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P-T境界

 真の陸棲動物としての進化を果たした爬虫類は、石炭紀の次のペルム紀に本格的な進化放散を始めますが、すでに大型化を遂げていた水辺の両生類との競合に勝利することは、じつは容易ではなかったようです。爬虫類に進化してから長い間、彼らは小さな体で大型両生類から逃げ回る暮らしを強いられました。彼らが滅びることなく存続し続け、地道に仲間を増やしてゆくことができたのは、画期的な生殖方法と敏捷性のおかげでした。そしてそんな彼らに勝機をもたらしたのは、ペルム紀末(約2億5000万年前)の地球規模の生物大絶滅でした。地球上の90%以上の生物がこの時死滅したといわれています。
 当時の地球は、世界中の陸地が1ヶ所に集中して超大陸を形成しつつありました。陸地や海底を形成する地殻は、地球を覆う薄い被膜に過ぎず、たえず流動し続けています。そしてたまたまこの時期、世界中の大陸が1つにくっついてしまったんですね。
 地上は世界規模の大陸性気候となり、気温変動が激しくなり、極地方では氷床の発達が進みました。地表の水が凍てつくと、海面が下がる海退現象が進み、大陸棚が空気中に露出して、海洋生物がどんどん絶滅し、生態系の基礎が根底から崩れました。陸地でも大食家の大型動物ほど大きなダメージを受け、古生代の大型両生類、すなわち進化的な両生類は急速に衰退して行ったのです。

 地殻がいくつかのプレートで構成され、大陸および海洋はそのプレートに乗って移動し続けており、それによって様々な地殻変動がもたらされるということを説明した学説をプレートテクトニクスといいますが、これに対して地殻変動を地球のより深層部のマントルの対流によるものであるということを説明した学説をプルームテクトニクスといいます。両者は対立する学説というわけではなく、地殻変動やそれに伴う気候の変動は、プレートの移動にもプルーム(マントルの対流運動)にも起因しており、プルームはプレートの移動の要因でもあります。
 ペルム紀末の生物大絶滅をプレートよりもプルームに重きをおいて説明したものに、マントル対流の大きな異変すなわちスーパープルームによる大規模な火山活動であるというのがあります。この考え方によると、超大陸形成つまりプレート起因性の生物大絶滅よりもずっとドラマチックで、ひじょうに短期的に生物がダメージを受けたことになります。化石証拠を見る限りでは、ペルム紀末の生物大絶滅はあっという間の出来事に見えるでしょう。しかし実際には絶滅は何十万年もかかってゆっくり進行したにちがいありません。超大陸形成時にはプレート同士の衝突による褶曲山脈の形成が起こり、火山活動も引き起こされたでしょう。造山活動や火山活動の跡も当時の地層に残されているのでしょうが、筆者は火山の噴火が大量の動植物を一気に吹っ飛ばしたという劇的な説よりも、気候の変化に伴う生態系のバランス崩壊説を信じたいです。

 生物において“進化的”という表現は多くの場合、一定の環境に適応するための特殊化がよく進んでいるという状態に用いられます。そして進化的な生き物は、環境が一定していれば優位に立つことができるものの、環境が急変するとそれについてゆけなくなります。餌の減少や幼生の死亡率の増加は進化的に優位に立っている大型動物ほど深刻で、当時の進化的な両生類はペルム紀末までにほぼすべて絶滅してしまいました。
 ペルム紀が終わり、次の三畳紀(トリアス紀とも)になると、超大陸は再び分断されて行き、海洋性の穏やかな気候が世界中の多くの土地にもたらされ、温暖化が進みました。極地方の氷床が縮小して海面が上昇し、海洋生物の温床となる大陸棚が世界中に広がりました。生物たちはこぞって進化放散を開始しました。
 今から約2億5000万年前のペルム紀(Permian)と次の三畳紀(Triassic)の境を、地質学ではP-T境界などと言ったりしますが、これはまた古生代が終わり中生代が始まる区切りでもありました。
 P-T境界を越えて存続できた進化的両生類はほぼ皆無でしたから、中生代の訪れと共に地球上に温暖化がもたらされると、陸上で生き残った脊椎動物は、両生類にせよ爬虫類にしろ比較的小型の種でした。そして小さいもの同士の攻防ということになると、当然ながら両生類に分はありませんでした。水棲生活を得意とした生き残り両生類たちはそこからなんとか進化放散を進めようと試みたのでしょうが、陸上で快進撃を続ける爬虫類の一部がついに水域にまで進出し、両生類の進化を阻んで行ったのです。
 脊椎動物の進化のドラマは、古生代に魚類と両生類の進化放散が完了し、中生代は完全陸棲動物の時代へと移行しました。T-Pを境に爬虫類の大躍進、鳥類そして哺乳類の進化というダイナミックなドラマが次々と展開されることになります。

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