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鳥類の進化放散

 鳥類は、哺乳類と共に中生代前期に爬虫類の仲間から進化しました。哺乳類を分化させた獣形類は今はもういませんし、鳥類を産んだ恐竜類も今や絶滅動物です。中生代の温暖な気候に適応した進化的な爬虫類たちは、時代の終わりと共に絶滅し、氷河期と間氷期が交互に訪れる新生代は、鳥類や哺乳類の時代となりました。爬虫類は現在も大変よく繁栄していますが、現生の爬虫類の主流は中生代には原始的だった仲間の生き残りとそこから進化してきた動物たちです。爬虫類もまた、かつての両生類のように支配的な地位を新しいタイプの動物群に明け渡し、小型多様化して行ったのです。

 爬虫類の優位が失われ、進化的な仲間が急速に衰退して行くと、空いた席を埋めようとするように鳥類の大型化と進化放散が加速しました。爬虫類の優位によって抑圧されていた進化のエネルギーが一気に開放され、世界中のあらゆる地域あらゆる環境に多種多様の鳥類が進出していったのです。
 中生代の鳥類は古鳥類と真鳥類に大別され、鳥類の元祖として知られる始祖鳥は、古鳥類の仲間で現生の鳥類を含む真鳥類は早い時期に古鳥類から分化しています。
 中生代の鳥類は、小型恐竜の変わり種といった感じの動物で、逆に小型恐竜の中にも当時の鳥類と見分けがつかないような仲間がいました。中生代の鳥類は近縁の恐竜たちと競合し、よく繁栄していました。爬虫類の優位に進化放散の力を抑圧されていたとは言え、温暖な気候に適応した動物としては、すでに一定の繁栄をものにしていたと言えます。その点で、古鳥類や中生代の真鳥類は、恐竜の一部と定義してもよいくらいで、中生代末期に真鳥類から派生した新鳥類以降を爬虫類から独立させた方が、進化のドラマとしてはしっくりします。
 つまり、中生代の終わりと共に一気に進化放散を開始し、爬虫類に台頭して地球上での優位を獲得したのは新鳥類であり、それ以前の鳥類は、恐竜たちと運命を共にしたわけです。

 今から約6500万年前に始まった新生代初期は、鳥類の時代でした。多種多様な鳥たちが次々と誕生し、世界中のあらゆる環境に進出してゆきました。鳥類は空を飛べるという特性上、放散能力も高く、比較的短時間で世界制覇を成し遂げたでしょう。
 長大な翼を持ち優れた滞空性能を持つもの、小さな体と高回転の翼によってホバリングを可能にし昆虫のような生活を送るもの、水上に常駐する鳥、地上歩行生活が得意な鳥、そして爬虫類が成し得なかった極寒の極地方で氷上生活を送るものまで現れました。
 鳥類は飛翔動物の形態上、地中生活や水中生活は得意としないものの、彼らの生活圏は地球上のあらゆる環境に及びます。水中生活はしないものの優れた潜水能力および機動力で魚を追い回す鳥もたくさんいます。
 鳥類の分布状況を観ていますと、温暖な地方ほど多種多様の仲間がひしめき合い、寒冷な地方に行くほど種類が減り、ひとつの種が大群を成すようになります。これは鳥類に限らず動物一般の特徴なのですが、とくに鳥類ではそれが顕著です。
 鳥類は、現代でもほじょうによく繁栄し、我々も身近に彼らの姿を見ることができますが、その本当の繁栄は、じつは新生代前期に終わっています。大型爬虫類が去ったあと、鳥類の多くの仲間が大型化を目指し、中には中型の恐竜に匹敵するような怪鳥も現れました。
 鳥類の大型化は、進化放散の早い時期に生じており、重厚な体とそれを支える力強い脚を備えた、さながら恐竜のような鳥が大地を闊歩しました。彼らは飛翔能力を犠牲にして大型化を図り、代わりに地上での高い機動力で他の動物たちを圧倒しました。
 しかしながら、鳥類の天下はあまり長くは続きませんでした。鳥類よりも高い恒温性能と汎用性に優れた体を持つ哺乳類が、間もなく頭角を現して来ることになるからです。鳥類が哺乳類よりも先んじて天下をとったのは、移動能力が格段に優れており、勢力範囲を拡大するのに哺乳類よりも断然有利だったからでしょう。哺乳類も鳥類と共に、新生代当初から進化放散を始めたのですが、どこへ行っても先回りしている鳥類に撃退されるのが常でした。それでも哺乳類たちは鳥類の猛威を巧妙にかわしながら地道な勢力拡大を続け、やがて相手を打ち負かして大型動物の地位を獲得します。
 鳥類の敗因は飛翔生活のために、形態や生態があまりにも特化したことでしょう。器官の特殊化が進んでいる度合いが大きいほど、それを別の機能に変更することが難しくなります。脚を翼に進化させるよりも、翼を脚に戻すほうがずっと困難なのです。
 爬虫類でも哺乳類でも、進化して来たばかりの頃は、地味で目立った特徴があまりない動物でした。そこから多種多様の動物を分化させてゆくわけですが、鳥類の場合は飛翔生活への適応のためにすでに大きな特殊化を達成した状態で進化して来ました。卓越した移動能力で哺乳類よりもいち早く適応放散を実現し、天下をとったものの、後発の哺乳類の適応力に次第に圧されて行くことになり、やがて短期政権の幕を閉じます。
 その後新生代は事実上哺乳類の時代となるわけですが、政権を明け渡した後も制空権は未だに鳥類のもので、その繁栄は今もつづいています。

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