無料百科事典ウィキペディア等を利用すると、1つの記事から関連項目を次々に見つけられるので、理解も深まります。とりあえずは、進化、遺伝、種、形質、器官、獲得形質、特殊化、突然変異、種分化、適応放散、生態系、ネオテニー、多細胞生物、といったキーワードを検索し、記事の中に含まれるキーワードをさらに閲覧してゆくと良いでしょう。
 生物は進化し続けるものであり同じ状態に留まることは決してありません。その変化は決して後戻りしないがゆえに進化であり、進化はまた種の分化を招きます。そのようにして地球上には生物の種類が増え、豊かな生物層が築かれました。そして生態系という大きな構造を構築しています。その構造が偶然にできあがって行ったものなのか、そのような構造を築くように生物の遺伝子にプログラムされているのか、遺伝子というシステムを生物はどのようにして獲得したのか、コドンといわれる遺伝子コードをどのようにして定義したのか、まだなにも解っていません。この難問を解決してゆくには、より多くの研究家の想像力と探究心を導入しなければなりません。本箸をお読みいただいた読者にもぜひ、謎の究明に参加していただきたいと思います。


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