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両生類の進化

 地質時代表記で古生代デボン紀(今から約4億1600万年前から約3億6700万年前)は魚の時代でした。最初の脊椎動物である魚類は、主に淡水域で暮らしていましたが、真骨類という硬骨魚類の仲間が登場してからは、海にもどんどん進出するようになり、先住の大形海洋動物を蹴散らして世界中の水域で優位を占めました。
 そうした華々しいドラマの陰で、強敵から逃れてより浅くて干上がりやすい場所へ進出して行った魚類の中から、両生類はこっそりと分化しました。最初の両生類の出現はデボン紀後期から末期であると言われています。
 両生類の直接の祖先とされる魚類はかなり大形で、浅い水底をかいて進むための柄のついた扇状のヒレを持っていました。魚類の胸ビレと尻ビレが体側の腹面寄りに付いていたことは、彼らには実に幸いで、おかげでヒレで水底をかくという動作もスムーズに実践でき、そのことがヒレを4足へ進化させ、両生類を導きました。一般的な魚類の胸ビレや尻ビレが腹面寄りに付いていたことは、両生類が進化して来るための前適応であったと言えるかもしれませんね。ただ、両生類へ移行した魚には腹面寄りのヒレが3対6枚ありましたが、最後尾の2枚は退化しました。
 現生のシーラカンスは柄の付いたヒレを持つ肉鰭類の生き残りですが、この魚はどうしたことか、深海に進出しています。シーラカンスは典型的な魚スタイルである左右に偏平な形状をしていますが、デボン紀の肉鰭類には円筒型から上下に偏平な仲間が少なくなかったでしょう。そして左右偏平スタイルのものの中から真骨類が、上下偏平型から両生類が分化したと思われます。左右偏平型の魚は遊泳能力に優れ、 上下偏平型はどちらかというとのろまな魚でした。
 でも、当時の淡水域ではのろまタイプが主流で、左右偏平型は大型で獰猛な上下偏平型から逃げ延びるために敏捷性を身につけた小魚だったにちがいありません。生物の進化においてニュータイプに移行するのは弱者であるのが常です。
 淡水域の大型肉鰭類から逃れ海洋へ進出した真骨類は、サメやエイといった軟骨魚類の脅威に愕然としたことでしょう。しかし海に至るまでに卓越した機動性を会得していた彼らは、軟骨魚類の猛攻をかわし、海での居場所を確保し、やがてあらゆる水域で優位を獲得するに至るのです。ちなみに軟骨魚類は上下偏平型なので、水揚げされてもいつもの姿勢を維持していますが、真骨類は丘に上がると横向に倒れてビチビチ跳ねていますね。

