ラルッソンツノヒョウタンクワガタ
2014/07/06
これは……珍虫と呼べる虫ではないでしょうか。熱帯性の小型の甲虫ですが、日本にもルイスツノヒョウタンクワガタの存在が知られています。オサムシ科にヒョウタンゴミムシというのがいますが、一見するとそれにとてもよく似ています。光沢のある黒い体に前胸と中胸の間がくびれている様子、翅鞘に強い筋条があることなど、類似する特徴が多く、サイズ的にもゴミムシのようです。ヒョウタンゴミムシでは、一般的なクワガタムシのメスの大腮ていどかそれ以上の鋭い大腮がありますが、ツノヒョウタンクワガタでは、いさささか異型の大腮がついています。ヒョウタンゴミムシのヒョウタンの名称は前胸と中胸のくびれを表していることは想像に易いですが、ツノヒョウタンクワガタではそれほど明瞭なくびれは見られず、もしかするとヒョウタンゴミムシ似ということでこの名があるのかもという疑いが生じます。ツノの文字は角状突起のようなものを表しているのではなさそうです。とある記述によると、大腮の内枝が大腮本体と同等に長さの突起になることがツノとつく由来であるとか。ラルッソは学名の名の方を表したもので、外国産の虫を和名にする場合によく用いられます。
生態的には、クワガタムシのそれと同様の、成虫は樹液食い幼虫は朽木食い、触角もL型のクワガタタイプです。肉食性のゴミムシとはまったく異なります。
ヒョウタンゴミムシとの類似性は、強力な捕食者に擬態することで身を守るということなのかとも考えてみましたが、自分で言っておきながらこの案にはあまり賛同できません。
とても小さくて可愛らしいクワガタムシです。せいぜい15mmていどで、サイズの個体差がかなり大きく、そのあたりもクワガタ的です。
黒くてツヤツヤですね。大腮の形状に注目してください。長さよりも幅のある大腮は内枝の方が立派なほどで、大腮本体が大腮から外方へ突き出した突起みたいです。変な形ですね。
この2頭には、立派な内枝が見当たらず、大腮はするどい鉤爪のようになっていますよ。よく観察すると噛み合わせのところにわずかに内枝が見られますが。メスです……かね?
前胸と中胸の間はヒョウタンゴミムシほどにはくびれないと前述しましたが、右の個体のように下向きに丸くなるとくびれは目立ちませんが、左の個体のように伸びるとちゃんとくびれがあります。
腹面はやや赤みがあります。また、大腮をこの角度から見るとY字型に見えます。やっぱ変な形です。
ダイコクコガネを長くした感じ、あるいはマグソコガネのようにも見えます。とてもクワガタの仲間とは思えません。しかしそれらの糞虫はカブトムシと近縁の虫たちです。
飼育環境としては、通常のクワガタムシの産卵セットをそのまま流用します。この小さなクワガタムシは大型種ほど長くは生きないと思われますので、繁殖に失敗すると、飼育は短期で終わってしまいます。
タイで採集され国内ブリードされた個体たちということです。棲息地では群生が見られるそうですが、日本のチビクワガタのような社会性があるかどうかは不明とされています。筆者的には、チビクワガタの営巣的な群生を社会性と呼ぶなら、本種もそうなんじゃないかと思うのですが。
とても参考になりました。