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鳥類の進化

 鳥類は、中生代前期に恐竜の落とし子として誕生し、羽毛を備え自由に飛び回る飛翔動物として小型爬虫類たちと渡り合う暮らしを続けて来ました。彼らは恐竜等の進化的爬虫類には太刀打ちできなかったものの、優れた運動性能にものを言わせてけっこう繁栄していたでしょう。中生代の間に様々な種を分化し、世界中に放散して行きました。
 鳥類よりも少し先んじて、哺乳類も誕生していましたが、彼らは闇の住人として夜行性動物の道を選び、ひっそりと暮らしていました。それに比べると鳥類は立派な日なたの住人で、小さな恐竜といった位置づけをものにしていたでしょう。一部の専門家が鳥類のことを、極めて特殊化した爬虫類の一部であると指摘するのも解らないことではありません。
 しかし、新生代の訪れと共に爬虫類の王国が崩壊すると、独自に爆発的な進化発展を遂げ、巨大生物をも輩出するに至った経緯を見ると、鳥類はやはり爬虫類とは独立したグループであると認めざるを得ません。
 陸棲動物の進化史を見てみますと、時代ごとに特定の動物群が顕著な優位性を示し、その時代を象徴します。古生代には両生類が、中生代には爬虫類が、それぞれ時代の覇者となりました。そして新生代初頭、鳥類は次の覇者となるべく一気に定行進化を推し進めたのでした。

 とその前に、鳥類がどのような経緯で飛翔能力を会得するにいたったのか想像してみましょう。
 中生代には鳥類以外にも翼竜の仲間が強力な飛翔能力を発揮しましたが、彼らの空への進出のきっかけは、樹上などの高所生活からの滑空だったでしょう。当時の爬虫類はこぞって大型化を目指していましたから、樹上は意外に穴場でした。強力な捕食動物から逃げのびるのに木登りは有効でした。
 翼竜の祖先は、中生代の爬虫類としては数少ない樹上生活者で、木々を跳び移る生活からやがて滑空を会得したのです。そのようにして滑空生活を獲得した例は、モモンガ、ムササビ、ヒヨケザル、コウモリといった現生動物にも見られ、彼らは滑空のために膜状の器官を身につけています。コウモリにいたっては膜状器官が立派な翼に進化しており、空中で自在に姿勢制御ができます。
 中生代の翼竜たちもコウモリと同様の優れた滑空動物でした。中には翼の開長が10メートルに達するものもいて、この怪鳥より優れた滑空動物は以降現れていません。
 滑空動物は高所から飛び降りる瞬間に得られる浮力によって空を飛びます。ムササビでもコウモリでも地上に下りてしまった場合、急いで手近な高所によじ登り、飛び降りねばなりません。
 中生代の怪鳥たちは、樹上や上昇気流のある崖などに巣を構え、現生のワシやタカのように滑空しながら獲物を仕留める暮らしを送っていたのでしょう。

 ところが、中生代の鳥類の祖先の空へのアプローチはずいぶんちがっていました。二足歩行の小型恐竜であった彼らは、強力な後足で大地を蹴って俊敏に駆け回り、前足を走行時のバランサーとして使いました。現生の飛べない鳥ダチョウの場合、前足つまり翼をスポーツカーのスポイラーつまり浮力抑制翼のように用いて、走行速度を上げています。元来飛ぶための器官を飛んでしまわないためのツールとして用いるなんて面白いですね。
 鳥類の祖先たちの場合、前足は素早く方向を変えるためのバランサーとして機能したでしょう。陸上選手も手を振ることによって走行安定性を高めています。手を振らずに走るのはひじょうに困難です。
 彼らは走行に加えてジャンプも得意でした。竜盤目獣脚類の小型種は、極めて運動性能の高い恐竜でしたから、それこそ飛ぶように駆け回っていたのです。
 そして地上性の動物としては、ジャンプの飛距離というのは長いほど有利で、前足の振り子としての能力に徐々に安定翼としての能力が追加されて行き、やがてそれが翼へと変貌を遂げて行ったわけです。
 走り幅跳びの選手が飛距離を稼ぐために手を振る、それに似た経験の積み重ねが、彼らの前足を翼に進化させて行ったのでしょう。
 問題は羽毛の発達ですが、その経緯について想像するのは大変むずかしいですね。羽毛は軽快さと体温調節という2つの機能を充実させるのに他にないほど理想的なアイテムで、飛翔動物として成功するには、これしかないと思える優れものです。
 羽毛は軽量で柔軟で、しかも翼として浮力を得るのに充分な強度を持ち、風雨から体を守り保温性を確保し、暑い時には逆立てて放熱もできるというすごい多機能ぶりを発揮します。
 鳥類はまた、羽毛の発達と合間って恒温性も発達させて行きました。中生代の温暖な紀行の中で昼行性の生活を送るのであれば、爬虫類のように恒温性を外気温に任せておけばよさそうなものですが、飛翔動物としての生活を盤石なものにするには、外気温に関わらず体温を一定に保つシステムが必要だったのでしょう。恐竜のように大きな動物であれば、外気温に恒温性を委ねても活動に必要な体温を維持し続けるのは容易ですが、飛翔生活を送るためには小型軽量高性能が必須条件です。夜の内に放熱してしまい、朝から脳が働かなくてボーッとしているようでは生きていけません。
 飛行には大きな運動量を消費します。しかも贅肉や食いだめで体重を増やすわけにはゆきません。頻繁に食べ続けなければならないのです。朝は爽やかに目覚めさっそく餌探しに出かけなければならないのです。
 そうしたわけで、鳥類は食物を燃焼して自ら発熱して体温を維持する恒温性を発達させたのでしょう。恒温性の確立が彼らの成功の秘訣であったかもしれません。ただし、現生の哺乳類ほど優れた恒温性ではなく、体温維持には羽毛に依存するところが大きかったでしょう。恒温性をレベルアップするには摂取するカロリーも増量しなければならず、そのことは小型計量化の妨げになります。現生の鳥類にも自分の体温があてにできず、他の鳥に卵やヒナの保温を押しつける托卵の習性を持つ鳥がかなり存在します。鳥類にとって体温を維持するということはなかなか大変なことなのです。

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