 さて、淡水域で繁栄を築いた上下偏平型の肉鰭類ですが、彼らも目覚ましい進化を遂げる真骨類にいずれは優位を奪われることになります。その少し前に、肉鰭類の中でも劣勢の仲間は、どんどん貧しい水域へ逃げて行き真骨類の脅威をかわしました。泥沼状態の浅瀬には、強力な遊泳能力は通用しません。代わりに肉鰭類の柄の付いたヒレ、上下偏平型ボディ、肺呼吸といった特性が大いに役立ちました。彼らは再び豊かな水域に帰ることなく、浅瀬で独自の進化を遂げ、そこから両生類が分化しました。
 肉鰭類の胸ビレと腹ビレの柄の部分は、やがて4つの足へ、その先のヒレの部分は水かきのついた指に変わって行くわけですが、柄の部分はさらに関節が形成され、腿と脛に分かれます。最初の頃は、肘関節は体のすぐ脇に形成され、徐々に腿が伸長して現在の4足動物のような2つに屈曲する足になっていったのでしょう。
 初期の両生類は、浅瀬やその近くの陸地を腹ばい状態でのそのそと歩くものの、水場を離れるのは、強敵から逃れたり地上の虫を捕食する時くらいで、たいていは水棲生活をしていたでしょう。それでも、いつでも地上へ飛び出してゆけるメリットは大きく、彼らは徐々に繁栄し進化して行き、様々な水辺の動物に分化してゆきました。
 初期の両生類はほぼ水棲生活者でしたが、種類が増えいろんなタイプの動物が出てくると、より水棲生活寄りへ移行する者と、陸地にいることが多くなる者とへ分かれて行きました。両生類の進化は、単一に陸上生活動物への移行というわけではありません。魚類の進化がそうであったように、ニュータイプの生物は最初は劣等生で、敵の少ない言わば貧しい土地に追いやられますが、実力を身につけるとあらゆる環境へ進出するようになります。
 水棲動物へ移行した両生類の仲間は、体を蛇行させて泳ぐサンショウウオタイプの者と、水かきの付いた4足で泳ぐカエルタイプの者へ分化しました。カエルタイプは4足の運動力を高めるために胴部と頭部が一体化した短いボディを発達させ、尻尾は退化し後ろ足が大きくなりました。彼らは魚ほどは俊敏に泳げませんが、前足を手のように使って小魚を捕まえることができましたし、胴部と一体化した頭部は口器も大きくでき、強力な捕食動物として発展しました。
 一方、陸に上がって虫などを捕食する生活に移行していった仲間は、陸上生活に向いた頑丈な胸郭や強い4足を発達させました。最初の陸棲動物は、腹を引きずって歩く腹ばい歩行者だったので、自重から内臓を守る丈夫な胸郭は必要不可欠でした。胸郭を強化するにはそれを支える背骨も頑丈にする必要があり、体重は必然的に増え、それを推進するための足腰も強化されました。
 陸上生活というのは、体重を支えること以外にも、丈夫で疎水性の高い皮膚を発達させることもクリアしなければなりません。魚類は魚鱗という装甲で体表を守っていますが、皮膚自体はけっこう水を通す薄いもので、ゆえに塩濃度が大きく変化する海と淡水の行き来は困難なんですね。こんな頼りない皮膚で空気中に長時間いたら干からびて煮干しになってしまいます。単に4足があって肺呼吸できる魚というだけでは丘へは上がれないのです。
 両生類の生殖は、魚類と同様に体外受精です。ゆえに繁殖には水が欠かせませんし、孵化した幼生はエラ呼吸する完全水棲動物です。それが変態して肺呼吸の成体になります。両生類といわれるゆえんですね。

 古生代後期の陸棲動物といえば両生類が最新式で、すでに陸棲生活に適応している節足動物は、せいぜい彼らの餌サイズでした。なので彼らは向かうところ敵なしで大いに栄えました。やがて彼らは世界中の水辺に適応放散し、様々な種を産み出して行きました。古生代の石炭紀(約3億6700万年前から2億8900万年前)から次のペルム紀(約2億9,000万年前から2億5,100万年前)は、まさに両生類の時代でした。
 現生の両生類といえば、カエルやサンショウウオといった小動物ですが、彼らは古生代の両生類の比較対象としてあまり適当ではありません。当時の両生類の中には体長約2メートル、体重約90キロといった大型動物も存在しました。大きな口と鋭い歯列を有し、小型の両生類や魚などを捕食しました。彼らは現生の両生類よりも大きく進化的で、獰猛な動物だったでしょう。陸棲動物として大成功をものにしてから再び水棲生活に戻ったものの中には全長4メートルを越す巨大種も現れ、彼らは現生のワニのような暮らしをしていたでしょう。彼らからすると今も絶滅せずに生き残っている両生類は、小型で原始的な仲間です。
 古生代後期の陸地や河川を席巻した、進化的で大型の両生類の栄華は古生代を越えて続くことなく、やがて進化して来るニュータイプの動物すなわち爬虫類との競合に破れて滅びの道をたどります。大型動物がことごとく爬虫類に置き換わってしまったあとは、小動物としての位置づけを確立し、今もよく栄えています。ワニのような獰猛な両生類や、カバのような丸々太った大型両生類は、現生の同類を見る限り想像もできませんね。見てみたかったですけどね、ダイナミックな古生代の両生類。

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